超低レイテンシーを実現するUAC-8はiOSでも大きな威力を発揮する!

先日、私がAV Watchで書いた検証記事でも超低レイテンシーであることが実証されたZOOMUSB 3.0対応のオーディオインターフェイス、UAC-8。Windows、Macでほぼ同等のパフォーマンスを発揮する機材ですが、Windows 8.1で計測したところ、96kHzのサンプリングレートでは1.94msecと他を圧倒する値を実現。私が知る限り世界最高の性能を実現しています。

ユニークなのはUSB 3.0対応のオーディオインターフェイスといいながら、実は一般的なUSB 2.0でも動作するという点。しかもPCとの接続だけでなく、iOSと接続するためのモードも持っており、ここでも大きな威力を発揮してくれます。そこで、まずPCと接続した場合の特徴を紹介した上で、iOSと接続するとどうなるのかを順に紹介してみたいと思います。

ZOOMのUSB 3.0対応オーディオインターフェイス、UAC-8をWindows 10やiPadで使ってみた


UAC-8は先日記事で紹介したUAC-2の上位機種と位置づけられる1Uのラックマウントタイプで24bit/192kHzに対応するオーディオインターフェイス。フロントに8つのコンボジャックが並ぶのが印象的な機材ですが、リアを見るとステレオ2chのメイン出力のほか8つのTRSフォンの出力があるので、アナログ的にいうと8IN/10OUTという仕様になっています。

UAC-8のフロントパネルには8つのコンボジャックが並び、それぞれにマイクプリアンプも搭載

またフロントには2つのヘッドホン出力があり、PHONE1はメイン出力が割り当てられているほか、PHONE2のほうは、10あるアナログ出力、つまり5つのステレオペアのうち任意のものを割り当て可能というフレキシブルな設計です。


リアパネルの右側にアナログ出力が並び、中央部にはS/PDIF、MIDI、ワードクロック、ADAT入出力が並ぶ 

さらにリアにはデジタルオーディオの端子が用意されているのも大きなポイントです。具体的にはADATとS/PDIFの2種類の入出力が装備されているので、44.1kHz/48kHzの動作時であれば10IN/10OUT(ADATで8IN/8OUT、S/PDIFで2IN/2OUT)を追加したトータル18IN/20OUTを実現できる巨大なオーディオインターフェイスとなるのです。ご存知の方も多いと思いますがADATのオプティカル端子はサンプリングレートによって送ることができるチャンネル数が変わるため、88.2kHz/96kHz動作時なら14IN/16OUT、176.4kHz/192kHz動作時なら12IN/14OUTという仕様になるのです。

フロントの8つの入力のすべてに+48Vのファンタム電源を供給できるので、コンデンサマイクの接続が可能になっているほかINPUT1およびINPUT2にはHi-Zボタンが搭載されているので、ギターを直接接続できるようになっています。また各チャンネルごとに入力ゲイン調整が搭載されているのですが、実は結構便利なのが、入力レベルの自動調整機能です。


UAC-8の内部をすべてコントロール可能なソフト、UAC-8 MixEfx 

PC側ではUAC-8 MixEfxというコントローラソフトが用意されており、UAC-8をミキサーとして見ることができ、フルコントロールできるようになっているのです。このミキサーの一番上にあるGAINがUAC-8の入力ゲインのツマミと連動するようになっているのですが、AUTOというボタンを押すと、入力レベルを自動的にチェックしながら、最適なゲインになるように設定してくれるのです。つまり、レコーディングエンジニアが「5番のマイク、音をください!~はい、結構です」といって入力調整をしている作業をUAC-8が自動でやってくれるわけです。便利ですよね。

また、この画面を見てもわかる通り、低域を切るLO CUT、位相を反転させるPHASEスイッチが各入力ごとに用意されているほか、EFX SENDというツマミも用意されています。これはUAC-8内に搭載されているエフェクトへ送る音量を調整するもの。このエフェクトはROOMリバーブ、HALLリバーブ、PLATEリバーブ、ECHOから選べるようになっており(それぞれ2タイプあるので計8種類)、PCに負荷をかけることなくリバーブなどが使えるわけですね。

ただし、このリバーブはモニター出力用であって、基本的にレコーディングには影響しません。つまりボーカルが歌う際のモニターにはリバーブが掛かって気持ちよく歌える一方、レコーディング結果は素の音で録れるため、後から綿密にプラグインの高性能エフェクトを使いながらエディットしていくことができるというわけなのです。この辺の設計もとてもよくできていると思います。


ADATおよびS/PDIF入力のデジタル部まで表示させると18入力を持つミキサーになっているのがわかる 

なお、コントロールソフトのUAC-8 MixEfxの標準状態はアナログ入力のみが見える8chのミキサーのようですが、デジタル部も表示させると、かなり大きなコンソールになります。


さらにPCの出力もミックスして音を出せるので、トータル38chのミキサーということになる

さらに44.1kHz/48kHzで20chあるPCからの出力も表示させるとフルHDのモニターでギリギリ表示できるサイズとなり、18ch+20ch=38chのミキサーコンソールとして調整できるようになるのです。


先日のAV Watchに書いた記事で、世界最高パフォーマンスが実証された

そんな性能を持ったUAC-8ですが、冒頭でも述べたとおり、USB 3.0で最高のパフォーマンスを発揮できる一方、USB 2.0でも普通に使えてしまいます。その違いはレイテンシーであり、以前のAV Watchでの調査結果では96kHzの場合、USB 3.0で1.94msecなのに対し、USB 2.0だと2.18msec。まあ、微妙な違いではありますが、USB 3.0のほうが若干性能が上がるわけです。とはいえ、USB 2.0であっても世界最高のパフォーマンスなので、多くのユーザーにとってはUSB 2.0でもUSB 3.0でもどちらでもいいのでは…と思っています。


Windows 10でもバッチリ動作した 

と、一通りの機能を紹介しましたが、ついでに試してみたのはWindows 10での動作状況について。ZOOMサイトではWindows 10対応に関する情報はまだ掲載されていないようですが、私のマシンで試してみたところ、まったく問題なく使うことができました。ただし、USB 3.0で接続した際のレイテンシーにおけるパフォーマンスはWindows 8.1の場合よりも若干落ちてしまうようでした。具体的には96kHzで1.93msec、192kHzで1.41msec。まったく問題なく使えますが、「少しでも記録を!」というのならWindows 8.1で使うのがいいかもしれません。


Windows 10でレイテンシーのテストをすると96kHzのサンプリングレートでは1.93msecという結果だった 

さて、ここから2つ目のテーマです。UAC-8のリアパネルにはCLASS COMPLIANT MODEなるスイッチが用意されています。通常はこれをオフにして使うのですが、オンにすることで、iPhoneやiPadとの接続が可能になるのです。


リアパネルにあるCLASS COMPLIANT MODEスイッチをオンにするとiPadやiPhoneと接続できるようになる

といっても、直接接続できるのではなく、お決まりのLightning-USBカメラアダプタを用意する必要があるのですが、これを用いてUSB接続すると、iPhone、iPadから見て8IN/10OUTのオーディオインターフェイスとして使えるようになるのです。


iPadやiPhoneとの接続にはLightning-USBカメラアダプタを使う 

つまりこのモードにすると、UAC-8はアナログ入出力のみが有効として使えるオーディオインターフェイスへと変身し、マルチポート入出力に対応したアプリをフル活用できるわけです。


MultiTrack DAWを利用すると、UAC-8の入力8chを自由にトラックへ割り当てられる 

では、マルチポート入出力に対応したアプリってどんなものがあるのでしょうか?まあ、そんなに多くのアプリが対応しているわけではありませんが、高性能なDAWが対応しています。古くからあるものではMultiTrack DAW。詳細は以前書いた記事「iOS上の超強力アプリ、MultiTrack DAWって知ってる?」などをご覧いただきたいのですが、この入力を見ると、UAC-8の8ポートが選べるようになっています。モノラルトラックを8つ作成し、それぞれに別のポートを割り当てて、8ch同時レコーディングということも可能ですし、ステレオトラックを4つつくり、2つずつペアで割り当ててレコーディングすることも可能ですよ。


Cubasisなら入力だけでなく出力も自在に割り当てることが可能 

一方、入力も出力もマルチポート対応しているのがCubaseのiOS版であるCubasisです。こちらもトラックごとに入力ポートの設定ができるだけでなく、トラックごとに出力ポートも選べるため、UAC-8の機能をフルに発揮できるというわけですね。


Auriaなら入力信号をモニターチェックしながら、各チャンネルごとに目的のポートを割り当てられる

そのほかにも、AuriaおよびAuria LEといったDAWもマルチポート対応しています。Auriaの場合、入力ポートを8つモニタリングしながら選択できるほか、Auriaのプロジェクトとして設定したチャンネル、バスをどこに出力するか、マトリックス画面で設定することもできるようになっているので、かなり使い勝手もいいですね。


Auriaはマトリックス画面を用いて、各チャンネルの出力ポートを設定できる

本来iOSは24bit/48kHzまでしか扱えませんが、これらのDAWでは24bit/96kHzまで利用できるので、UAC-8の性能を十分発揮できるのも大きなメリットです。UAC-8はアルミシャーシのラックマウントできる機材でありながらも、奥行きが短く、重さも2.02kgだから持って歩くことも十分可能。iPadとともに外に持ち出してレコーディングし、自宅に持ち帰ってPCと接続してDAWで編集していく、といった使い方も便利ではないでしょうか?
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