音圧を上げるための最強にして超簡単なツール、DeeMax」が誕生し、日本中のDTMユーザーを沸かせてから5か月。この間に、DeePanpotDeeGainDeeSpeakerと怒涛のごとく有用なフリーウェアも次々と発表してきたDotec-Audioが、また画期的なプラグインを生み出してくれました。

今回登場したのは、とにかく簡単に音を太くするツール、その名もDeeFat。「このトラック、今ひとつパンチが足りないんだよな…」なんて時に、このDeeFatをかませれば一発で「ぶっといサウンド」へと変身させてくれるのです。使い方もいたって簡単、スライダーを1つ動かすだけのお手軽操作。実際、どんなものなのかを紹介してみましょう。


さまざまなトラックの音を太くする強力なプラグイン、DeeFatが誕生

 
トラックに設定するだけで簡単に太いサウンドにしてくれるプラグイン、DeeFatはDotec-Audioが製品として発売するものとしては、コンプレッサのDeeComp、マキシマイザのDeeMaxに続く第3弾。従来製品と同様WindowsのVST(64bit版/32bit版)、MacのVSTおよびAudioUnitsに対応したプラグインとなっています。

ループ素材を使ったトラックに対しても、ソフトシンセなどで作ったベーストラックでも、ドラム音源を鳴らしたトラックでも、物足りないと感じた時に、DeeFatを入れると、簡単に思った感じの威力あるサウンドに仕立ててくれるんですよね。細かな説明はともかく、まずは以下のビデオをご覧になってみてください。



どうですか?DeeFatは、さまざまなサウンドに対して効果的に使えるのが分かりますよね。操作は、スライダーを下げていくだけの1パラメータ。DeeMaxではレバーを持ち上げると+効果が上がったのとちょうど反対の操作となっています。

でも、このエフェクトは何なのでしょうか?
これはオートコンプレッサベースエンハンサーを掛け合わせたエフェクトとなっており、ドラムでもベースでも、ループ素材でもさまざま音に対していい具合に音を太くできるツールとなっています」と語るのはDeeFatの開発者であり企画・発案者でもあるフランク重虎さん。


DeeMaxの開発者であるフランク重虎さん(左)と飯島進仁さん(右) 

重虎さんは、これまでも何度かDTMステーションの記事に登場してくれているので、ご存じの方も多いと思いますが、ご自身がミュージシャンであり作編曲家・DJとしても活動する中で、自分が欲しいツールを自ら開発してしまうというスーパー・エンジニア。でも、オートコンプなんてWavesのOne Knobシリーズなどいろいろあったと思いますが、このDeeFatは何が違うのでしょうか?

これまであったオートコンプって、スレッショルドの値を事前に固定しておき、ゲインを上げていくと潰れるという仕組みになっていました。でも、この手法で何段もコンプを掛けていくと、潰され過ぎて音がペッタン、ペッタンになってしまうんです。最近はループ素材を使う人も多いと思いますが、この手のループ素材は予めコンプがかかっているので、ここにオートコンプをかけると、ベタベタでベストな値を通り過ぎてしまうんです。そこで、このDeeFatではスレッショルド、アタック、リリース、レシオ、アウトプットゲインも含め、すべてを自動的にワンスライダーで効くようにしているので、仕組み自体が違うんです。またすでにコンプがかかっている素材に対しては、それを判別して、過度なコンプを避けるようにしているんです」(重虎さん)。

つまり粒が揃っていないサウンドはDeeFatのコンプ機能で整え、すでにコンプがかかって整っている音に対してはかからないようにしているのだそうです。では、もう一方のベースエンハンサーとはどういうものなのでしょうか?


DeeFatはオートコンプレッサとベースエンハンサーを掛け合わせたシステム
 

ベースの低音の倍音を足すことで、聴感上の音を太くするというものです。その昔、dbx製のハードウェアがダンスミュージック界ですごく流行ったことがありましたが、かなり経ってから、そのプラグイン版としてWavesのMaxxBassなどが出てきました。DeeFatのベースエンハンサも基本的には同様のものとなっています」と重虎さん。

以前、DTMステーションでも「プロが明かす、低域を安定させ、作品のバランスを整える魔法のテクニック」という記事でベースを太くするワザについて紹介したことがありましたが、それを実践的に、そしてより簡単に行えるのがDeeFatというわけですね。

普通にEQで低音を増強すると低音のボリュームばかりが膨らんでしまいます。そのためコンプをかけてもスレッショルドが先に低音部に当たってしまい、上モノまで大幅に潰されるという問題が起こります。そこで、DeeFatでは倍音を足して、聴感上のベースを補正するのと同時に、ベースをマスキングしてしまう周波数、つまりベースにとって邪魔になる音をさっ引くという方法を用いることで、無駄のない補正をかけることを実現しているのです」と重虎さんは説明してくれます。


DeeFatはある種、人工知能的な処理を行ったエフェクトだと話すフランク重虎さん

なるほど、パラメータは1つしかないけれど、これを動かすだけで、内部的にはさまざまなパラメータをいじる、まさにAI=人工知能のようなエフェクトになっているんですね。さらに重虎さんにAIの行っている大まかな流れを聞いてみたところ、

1.波形の高低差を見る
2.適度にコンプを掛ける
3.Lo、Mid、Hiの3バンドにフィルタで分割する
4.周波数状態を抽出してエンハンスの強さを決める
5.ベースをマスキングする周波数帯を削る
6.エンハンスした倍音を加える
7.2段目のコンプを掛ける

といった流れで処理をしているのだとか……。これを1パラメータの動きですべて調整してしまうのですから、すごいですよね。

2段階に分けてコンプを掛けるのは、プロのエンジニアなどもみんな行う手法ですが、1つのコンプだけで一気にゲインを稼ぐ方法だと雑にかかってしまって、音的に劣化してしまいます。そこで半分半分に分散させることで、繊細なサウンドが得られるんです」(重虎さん)。

ところで、DeeFatではスライダーを下げていくと、音圧が上がり、音も太くなるようになっていて、あのDeeMaxとは逆方向の操作になっていますが、これはどうしてなんでしょうか?Dotec-Audioでフランク重虎さんと共同で開発をしており、主にVSTやAudioUnitsへのプログラムの実装を担当している飯島進仁さんは次のように話しています。


透過液晶ディスプレイ付き計算尺というイメージのDeeFat

重虎さんからは、計算尺のイメージで作ってほしいと言われて、デザイナーの出雲重機さんにお願いしたんですよ。いま計算尺なんて使っている人はいないと思いますが、DeeMaxの金属的で力強いイメージとは明らかに違う繊細なデザインにしたかったんですよね。透過型液晶ディスプレイ付き計算尺といったところでしょうか。また、中央でド派手に光るインジケーターは90年代のカーステレオのグライコのイメージなんですが、あまり厳密な意味はないんですよ(笑)」(飯島さん)。

このグライコ風なのは、単純にデザインだと思ってください。コンプなので、潰していくということで、スライダーを下げる操作となっていますが、すべて自動計算で行うためにdB表示ではなくパーセント表示となっているんです。わからなければ、一番下に下げてしまえばいいのですが、目をつぶって聴きながら、一番いいところで止めてもらえればいいですね」と重虎さんも使い方を説明してくれました。

ここで気になるのがDeeFatの価格ですが、これはDeeMaxと同じく$49。最近は円高に振れてきているので、5,000円強といったところですね。また既にDeeMaxやDeeCompを購入している人であれば、$15の割引が適用されるので、$34で購入できてしまいますよ。もちろん、先にDeeFatを買ってからDeeMaxを購入する場合も$15の割引は適用されるので、心配はいりませんよ!

なお、このDotec-Audioは4月24日に開催される音系・メディアミックス同人即売会 「M3」(企13)に出展し、DeeFatリリース記念特売が行われるとのことです。ここでは開発者であるフランク重虎さん、飯島進仁さんがブースに立って販売を行うそうで、DeeFatの具体的な金額としては、日本円の3,000円。さらに通常$49のDeeMaxも同じく3,000円、通常$129のDeeCompも8,000円で発売されるとともに、2製品以上購入の場合、総額からさらに1,000円割引になるとのこと。
 

M3では特製のシリアルカードの形で特価販売される 


普通はクレジットカードを使ったダウンロード販売となっていますが、このM3ブースでは特製のシリアルカードの形で販売を行うと同時に、ノベルティとしてDotec-Audioのロゴ入りエコトートバックを先着で配布するそうですよ。

あくまでもM3だけでの特別価格だそうですから、M3に行こうと思っている方はもちろんのこと、M3で出展する予定のミュージシャンのみなさん、さらには一度フランク重虎さんと話をしてみたいという人も、Dotec-Audioのブースに行ってみると楽しいと思いますよ!