BITWIG STUDIO & Surface Pro 4が編み出すDTMの進化形

DTMは和製英語ではありますがDesktop Musicの略で机の上で作り出す音楽制作の意味。でも机の上にとらわれることなく、ベッドの上でも、ソファの上でも音楽制作をするBTMともSTMともいえる新しい音楽制作スタイルをBITWIGとマイクロソフトが共同で提案し、テレビCMまで始めているのをご存知ですか?

これはSurface Pro 4上にBITWIG STUDIOを動かして音楽制作をするという提案であり、従来のノートPC+DAWとは意味が異なる、というのです。最新版のBITWIG STUDIO 1.3でタブレッド型PCであるSurface Pro 4へ最適化させるモードを用意したことにより、従来にはなかった新たなUIを実現すると同時に、ハード的にも音楽制作にマッチさせているというのです。でも、それはいったいどいういうことなのでしょうか?紹介してみましょう。


Surface Pro 4上で動くBITWIG STUDIO


マイクロソフトからSurface Pro 4が発売されたことは、ご存じの方も多いですよね。12インチのタブレットPCであり、134,784円(税込)~という価格設定。気軽に買える価格ではないけれど、そのスペックや操作性を見ると、個人的にも年末に買っちゃおうか、どうしようか……と悩んでいるところです。

そのSurface Pro 4のテレビCMとして以下のようなものが放映されていたのをご存じですか?DTM系のものがテレビCMとして流れることなんて滅多にないので、DTM業界(そんなものが存在するのか!?)においては、一大事件ともいえる状況だったわけですが、そこで取り上げられていたのがBITWIG STUDIOだったのです。

https://youtu.be/1xiyxArpmc4

マイクロソフトと蜜月な関係のDAWメーカーといえばCakewalkという印象だったのですが、いろいろな動きがあるんでしょうね……。まあ、おそらくはBITWIG側からマイクロソフトに話を持ち掛けたところ、Surface Pro 4のプロモーション的に有効だから、一緒にやろう……なんてマーケティング的な意味合いも大きかったのでは…と推測していますが、確かにこれまでにない新たな展開であることは間違いないんですよね。


11月12日に都内で行われたSurface Pro 4の発売イベント

11月12日に行われたSufrace Pro 4の発売イベントにおいても、BITWIG STUDIOのブースが作られて、タッチ&トライが可能になっており、おそらくDTMなんて、これまでまったく体験したことがないのでは……という人たちもが、面白そうに触っていたのが印象的でした。こんな風にDTM(BTMかSTM!?)が広がっていってくれるといいな、と思って見ていたわけですが……。


大盛況だったSurface Pro 4の発売記念イベントでは、さまざまな人たちが興味を持ってBITWIG STUDIOを使っていた

では、実際のところBITWIG STUDIO & Surface Pro 4で何ができるのでしょうか? 最大のポイントはSufrace Pro 4のマルチタッチ機能に対応した、ということ。でも、マルチタッチなんて、各社のタブレットPCで実現していることだし、それほど目新しいものでもないのでは……なんて思いませんか?でも、とりあえず、その一例を示すビデオがあるので、ちょっとご覧になってみてください。

このちょっと不思議な操作、分かりましたか?ここではピアノロールの画面で説明していましたが、画面を指でタッチするとラディアルメニューという、ちょっと見慣れないメニューが現れます。これ、マウスで操作して出るわけではなく指でタッチすると登場するメニューなんですよね。このメニューの使い方は覚える必要がありますが、これを使えば指の操作で選択したり、コピーしたりといった操作がとってもしやすくなります。

指でタッチすると現れるラジアルメニュー

しかも左手でラディアルメニューを操作し、右手でエディットする……といった使い方をすることで、マウス操作のPCではできなかったことが、とっても簡単に実現できるタブレットPCに最適化された操作性を実現しているんですよね。


タッチすると現れるラディアルメニューはシチュエーションに応じて異なる項目が表示。指を上下左右に動かすことで操作できる 

マルチタッチならSONARやFL STUDIOだって実現していたよ」という方もいると思います。確かに、これら2つのDAWもWindowsで歴史のあるソフトだけに、ミキシングコンソールを両手で操作できたり、ドラムパッドを叩けるといった機能は持っていたので、その点ではマルチタッチ対応がBITWIG STUDIOだけのものではありませんが、こうした新しい操作体系を生み出し、よりタブレット型PCでの音楽制作をしやすくしたという意味は大きいと思います。


もちろん、ミキシングコンソールの操作もマルチタッチでできる

もちろんBITWIG STUDIOでもミキシングコンソールを両手の指を使って、複数フェーダーを同時に動かすこともできるし、ドラムパッド上でリズムを叩くこともできますよ。

ドラムのパッドを叩いて演奏することもできる

また、PLAYモードというものにすることで、画面下に鍵盤を表示させてこれを演奏できるというのもマルチタッチならではの特性です。画面上側にはシンセサイザのパラメータを表示させておけば、フィルターをいじりながら演奏するといったこともできますよね。


Surface Pro 4なら画面をかなり寝かせることもできるので、ドラムパッドを叩くのにも扱いやすい

もちろん外部のUSB-MIDIキーボードを接続すれば、それで演奏することもできますが、ベッドの上で、ソファの上で、ふと思いついたメロディーを入力する……なんてときならPCだけで気軽に演奏できてしまうという面で、画面上で演奏できてしまうのはやっぱり便利ではないでしょうか?

さらにBITWIGで表示・演奏できる鍵盤は普通の鍵盤だけでなく、計4種類のレイアウト画面が用意されていて、用途に応じて使うことができ、指を左右にスライドさせるとピッチベンドが使えたり、上下にスライドさせるとパラメータを動かすことができるので、これまでにない演奏方法もできそうだし、もちろん、それをそのままレコーディングしていくことも可能になっています。

ところで、こうした操作をご覧になって、「機能的にはもう少し単純かもしれないけど、iPadだって、こうしたタッチ操作での音楽制作ができるよ」と思う方もいると思います。実際、GaragebandCubasisといったDAWも存在していて、結構なことができるようになっています。でも、ここにはBITWIGと一つ大きな違いがあるんです。それはBITWIG STUDIOはPC上で動作するDAW(BITWIGではDAWとは呼ばず、ミュージック・クリエーション・ツールと呼んでいるそうですが……)である、ということです。


使い慣れたプラグインをそのまま利用できるのはiOSアプリとは大きく異なるポイント 

つまり普段使い慣れているプラグインの音源やエフェクトを自由にそのまま使えるというのが大きなポイントなんです。iPadでもInter-App Audioなどでプラグイン風に機能拡張できるようにはなってきましたが、VSTやAUのプラグインと互換性があるわけではないので、そこが大きなネック。BITWIG STUDIOなら、問題なく使えるわけです。

もちろん、最終的なミックス、マスタリングはよりCPUパワーの大きいデスクトップPCで行いたい…という場合には、そちらにもBITWIG STUDIOを入れておけば、そのままプロジェクトを移行できますしね。


WASAPIドライバを設定することで、内蔵のオーディオ機能でも低レイテンシーを実現 

ところで、従来PC単体でDAWを動かす際にネックとなっていたのがオーディオインターフェイスの問題です。ノートPCやタブレットに内蔵されている機能だと音がショボイし、レイテンシーが大きすぎて使えなかったわけですが、Surface Pro 4では、その点が劇的に改善されています。願わくばASIO対応だったのですが、それには対応していないものの、BITWIG STUDIOがWASAPIドライバに対応しているので、内蔵のオーディオ機能でも非常に小さいレイテンシーで使うことができ、演奏性という意味ではASIOとほぼ遜色ありません。

さらにSurface Pro 4には、結構いいスピーカーが搭載されているので、これで気持ちよく鳴らすことができるんですよね。その出音という面ではiPadよりも断然いいように思いました。

ちなみに、Sufrace Pro 4に最適化とはなっていますが、ほかのタブレットPCでも動かすことができましたし、私が使っている10点タッチのデスクトップ用のディスプレイを使っても、同じようにラジアルメニューを表示しての操作は可能でした。ただし、フェーダーを操作するといった場合は、横に寝かせて使えるSurface Pro 4が良さそうではありました。

いずれにせよ、ベッドやソファでストレスなく音楽制作を行うことができ、必要に応じてデスクトップ上での環境へもスムーズに移行可能なBITWIG STUDIOは、DTMの新しあり方を提案してくれルツールだ、といえるのではないでしょうか? なお、BITWIG STUDIOには他のDAWからの乗り換えができるクロスグレード版というものが存在します(前のDAWは使い続けていても大丈夫ですよ!)。このクロスグレード版なら、かなり安く購入できるので、ぜひチェックしてみてくださいね。

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Commentsこの記事についたコメント

6件のコメント
  • DTM普及委員会

    とくに移動の多い人には便利ですね、海外とか盗難のリスクもあるのでこれぐらいコンパクトだと持ち歩きも楽そうです、ビーチや山頂で作曲とかもいいかもしれませんね。

    2015年11月27日 5:13 AM
  • ねむねむ☆

    VSTのタッチ操作はVST側次第となり個々によって違うんでしょうか?
    画像にあるのSynth 1をタッチ操作する場合はOS側のタッチ操作設定のみが生きてくると

    2015年11月27日 10:04 AM
  • 藤本健

    ねむねむ☆さん
    そうですね、おっしゃるとおりです。
    さすがにプラグインそのものの操作は、プラグインの仕様にのっとる形になるため、Synth1をマルチタッチで操作…というわけにはいかないようです。

    2015年11月27日 5:40 PM
  • poco

    ipadの手軽さに魅せられながらも、やっぱりsonarやcubaseの使い勝手の良さにwindowsのタブレットで10~12インチくらいの画面に最適化にDAWが対応してくれたら良いな、と思っていた矢先でしたので大変興味深く記事を拝見させて頂きました。Surface pro4は結構なお値段なので簡単に飛びつく事は出来ませんが、音が良くasio非対応(asio4allはダメですか?)でも内臓オーディオで使用出来るのは良いと思いました。どこか、もう一歩突っ込んで昔のヤマハC1の様なDTM専用PCを作ってくれないものか熱望する今日この頃です。それとタブレットPCではUSBポートが一つしかない機種が多いですがCUBASEの様なドングルを必要とするアプリは、オーディオインターフェイスを挿したら、それで終わってしまうので、その辺の対応も考えて欲しいと思いました。まだ課題は多いと思いますが、ベッドで寝転んでオケ作って、風呂場で歌入れ、という様な夢のホームレコーディングに一歩近付いている事を感じさせてくれる、とても嬉しい記事でした。有難うございます!!

    2015年11月28日 9:09 AM
  • 宮川電卓

    いつも楽しく拝見しております。今回の記事は、MacやiPad、ハードシンセをメインに使っているものとしても、非常に興味深いものでした。
    Microsoftの本気に触発されて、Appleもより良い商品を開発してくれることを期待しています。
    また、Surface Pro 4には結構いいスピーカーが搭載されているとの記述、iPad proではスピーカーを4つ配置したり、大きなディスプレイで二列の鍵盤で演奏可能になるなど、物理的な性能のアップデートがアプリケーションのインターフェースを飛躍的に進化させる要素であるとこの記事を読んで感じました。デバイスの標準スピーカーのスペックが上がれば、ライトリスナーも音楽の楽しさを再認識出来るので、音楽業界全体の底上げに繋がる点も見逃せません。
    長文失礼致しました。これからも記事を楽しみにしております。

    2015年11月28日 11:27 PM
  • はじめまして。いつも楽しく拝見させていただいてます。
    自分は、ラップトップが使いにくい場所でiPadを使ってたことがあるんですが、PCで作成途中の物をiPadに移したりiPadで作ったものをPCに移すのが異常に面倒くさくて使わなくなった経緯があるので、PCで使ってるのと全く同じDAWとプラグインが使えるのはありがたいですね。
    まだ発売されてませんがLUMITにも期待したいところです。

    2015年11月30日 8:58 AM

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