DAWで制作していると、どうしても必要になってくるのが、フェーダーを動かすオートメーションを書く作業です。コントローラを動かしてそれをリアルタイムに記録したり、ペンツールで描いていくなど、手法はいくつかありますが、結構地道な作業だし、それなりのスキルも必要で、なかなか大変ですよね。

そのオートメーションを書く代わりに、それに相当するレベル調整を自動に行ってくれるツールがあったら、すごく便利だと思いませんか?まさにそんな魔法のようなツール、DeeTrimを、日本が誇るゲリラ部隊、Dotec-Audioが開発し、$25で発売されました。DeeMaxDeeCompDeeFatなど、一連のDeeシリーズの第7弾に当たる新製品。これがどんなツールなのかを紹介してみましょう。


オートメーションを書く作業を省略できる画期的なプラグイン、DeeTrim
 
そもそも、なぜオートメーションでボリュームカーブを書くのかって冷静に考えたことはありますか?シーンによって曲を盛り上げたり、静かにさせたり……という面もありますが、それよりも大きな理由となっているのは、そのトラックの音量を一定化させたい、ということではないでしょうか?つまり、レコーディング時にマイクに近づいて大きくなったところを抑え、パワー不足になってしまったところを持ち上げるために、ボリュームをいじっているわけです。


普通は音量をうまく均一化するためにオートメーションを使ったボリュームカーブを書く 

でも、そんなのコンプを使えば画一化できるよ」という人も多いと思うし、実際そのためにコンプレッサがあるわけです。でもコンプを使うとどうしてもコンプ臭い音になってしまうから、それを避けるためにオートメーションを使っているわけですよね。

一方、音量を一定レベルにする機能として、ノーマライズというものがありますが、これはこれで問題があります。そう、ノーマライズでは、指定範囲内における最大音量を指定レベルにするように、全体を上げたり、下げたりするための機能。そのため、音量が上がったり、下がったりするものに対しては、有効に使うことができないんです。

そこで、音量が小さいときはフェーダーを上げて、音量が大きくなったらフェーダーを抑えていく。そんな操作をすることで、音量をある程度一定に保たせるのが、オートメーションにおける重要な役割なのですが、その面倒な操作を自動処理してしまう、というのがDotec-Audioの新製品、DeeTrimなのです。
 

 DeeTrimは大きい音でも小さい音でも、圧縮せずに音量の上下操作だけでトラックの音量を整えることができる

開発者であるフランク重虎さんによると「もともとゲイン調整のツール、DeeGainの機能拡張をしようと作っていたのですが、一定レベルの増減をするのではなく、設定したフェーダーのレベルに音を保てるようにするツールにしてみよう…としてできたのが、DeeTrimなんです」と開発のキッカケを話していました。

では、このDeeTrimはどんな場面で使うと、大きな効果を発揮してくれるのでしょうか?まずは、前述のとおり、DAWの各トラックのレベルをコンプ感なく均一にするという目的です。つまり事前に各トラックのインサーションとして、DeeTrimを入れて、レベルを設定すればOKで、あとは、各トラックのフェーダーレベルを固定で決めてしまえばいいのです。これなら、すごく効率いいミックスが可能ですよね。

一方、BGMをバックにナレーションを入れていく、というような時です。普通ならナレーションが入ってきたところで、BGMを絞っていき、ナレーションが終わると、またBGMを上げていくという操作が必要ですが、BGMとナレーションをミックスしたものに、DeeTrimを書ければ、まさにそうした操作が自動的に行われるのです。

また、シンセの演奏などでフィルターを通した音をトラックに入れると、レゾナンスのかかり具合によって、急に音が飛び上がるようなことがあります。普通なら、ここでコンプをかけるのですが、コンプだとどうしても音が変化してしまうので、フィルターのかかった、鋭いサウンドをそのままにレベルを均一化するということができるわけです。


加工前のオリジナルの波形 

このようにアイディア次第で、さまざまな使い方が考えられるDeeTrim。-12dB~+3dBの範囲で設定できるのですが、ここで試してみたくなるのは、実際のところコンプやノーマライズとどう違うのか、という点です。というわけで、ちょっと波形を見ながら比較する実験をしてみたいと思います。まず、オリジナルの状態では全体的に音量が小さく、でも前半より、後半のほうがやや大きくなる、という波形に対し、各処理をしていきます。


波形のメリハリはそのままに大きくなったノーマライズ。ただ、コンプのようには音圧は上がっていない

まずノーマライズをかけると、一番大きい音が0dB、つまり最大の音量になるように、全体が少し太った形になり、形としてはオリジナルを拡大した形になります。


コンプをかけると、全体均一的に音圧が上がる 

それに対し、コンプをかけると、波形全体がもっと太った形になり、音圧が上がっているのが分かります。


DeeTrimも、パッと見、コンプに近い感じで音圧が上がっている

一方DeeTrimを使った場合も、コンプとちょっと似た感じで、音量が大きくなり、全体的に粒が揃った感じにはなるのですが、実際に音を聴き比べると、コンプをかけたものは、少し音がつぶれた感じで劣化(変化)してしまうのに対し、DeeTrimの場合は元の音質をそのまま保っているのです。


上がコンプをかけたもの、下はDeeTrimをかけた結果

実際どうなっているのかを波形を拡大して見比べると分かってきます。画面上がコンプをかけた場合の波形で、下がDeeTrimで調整した波形。元は同じ波形なのに、コンプの場合は明らかに潰れてしまっているのが分かりますよね。

でも、このDeeTrimは何をしているのでしょうか?この点について重虎さんは「音をリアルタイムに解析しながら500msec~3000msecという範囲で音を捉え、その音量がDeeTrimで指定したレベルになるように調整しているんです」と話していました。何かちょっと難しそうなロジックがあるようですが、聴いた感じ、音質が劣化することなく、でもちょうどいい感じで音量調整されるんですよね。

ここでつい意地悪く考えてしまうのは、もし途中にプチッという大きなクリップノイズが入ったらどうなるのか、という点です。


頭にブチッというクリップノイズが入った波形を各種処理にかける

この辺、普段から波形処理をしている方ならよくお分かりだと思いますが、このままノーマライズをかけても、このクリップノイズのせいで、あまり大きくレベルアップできないんですよね。


ノーマライズにかけても、思ったほど音量が上がらない

それに対し、コンプの場合、クリップノイズのある無しに関わらず、思ったレベルにまで持ち上げることが可能です。
 

コンプをかけた場合、頭のノイズがあっても、無くてもそれ以外は同じ結果になる

では、DeeTrimの場合どうなるのか……。実はごく短いクリップノイズのようなものは、ノイズと判断してそのままスルーしてくれるし、このクリップノイズの周囲にあるほぼ無音のところも、変に持ち上げたりせず、あくまでも無音部分の微妙なノイズとして判断してくれるんですよね。メチャメチャ優秀です。


DeeTrimなら、ノイズ部分は無処理でスルーし、それ以降の音楽の部分のみうまく処理してくれる

こうしたノイズの判断は自動的に行うようにはしていますが、できれば、DeeTrimをかける前に不要なノイズは取り除くために、ノイズゲートなどは通していただけると、より正しく動作すると思いますよ」と重虎さんは説明してくれました。

このように、さまざまな利用シーンが考えられる、まさに魔法のエフェクトDeeTrimは、たった$25という価格設定。とりあえず、自分がうまく利用できるものなのかを確認する上でも1つ持っていて、損はないですよね。

しかし、いろいろなチャレンジをし続けているDotec-Audioは、このDeeTrimと最大ヒット製品であるマキシマイザーのDeeMax、さらには音をいい感じに太くするプラグイン、DeeFatの3本をセットにした「LOUD PACK」なるものの発売を7月15日に$90で開始しました。


 DeeTrim、DeeFat、DeeMaxのラウド系3製品をパックにしたLOUD PACKは$90とお買い得!

DeeTrimが$25で、DeeMax、DeeFatがそれぞれ$49ですから、トータル$123というもの。まあ、正確にいうと、Deeシリーズのいずれかの製品を購入したユーザーであれば各$15引きが適用されるので、実際には$93で入手できるものが$90と微妙に安くなっただけ、ともいえますが、もともと気になっていた……という方なら、いいチャンスといえそうですよね。ちなみにLOUD PACKにはオマケとして「特製壁紙」(1920✕1080)が同梱されるとのことなので、Dotec-Audioのデザインが大好きな方には、嬉しいアイテムにもなりそうですよ(笑)!

まさにラウドな音にしていくための威力あるツールの3本セット。この機会に試してみてはいかがでしょうか?