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30年の時を経て完全復活!オリジナルの挙動を徹底的に再現したKORG Collection – TRINITYの開発秘話

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1995年、従来の黒いボディとは一線を画す、アルミシルバー筐体のモンスターマシン、KORG TRINITY(トリニティ)が登場しました(通常価格21,890円)。320×240ドットという当時としては巨大なタッチビューGUIを搭載し、画面を直接指で触れて操作するというスタイルは、まさに未来そのものでした。そのサウンドは圧倒的にゴージャスで抜けがよく、小室哲哉さんや坂本龍一さんをはじめとするトッププロたちもこぞって愛用し、90年代後半の音楽シーンを席巻しました。

あれから30年。その伝説の名機が、KORG Collection 6(通常価格43,890円)の新たなラインナップとしてついにソフトウェア化され、現代のDAW環境に蘇りました。KORG Collectionシリーズといえば、歴代の名機をソフトウェアで復刻させる人気シリーズですが、今回のTRINITYは単なるプログラムの移植ではなく、DACエミュレーション、実機特有のクセや、資料からは分からない当時の工夫、さらには内部回路でのビット落ちによる音質劣化までもあえて再現することで、当時の「太い音」を完全再現しているのです。開発を主導したのは、TRINITYを3台も所有していたという熱狂的なファンでもあるKORGソフトウェア開発チームの岩田昌樹さんと、岩田さんのこだわりを技術で具現化した石井裕太さん。なぜ今、TRINITYだったのか、そしてどのようにしてあのサウンドを再現したのか、開発者のお二人にじっくりとお話を伺ってみました。

※セール情報
2026年1月15日(木)~29日(木)の期間限定でセールが行われています。これによりKORG Collection TRINITYが通常価格21,890円から16,390円に、またKORG Collection 6が通常価格¥43,890から32,890円になっています。

KORGソフトウェア開発チームの岩田昌樹さん(左)と石井裕太さん(右)

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30年の時を経て蘇る、KORG TRINITYへの想い

ーーさっそくですが、これまでのKORG Collectionの流れと、今回TRINITYが追加された経緯について教えてください。
岩田:KORG Collectionの歴史を振り返ると、もともとは2004年にKORG Legacy Collectionとしてスタートしました。MS-20やPolysixといったアナログシンセの復刻から始まり、そこから2017年にKORG Collectionへと名称を変更し、ほかブランド製品も含めてアーカイブを進めてきました。もう20年以上続いているプロジェクトになります。

その中で、TRINITYを製品化したいという話は、実はかなり昔からありました。たとえば2019年末にTRITONをリリースした翌年あたりにも話は出ていたのですが、microKORGやminiKORG 700Sといったほかの機種のプロジェクトがあり、なかなか順番が回ってこなかったのです。しかし、TRINITYは1995年発売なので、今年2025年がちょうど30周年。このタイミングしかないということで、ようやく実現しました。

ーーTRINITYを追加するという話は前からあったのですね。
岩田:私自身、TRINITYには特別な思い入れもあり、社内では何度もプッシュしていました。高校生のころの話ですが、必死にアルバイトをして貯めたお金をつぎ込んで、中古のTRINITY Pro plusを買いました。その後、76鍵盤のV3モデルや、ライブ用に持ち運びやすい61鍵盤も手に入れ、一時期は3台同時に持っていた時期があるほどです。

TRINITY plus

ーー高校生で3台というのは凄いですね。相当な金額ですよね?
岩田:定価でいうと1台20万円以上しましたが、当時はTRITONが発売していたので中古で安くはなっていたんです。アルバイト代が入った瞬間に代引きで機材を買ったりと、今では考えられないような無茶をして買い集めていましたね(笑)。ちなみに私が人生で最初に買ったシンセサイザーは、中学2年生の時にお年玉で買った中古のYAMAHA EOS B500でしたが、そこからのステップアップとしてはかなり大きなものでした。それだけに、今回のTRINITYのソフトウェア化には並々ならぬ情熱がありましたね。

岩田昌樹さん

石井:岩田さんがずっと社内で「TRINITYはまだか、TRINITYはいつ開発するんだ」といっていたのは知っていました。私はKORG Collection 3の頃から開発チームに参加していますが、今回は特に岩田さんの熱量がすごかったですね。

岩田:TRINITYの音は、プリセットの1番を聴いた瞬間からゴージャスで、とにかくきらびやかでした。バンドで合わせても決して埋もれないコシのある音が大好きだったので、その感動をそのまま現代のユーザーに届けたいという強い思いがあり、社内でも「次はこれがいい」と何度も言い続けて、ようやく担当できたというわけです。

当時の雰囲気を踏襲したUIデザイン

ーー今回のソフトウェア化にあたり、GUIのデザインはどのように作り込んでいったのでしょうか?
岩田:ソフトウェア化にあたって、今回のGUIは実機の雰囲気を再現することに注力しましたが、実はデザインについては開発チーム内でかなり議論をしました。現代のDAWでの使い勝手を最適化するために、フラットな洗練されたデザインとプログラムモードとコンビネーションモードの垣根をなくした新しいUI/UXにするべきだという意見が大多数でした。

KORG Collection – TRINITY

ーー確かに現代的なプラグインとしては合理的かもしれませんが、当時のファンとしては複雑な心境ですね。
岩田:そうですね。それでは復刻の意味がありません。コルグのシンセサイザーにおいてプログラムとコンビネーションは明確に役割が異なりますし、何より当時TRINITYを使っていた人が画面を見た瞬間に「これだ!この画面で音を作っていたんだ」と思ってくれなければ意味がありません。新しいソフトウェアではありますが、これはアーカイブでもあり、あの頃の記憶を呼び覚ますものでなくてはなりません。私は「いや、これはこういう意図があるからこうなんだ、この構造でなければならない」と信念を曲げずに説得し続けました。

石井:議論は平行線をたどり、決着がつくまでに3ヶ月以上かかりましたね。最初は岩田さんサイドの意見が社内でも少数派だったこともあり、かなり孤独な戦いだったようですが、岩田さんの熱意が押し勝ちました。

石井裕太さん

ーー結果として、当時のままの姿でリリースされたわけですね。
岩田:最終的にはこちらの意図を理解してもらい、洗練されたフラットデザインを取り入れつつも、実機の雰囲気を残したデザインに落ち着きました。もちろん、音色を探しやすくするサウンドブラウザーや、主要なパラメーターに素早くアクセスできるEASYページといった現代的な機能は追加しています。しかし、エディットの核心となる部分は、当時の画面構成をそのまま踏襲しました。

石井:パラメーターの配置やフォントの雰囲気、そして各ページの階層構造に至るまで、実機を忠実にトレースしています。TRINITYは多くのパラメーターを持っていますが、当時実機を使っていた方ならマニュアルを見なくてもすぐに音作りができるようになっているはずです。

拡張サンプル・オプションもすべて搭載されている

岩田:当時のユーザーさんに「懐かしい、これだよこれ」といってもらえる仕上がりになったと思います。ピカピカの新品というよりは、当時の空気感をまとったUIを目指しました。本当にあのとき妥協していなくてよかったです。

「音が綺麗すぎる」から始まった、挙動の徹底的な調査

ーーサウンドの再現性についてはいかがでしたか?
岩田:サウンドについても一筋縄ではいきませんでした。開発の初期段階で出来上がってきた音を聴いたとき、私は「音が綺麗すぎる」と感じてリテイクを出しました。当時のTRINITYはACCESS音源を搭載し、48kHz/16bitのシステムで動作していましたが、現代のPC上で普通にプログラムを組むと、計算精度が高すぎて音がクリアになりすぎてしまいます。実機特有の「ザラつき」や、独特の空気感が足りない。そこで石井さんに「もっと汚してくれ」「あえて劣化させてくれ」と何度もお願いしました。

石井:プログラマーとしては、計算通り正しく動いているものを「直せ」といわれるわけですから、最初は戸惑いました。通常、ソフトウェア開発では高音質化や効率化を目指すものですが、その流れに逆行するような指示なので。しかし、実機の波形やスペクトルを詳細に解析していくと、確かに実機の方が理論値とは異なる挙動をしていることが分かってきました。そこには、当時のハードウェアならではの制約や、資料からは分からない細かな工夫が隠れていました。

ーー具体的にはどのような部分を再現したのでしょうか?
石井:たとえば、複数の音色を重ねたとき、実機ではCPUの処理速度の限界からか、発音タイミングがわずかに”ズラされている”ことが判明しました。これによって独特のステレオ感や厚みが生まれていたのです。現代のPCなら同時に発音できてしまうため、最初はタイミングが揃いすぎてしまい、逆に音が痩せて聴こえていました。今回の細かなズレもプログラムで再現しています。

岩田:そのズレがあることで、倍音の立ち方が変わり、低域のボコンとする感じや高域のきらびやかさが生まれるのです。「エレピのアタック感が違う」「コリッとした感じがない」と感覚的な言葉で石井さんに伝え、それを解析してもらいました。そういえば以前、別の機種の開発で私が「アタックが遅い」と指摘した際、調べたら本当に遅れていたことがありましたね。今回も同様に、聴感上の違和感を徹底的に潰していきました。

石井:もう一つ、エフェクトに関しても面白い発見がありました。一部のエフェクト、特にリバーブなどの処理において、実機は処理の途中で外部のRAMメモリにデータを書き込む仕様でした。DSP内部での計算自体は高精度で行われていたのですが、その外部メモリが16bit仕様だったため、データを書き込む段階で下位ビットが切り捨てられ、一度16bitに落ちてしまっていました。それがリバーブの残響音などに独特のザラつきを与えており、これも再現しています。実機と開発中のソフトウェアの音を波形レベルで比較し、徹底的に合わせ込みを行った結果、こうした残された資料や実機の発音などからは非常に気付きにくい挙動まで再現し、本物のサウンドを再現することができました。

実機確保とデータ救出の苦労

ーー30年前の機種となると、開発用の実機やデータの確保も大変だったのではないでしょうか。
石井:おっしゃる通り、30年前のデジタル機器を復刻する上で、大きな壁となったのがデータの抽出です。TRINITYのデータはフロッピーディスクで管理されていましたが、現在、正常に動作するドライブを見つけること自体が困難で、会社に残っていたTRINITYの実機も、経年劣化でフロッピードライブのゴムベルトが切れていて読み込めないものばかりでした。現在では交換用のゴムベルトも入手困難ですし、そもそもドライブ自体が寿命を迎えていました。

ーーでは、どのようにしてデータを吸い出したのですか?
岩田:そこで目をつけたのが、後継機種であるTRITONです。TRITONは1999年発売ですが、実はフロッピードライブのコネクタ規格がTRINITYと同じものが使われていました。社内にあったTRITONから、まだ動作するドライブを取り出し、先輩にお願いをしてTRINITYに移植して貰いデータを読み込みました。そうしてなんとか当時のPCMデータやファクトリープリセットを救出しました。

ーーちなみにユーザーが当時作ったサウンドを読み込んだりすることもできるのですか?
岩田:直近のアップデートで、当時作成した.PCGファイルを読み込める機能も追加しました。フロッピーディスクに残っている当時のオリジナル曲や音色データを、WindowsやMacで吸い出し、そのままソフトウェア上で再現できるようにしました。フロッピーはDOSフォーマットなので、USBフロッピードライブなどを経由してPCで読み込み、拡張子.PCGのファイルを取り出せば、そのままKORG Collection TRINITYで読み込めるようになっています。

石井:これは発売後に岩田さんから「やっぱりPCGファイルの読み込み機能が欲しい」といわれ、「本当に実装するんですか?」となった案です(笑)。

これからのKORG Collection

ーー最後に、これからのKORG Collectionの展望についてお聞かせください。
岩田: 私たちは「コルグが再現する本物のサウンド。時代を超えるシンセサイザー・ミュージアム」という言葉を使っていますが、古いデジタルシンセサイザーは、液晶が薄くなったり、バックライトが暗くなったり、バッテリーが切れたりと、いずれ動かなくなってしまうと思います。アナログシンセサイザーはもっとシビアですね。どんなに大切にしていても、物理的な寿命は避けられません。貴重な資産をアーカイブとしてデジタルで残していくことは、メーカーとしての使命だと考えています。

石井:TRINITYより古い機種となると、完全に動作する個体を確保すること自体がさらに難しくなっていきます。また、デジタル回路の資料やソースコードも散逸している場合があり、再現の難易度は上がっていきますが、今後もアーカイブは続けていきたいですね。技術的なハードルは高いですが、ユーザーのみなさんの期待に応えられるよう努力していきたいです。

岩田:過去の資産を残しつつ、新しい技術も追求していく。これからのKORG Collectionにもぜひ期待していただきたいです。今回のTRINITYのように、単なる音源としてだけでなく、その時代背景や開発者の魂まで感じられるような製品を届けていきたいと思っています。TRINITYで育った世代もTRINITYを使ったことのない世代も、このソフトを使って新しい音楽を生み出してくれることを願っています。

ーーありがとうございました。

【関連情報】
TRINITY製品ページ
KORG Collection 6製品情報

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