手ごろな価格でフルオーケストラサウンドを実現できるSound MagicのNeo Orchestra CEの実力

Sound Magicというプラグインメーカーをご存じでしょうか?ピアノやギター、ベース、ドラムなどの音源はもちろん、弦楽器、木管楽器、金管楽器、さらには中国民族楽器までさまざまな音源を出している一方、ボーカル用、マスタリング用をはじめ数々のエフェクトプラグインも開発しているメーカーです。

そのSound Magicが昨年、フルオーケストラサウンドを実現するプラグイン、Neo Orchestra CEなるものを発売しています。サンプリングベースの音源で、これ1本で弦楽器セクション、木管楽器セクション、金管楽器セクション、ピアノを含むフルオーケストラサウンドを実現してくれるというもの。フルオーケストラなだけにライブラリも膨大で、36,200以上のサンプル、55GBの非圧縮サンプルデータにも及ぶというもの。ソロ演奏もアンサンブル演奏も含め、これ1つあればオーケストラサウンドすべてが賄えるというもので、価格は$499。今の円安状況からすると、それなりの値段にも見えますが、現在セール期間で$149=約22,000円で購入可能となっています。この値段でフルオーケストラが実現できるなら激安といえそうですが、実際どんなものなのかチェックしてみたので紹介してみましょう。

人気ナンバーワンのフリーピアノ音源、Piano Oneを出すメーカー、Sound Magic

Sound Magicという会社、実はまったく知らなかったのですが、先日DTMステーションの問い合わせページを介して、「記事で取り上げてもらえないか?」という連絡があってコンタクトしてみたのです。Sound Magicのサイト(https://neovst.com/)にアクセスしてみると、かなりいろいろなソフトを出しているんですよね。

いずれもWindows/MacのVST/AUで動作するプラグインとなっており、ジャンル的にもさまざまなものがあるのですが、ふと気づいたのは、フリーウェアのピアノ音源を出しているということで有名な会社でした。

そうPiano One(https://neovst.com/piano-one/)というYAMAHA C7グランドピアノをサンプリングした音源をフリーで出していて、いろいろなフリーウェア紹介サイトで人気ナンバーワンを誇っているんですよね。今回その詳細は割愛しますが、約1GBのサンプル容量のピアノ音源がタダで入手できるので、試してみる価値はあると思います。

Neo Orchestra CE1つでフルオーケストラをカバー

さて、今回の本題はそのSound Magicが出す今人気ナンバーワンという音源、Neo Orchestra CEについてです。いろいろ説明する前に、まずはそのNeo Orcestra CEで演奏したデモ曲があるのでこれを聴いてみてください。

こんなサウンドが作り出せる音源のようなのです。今回、Sound MagicからこのNeo Orchestra CEの評価版を送っていただいたので、これをテストしてみました。サンプリングデータが55GBもあるだけあって、ダウンロードにも結構時間がかかりましたが、インストーラベースとしては36.6GBほどでした。そのインストーラを見てみるとMac用としてはVST/AU用、Windows用としては32bit版、64bit版それぞれのVST版があるほか、スタンドアロン版も用意されています。

起動してみると、こんな感じのシンプルなプレイバックサンプラーの画面が登場してきます。ここからファイルを読み込む形で各音源を鳴らす準備を整えます。この際、読み込むのが弦楽器なのか金管楽器なのか木管楽器なのかによって、GUIの色が変わりますがが、基本的な使い方は同じ。

ただしピアノだけは別ソフトとなっているようで、インストーラーも別にありました。こちらのプレイバックサンプラーソフト自体は前述のPiano Oneとも共通のようで、同じプラグインで、Piano Oneも読み込めるし、Neo Orchestra CEのBlue Grandという1927 Steinway Dも読み込んで使うことができました。

また4Kディスプレイで表示していたら、最初画面が小さすぎて困り、どこかに設定メニューがあるのでは…と探しても見つからず。がマニュアルを見たらちゃんとありました。左上のNEO ORCHESTRAというロゴの下にSDと書かれている文字をクリックすると4Kに切り替わり、大きな画面になってくれる仕様だったんですね。

36,200以上のサンプル、55GBのライブラリを収録

さて気になる収録音源ですが、以下のような内容になっています。

弦楽器
バイオリン 15以上の奏法
バイオリン 16人奏者アンサンブル 10以上の奏法
ビオラ 15以上の奏法
ビオラ 12人奏者アンサンブル 10以上の奏法
チェロ 15以上の奏法
チェロ 8人奏者アンサンブル 10以上の奏法
コントラバス 4人奏者アンサンブル 6以上の奏法
木管楽器
アルトフルート 4つの奏法
バス・フルート 4つの奏法
ピッコロフルート 4つの奏法
クラリネット 4つの奏法
クラリネット・アンサンブル 2人奏者 4つの奏法
コントラバスクラリネット 4つの奏法
コントラファゴット 4つの奏法
イングリッシュホルン 4つの奏法
オーボエ 4つの奏法
オーボエアンサンブル2人奏者4奏法
ファゴット 4つの奏法
ファゴットアンサンブル 2人奏者4奏法
金管楽器
ホルン 3つの奏法
ホルン・アンサンブル 4人奏者 3つの奏法
トロンボーン 3つの奏法
トロンボーン・アンサンブル 3人奏者 3奏法
トランペット 3つの奏法
トランペット・セット 3人奏者 3つの奏法
チューバ 3つの奏法
バス・トロンボーン 3つの奏法
ピアノ
1927 Steinway D
パーカッション
基本セット
ティンパニ
トライアングル
シェーカー
キック・ドラム
スネアドラム
フロア・トム
ラック・トム
シンバル

メニューから読み込むのではなく、ファイルを指定して読み込むのがやや面倒な感じはしましたが、内容的にはとっても充実しています。

空間上に楽器を配置して音作りができるバーチャル3Dスペーサー

少し試してみたところ、サンプルデータは大きいけれど動作は軽くサクサクと動いてくれます。また利用するマシン環境によってHDDからストリーミングさせて鳴らすか、RAMに読み込んでもっと軽く鳴らすかの設定もできるようになっています。大き目のRAMを積んでいれば、やはりRAMで動かすほうが快適です。

パラメータを見てみるとビブラートの設定や倍音系の設定、リバーブの設定、ベロシティーカーブの設定などがある一方、強力なのが画面下にある3つの領域です。

まず一番左にあるのがバーチャル3Dスペーサーなるパンナー。そう、オーケストラを構成する上で、その楽器をどこに配置するかを指定することができるようになっているんです。単に左右に音を動かすだけでなく、奥行きも表現できるようになっているのがポイント。まさにステージ上に置くだけで立体的に配置できるようになっているんです。iのアイコンを押すと、一般的に弦楽器や管楽器、木管楽器をどこに配置すべきがカラー表示されるので、これにしたがって配置すれば簡単です。

そして真ん中はエンベロープシステム。シンセサイザにおけるエンベロープジェネレーターとはちょっとニュアンスが違うようで、無理やりアタックを遅くしたり、サステインで長く引っ張るというわけにはいかないのですが、ある程度の味付けは可能になっているようです。

右側がEQ。スイッチをオンにすると、最大で5つのポイントまで打てるEQとなっており、かなりドラスティックな音作りまで可能になっています。

一方のピアノ音源のほうはペダルノイズやハンマリングノイズの設定やダンパーの設定などができるほかリバーブの設定も自由度高くできたり、倍音成分やトーン、遠近感の設定ができたり、チューニングもかなり自由に調整できるようになっています。前述のとおりフリー音源のPiano Oneも共存できるので、せっかくなら一緒にインストールしておくとよさそうですね。

以上、Sound Magicのフルオーケストラ音源、Neo Orchestra CEについて紹介してみました。これだけの音源が$149で入手できるならかなりのコストパフォーマンスだと思いますがいかがでしょうか?日本に代理店もないので、使っているユーザーも少ないから人と違う音の作品を作りたいという人にとっても良さそうです。このセール期間中に入手してみてはいかがでしょうか?

 

Sound Magicメールインタビュー

Sound Magicの担当者、シェーンさんにメールでのインタビューをしてみました。
--Sound Magicを知らない日本のユーザーも多いと思いますが、会社について少し紹介していただけますか?
シェーン:Sound Magicは2007年に設立されたバーチャル・インストゥルメントとDSPソフトウェアのメーカーで、今ではプラグイン業界において格好たる地位を築いています。もともとSound Magicは中国の北京で誕生した会社なのですが、現在20人以上の従業員を抱え、世界中にオフィスを展開しています。アメリカのカリフォルニア州アナハイムとイギリスのロンドンにもオフィスを構えていて、世界中から優秀なエンジニア、開発者を集めるとともに各地のミュージシャン、クリエーターと一緒に新しい製品づくりを行っています。

--数あるプラグインメーカーの中で、Sound Magicの強みは何でしょうか?
シェーン:他のプラグインメーカーと比較した場合、テクノロジーこそがSound Magicの最大の強みであると考えています。Sound Magicは、ハイブリッド・モデリングやミュージック・ドメイン・シンセシスなど、多くの独自技術を開発してきました。ハイブリッド・モデリングについては、最新のSupreme Drums Taikoをぜひご覧ください。200MBのサイズしかありませんが、20GBのドラムライブラリと同じディテールレベルを持つ、非常にユニークなソフトウェアとなっています。これまでSound MagicはNAMM ShowにおけるTECアワード(Technical Excellence & Creativity Awards)に4部門で9回ノミネートされています。この間、Sound Magicは多くの分野で優位性を確立してきました。実際、当社ではバーチャル・インストゥルメントだけでなく、エフェクトまでカバーする80以上の製品を持っています。これだけの分野をカバーし、これだけの数の製品を出しているメーカーはこの業界においても数えるほどしかありません。また、Sound Magicは業界最大のピアノサンプルライブラリコレクションを持っており、16のピアノ製品、40以上のピアノライブラリを持っています。現在、Sound Magicはソロとアンサンブルの両方で、市場で最も多くの中国伝統楽器のコレクションを持っています。

--Sound Magicの直近での売れ筋ベスト5を教えてください。
シェーン:当社の売れ筋ベスト5は以下のとおりです。
1位 Neo Piano
2位 Neo Orchestra CE
3位 China Impression
4位 Neo EQ
5位 Classical Guitar

--最後に日本のDTMステーション読者にメッセージをお願いします。
シェーン:近い将来、和楽器のシリーズをリリースする予定です。Supreme Drums Taikoはまだ手始めであり、まもなく箏や他の和楽器も製品化する予定で進めています。私たちは、より高度な音楽技術を日本のDTMユーザーのみなさんにお届けしていきたいと考えています。カスタマーサービスも日本語でお客様とコミュニケーションが取れるようになりましたので、ぜひお気軽にお問合せいただければと思います。
--ありがとうございました。

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