先日もお伝えした通り、ヤマハからVOCALOID4が発表され、12月下旬より発売が開始されます。年内にリリースされるのは、VOCALOID4 EditorVOCALOID4 Editor for Cubaseおよび歌声ライブラリのVY1V4の3製品であり、いずれもヤマハ製品なわけですが、気になるのは初音ミク結月ゆかりMegpoidなど歌声ライブラリを出している各社の動向です。

先日のVOCALOID4発表会でもある程度の情報が出てきましたが、2014楽器フェアの会場でももう少し情報をつかむことができました。さらにVOCALOID3とVOCALOID4のデータの互換性といったことについてもわかってきたので、その後判明した情報をまとめてみたいと思います。


2014楽器フェアにおいても、VOCALOID4関連製品が展示されており、様々な情報を得ることができた
 
まずは、先日の記事「VOCALOID4発表!目玉はグロウルと歌声間をモーフィングするクロスシンセシス」の復習から。今回のバージョンアップの主な機能を挙げると
1. グロウル
 唸り声になるコントロール・パラメータの追加
2. クロスシンセシス
 2種類の歌声間の音色をモーフィングできる機能
3. ピッチレンダリング
  実際に鳴らした時のピッチ、ビブラートを波形で表示する機能
の3つです。中でも歌声そのものに大きな影響を与えるのがグロウルとクロスシンセシスですね。


11月20日に行われたVOCALOID4新製品発表会の様子 

またポイントとなるのは、VOCALOID4ではVOCALOID3の歌声ライブラリがそのまま利用できるということ。V2 Library Import Toolのようなコンバータは不要で、そのまま使うことが可能なのです。また複数の歌声データベースを収録している、初音ミクV3やMegpoid V3などは、クロスシンセシスが利用できるようになっています。ただし、グロウルについては、VOCALOID4の歌声ライブラリでないと利用することができません。VOCALOID4 Editor上でグロウル(GWL)パラメータを動かしてもまったく変化しないのです。

VOCLALOID2製品のV4化と「結月ゆかり穏」
さて、では気になる各社の動向について紹介していきましょう。まずはAHSからです。AHSはこれまでVOCALOID2用に4製品、VOCALOID3用に2製品出してきましたが、このうちVOCALOID2の歌声ライブラリである
ボカロ小学生 歌愛ユキ
ボカロ先生 氷山キヨテル
SF-A2 開発コード miki
猫村いろは
の4製品をすべてVOCALOID4のライブラリにしていくことが発表されました。


 AHSのVOCALOID2製品はすべてVOCALOID4版へとバージョンアップする

AHSの尾形友秀社長によると「従来、VOCALOID3ではV2 Library Import Toolを使うことでVOCALOID2製品を利用することができたので問題がなかったのですが、VOCALOID Editor for CubaseがMac対応したことで状況が変わりました。Macではこれらを利用することができないからです。また今後登場するWindows 10などではVOCALOID2の動作が保障されないため、VOCALOID2製品はすべてVOCALOID4製品としてリニューアルさせることにしました」とのこと。


VOCALOID4関連について発表するAHSの尾形社長 

アペンド的な歌声のバリエーションがあるわけではないので、クロスシンセシス機能は使えないものの、グロウル機能は使えるとのことです。そうこれまでは出すことのできなかった、唸り声まで出せるようになるというわけですね。

ここで不思議というか疑問に感じてしまうのが、「『ボカロ小学生 歌愛ユキ』のグロウルとはどういうこと??」ということ。小学生の女の子がグロウルを歌うのは、まあ、いいとして、ユキの声をサンプリングしたのは2009年以前なので、歌った女の子はすでに中学生か高校生になっているはず。さすがに大きく成長した子の歌声を今サンプリングしても問題があるでしょう。

この点についてボーカロイドの父、ヤマハの剣持秀紀さんに確認したところ「基本的には、同じ人にグロウルで歌ってもらった歌声をサンプリングしてグロウル成分として利用するのですが、必ずしも同じ人でなくても合成することは可能です。そのため、ユキちゃんの場合は、特別な例として、別の人の声を使っているんです」とのことです。そのほかの3製品については、本人の声でグロウルをサンプリングして使っているようです。


 ウィスパーボイスの結月ゆかり穏が発表された

一方、VOCALOID3製品では、VOCALOMAKETSが企画・制作している、結月ゆかりのVOCALOID4版を開発中とのこと。これはVOCALOID3での歌声と同じノーマルと、囁くような歌声のウィスパーの2つの歌声が入り、クロスシンセシスが使えるようになります。また、どちらもグロウルは使えるようになっています。ウィスパーのほうは『結月ゆかり 穏』と名付けられているのですが、VOCALOMAKETSからは以下のようなサウンドが公開されています。

なお、VOCALOID2から進化する4製品については、発売時期は現在未定。結月ゆかりのほうは、2015年の第1四半期を目指しているとのことでした。

Triphoneを増やすインターネット社
次にインターネット社についての情報です。発表会の会場では同社の村上昇社長がビデオで簡単なメッセージを伝えたのみでしたが、楽器フェアでVOCALOID4についての計画について話を伺えたので、簡単に紹介しておきましょう。

現在VOCALOID4製品の企画、開発を行っているところですが、まずはMegpoidおよび、がくっぽいどのVOCALOID4化から行っていきます。これらは、歌声にバリエーションがあるので、VOCALOID4のクロスシンセシス機能が使えるほか、グロウルを収録していくので、これまでにない歌声を出すことが可能になります」(村上社長)


楽器フェアの会場で村上社長にお話しを伺った 

しかし、単にグロウルを使いするだけでなく、歌声ライブラリーとしても大きく性能アップを図るとのこと。具体的には、VOCALOID3版と比較して数多くのTriphone(トライフォン)を新たに追加するそうです。TriphoneとはVOCALOID3で取り入れられた技術であり、3つの音素を1つにまとめたデータのこと。「母音+子音+母音」という構成になっています。VOCALOIDは基本的にDiphone(ダイフォン)といって2つの音素の組み合わせが基本となっている中、Triphoneを採用することで、より歌声が滑らかになるというのがTriphoneのウリなのです。ただし、どんなTriphoneのデータを入れるかは各メーカーごとの裁量であり、歌声データベースによって異なります。この辺の技術的な話は「ボーカロイド技術論」で詳しく紹介しているので、そちらをご覧いただきたいのですが、

Triphoneはむやみに増やせば滑らかに歌うというわけではないのですが、これまで開発してきた経験から色々とわかってきたので、増やしていこうと思っています」と村上社長。発売時期については未定とのことですが、どのくらい変わるのか、楽しみにしたいところですね。

クリプトン・フューチャー・メディアのE.V.E.C.
さて、VOCALOID4において、やはり一番の注目はクリプトン・フューチャー・メディアの動向だと思います。「初音ミク V4は出るのか?」と期待している方も多いと思いますが、まず最初に登場するのは巡音ルカからで、「巡音ルカV4X」という名称で2015年2月下旬、WEB価格17,280円での発売が予定されています。


巡音ルカV4Xが2015年2月に発売されることが発表された

開発者の佐々木渉さんによると「ちょうど巡音ルカの新バージョンを開発していた中、今年の秋にヤマハさんからVOCALOID4を出すという情報をいただいたので、VOCALOID4版の開発へと切り替えて進めています」とのこと。


クリプトン・フューチャー・メディアの佐々木渉さん
 
巡音ルカV4Xに搭載されるデータベースは日本語としてはHARDとSOFT、英語はSTRAIGHTとSOFTの計4種類。クロスシンセシスについては各言語で2種類のデータベース間をモーフィングできるようで、もちろんグロウルも使えるようになります。

しかし、そこに留まらないのがクリプトン・フューチャー・メディアのすごいところ。巡音ルカV4XにはE.V.E.C.(イーベック)機能という新しい技術が搭載され、より歌声に表情を付けられるようになっているのです。E.V.E.C.とはEnhanced Voice Expression Controlの略で、以下の3つの機能から成り立っています。
1.Voice Color機能
2.Voice Release機能
3.子音拡張機能


Voice Colorでは各音符に色を付けるように音の表情に設定ができるようになる。よく見ると「M2」、「Sil1」といった表記が… 

順に説明していくと、まずVoice Colorは音符一つ一つに対して、声の表情を切り替えることができるというもの。そのデモを楽器フェアで見せてもらったところ、現在開発中の段階ではWhisper、Soft、Powerの3つが使え、今後Cute、Closedも使えるようになるかもしれない…とのことでした。


設定画面を開くと、各音符ごとにWhisper、Soft、Powerなどが設定できる 

何だろう、これ?」と思ったのですが、これ、かなりスゴイです。先ほどの歌声データベースのSOFTとHARDというのとはまったく別のもので、SOFT、HARDの歌声の中に、それぞれこの3つが入っていて、切り替えられるようなっているわけです。つまり、SOFTの歌声だけでPowerを設定することでパワフルな音符になるわけなのです。当然、歌声ライブラリのデータ量は膨大になるようですが、表現力は格段に増しますよね。

また画面右側にあるのがVoice Release機能であり、どのように声を終わらせるのかも設定できるわけです。要するに同じ音素記号で表すものが複数入っていて切り替えることができるというわけなんですね。このE.V.E.C.でのサウンドについて巡音ルカV4X開発版でのデモが公開されているので、以下を聴いてみてください。

一方、その下のパラメータにある「子音反復」がE.V.E.C.の3つ目の機能。従来「ss」などとにわざと子音をダブらせて入力するワザを使っている人がいましたが、それを積極的に行うためのスイッチです。現在の開発版ではチェックを入れるだけとなっていますが、今後は、どのくらい繰り返すのかを設定できるようにする可能性もある、という話でした。


E.V.E.C.はPiapro Studioの新バージョンで利用可能となる

ところで、この画面を見てもお気づきの通り、これは巡音ルカV4Xにバンドルされる予定のPiapro Studioの新バージョン。初音ミクV3などVOCALOID3製品ユーザーも無償でこの新バージョンにアップデートすることは可能ですが、E.V.E.C.は巡音ルカV4Xなどの新製品でないと使えないようですね。


Piapro Studioの歌詞入力画面で表示される発音記号には、Voice Colorを示す数値は現れない

ちなみに、このVoice Color機能は、VOCALOID4 Editorからも使えるようになっているとのこと。具体的にはVOCALOIDの発音機能を拡張しており、Whisperなら1、Softなら2のように指定できるようになっているそうです。ただし、Piapro Studioで見た場合は、このノートの設定画面で行い、発音記号データとしては表示されないようになっています。

VOCALOID3とVOCALOID4のデータ互換性
最後にVOCALOID3 EditorとVOCALOID4 Editorのデータの互換性について紹介しておきましょう。ご存じのとおり、VOCALOID3 Editorのデータ形式はVSQXファイルとなっていましたが、実はVOLCAOID4も同じVSQXファイルとなっています。しかし、当然その内容には違いがあるのですが、ユーザーとしてはあまり意識せずに使えるようになっています。


12月発売のヤマハのVOCALOID4製品のパッケージ。このリリースと同時にVOCALOID3 Editorもアップデートされる 

まずこれまでのVOCALOID3 Editorで保存したVSQXはVOCALOID4 Editorで読み込むことができます。一方で、VOCALOID4 Editorで保存したデータは現在のVOCALOID3 Editorでは読み込むことができないのですが、VOCALOID4 Editorの発売日にアップデータが完成し、これを適用することで、読み込みが可能になる予定です。もちろん、VOCALOID4 EditorのVSQXファイルを読み込むとグロウルやクロスフェードなどのパラメータは消えてしまうため、その旨の警告表示がされるとのことですが、ユーザーとしては利便性が高く、扱いやすそうですね。

以上、VOCALOID4に関する情報をまとめてみました。また新しい情報が入ったら紹介していきたいと思います。