耳コピの解析エンジンがさらに高性能化したBand Producer 5

これまでDTMステーションで何度も取り上げている「耳コピ」をコンピュータの力で行うというテーマ。現在、国内外いろいろなメーカーが取り組んでいますが、コード検出の精度という面で、先頭を行っていると思うのがKAWAIBand Producerです。CDやWAV、MP3、WMAなどを読み込むと自動的に楽曲を解析し、コードを検出してくれるソフト。そのBand Producerが、コード検出精度を向上させるとともに、DAW的な機能も強化して、Band Producer 5となって登場しました。

この新バージョン、発売は7月3日ですが、発売のちょっと前に入手できたので試してみました。画面配色のせいか、前バージョンとずいぶん雰囲気が変わった感じもしますが、使ってみるとかなり進化していて、便利に使えそうです。どんなものなのか、紹介してみましょう。
7月3日に発売されたKAWAIのBand Producer 5


Band Producerについてご存じない方も多いと思うので、まず概要を説明すると、これはKAWAIが2006年にリリースした「耳コピ」の支援を目的としたソフト。手元にコピーしてみたいCDがあれば、それを読み込ませると、半自動的に曲を分析して、コードを表示したり、ベースラインをTAB譜化してくれるというものです。

MP3やCDなどから曲を読み込むと、「コード検出」をするか「コピー支援」をするかを聞いてくる

たとえば、MP3の楽曲を読み込んでみましょう。すると、「コード検出」を行うか「コピー支援」を行うかを聞いてきます。ここでは「コード検出」を選択。その後、曲の範囲を選択して検出を開始すると、解析が始まります。4分弱の曲ですが、私のPCだと15秒ほどで解析が終了し、結果の画面が現れ、自動的に再生がスタートします。

15秒ほどで解析が終わり、コードが表示されるが、拍の裏表が逆になっていた

この再生音を聴いてみると、読み込ませたMP3に重なる形でメトロノームとピアノによるコードが鳴っています。コードはすごくいい感じで鳴っているのですが、拍の裏表が逆になってちょっと気持ち悪い感じ。そこで、この選択画面にある「拍の表裏を逆にする」を選んでみると、ピッタリと合います。

これでまずは完成。改めて再生してみると、onベースのコードも入って、かなり完璧にコピーしてますよ!ちなみに画面一番上は読み込ませたMP3を波形表示したもの。その下の赤い部分が音の変化の度合いを検出したもので、そこから黄色の拍を割り出しています。

コード部分を見ると明るい文字と暗い文字がある。多くの音があり正しく検出されていると思われるものが明るく表示される 

そしてその下にあるギターのフレットの指の位置を表示したものがコード。よく見るとコード名の色の明るさに違いがあるのですが、Band Producerが自信を持って表示しているものが明るく、自信なさげなものが薄い色になっているようです。

また、小節線とコードの切り替わる位置をチェックしてみてください。そう小節線ピッタリでコードが変わっているものと、ちょっと前で変わっているものがありますよね。この解析した曲の場合、いわゆる「食ったリズム」になっていて、拍の裏でコードが変わるケースが多いのですが、そこをしっかりと捉えているんですよね。もし、変だと感じるところがあれば、手動で修正することもできますよ。

かなり正確にコードを検出していましたが、もちろんすべてが完璧というわけではありません。ところどころ、妙なコードになっていますので、再生を止めて、その部分のコードをクリックしてみると、そのコードが再生されると同時に画面下には別の候補が現れるんです。これを選んで変更することもできるし、必要に応じて自分で設定することも可能です。

センターキャンセルしたり、再生スピードを変えられる便利な耳コピ支援機能

画面右側には耳コピを支援するための機能として、数小節をループして再生したり、センターキャンセルによってボーカルを消してみたり、また音程をキープしながら再生スピードをゆっくりにする……といったものも盛り込まれています。

先ほど「コード検出」を選びましたが、「コピー支援」を選ぶとどうでしょうか?こちらはベース検出メロディ検出和音検出といったものがあります。そう、こちらはコードではなく、ベース、メロディ、さらにはギターなどの和音を個別に検出しようという機能なのです。

耳コピ支援機能でベースを検出してみると、ベースのTABロールが表示される

たとえばベースを選んでみましょう。すると、同じように解析がスタートし、結果、さっきとはまた違った画面が表示され、MP3のサウンドにコードではなくベースが加わった形で演奏されます。

聴いてみると、なかなか頑張ってコピーしている感じです。完成度としては、先ほどのコード解析を80点とすると、こちらは50点くらいですかね……。違っている部分もかなりありますが、そこそこ合っているから、かなり参考にはなるはずです。また、この画面、TAB譜をピアノロール風に表示したTABロールになっており、指の配置も分かると同時に、音の長さも直観的に分かりますから便利に使えそうですよ。

ここでWaveVolというパラメータを絞ってMP3音を消し、コード演奏とベース、それにメトロノームだけで鳴らしてみると、カラオケっぽいものになるので、歌ってみたくもなりますね(笑)。

このように解析した結果をリードシート出力という形で譜面化して出力することができるほか、SMF出力という機能も用意されています。そう、この解析結果をスタンダードMIDIファイルで保存してしまえば、あとでCubaseSONARProTools……といった普段使っているDAWに読み込んで利用することもできるわけです。

ちなみに、このBand Producer 5にも、そのDAW的な機能が用意されています。それが、「作成モード」というもの。MIDIシーケンス機能にオーディオレコーディング機能なども搭載されているほか、リズムパターンやコード進行の素材なども数多く搭載されているので、これだけでゼロから曲を作っていくことも可能です。

MIDI、オーディオで楽曲をゼロから構成していくことが可能な「作成モード」

この「作成モード」の詳細は今回は割愛しますが、ちょっと面白いと思ったのは、先ほど保存したSMFファイルを読み込むと、ここにコードもしっかり再現されるんです。KAWAIに確認をとってみたところ、コードはシステムエクスクルーシブで保存しているから、再現されるのだそうです。そのため、ほかのDAWでコード名までは受け渡すことはできませんが、コードを弾いた音符情報は渡せますからね。作成モードでは、このコードも利用しつつ、メロディーパートを歌ってレコーディングしたり、USB-MIDIキーボードを弾いて音を加えたりしていくことも可能です。

「耳コピモード」で保存したSMFを読み込むと、コードもしっかり再現される。ここにSynth1が表示されているのは…

またキーボードを弾いた際に鳴るのは、KAWAIのGM2 SW Synthという標準搭載のソフトシンセであり、732音色、20ドラムキットが装備されています。また、今回のバージョンではVSTインストゥルメントにも対応したので、手持ちのソフトシンセを利用して鳴らすこともできるし、VSTプラグインを利用してエフェクトをかけるといったことも可能です。

標準で用意されているKAWAIのGM2音源のほかに、VSTiで鳴らすことも可能

以上、Band Producer 5について簡単に紹介してみましたが、いろいろな曲で試してみたところ、やはりうまくいく曲と、不得意な曲があったのも事実でした。音がスカスカでテンションコードも多い…といった曲は苦手なようで、なかなか厳しい感じ。一方で、キーボードやギターなど、多くの音が使われている曲だと、かなり正確にコード認識してくれるようでした。

KAWAIでは15日間、フル機能が使えるBand Producer 5の体験版を公開しているので、気になる人は、まずそれを使ってみるのもいいと思いますよ。

【関連情報】
Band Producer 5製品情報
Band Producer 5体験版

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