作家事務所が運営する、プロ直伝のレッスンが受けられる「作詞・作曲ラボラトリーズ」が面白い

これまでもDTMステーションで、何度か登場している音楽制作事務所のグローブ・エンターブレインズ。AKB48やNMB48、KinKi Kids、ジャニーズWEST、なにわ男子といったアイドルモノから、涼宮ハルヒの憂鬱、仮面ライダーやスーパー戦隊シリーズ、THE IDOLM@STERなどのアニソンや特ソン、ゲーム音楽ではFF7RやFF7R INTERGRADE、キングダムハーツ3などの人気作品、SixTONESやKing & Princeなどのライブ、舞台に至るまで数多くの採用実績を持つ会社ですが、最近「作詞・作曲ラボラトリーズ」という何やら面白そうなことを始めたそうなのです。

簡単にいうと作詞・作曲のプロがレッスンを行うというもの。テスト生に用意されたのは、月4ハーフ、1曲仕上げコース(1ヵ月以内に1曲完成を目指し60分×5回受講)、受け放題月極メールコース(メールでの受け答えが可能なコース)、受け放題/週(受け放題に予約できる週単位コース)、の4種類。特徴的なのは、現役プロのレッスンが受け放題のコースがあり、自由に予約できるというものになっているのです。2021年10月から運用テストも兼ねたレッスン無料テストが実施され、2022年6月に本格スタート。実際にどんな内容のレッスンを行っていくのか、プロの作曲家である安岡洋一郎さん、海津信志さん、作詞家のSoflan Daichiさんにお話しを伺ってみました。

現役プロが教える音楽レッスン「作詞・作曲ラボラトリーズ」の先生たちにインタビュー


--みなさんに順にお伺いしていきます。まず安岡さんは、どのコースで教えていたのでしょうか?
安岡:月4ハーフ、1曲仕上げコース、受け放題月極メールコース、受け放題/週の4種類で、みなさん個人レッスンでした。まだ大々的な告知をしていなかったためもあると思いますが、グローブ・エンターブレインズに応募されたけれど、採用にまでは至らなかったという方が多かったようです。そこで、応募した際の曲のどこがいけないのか、といった質問に答える形で展開していきました。曲作りに関するHow To情報は、YouTubeなどにも溢れているので、それとの差別化を図った形です。とにかく生徒さんが作った曲に対して自分がアドバイスしていくという方向でレッスンは進めていきました。

作曲家・編曲家・ベーシストの安岡洋一郎さん

--海津さんはどうだったのでしょうか?
海津:僕も基本的に同じ方向性でレッスンを進めました。僕のところに集まった生徒さんは、思ったよりレベルが高かったですね。実は、教えるのはこれが初というわけではないんです。だいぶ以前より専門学校で教えたり、個人レッスンを行っていたので、そこで見てみた人たちと比較してレベルが高い。これまで教えてきた人たちは、趣味で音楽を作っている方が大半だったのに対し、実際に曲を作ってグローブ・エンターブレインズの作家募集に応募してきた方が多かったので、どうしたらオーディション、コンペに通るのかなど、具体的で実践的な内容のレッスンになったと思います。対面のレッスンだと画面共有などができず、生徒さんもPCを持ってこれなかったりするので、そういう意味ではオンラインでのレッスンだとかなり充実していました。

作曲家でギタリストの海津信志さん

--レッスンを受けた方のお話も少し出ましたが、具体的にどんな方がレッスンを受けていたのですか?
海津:中には、ピアノの先生など、音楽で仕事している方もいました。僕がギタリストで、作曲家としてはこれからの部分もあるので、作曲家に転身したい方など、話を聞きたいということがありました。他にもオーディオストックに提供している方で、歌モノが作れないからどうやって作るのか、という方もいました。またギターの音作りを具体的に習いたいという方も多かったですね。
安岡:僕のところはもう少しばらけていて、そこまで作曲の実力があるわけでない方もいましたね。ですが、みなさん個性的で、これとこれを掛け合わせるのか、という楽曲の提案があったりして面白かったです。曲はすごくよくて、ですがアレンジ力はこれからな感じだったので、そこ中心のアドバイスをしました。年齢的には20代が4割、30代が4割、40代が2割ぐらいというイメージですね。

--メールでのレッスンという方はZOOMを使わずにメールだけでやり取りを行うのですか?
安岡:MP3音源とMIDIデータを送っていただいて、こちらで手を加えて送り返したり、文章を添えてレッスンを行いました。あくまで文章ベースでのやり取りだと、ニュアンスが間違って伝わったりすることもあると思うので、その点には気を付けながら、生徒さんとは連絡を取りました。
海津:僕の場合だと、メールが一番合っていましたね。生徒さん側に立った時に、口頭だけで伝えられるよりも、後で文面を見直して、自分の曲を手直しすることができるのでいいと思っています。 また、次のレッスンの時に前のレッスンを覚えていないということも一切ないので、進み方がスムーズでよかったです。

--Soflan Daichiさんの作詞のレッスンについても教えてください。
Soflan:作詞は、作曲に比べて取り組みやすいので素人の方も多く、クオリティ的にはプロで始めるにはまだ温度差を感じました。ですが、レッスンをしていくごとに改善され、最終的にはいいクオリティになりました。普段、プロのアーティストさんにも作詞についてアドバイスしたり、相談に乗ったり・・・というケースがよくあるのですが、それとはちょっと違った感じでしたね。

作詞家のSoflan Daichiさん

--具体的には、どんなレッスンをしたのでしょうか?
Soflan:漠然と歌詞を書く人が多いので、そこを具体的に書いていった方がいいとアドバイスしました。曲の流れ、Aメロ、Bメロ、サビなどのパートの意識をした方がいい、ということを伝えただけでも結構変わっていきましたね。プロ活動しているアーティストさんに教える場合、リリースに間に合うように書き上げなくてはいけなくて、締め切り前日夜中まで電話でアドバイスしたりしているのですが、そういったことはないので、焦らず教えることができました。

--普段からアーティストさんの裏にSoflan Daichiさんがいることがあるのですね。
Soflan:そういう面はありますね。関わる部分が多い時は共作としてリリースされることがあるのですが、直しぐらいであれば表に名前が出てない楽曲も数多くあります。生徒さんもアーティストさんもぶつかる壁は同じで、もう一歩入り込んで、具体的に考えればもっといろいろな表現があるよ、ということを伝えています。

--ところで、レッスンを行っていくということは、作曲家、作詞家にとっては競合を育てる可能性もありますよね。それについては、どう考えているのでしょうか?
安岡:そういう世界なので、仕方がないことだと思います。
海津:自分も先生や先輩に惜しげもなく教えを受けてきたので、同じく包み隠さず、他の人に教えていきたいですね。逆に抜かせるものなら、抜かしてみろよ、ってぐらいで考えています。もし、追い抜かれたとしたら、それは自分の実力が足りなかっただけですからね。
Soflan:普段からアーティストの方たちに対して、僕の全部を教えているのですが、同じようにはならないんですよね。なので、別に全部教えたところで問題はないと思っています。逆にアイデアをもらうことだってあるので、教えることは、自分にとっても大きなメリットがありますね。

--最後にどんな方にレッスンを受けに来てほしいですか?
海津:作曲家事務所に所属したいけど、なかなかできない人、コンペ出したいけど何からすればいいか分からない人などですね。実際にレッスンを行って、プロがどうやって生活しているのか話を聞きたい方が多いので、ぜひ聞きにきてください。なぜ自分の楽曲で事務所に所属できないのかというところは、調べても分からないので、そういったことで悩んでる方などにも来て欲しいですね。
安岡:自分の作品としては、すごくいいものを作る方が多いのですが、誰かに作るとなるとまだまだと感じることがあります。たとえば、某アイドルのバラードを作ってきた方がいらっしゃったのですが、すごい曲はカッコいいけど、そのアイドルっぽくなかったりするんですよ。そこをどうクリアするか知りたい方などに来てもらいたいですね。

Soflan:歌詞も一緒で、自分の作品としてはいいのですが、提供となるとまだまだということが多いので、僕らが普段どうしたらコンペに通るのか伝えていきたいですね。
安岡:自分の作品の良い所と改善するべき所と、この機会にレッスンを受けに来てみてください。

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作詞・作曲ラボラトリーズ