AIプラグインの先駆者であるsonible(ソニブル)から、昨年末の12月15日、待望のコンプレッサ最新版「smart:comp 3」が登場しました。最大の特徴は、AIが音源を解析して最適なパラメータを自動設定するインテリジェント処理と、2,000バンド以上という驚異的な解像度で行われるスペクトラルコンプレッションの融合。さらに今回は、AIが提案した設定をベースに直感的に音色を操れる「Compression Matrix」や、複数のトラックを一括で管理・操作できる「グループモード」など、制作フローを革新する機能が多数追加されています。
初心者には迷いのない音作りを、プロには圧倒的な時短と緻密なコントロールを提供するsmart:comp 3。リリース記念として2026年1月12日まで、通常20,108円が31%オフの13,873円(税込)となるイントロセールも実施中。実際にsmart:comp 3を試してみたので、紹介していきましょう。
AIによる学習と2,000バンド解析
smart:comp 3の使い方は非常にシンプル。まずはプラグインをトラックにインサートし、学習ボタンを押すだけ。数秒間オーディオを再生させるだけで、AIが音源のダイナミクスや周波数特性を解析し、Universal、Vocals、Drums、Bass、Guitarsなどのプロファイルによって最適なスレッショルド、レシオ、アタック、リリースといった基本設定を行ってくれます。
この解析の裏側で行われているのが、sonible独自の「スペクトラル・コンプレッション」です。一般的なマルチバンドコンプレッサが帯域を3〜4つに分けて処理するのに対し、smart:comp 3は2,000バンド以上もの細かい帯域で処理を行っています。
これにより、単に音量を整えるだけでなく、周波数ごとのダイナミクスを微細にコントロールし、音色のバランスを最適化するのです。通常のコンプレッサでは、低域の大きなエネルギーに反応して高域まで一緒に潰れてしまい、音がこもってしまうことがよくあります。一方、smart:comp 3であれば、特定の帯域だけが過剰に圧縮されて音が詰まったり、逆に圧縮不足でバランスが崩れたりすることを防ぎ、透明感のあるダイナミクス制御を実現してくれます。
直感操作を実現する「Compression Matrix」
学習が完了すると、左側の「Compression Matrix(コンプレッション・マトリックス)」で、サウンドのキャラクタを調整できるようになります。これは、今回のバージョンアップの目玉機能の一つで、従来のスレッショルドやレシオといった数値的なパラメータ操作とは異なり、X/Yパッドのような感覚で直感的にコンプレッションのキャラクタを調整することが可能。
マトリックスには以下の4つの特性が配置されており、中心にあるポイントをドラッグして動かすだけで、音の質感をシームレスに変化させることができます。
Punchy(パンチ): 音に重みとインパクトを与えます。キックやベースなど、太さが欲しいパートに適しています。
Dynamic(ダイナミック): 元のダイナミクスを活かしつつ、自然な抑揚を保ちます。アコースティック楽器や歌の表現力を残したい場合に最適です。
Dense(デンス): ダイナミクスを均し、音の密度を高めます。トラック全体の一体感を出したり、音圧を稼いだりする際に力を発揮します。
この操作の裏側では、スレッショルドやレシオ、アタック、リリースといった複数のパラメータが複雑に連動して変化しているのですが、それを意識することなく、「どんな音にしたいか」という感覚だけで理想のサウンドを探ることができるというわけです。もちろん、中央に表示されているパラメータとも連動しているため、マトリックスで大まかな方向性を決め、微調整を行うといった使い方も可能となっています。
また、AI解析による有効な処理範囲を示すのが「Compression Scope(コンプレッション・スコープ)」という概念です。マトリックス上で明るくハイライト表示される領域がそれで、これは学習された信号をダイナミックに成形しうる範囲を示しています。たとえば、すでに音圧が高く隙間のないドラム音源を読み込ませた場合、それ以上「Dynamic」にする余地は物理的に少ないため、スコープは狭く表示されます。逆に、ダイナミクスに余裕のある素材であれば、スコープは広く表示され、幅広い音作りが可能であることを表しています。つまりAIは、無茶な設定を提案するのではなく、その素材が持つ物理的な可能性の範囲内で、最適な範囲を表示してくれるのです。
音作りの幅を広げる4つの「詳細機能」
AIによる提案とマトリックスでの調整で簡単に理想的なサウンドを作ることもできますが、さらに踏み込んだ音作りをしたい場合は、画面下部の詳細タブを活用していきます。
1. Style(スタイル)
コンプレッションのキャラクタを変更可能。
Smooth: 穏やかなエンベロープとソフトなサチュレーション。ボーカルやパッドに最適。
Aggressive: 速いタイミングと強力なトランジェント制御。ドラムやベース向け。
Custom: アタック/リリースのカーブや、サチュレーションの質感・量を自分で細かくエディット可能。
2. Spectral Comp(スペクトラル・コンプ)
2,000バンド以上の処理による音色の補正具合を調整可能。
Color: 音色の傾向を調整。「Bright」にすると低域を強めに圧縮して高域の明瞭さを保ち、「Warm」にすると高域を強めに抑えて落ち着いたトーンにします。
3. Input Riding(インプット・ライディング)
コンプレッサに入力される前の信号レベルを自動的に整える機能。ダイナミクスの激しいボーカルなどで、レベル変動を滑らかにしてからコンプに入れることで、より安定した掛かり具合を作ることができます。いわゆる手コンプ、WavesのVocal Riderのような役割をしてくれる強力な機能となっています。
Speed: 追従速度をコントロールでき、「Fast」に設定すれば急激なレベル変化にも素早く反応し、ダイナミックな素材に対応。「Slow」に設定すれば、穏やかで自然なライディングとなり、透明感を保ったまま滑らかに整えることができます。
4. Sidechain / Spectral Ducking(サイドチェーン / スペクトラルダッキング)
サイドチェーン入力は「Internal(内部)」と「External(外部)」を切り替え可能。
External: 外部トラックをトリガーにし、このモードにすると、 Spectral CompだったところがSpectral Duckingに切り替わります。通常のダッキングとは異なり、スペクトラル解析を行い被っている帯域だけを下げることが可能になります。たとえば、キックをトリガーにしてベースをダッキングさせる際、キックと周波数が被る低域だけを抑制し、ベースの中高域はそのまま残すことで、不自然なポンピングを最小限に抑えつつ、キックのアタック感を活かすといった処理も行うことが可能。ダンスミュージックの激しいダッキングから、生楽器のでのダイナミクスの棲み分けまで、作っていくことができます。
また、「Phase」モードを切り替えられるようになったのも大きな進化点。「Linear」モードは位相の整合性を保つため、マスタリングやバス処理、パラレル処理に最適ですが、構造上レイテンシーが発生します。一方、「Minimum」モードを選択すれば、レイテンシを抑えた動作が可能になります。これにより、ボーカルのレコーディング時の掛け録りやライブパフォーマンスなど、リアルタイム性が求められるシチュエーションでも、違和感なくsmart:comp 3の強力な処理を使用することができます。
複数トラックを管理する「グループモード」
ミキシング作業の効率を向上させる「グループモード」もsmart:comp 3に搭載された新機能です。これは、複数のトラックに挿したsmart:comp 3をひとつのウィンドウ内でまとめて管理・操作できる機能。
たとえば、ドラムのキック、スネア、ハイハットなど各トラックすべてにsmart:comp 3を挿し、それらを「Drums」というグループにまとめます。すると、ひとつのプラグイン画面上で、グループ内の全トラックのゲインリダクション状況を一覧監視したり、パラメータを一括で調整したりすることが可能になります。さらに、グループ内の全インスタンスに対して「一括学習」を実行することも可能。ドラムキット全体のコンプ設定の土台を、わずか数秒で作ってしまうことができるのです。
また、Compression Matrix上に各トラックのダイナミクスが同時に表示されるため、視覚的にダイナミクスによるマスキングを調整することも容易になります。簡単なアプローチとして、トラック同士の帯域被りは、パンを振ったり、EQで帯域を棲み分けさせたりして解消しますが、複雑になりがちなダイナミクスのエンベロープをずらすという方法もsmart:comp 3では簡単に行えます。
たとえば、メロディ楽器とリードボーカルがマトリックス上の近い位置にあると、サビなどで互いにぶつかり合ってしまいます。そこで、ボーカルを「Dynamic」寄り、楽器を「Dense」寄りといった具合にマトリックス上で位置を離してあげることで、EQに頼らずとも、ダイナミクスの違いによって分離感を出し、マスキングを回避できるのです。
iZotope OzoneやNeutronとの違い
AIを使ったミキシング・マスタリングツールというと、やはりiZotopeのOzoneやNeutronを思い浮かべる方が多いと思います。iZotopeの場合は、そもそも単体のエフェクトというよりも、複数を組み合わせたエフェクトチェーンなので、単純比較はできないですが、iZotope製品の場合、AIが楽曲を解析し、iZotopeの考える「これが正解に近い音です」というゴールまで連れて行ってくれるイメージ。
一方、sonible製品、特に今回のsmart:comp 3は、エンジニアのクリエイティビティを拡張するパートナーという立ち位置にあると思います。AIはあくまで素材の下処理、スペクトラルバランスの補正やダイナミクスの整理といった面倒な作業を完璧に行うことに徹しており、そこから「どんな音色に仕上げるか」「どういうキャラクタをつけるか」という一番楽しい音作りの部分は、人間に委ねられている印象です。コンプ単体で比較すると、smart:comp 3の方が、圧倒的に便利で懐が広いですね。
smart、pure、learn……3つのシリーズの違いとは?
sonibleには現在、AIを活用したプラグインとして主に3つのシリーズが展開されています。それぞれの立ち位置を整理しておきましょう。
smartシリーズ: sonibleのフラッグシップ。AIによる最適化に加え、詳細なパラメータ調整が可能。プロフェッショナルな制作や、細部までこだわりたい場面に最適。
pureシリーズ: AIの技術はそのままに、操作を「ワンノブ」などに極限までシンプル化したシリーズ。細かい調整はできませんが、迷わず素早く「良い音」にたどり着けるため、クリエイタや時短を求める方に人気です。
learnシリーズ: smartシリーズの機能を厳選し、視覚的・言語的なガイドを充実させたシリーズ。操作のハードルを下げ、AIのアシストを受けながら音作りのプロセスを学べるような、直感的な設計になっています。
以上、sonible「smart:comp 3」について紹介しました。冒頭にも書いたように、smart:comp 3の発売を記念したイントロセールを実施中です。通常価格20,108円(税込)のところ、2026年1月12日まで31%OFFの13,873円(税込)で販売されています。なお、SONICWIREで販売されている海外メーカー製品の価格は、日々の為替レートに連動して変動するシステムになっています。そのため、ここに記載の価格も多少前後する可能性がありますが、これは常にその時点での最適な価格で購入できるというメリットでもあるので、安心して購入を検討してみてください。また、smart:comp 3は30日間の無料体験期間も用意されているので、まずは試してみてはいかがでしょうか?
【関連情報】
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◎SONICWIRE ⇒ smart:comp 3


















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