先日「音圧を上げるための最強にして超簡単なツール、DeeMax誕生」という記事で紹介した、プラグインのマキシマイザーDeeMaxフランク重虎さんというミュージシャン自らが自分のニーズから開発したプラグインでしたが、レバー一つで簡単に音圧を上げられること、発売記念キャンペーンで29ドルという安さであること、そしてUIの強烈さもあって、大ヒットとなっているようです。

そのDeeMaxが、登場から1ヶ月でVersion 1.1.0へとアップデートするとともに、TURBOボタンを装備して、さらに強力なものへと進化しています。また、このアップデートに合わせ、フリーウェアの新プラグイン、DeeGainなるものも投入され、Dotec-Audioのプラグインはこれで有料2本、無料2本のトータル4本となりました。その新製品リリース記念ということで、当初12月末で終了予定だったDeeMaxが29ドルというキャンペーン期間が2016年1月31日までに延びたのも大きなニュース。そこで、今回は新しくなったDeeMaxを改めてチェックするとともに、DeeGainがどんなプラグインなのかを見ていきたいと思います。


TURBOスイッチ搭載でさらに強化されたDeeMax新バージョンとフリーのDeeGainが新たに誕生

今回のTURBO機能は、もう一つのDeeMaxを作るつもりで開発した入魂のアップデートです」と語るのは、DeeMax開発者のフランク重虎さん。見かけ上は、強そうなレバーの下にボタンが追加されただけですが、このボタンを押してTURBOをオンにすると標準モードとは大幅にプロセスの異なる強烈なマキシマイザーになる、とのことです。


TURBOスイッチがオフの標準状態では、基本的に従来どおりの動作である

実際に試してみれば、すぐに分かりますがTURBOスイッチが入ると、原音にパンチを加えたサウンドになるんです。まずは、以下のビデオをご覧ください。

 

どうですか?音圧とは別の次元において、ガツンと来るサウンドになるのが分かりますよね。


TURBOスイッチを入れるだけで、いきなりガツンとくる音になる

TURBO機能では、トランジェントの強調からバンド別の処理の再構築、マキシマイザーの多段化などを行ない、かつリアルタイム性は従来通りに保っています」(重虎さん)

トランジェントとは、「過渡的」という意味であり、音の立ち上がり(アタック)や、音の消え際(サステイン、リリース)のことを指す言葉。TURBO機能においては、とくにアタック部分を抽出して強調しているそうですが、だからこそ、ガツンとくる音になっているんでしょうね。

トランジェントの強調する際、バッファ処理による遅延を出さないためにもエキスパンダーの処理に近いことを行っています。通常は逆コンプの仕組みで作るのですが、今回はエキスパンダーに特化させて不要な計算を省き処理の高速化に注力しています。そして音量が増加しやすく波長が長い低音部分と別バンドで処理を行っているのは以前と同様ですが、さらに低音楽器のアタック部分に注目して処理をしています。そして最後にマキシマイザー処理を2段階で行い、DeeMaxのコンセプトである音楽性を保てるように処理しています」(重虎さん)

ちょっと話は難しくなってきましたが、こうした理論も原理も知らなくてもOK。単にレバーを上げて、TURBOスイッチを押すだけですから、使い方はいたって簡単ですよね。

初期バージョンと比較して、今回の1.1.0ではさらに数多くの処理を行っているのですが、『DeeMaxはとにかくワンパラメータで操る』という縛りを設けていることから、前回にも増して苦労しました」と重虎さん。ユーザーインターフェイスのデザインも、メカニックデザイナーの出雲重機さんと試行錯誤を繰り返してDeeMaxらしさを増したものへと進化しているんです。このメカメカした雰囲気は、本当に笑ってしまうほどですよね。


DeeMaxをマスタートラックにセットすると、すぐに音にサチュレーションが掛かってしまう、という声があるが…

ところで、先日の記事を掲載後、「DeeMaxをマスタートラックに入れると音が歪む」といったコメントがいくつかありました。また、実際に使ってみるとDeeMaxのレベルを30くらいにした時点で歪んだ感じになるケースがありますが、これはどういうことなのでしょうか?またうまく回避することはできないものなのでしょうか?

DeeMaxに入る音量が既に大きくなっていると30程度でサチュレーションが働いてしまいます。こういう場合はDeeMaxへの入力ゲインを下げるか、DeeMaxの前にコンプレッサを挟むことで、より音圧を上げることが可能になります」(重虎さん)

つまり、ミックスでの音量を上げすぎないようにするか、一旦バスを経由させ、そのバスで音量を下げることで、DeeMaxが本来の力を発揮できるようになります。とはいえ、すでに完成させたミックスをあまりいじりたくはないですよね。そんなときに大きく役立つのが、今回、DeeMax Version 1.1.0と同時にリリースされた無料のプラグイン、DeeGainです。


-20dB~+20dBの範囲で音量レベルを調整するDeeGain 

DeeGainは、単純に音量を-20~+20dBの範囲で調整できるというプラグイン。レベルメーターはついているけれど、コンプレッサでもリミッターでもなく、音量をいじるだけ。音量調整なんてDAW装備のミキサーでいくらでもできるので、「音量調整のプラグインなんているの?」と思ってしまいますが、実はこれ、単純さゆえにアイディア次第で、とっても便利に使えるチャンネルツールとなっているのです。

その分かりやすい例が、DeeMaxとの併用です。マスタートラックにおいて、DeeMaxの前にDeeGainを置き、このDeeGainで一旦音量を下げることで、先ほどのようにすぐにサチュレーションが働いてしまう問題を回避し、思い切り音圧を上げられるようになるのです。


マスタートラックにおいて、DeeMaxの前段にDeeGainを入れて-6dBほど音量を絞る 

マスタートラックは各トラックが合わさった結果ですので音量が大きくなります。一旦DeeGainで-6dBぐらいまで下げるとマキシマイザーが適切に処理を行える音量となるため良い結果が得られます。もちろんソフトウェアの処理ですので、DeeGainで-20dBさげた後に、再度20dB上げ直しても損なわれる音はありません。アナログのアンプでしたらこれは不可能ですからね(笑)」(重虎さん)


オリジナル波形(上)とDeeGainで-20dBした後、+20dBの処理をした波形(下)を比較しても音質劣化はまったくない 

フェーダーで調整できるのは、インサーションエフェクトを経由した後の音量なので、エフェクトに入る前の音量を下げることって、なかなかできないんですよね……。DeeMaxに限らず、入出力のレベル調整を持たないプラグインって多いので、その前後にDeeGainを置くことで、これを実現できるわけです。

さらにレベルのオートメーションが描かれたトラックにおいて、全体的にちょっとだけレベルを上げたいとか、下げたいといったオフセット調整をするのにも、DeeGainを利用することができます。

なお、サチュレーションを効かさず、音圧だけを上げるという場合は、DeeMaxでなく、DeeCompが有用である、とのこと。


サチュレーションさせずに音圧を稼ぐためのDeeCompの設定

上の画像のようなセッティングにすると、INPUTを上げるだけで滑らかに音圧が稼げます。さらにWIDEを動かすことによってステレオ感の調整も可能になりますので、ぜひこちらも試してみてください。DeeMaxのようなガツンとした感じとは違い、あらゆるジャンルに万能で、音楽でなくても映像のセリフ等を揃える用途にも適しています。この万能さは仕事で使うツールとして設計されているからです」と重虎さん。

音圧を上げるために、マキシマイザーとコンプレッサをどう使い分けるのか、というなかなか奥の深いテーマではありますが、いろいろ試してみると面白そうですね。

2016年も、Dotec-Audioでは、まだまだ斬新なソフトウェアを出していくようなので、今後の展開にも期待したいところです。

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