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鈴木Daichi秀行さんと田辺恵二さんが明かす、公式デモ制作のマル秘テクニック。ガチプロ作家勢による「AIボーカルコンピ Vol.2 」も8/27に配信スタート

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AI歌声合成ソフトとして高い評価を得ているSynthesizer V。そのエンジンが今年「Synthesizer V Studio 2 Pro」へと進化し、より人間らしく、表現力豊かな歌声制作が可能になりました。また2025年7月24日には新たな歌声ライブラリとして「Synthesizer V 2 AI 弦巻マキ」および「Synthesizer V 2 AI 桜乃そら」が発売。このリリースに合わせ、その実力を示す公式デモソングの制作を、音楽プロデューサーの田辺恵二さんと鈴木Daichi秀行さんが担当しました。

さらに、ほぼ同じタイミングで、お二人が中心となって進めてきたコンピレーションアルバムの第2弾「AIボーカルコンピ Vol.2」も完成し、8月27日に配信リリースされました。こちらはプロアマ問わず100曲を超える応募の中から選ばれた6曲と、元SOUL’d OUTのShinnosukeさんや、嵐などの楽曲を手がけるHa-jさんといった第一線で活躍するプロクリエイター13名による書き下ろし楽曲を合わせた、全19曲収録の豪華な内容となっています。そこで今回、鈴木Daichi秀行さん田辺恵二さんのお二人にインタビュー。Synthesizer V 2の進化点やデモソング制作の裏側、そしてコンピレーションアルバムの全貌について、詳しく話を伺いました。

プロ作家が教えるSynthesizer V Studio 2 Pro実践テクニック!鈴木Daichi秀行&田辺恵二インタビュー

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飛躍的進化を遂げたSynthesizer V Studio 2 Pro、プロが公式デモソング制作で体感したその実力

--公式デモソングでは、田辺さんがSynthesizer V 2 AI 弦巻マキを、DaichiさんがSynthesizer V 2 AI 桜乃そらを担当されたとのことですが、どのようなきっかけだったのでしょうか。
Daichi:AHSさんから、Synthesizer V 2 AI 弦巻マキとSynthesizer V 2 AI 桜乃そらのリリースに合わせてデモソング制作の依頼をいただいたのがきっかけです。僕は桜乃そらを、田辺さんは弦巻マキを担当させていただきました。

田辺: ちょうどそのタイミングで、僕らが参加しているコンピレーションアルバムの第2弾の話も進んでいたので、これはいい機会だな、と。今日はその両面からお話できればと思っています。

--「鈴木Daichi秀行さん、田辺恵二さんを中心にガチプロ作家勢によるSynthesizer Vコンピアルバム第2弾。一般枠公募もスタートという記事も書かせていただきましたが、ちょうど同じタイミングだったんですね。ちょうど、コンピアルバムの制作もSynthesizer V Studio 2 Proがリリースされた後でしたよね。実際使ってみてどうでしたか?
Daichi:だいぶ進化していますね。音色的なところが大きく変わったのが一番の驚きでしたが、ライセンス登録などの管理面が分かりやすくなったのも嬉しいポイントでした。以前はAHSとDreamtonicsで管理が分かれていて少し複雑でしたが、ソフトウェア内で一括して管理できるようになり、とてもスムーズになりましたね。

田辺:より自然になった、という印象です。たとえば僕が担当した弦巻マキは初期の頃に出たライブラリですが、2になったらまったくの別物といってもいい進化具合でした。表現の幅がとにかくすごいです。

Daichi:たしかに初期のライブラリは、どうしても表現力が少し平面的な感じがありましたよね。それが最新版では、表現のダイナミクスがすごく幅広くなっているので、非常にリアルになっています。その分、後処理も人間のボーカルレコーディングに近いアプローチをした方が、よりよくなる印象でしたね。

--具体的には、どのような処理になってくるのでしょうか?
Daichi:平坦なボーカルなら、そのままオケに混ぜても馴染むことがありますが、ダイナミクスがあると、小さいところと大きいところの差が激しくなります。そのため、コンプレッサで粒を揃えたり、オートメーションで音量を細かく調整したりといった処理が必要になってくる。まさに、普通のボーカルレコーディングと同じ感覚です。

--もう普通のボーカルレコーディングと一緒ですね。
Daichi:そうなんですよ。ほかにも進化したな、と感じるところだと、ボーカルスタイルのパラメータは相当変わりましたね。以前は、少しニュアンスが変わるかな、という程度で、どちらかというとエフェクト的な加工に近い印象でした。それが今回は、歌い方自体が根本から変わるんですよ。たとえばSoftにすれば、本当にささやくように息が混じった歌声になったりしますね。

田辺:まるでシンガーがキャラクタを切り替えて歌っているような感覚ですよね。特に、ボーカルスタイルの中のパラメーターがピッチ、声色、発声の3つに細分化され独立したのが大きいです。これをオートメーションで連続的に変化させられるようになったので、クレッシェンドのように徐々に力強くしたり、だんだん元気になっていく、といった表現も自在にできるようになりました。

Daichi:これは、もう完全にボーカルディレクションの世界ですよ。作り手の中に「こう歌わせたい」という明確なイメージがあればあるほど、その自由度の高さと表現力の豊かさを実感できるはずです。

--思い通りの表現を追求しやすくなったのですね。
田辺:まさにその通りです。また、地味ながら大きな進化だと感じたのがAIリテイク機能です。以前はいわばガチャのようなもので、いいテイクが出るまで何度もクリックする必要がありましたが、これもタイミングやピッチングなど、要素ごとに細かくリテイクをかけられるようになったので、自分の意図する方向に、より確実に近づけるようになったのは間違いありませんね。

Daichi:「このフレーズの、この部分だけを少し変えたい」ということが的確にできるようになったのは、制作効率の面で非常に大きいですね。レンダリングも驚くほど速くなりましたし、制作中のストレスが大幅に軽減されました。

プロの技が光る「音素タイミング」調整

--たとえばデモソング制作中などで、特に駆使したテクニックがあれば教えてください。
Daichi:音素タイミングの調整機能は、今回非常に多用しました。これは、1つの音符に複数の文字が含まれる場合の、それぞれの音の割り当てや長さを細かく調整できる機能なんですが、これを使うと、微妙に食い気味に歌わせたり、逆にもたらせたりといった、細かなグルーヴのコントロールが簡単にできるんですよ。

田辺:そう、自分がいつも聴いている、あの心地よいノリを再現できるんですよね。以前はこれができなかったので、一度オーディオ化して、波形を切り貼りして……といった手間が必要だったんで、嬉しい機能ですね。

Daichi:発音の明瞭さという点でも、この機能は役立ち、思った通りに発音してくれない場合に、子音や母音の音量を個別に調整することで、歌詞をはっきりと聴かせることができます。以前は、それっぽく聞こえるように別の言葉に置き換えたり、最悪の場合は歌詞自体を変更したりすることもありましたが、そうした妥協をする必要がなくなりました。

田辺:僕は、1番と2番で同じメロディが出てくる箇所も、この機能を使ってタイミングを微妙に変えたりしています。ベタ打ちでも十分リアルですが、こうした一手間を加えるだけで、さらに生々しい人間味が出てくるんです。Aメロ、Bメロ、サビでボーカルスタイルを切り替えるだけでもクオリティは格段に上がるので、ぜひ試してみてほしいですね。

豪華クリエイター陣が集結!AIボーカルコンピVol.2

--そうした進化を遂げたSynthesizer V Studio 2 Proを使って制作されたコンピレーションアルバムも、いよいよリリースされますよね。
Daichi:はい。もともと、このデモソング制作とは別に進んでいたプロジェクトなのですが、ちょうどタイミングが重なりました。プロアマ問わず楽曲を公募したところ、100曲を超える応募が集まり、そこから我々プロの参加者も含めた投票で、公募枠として6曲を選出させていただきました。

--プロ枠の参加クリエイターも、前回と同様で豪華な顔ぶれですね。
Daichi:前回は「プロが本気でポップスを作ってみたら」というコンセプトでしたが、今回はジャンルを絞らず、みなさん自由に制作してもらいました。その結果、2009年と2010年の2年連続でオリコン年間編曲家ランキング1位を獲得したことのあるha-jさん、音楽プロデューサのKAZUKIさん、元SOUL’d OUTのトラックメイカーで嵐や「IDOLiSH7」にも楽曲提供するShinnosukeさんといったJ-POPシーンを牽引するヒットメイカーの参加。

さらに、MISIAさんや宇多田ヒカルさんなど1000曲以上のレコーディングに参加してきたギタリストの鈴木健治さん、BEMANIシリーズの「96」名義やアニメ「おそ松さん」OPで著名な黒沢ダイスケさん、坂道シリーズなども手掛ける白戸佑輔さん、ハロー!プロジェクトのサウンドを支える炭竃智弘さん、アニメ「ヤマノススメ」の音楽を担当するyamazoさん、TrySailなどを手掛ける福井シンリさん、舞台「Dr.STONE」や舞台「NARUTO」の音楽で注目のはるきねるさん、そして浜崎あゆみさんの「CAROLS」を手掛けた木下智哉さんとSyaulosさんによるユニットふしわな、と本当に多彩なメンバーが揃いました。

アーティスト名 曲名 使用ボイス
鈴木Daichi秀行 淡い雨と白い猫 / アワイアメトシロイネコ / Awaiame to Shiroineko
メイン:Riku v2 ハモ:氷山キヨテル v2
田辺恵二 二人だけの時間/フタリダケノジカン/Futaridakenojikan
Vo.フリモメン、SAKI2 Cho.宮舞モカ2、Natalie2、Ryo2、フリモメン
Shinnosuke 桃色日和 Mai
鈴木健治 South Island / サウスアイランド Mai2
ha-j scenario
花隈千冬、夏色花梨、Mai
福井シンリ Magic Land / マジックランド
花響琴、宮舞モカ、Mai
yamazo 共感アルゴリズム/キョウカンアルゴリズム(カナ)/Empathy Algorithm(英語表記) 宮舞モカ
ふしわな(木下智哉 & Syaulos) 青い鳥 JIN
はるきねる 海底都市の庭にて/カイテイトシノニワニテ/In the garden of the underwater city
宮舞モカ2、氷山キヨテル2
白戸佑輔 あいうえおかきくけこさしすせそたちつてと
宮舞モカ、GUMI、Yuma
黒沢ダイスケ 始まりはピポパポ/ハジマリハピポパポ(カナ)/Started from PipoPapo(英語表記)
宮舞モカ、Kevin
炭竃智弘 ハイリソ・コネテル
vocal : 氷山キヨテル2 Cho : Eri&Mai Rap : Liam2
KAZUKI YABA 音街ウナ

--選考の様子はいかがでしたか?
田辺:プロの参加クリエイターがそれぞれ3曲ずつ選ぶという投票制で選考したのですが、面白かったのは、2曲はほぼ全員の意見が一致したことと、前回も応募して当選した方がいたことです。名前を伏せて音だけで選んでいるので、純粋に実力が評価された結果だと思います。それでいうと、今回のコンピアルバムは連続して参加しているのは、僕とDaichiさんと彼ってことになりますね。ちなみに、公募枠はdaiki⛩️さん、ak-guitarさん、遠藤主樹さん、ナーシボボダークさん、Eighth Colorさん、凪ヤナリさんの6名ですね。プロ枠も含め、ジャンルは相当いろいろですが、意外だったのは男性ボーカルが結構増えたことですね。前回はほぼなかったのですが、今回は僕もDaichiさんも男性ボイスも使っていますね。

アーティスト名 曲名 使用ボイス
daiki⛩️ does hated(2025Remaster) カナ表記/ダズ ヘイティド(2025Remaster) ANRI Arcane
ak-guitar そこにある季節 / ソコニアルキセツ / Sokoni Aru Kisetsu MoChen
遠藤主樹 おかえり feat.宮舞モカ / (カナ)オカエリ / (海外向け)Okaeri – Always Here
Main Vocal:宮舞モカ Chorus:Ayame、Yuma
ナーシボボダーク You’re my everything feat.宮舞モカ / ユア マイ エブリシング
宮舞モカ(メイン、全体)Ryo(メインメロオク下レイヤーのみ)
Eighth Color コーラサワー (feat. Synthesizer V AI Hayden) / Cola Sour (feat. Synthesizer V AI Hayden) Hayden
凪ヤナリ メタファブル (RE:ver.) / Metaphable (RE:ver.) 重音テト

AIボーカルの未来、そしてナイジェリアでもチャートイン!?

--今プロの制作現場では、AIボーカルをどのように捉えていますか?
Daichi:人間のシンガーとの比較でいえば、やはり納得がいくまで際限なくテイクを追求できるのが最大のメリットです。時間やシンガーのコンディションといった制約から解放されますからね。またミックスの最終段階で「やっぱり、あそこの歌い回しを変えたい」と思っても、AIなら即座に対応できますよね。

田辺:人間が歌う前の仮歌としての利用価値は非常に高いですし、CMや劇伴の世界では、すでにAIボーカルがそのまま本番で使われるケースも増えています。デモの段階でクオリティの高い歌が入っていると、クライアントもそのイメージでOKを出してしまうことが多いんですよ。

--一方で、課題はありますか?
Daichi:やはり、人間が歌うことで生まれる熱量のようなものを完全に再現するのは、まだ難しい部分もあります。また、細かく作り込もうとすると、それなりに時間がかかる。締切が迫っている場面では、人間の仮歌シンガーに頼んだ方が早い、という判断をすることもありますね。

--最後に、前作のコンピレーションアルバムの反響について教えてください。
Daichi:興味深かったのは、海外での再生が非常に多かったことです。ナイジェリアやボリビアのJ-POPチャートにランクインしたり、ヨルダンやラトビアで聴かれていたり。リリースから時間が経つにつれて、日本よりも海外での再生比率が高まっていくという面白い現象も起きています。
田辺:これこそがサブスクリプションサービスの醍醐味ですよね。自分たちが作った音楽が、想像もしていなかった国の人々に届く可能性がある。今回のアルバムも、どんな風に世界に広がっていくのか、今からとても楽しみです。

--ありがとうございました。

【関連情報】
Synthesizer V 製品情報
Synthesizer V 2 AI 弦巻マキ 製品情報
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AIボーカルコンピ Vol.2 with Synthesizer V AI情報
AIボーカルコンピ Vol.2 with Synthesizer V AI配信リンク

この記事を書いた人

ライター、サウンドエンジニア。有限会社フラクタル・デザイン所属。ブログ型ニュースサイトのDTMステーションで、DTM関連の記事を執筆。またTV、配信、ライブ、舞台、ドラマにおいて、レコーディング、ミキシング、PA、MAを担当するなど、幅広く活動している。

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