SONAR X2とWindows 8の関係をCakewalkの開発者に聞いてみた

11月4日、東京・秋葉原で毎年恒例のSONAR新製品お披露目イベント、SONAR PREMIUM DAY 2012が開催されました。歩行者天国の日曜日で、快晴ということもあり、ものすごい大盛況。トータルで1,000人以上が入場していたとのことですが、屋外でのライブを見ていた人も数えれば、それを遥かに超える人数になっていたのではないでしょうか…。

そのSONAR PREMIUM DAY 2012での目玉は、やはりCakewalk本社からこの日のために来日したメンバーによる新製品SONAR X2に関するプレゼンテーション。以前の記事でも紹介したプラグイン化されたR-MIXはもちろん、コンソール機能の大幅強化など、さまざまな機能が紹介されました。驚いたのは、国内で11月23日に発売された後すぐにアップデータが登場し、Windows 8へ対応することで、タッチスクリーンに対応したDAWへと変身するということ。このプレゼンテーションを聞いて、ますます気になることがいっぱいでてきたので、翌日改めてCakewalkメンバーに詳しい話を聞いてみました。
11月4日に行われたSONAR PREMIUM DAY 2012の会場



話を伺ったのは、Cakewalkの営業・マーケティング担当の副社長、Robin Kelly氏とプロダクトマーケティング・ディレクターのBrandon Ryan氏のお二人(以下敬称略)。

--昨日のセミナー、なかなか面白かったです。とくにWindows 8対応という話は興味深かったですね。
Robin:ありがとうございます。。ここ数年、SONAR PREMIUM DAYで来日していますが、毎年、来場者が増えているようで嬉しいですね。これまでのSONARユーザーがいっぱい駆けつけてくれている一方、今年は新規ユーザーと思われる人が多かった気がしますね。彼らにも今回のSONAR X2、満足いただけるのではないかと思っています。
営業・マーケティング担当副社長のRobin Kelly氏(右)と
プロダクトマーケティング・ディレクターのBrandon Ryan氏(左)

--SONAR X2、いろいろな新機能が追加されていますが、今回のバージョンアップでの大きなポイントを3つ挙げるとしたら、何になりますか?

Brandon:いっぱいあるので、3つだけに絞るというのは難しいですが…。そうですね、第1はユーザーインターフェイスを刷新し、ワークフローを向上させたことです。パッと見た目では分かりにくいかもしれませんが、触ってみるとさまざまな点で非常にスマートな操作ができるようになったことが実感できるはずです。2つ目はコンソールエミュレーション機能でしょう。ミキサーコンソールそのものに3種類のクラシックなレコーディング・コンソールのサウンド特性をエミュレーションする機能を組み込んでしまいました。具体的にはSSL、NEVEそして、TRIDENTのそれぞれ。プラグインではなく、コンソールそのものにこうした機能を組み込んだDAWはほかにはありません。そして3つ目はR-MIX。これによって従来になかったさまざまな音作りができるようになりました。

プラグインの形で組み込まれたSONAR X2のR-MIX機能

--SONARに限らず、ほかのDAWを見ても、機能的にはある意味、行き着くところまで来たようにも感じています。確かにSONAR X2を見ると、なるほどこれはスゴイと思う機能が追加されましたが、ソフトシンセやエフェクトの追加という以外に、まだDAWの発展の余地というのはあるのでしょうか?
Robin:確かに現在のマシンを考えると、できる限りの機能がすべて搭載されているとは思います。でもコンピュータは今も進化を続けており、毎年CPU速度も高速化しています。今回Pro Channelにミキサーコンソールのエミュレーション機能を統合してしまったわけですが、3、4年前にそんなことをしたら、CPU負荷的にまともに動かなかったでしょう。でも、今はそんなことがストレスなくできるようになり、ユーザーに大きなメリットを与えることが可能になりました。このように、将来のCPUの進化、OSの進化に合わせて実現していくべき機能というものはいろいろと出てくるはず。それを予測して、実装していくのが私たちの仕事なんです。
コンソールエミュレーション機能を統合したSONAR X2のミキサーコンソール画面
--CubaseやProTools、最近ではStudioOneなどさまざまな競合DAWがあるわけですが、その中でSONARのアドバンテージはどこにありますか?
Brandon:機能面でもいろいろありますが、SONARのアドバンテージのベースとなるのは、IntelやMicrosoftとの関係が深いことにあると思います。20年以上、彼らとともに開発してきたからこそ、どのDAWよりも早く64bit版を出し、その後他社が追いつくのに何年もかかりました。同様にIntelのプロセッサへの最適化は、新しいプロセッサが出るたびに行っており、だからこそ処理が高速にできているのです。他のDAWより軽いと言われる理由は、ここにあるんですよ。

Robin:そしてプロセッサへの最適化だけでなく、今回はどこよりも早くWindows 8への対応を行いました。

IntelやMSとのリレーションシップがSONARの高性能の背景にある

--その「Windows 8対応」という言葉の意味が一般に分かりづらいように思います。実際、前バージョンであるSONAR X1だって、何も問題なくWindows 8で動作するわけですし、他社のDAWもそれをもってWindows 8対応と言っているように思います。
Robin:確かに、その辺はもっと差別化し、訴えていかなくてはならないと思っていますが、SONAR X2のWindows 8対応というのは、単にWindows 8で動作するというだけではありません。12月中旬に無料のアップデータで対応させる予定ですが、これによって、Windows 8の最大の特徴ともいえるマルチタッチディスプレイに対応するのです。

Brandon:だからディスプレイ上でフェーダーを操作することもできるし、波形をピンチイン・ピンチアウトで拡大縮小といったこともできますね。とくにフェーダー操作などは、マウス操作では1つしか動かせなかったものが、同時に複数動かせるようになるのは大きいですよ。

12月のアップデートでWindowsのタッチディスプレイ機能に対応するSONAR X2

--なるほど、ディスプレイを指で触ってフェーダーが動かせると、コントロールサーフェイスとしての役割も果たせるので、DAWとしては非常に大きな進化ですね。それ以外にWindows 8対応させるメリットというのはあるのですか?

Robin:Windows 8はOSとしてWindows 7よりもCPU負荷が軽くなります。環境にもよりますが10~15%程度軽くなるんです。これによってオーディオエンジンのほうも負荷が軽くなってレイテンシーが小さくなるというDAWとしての大きなメリットもありますよ。

SONAR PREMIUM DAY 2012の会場でもWindows 8対応についてアピールしていた2人 

--Windows 8は新しいUIであるモダンUIと、従来からと同じUIのデスクトップがあります。SONAR X2のアップデートで対応するのは後者ですよね?
Brandon:そのとおりです。モダンUIへの対応となると、まったく別のソフトとなってしまいます。もちろん、モダンUIに対応した新しいアプリというものも検討してはいますが、モダンUIはMIDIをサポートしていないなど、まだ問題もいろいろあるので、すぐに対応ということはないですね。

--DAWのフェーダー画面を指で触って動かせるというのは、SONAR X2の大きなアドバンテージだと思いますが、やはり他社も追随してきますよね。
Robin:それはどうでしょうか?CakewalkはIntelやMicrosoftとの密接な連携があるからこそ、他社に先駆け、2005年に64bit版「SONAR x64 Technology Preview」という評価版をリリースできたのです。その後SONAR 5以来、32bit版、64bit版の双方をリリースしてきました。他のDAWが64bit化してきたのはつい最近のことです。他社がここにたどり着くには、それなりに時間がかかると思いますよ。
Brandon:SONARがWindowsのみをサポートしているということも、ひとつのアドバンテージになるかもしれません。Mac OSは現在のところ、マルチタッチ対応ということをしていません。そのため、ハイブリッドで提供しているDAWの場合、Mac OSが足かせとなって、対応しにくいという面もありそうですよ。

--なるほど、Macへの非対応が有利に働くというのも面白いですね。最後にそのMac対応についてお伺いします。今後SONARのMac対応の可能性というのはないのでしょうか?先日MOTUがついにWindows対応のDigital Performerをリリースしたのですから、SONARのMac版がそろそろ登場してもおかしくはないですよね?

Robin:CakewalkはMac OSに対して否定的ではありません。またSONARのMac対応ということも無理ではないと考えています。ただ、SONARは非常に大きいシステムですから、これをMac対応させるとなると、非常に大きなプロジェクトになってしまいます。それをいますぐにスタートさせるかというと、なかなか難しいというのが実情です。もちろん、それを望むニーズが大きいのであれば、考えるわけですが…。一方で、SONAR以外のソフトに関してはすでにクロスプラットフォームを実現しています。昨年Z3TA+2をリリースしましたが、今年8月にMac版を追加し、クロスプラットフォームになりました。こうした製品に関しては必要に応じてWindowsだけでなくMac OSにも対応させていきます。


11月23日に発売予定のSONAR X2のパッページ写真

--ありがとうございました。
【関連リンク】
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SONAR X2 ESSENTIAL製品情報
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