以前USBマイクを買ったけど、結局使わないまま眠らせている……というユーザーは少なくないと思います。USBマイクは手軽で便利ではあるけど、いまいち融通が利かず、結局ミキサーにコンデンサマイクやダイナミックマイクを接続して使っているという方が結構多いのではないでしょうか?そうしたなか、「なんと、そんな手があったのか!」と驚くほど画期的で便利な機材が日本のメーカー、ZOOMから発売されました。
PodTrak P2(税込み実売価格:14,900円)というこの機材は、ここに2台のUSBマイクを接続して録音できたり、WindowsやMac、iPhone/iPad、Androidなどと接続してオーディオインターフェイスとしても利用できるというもの。しかもボタンひとつでAIノイズキャンセリングを実現したり、コンプをかけたり、配信に最適な音質に調整できるなど、ミキサー系の機材操作が苦手という方でも簡単に活用できる優れもの。まさに死蔵しているUSBマイクを蘇らせることができるアイテムなのです。手のひらサイズのコンパクトな機材ながら、スタンドアロンのレコーダーとしても、USBオーディオインターフェイスとしても利用可能な機材なのです。実際試してみたので、どんなことができるのか紹介していきましょう。

一般のUSBマイクを入力デバイスとして利用可能なZOOM PodTrak P2
便利そうでいて、融通が利かないUSBマイク
大手マイクメーカーから無名の中国メーカーまで、数多くのメーカーからUSBマイクなるものが発売されています。その多くはエレクトレットコンデンサマイクを使った製品で、ボーカルレコーディングや楽器のレコーディングには、イマイチというものが多いものの、トーク用、配信用としては、扱いが簡単だし、そこそこいい音なので便利に使うことができます。
もちろん中にはダイナミックマイク系のもの、ラージダイアフラムのコンデンサマイク系のものなどもありますが、いずれもUSB端子に接続すれば即使えるため、扱いがとっても簡単です。
また多くのUSBマイクは卓上用のマイクスタンドや、ポップガードがセットとなっているので、これ一台あればOKというのも便利なところです。一般的なコンデンサマイクやダイナミックマイクをパソコンやスマホで使うとなったら、マイク本体のほかにオーディオインターフェイス、マイクスタンド、ポップガードなどを揃える必要があるので、トータルすると結構なコストとなってしまうので、USBマイクはいいですよね。
ただし、ちょっと応用的なことをしようとすると、すぐ限界がきてしまうのも事実。たとえば2台のUSBマイクを同時に使おうと思っても認識してくれないし、エフェクトをかけようと思っても扱いが難しくなってしまいます。そのため、買ったはいいけれど、ほとんど使わないまま仕舞ってある…という人も多いでしょう。
USBマイクを活用する配信ユーザー向けの機材
そうした中、ZOOMがUSBマイクを活用するための、非常に便利でコンパクトな機材、PodTrak P2なる製品を発売したのです。

PodTrak P2は手のひらサイズのコンパクトな機材
これまでZOOMはPodTrakシリーズとしてPodTrak P8、PodTrak P4という製品を出しており、以前にも「ミックス、録音、エフェクト、ポン出し、編集……機能テンコ盛りな配信用ミキサー、ZOOM PodTrak P8の実力」という記事で紹介したこともありました。PodTrak P2の位置づけとしてはこれら既存の2製品の下位バージョンとはなっているものの、まったく別の新しい製品と捉えたほうがいいかもしれません。
もともとPodTrakというネーミングは海外のPodcastユーザー向け製品を意識したものであり、そのこと自体はPodTrak P2も同様。ただし、Podcastって日本ではイマイチ流行ってないので、この名前にピンと来ないというのが実際のところでしょう。でも、ネット配信をしている人向けの機材といえば、なんとなくイメージが沸いてくるのではないでしょうか?
配信用のミキサーとしてはYAMAHAのAGシリーズが人気なのは事実。でも、それとはだいぶ異なる方向の製品であり、AGにはない便利な機能をいろいろ取り入れたアイディア商品となっているのが、このPodTrak P2なのです。
入力はUSBマイクx2という割り切った仕様
PodTrak P2は名前からも想像できるとおり、2chの入力を持ったコンパクトなミキサーなのですが、一般的なミキサーと根本的に異なるのが、そこに接続できる機材です。普通はXLRやTRS、また3.5mmのステレオミニなどの端子があって、そこにマイクやライン、ギターと接続する形になっています。

左サイドにあるUSBマイク入力用の端子
それに対して、PodTrak P2にアナログの入力は皆無。そこにあるのは本体の左と右それぞれにUSB Type-Aの端子が装備されている、というただそれだけなんです。そんな機材これまで存在しませんよね?

右サイドにあるUSBマイク入力用の端子
そしてこのUSB端子に接続できるのが各社のUSBマイクなんです。もちろん1つだけでもOKですし、左右それぞれに接続してもOK。配信番組において2人で行うというケースも多いと思いますが、そんな場合、2つのUSBマイクが便利に使えるのです。

2つのUSBマイクを同時に利用することが可能
ちなみにマイクの入力レベルは2つあるノブで調整できるようになっており、その上にあるレベルメーターを見れば入力状況がどうなっているかが一目瞭然。録音するファイルを「Stereo Mix」にすれば、左に接続したマイクも右に接続したマイクもミックスしてセンターから出すことが可能。「Multi Track」にすれば、左に接続したマイクは左chに、右に接続したマイクは右chに。録音した場合は、それぞれ個別のモノラルファイルとして記録できます。DAWに取り込んで、話者の声に応じてイコライジングするなどの後編集が可能になるわけです。

設定アプリで、Multi Trackにすると左右別々に、Stereo Mixにするとどちらもセンター定位となる
こうした設定はZOOMサイトからダウンロードできるPodTrak P2 Editorというソフトを使えば簡単に指定できるようになっています。
ヘッドホン出力を2つ装備。バッテリーでも動作可能
PodTrak P2の便利な特徴の一つが、本体に2つのヘッドホン出力を装備していることです。これにより、2人で配信する際に、それぞれが自分の音声をモニタリングしながら収録することも可能です。ただし、音量調整ノブは共通となっている形です。

フロントには3.5mmのヘッドホン端子が2つある
一方、本体はUSB給電で動作するほか、単3電池x4本での駆動にも対応しています。アルカリ、ニッケル水素、リチウム電池のいずれかを設定で選べるようになっており、電源の確保が難しい屋外での収録や、停電時のバックアップとしても活用できるのは大きな利点。アルカリ電池の場合で約3.5時間使えるので、配信用途など一般的な使い方であれば十分にカバーできる持続時間を確保しています。

単3電池x4本で動作可能
本体のみでレコーディングもできるし、オーディオインターフェイスにもなる
PodTrak P2は、PCやスマホと接続しなくても単体で録音が可能です。本体右側面のmicroSDカードスロットに、microSDカード(別売り)を挿入するだけで準備完了。

microSDカードを入れることで、ここにWAVで録音できる
録音ボタンを押すだけで、接続した2台のUSBマイクの音声を24bit/48kHzのWAVファイルとして、高音質でステレオ録音できます。

録音ボタンを押すだけで、即microSDカードに録音可能
また、PCやスマホと接続すれば、高性能なオーディオインターフェイスとしても機能するというのも重要なポイントです。本体背面のUSB Type-C端子を使って、Windows、Mac、iPhone/iPad、Androidなどさまざまなデバイスと接続可能。ドライバーのインストールも不要で、接続するだけですぐに使えるのが嬉しいポイントです。OBSはもちろん、Zoom Meetings、Microsoft Teams、Discordなど、あらゆる配信・会議アプリにも対応しているため、オンライン配信からビデオ会議まで幅広いシーンで活用できます。ただし、ASIOドライバは用意されていないので、DTM用途としてはやや厳しいかもしれませんね。

リアに2つのUSB Type-C端子がある。中央がホストへの接続、右側は電源供給用
ちなみにこのUSB Type-C端子が2つありますが、中央にあるのがオーディオインターフェイスとして使うためのもので、この接続でもバスパワー動作します。一方、右にあるのは給電用の端子となっており、スマホなど電源供給力が弱い機器で使う場合、こちらで供給すれば長時間運用が可能になりますし、もちろん前述の単3電池で使うことも可能です。
またオーディオインターフェイスとして使っている場合でも、録音もできてしまうため、バックアップ用しての活用も可能です。
超便利で強力なエフェクトを3つ搭載
PodTrak P2のもう一つの大きな特徴といえるのが、本体に搭載された3つの便利なエフェクト機能です。
まず一つ目は「COMP」ボタン。これを押すだけで、適切なコンプレッサーがかかり、声の大小の差を自動的に整えてくれます。マイクから離れたり近づいたりしても、常に適切な音量でクリアな音声を維持できるので、エフェクター操作に不慣れな方でも安心です。

特に設定不要で使えるCOMPボタン
二つ目は「TONE」ボタン。これは配信用に最適化された音質調整機能で、押すだけでしゃべり声が際立つように周波数特性を自動調整してくれます。特にUSBマイクの弱点である「こもり感」や「薄さ」を補正し、プロフェッショナルな音質に近づけてくれるのが魅力です。

TONEをオンにすることで、声にいい感じに音質調整してくれる
そして三つ目が画期的な「AI NOISE REDUCTION」ボタン。AIを活用した高度なノイズリダクション機能により、エアコンの音、部屋の反響音などのバックグラウンドノイズを効果的に抑制します。特に防音設備のない一般家庭での配信には非常に有効で、クリアな音声で配信できるようになります。

AI NOISE REDUCTIONボタンを押すと、3秒間ノイズを検知した後、そのノイズをきれいに除去してくれる
これら3つのエフェクトはボタン一つでON/OFFできるシンプルな設計で、複雑な設定は一切不要。音響知識がなくても、誰でも簡単に高品質な音声を実現できるのがPodTrak P2の大きな魅力です。
眠っているUSBマイクに新たな命を吹き込む画期的アイテム
以上、PodTrak P2について見てきましたが、いかがでしょうか?これまで使い道が限られていたUSBマイクに、新たな可能性を広げる画期的な製品といえると思います。2台のUSBマイクを同時使用できる点、ボタン一つで効果的なエフェクトがかけられる点、そして単体録音からオーディオインターフェイスまでこなせる多機能性は、他に類を見ないユニークな特徴です。
これまで死蔵状態だったUSBマイクを活用したい方、配信を始めたいけれど機材選びに悩んでいる方、シンプルで使いやすい録音機材を探している方にとって、PodTrak P2は「こんなものが欲しかった!」と思わせる製品であり、14,900円という手ごろな価格なのも嬉しいところ。コンパクトながらも、配信に必要な機能を凝縮した、まさに「USBマイクを120%活用できる」アイテムとして、多くのクリエイターの作業効率向上に貢献してくれると思います。
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