剣持さんに、VOCALOID3の詳細について聞いてみた

先日もこのDTMステーションの記事やAV WatchのDigital Audio Laboratoryで記事(1回目2回目)にしたとおり、VOCALOID3が発表されました。発売はまだ9月末としばらく先であるために、まだ触れることもできないのがもどかしいところです。発表会会場においては、それなりに理解したつもりではあったのですが、2回にわたるAV Watchでの詳細レポートを書いていたら、気になることもいろいろと出てきました。

そこで、VOCALOIDの父、ヤマハの剣持秀紀さんにいろいろと疑問をぶつけて答えてもらいました。さすがに発表したばかりで、メチャメチャお忙しい中、無理やりスケジュールをあけていただいたようで、本当にありがとうございました。そう、金曜日の夜遅くにSKYPEを使ってインタビューにお答えいただきましたので、そのやりとりを紹介しましょう。なお、VOCALOID3の基本的な内容はすでに上記の記事で書いている、今回はそこには書かれていないちょっと突っ込んだ内容です。


お忙しい中、SKYPEでインタビューに答えてくださった剣持さん


--先日の発表会のデモで「マイ・マイ・マイ・マイ…」とピッチを上げながら歌わせるとVOCALOID2では2回音色が切り替わるのに対して、VOCALOID3では滑らかにつながるというのがありました。あれは、サンプリングの段階数を増やしたということなのですか?

剣持さん(以下、敬称略):Sweet Annでのデモですね。あれはVOCALOID3のエンジンによって滑らかにしているもので、サンプリングを増やしたというわけではありません。また、サンプリングを何音階で行うかは、個々のライブラリの作り方の問題であるため、VOCALOID2なら3段階というわけでもないですね。

--そのサンプリングというかVOCALOIDのレコーディングですが、これまでVOCALOID2のレコーディングでは丸一日から二日程度かけて行うという話を何度か伺っていました。これはVOCALOID3になると、さらに時間がかかるものなのでしょうか?

剣持:レコーディングの工程そのものはほとんど変わっていませんよ。ですから、とくにレコーディング期間が増えるということもありません。


--今回、かなり多くのサードパーティーが新たに参加して、VOCALOID3の歌声ライブラリは相当数に上ることになると思います。その一方で、ユーザーの中には自分でもライブラリを作ってみたいという声も上がっていますが、このライブラリ作りをUTAUのように一般に公開する、という可能性はないですか?

剣持:確かに検討の余地はあると思います。ただ、現在のところ予定はありません。今後、そうしたことがビジネスにつながってくるようであれば、考えてもてもいいかもしれませんね。


--VOCALOID3になると、ファイルの拡張子が.vsqxになるとのことでした。その一方で、VOCALOID2の.vsqファイルのインポートも可能とのお話でしたが、逆に.vsqのエクスポートはできますか?

剣持:エクスポートについては、まだ仕様に組み込むか、確定していません。


--その.vsqxのファイル本体には、オーディオデータ自体も内包されるのでしょうか?それとも、オーディオ自体は別ファイルで持つ形になりますか?

剣持:オーディオは別ファイルですね。ちょうどCubaseのように、いくつかのファイル群がパックとなる形で、その全体を統括するのが.vsqxということになります。


--VOCALOID3 Editorではそのオーディオトラックが使えるようになるのが大きな目玉となっていますが、そのオーディオトラック自体は1つだけなのですか?

剣持:このオーディオトラックは2つになります。ひとつがステレオトラックで、もうひとつがモノラルトラックになります。DAWで作った伴奏を読み込ませるのは通常ステレオトラックになると思います。

--となるとモノラルトラックはどういう用途を考えているのでしょうか?

剣持:これは特別な表現をするためのトラックを想定しています。たとえば叫び声などを入れるとかね。またブレスをWAVとして貼り付けるためにも有効だと考えています。従来VOCALOID2では、いろいろなパラメータをいじってみなさんブレスを作り出す工夫をしていましたが、VOCALOID3では、直接WAVを使えるようにするわけです。ブレス職人のような方が登場してくれることを期待しています。


--ところで、ひとつ残念だったのはReWire非対応になったことです。せっかくDAWとのいい連携するためのいい機能だったのに、なぜReWireを外してしまったのでしょうか?

剣持:従来VOCALOID2ではDAWと連携させるために、ReWireは必要ある機能でした。しかし、いまお話したように、VOCALOID3 Editorにはオーディオトラックを持たせたので、ReWireの必然性は薄らいだと考えています。その一方、DTM初心者にとってReWireはなかなか難しいものであったことも事実です。DTMを知らない人など、もう少し広い層にも使っていただくため、わかりやすくするためにReWire機能を外しました。

--最後にVOCALOID Job Pluginについて教えてください。これの仕様を一般に公開するとのことでしたが、それはどのように公開するのですか?

剣持:仕様の公開の方法はまだ確定していません。マニュアルとして製品に付属させるか、Webなどで公開するかのいずれかになると思いますが、基本的に発売とほぼ同時期に無償での公開を予定しています。


--そのJob Pluginで作ったプログラムはボーカロイドストアで配布可能にするとのことでしたが、これはどういう形態を意味しているのでしょうか?またこのプログラムを手渡しやメールで配布するとか、自分のホームページにUPといったことは可能なのですか?

剣持:そのあたりの条件もこれから詰めていきたいと思っています。ただ、フリーウェアも含めてなるべくボーカロイドストアで集約して、ここから配布できる形が望ましいだろうと考えております。

--ありがとうございました。

 

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