Neumann、Sony、AKGを完全再現する、Universal AudioのモデリングマイクシステムSC-1とHemisphere

Universal Audioから新製品のコンデンサマイクSC-1(79,200円税込)が発表されたのとともに、Hemisphereというマイクモデリングプラグインが利用できるようになりました。このHemisphereはマイクモデリングのソフトウェアで、Neumann、Sony、AKGなどスタジオ定番のマイクのキャラクターを再現することができるというもの。歌声や楽器に合わせて、コンプやEQでは再現しきれない質感を自分の楽曲に取り入れることが可能になります。しかもこのHemisphereは、以前発売されたStandard SeriesのダイナミックマイクSD-1(46,200円税込)、ペンシル型コンデンサーマイクでステレオペアのSP-1(62,700円税込)を持っているユーザーも無料で利用可能。

Universal Audioからは、Sphereシリーズというフラグシップのモデリングマイクシステムが発売されていましたが、Hemisphereはそのモデリング技術をアップデートしつつ、操作をシンプルにし、高い音質を再現するものの、直感的に使用できるという特徴を持っています。SC-1自体も、厳しい品質管理をクリアし、単純にコンデンサマイクとして完成度が高くなっています。というよりも、そもそもマイク自体が高いクオリティでないと、モデリングは難しいのだとか…。そんな、新発売されたSC-1とマイクモデリングプラグインHemisphereについて、その特徴をUniversal Audioのユウイチロウ“ICHI”ナガイさんに聞いてみたの紹介してみましょう。

プロ定番のマイクをモデリングするSC-1とHemisphere

完成度の高いコンデンサマイクSC-1

以前、「Universal Audioがマイク業界に参戦!進化を続けるUAが発売したダイナミックマイクSD-1とペンシル型コンデンサーマイクSP-1」という記事でも紹介したことがありましたが、Universal Audioのマイクには、Standard Seriesという位置づけで、ダイナミックマイクのSD-1とペンシル型コンデンサマイクでステレオペアのSP-1があるほか、モデリングマイクのSphere DLX/LX、UA Bock Seriesの3ラインナップが存在しています。

そのStandard Seriesに今回新しくSC-1が仲間入りし、これでStandard Seriesにダイナミックマイク、ペンシル型コンデンサマイク、そしてコンデンサマイクと、レコーディングなどで定番のマイクが揃いました。ちなみにStandard Seriesは、名前の通り標準として使えるマイクシリーズになっており、レコーディングスタジオで日常的に使用するのはもちろんのこと、DTMer向けとしてもおすすめなシリーズ。

SC-1、SD-1、SP-1とHemisphereを使って、マイクモデリングを行う

SC-1は、単一指向性のコンデンサマイクで、最大SPL145dBと、ジェット機でも歪まない性能をしています。セルフノイズも圧倒的に低く、パーツも厳格な品質管理のもと製造されています。このあと紹介するHemisphereを使ってマイクモデリングをするため、SC-1自体はとてもフラットな音を収録できます。マイクモデリングを省いても、単純に優秀なマイクとなっています。

マイクモデリングプラグインHemisphere

そして、同タイミングで登場したHemisphereですが、これはStandard Seriesのマイクに対して使うことのできる、マイクモデリングプラグイン。SC-1、SD-1、SP-1それぞれに適したモデリングが用意されており、ユーザーは無料で使うことができます。なので、すでにSD-1、SP-1を持っていた方は、無料で使えるマイクが増えたといえますね。

ネイティブ版Hemisphere。まずどのマイクを使っているかを選択しておく

冒頭でも書いたようにHemisphereは、フラグシップのモデリングマイクシステムSphereシリーズのクオリティで、マイクモデリングすることが可能。Sphereほどの機能はないものの、その分シンプルで使い勝手のいいプラグインとなっていますが、サウンドの品質はSphereと同じ。

SC-1のモデリング先のマイクを選択する

使用しているマイクの種類を選べば、そのマイクに適したモデリング先が表示され、使いたいマイクを選択。ローカットフィルタをかけたり、PROXIMITYでマイクとの距離を調整したり、AXISを使ってどの方向から音を発したか、EQやコンプでは再現できないサウンドを調整することができます。

SP-1のモデリング先のマイクを選択する

自分に合ったマイクを見つけることのできるSC-1とHemisphere

よく「歌声に合ったマイクがいい」という話を聞きますが、それを判断できるのは、経験を積み重ねたエンジニアだからこそ。初めてマイクを買うのに、お店に行って、何時間もマイクを試させてもらうというのも、実際は優しく対応してくれますが、心理的ハードルが高いですよね。それに、そもそも近くにたくさんマイクを置いている場所がないというケースもあります。そんな中、SC-1とHemisphereといったシステムを使うことで、自分にはどんなマイクが合っているか、自宅で自由に好きなだけ時間をかけることができるのです。しかも、Standard SeriesとHemisphereの組み合わせは、プロのスタジオでも使えるクオリティなので、録音した歌をそのまま採用してOK。歌以外、たとえばアコギのレコーディングを行う際も、最適なマイクを選択することができるのです。

SD-1のモデリング先のマイクを選択する

なお現時点では、Hemisphereはネイティブ版しかリリースされていませんが、11月7日にはDSPで動くUAD-2版も使えるようになります。

 

Universal Audio ユウイチロウ“ICHI”ナガイさんインタビュー

さて、ここからはUniversal Audioのユウイチロウ“ICHI”ナガイさんにインタビューした内容になりますが、気になったのは他社のモデリングマイクとの違いや、そもそもモデリングマイクを使う意味。SD-1、SP-1でもHemisphereが利用可能になったのですが、初めから計画されていたのかなど。SC-1やHemisphereの特徴を含め、疑問点にお答えいただきました。

マイクだけでも通用すると確信していた

--今回発表されたHemisphereは、新製品のSC-1だけでなく、SD-1、SP-1でも利用できるんですね。
イチ:はい、SD-1、SP-1でもHemisphereは無料で使うことが可能です。 先に発売されたSD-1、SP-1の時点で、モデリングできるようにする計画はあったのですが、その当時Hemisphereの開発が間に合わなかったというのが本音です。ですが、もともとSD-1、SP-1自体、マイクのクオリティとして自信があったので、マイクだけでも通用すると確信していました。結果としては、マイク単体として信用を得ることができたで、その上でモデリングができるという、唯一無二の存在になれたかな、と思います。ちなみに、SC-1は現在発表のみで、11月中には全世界に届く予定です。

Universal Audioのユウイチロウ“ICHI”ナガイさんにお話を伺った

--マイク単体のクオリティに自信があったとのことですが、それはSC-1でも同じですか?
イチ:もちろんです。Standard Seriesは低価格というのもあるのですが、名前からも分かるように基本として使えるマイクです。この3機種は、とてもフラットなフリケンシーレスポンスで、モデリングがよく効きます。ビルドクオリティ、パーツの基準、品質管理もかなり高いです。またSC-1は、最大SPL145dBとジェットエンジンの音を録れるスペックで、セルフノイズは非常に低いです。そして、この上にHemisphereを使えば、マイクのタイプにあったモデリングを行なっていくことが可能です。

マイク単体として高品質なSC-1

プロスタジオ定番のマイクをモデリングするHemisphere

--Hemisphereでは、どんなマイクをモデリングしているのでしょうか?
イチ:ダイナミック、コンデンサ、ペンシルのスタジオに置かれている代表的なマイクのモデルを搭載しています。SD-1、SP-1、SC-1それぞれに適したモデリング先を選ぶことができるのですが、SC-1を使っているけれど、SP-1のモデリング先を選んで、エフェクトとして利用することも可能ですよ。現在はネイティブバージョンだけをリリースしていますが、11月7日にはDSPで動くものを無料リリースするので、レコーディングの際にリアルタイムで使うことも可能になります。

FILTER、PROXIMITY、AXISを使って調整可能

SD-1、SP-1、SC-1、Hemisphereとほかのマイクモデリングとの違い

--一方で、これまでUniversal AudioからSphereが発売されていましたが、これとの違いを教えてください。
イチ:Sphereは、今世界で一番優秀なモデリングシステムなのですが、2ch同時に使うので、音の作り方で少し難しさがあるんですよね。また、価格も高く、ソフトも複雑。できることが多いからこそ、プロでないとなかなか使いこなすのが難しいんです。それでいうと、Hemisphereは操作はシンプルで、誰でもマイクモデリングを体感することができますね。またSD-1、SP-1、SC-1は普通のXLRケーブルで利用できるので、その使い勝手のよさもあります。SD-1、SP-1、SC-1はそれぞれマイクの特徴が違うので、ドラムを録るとき、ボーカルを録るときなど、場面に応じて、マイク選択をできるというよさもありますね。モデリング技術自体は、Sphereと同じクオリティなので、それでいうとコストパフォーマンスの高さを感じてもらえると思います。

左からSP-1、SC-1、SD-1

--他社のモデリングマイクとの違いも気になりますね。
イチ:ほかのメーカーは、だいたいコンボリューション、IRですね。Universal AudioもIRを活用してはいるのですが、それ以外のことがかなりできるので、そこの違いかなと思います。IR対モデリングというところですかね。Universal Audioはダイナミックで、さらにリアルな結果が出せます。IRだと1つのフィルタなので、ダイナミクスも含めて、限界がありますね。

世界で一番優秀なモデリングシステムを継承したStandard Series

アマチュアからプロへ、進化する自分に合った製品を選べる

--もちろんモデリングというところは大きいですが、Universal Audioがコンデンサマイクを発売するという意義について教えてくだい。
イチ:Universal Audioは、レコーディングとスタジオをメインに考えています。単体の製品だけみているわけでなく、音楽制作全体でシステムを開発しているんですね。その中にランクがあって、プロスタジオなのか、プロジェクトスタジオなのか、ホームスタジオなのか、それぞれの環境に適した製品を販売しています。そして、SC-1が登場したことで、ホームスタジオのランクで、マイクSC-1からオーディオインターフェイスVolt、プラグインUADSparkで音声処理して、リリースという流れが完成したのです。また、SC-1を使うことでプロの現場で使用されているフラグシップのマイクの特性を知ることができるので、勉強にもなると思います。機材だけでなく、音楽全般の知識や技術を次のランクへ上がるための足掛かりになるようなものをリリースしているのです。

--ありがとうございました。

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