本日、5月12日、Reason 14が発売されました。Reasonと聞いてピンとくる方は、かなりのDTM歴の方かもしれませんが、「Reasonってまだあったのか!」という方も少なくないと思います。ReasonはもともとスウェーデンのPropellerhead Softwareという会社が2000年11月にリリースして、その後のバージョンアップとともに世界的に大ヒットしたソフト。複数のソフトシンセのモジュールと、内蔵されたシーケンサやエフェクト、ミキサーを自由に組み合わせていくスタイルは、非常に独特な世界ではありましたが、DAWの黎明期に登場したこのソフトは、多くのユーザーを惹きつけたユニークなソフトだったのです。
そこから四半世紀以上が過ぎ、今年の1月にLANDRに買収されていたのですね。LANDRといえばAIマスタリングで10年前に大きな話題になったカナダの会社ですが、その後、VocAlignやRevoice Proを開発したSynchro Artsを買収して傘下に収めるなど、急成長を遂げている会社。このLANDR傘下で、さっそくReasonはバージョンアップを遂げたというわけなのです。試してみると、昔のあのUIは健在であり、SUBTRAKTORとかNN-XTなどもそのままあるし、新しいデバイスもいっぱいできています。そして、当初の「プラグインには対応しない」という頑なな方針はやめて、Reasonにプラグインを組み込むことも、反対にDAWとプラグインとしてReasonを組み込むことも自由にできるようになっています(プラグイン対応は、だいぶ以前にしていましたね)。価格は統合型のReason 14 DAWが299ドルで、プラグイン版のReason 14 Rackが199ドル。実際どんなものなのか紹介してみましょう。
Reasonとの個人的な思い出
私がはじめてReasonを触ったのは25年以上前のこと。当時Propellerhead SoftwareはReBirthやReCycle!といったユニークなソフトで知られていましたが、そのPropellerheadが画期的なソフトを出したというので触ってみたのが初代バージョンでした。
まだPCが非力な時代でしたが、モジュールを組み合わせて自分で自由自在にシンセのシステムが組めるというのは画期的でした。さらに、PCでアニメーションを動かすことすら困難だった時代に、本体パネルの裏側を表示させるとケーブルのパッチングができるようになっていて、そのケーブルがぶらぶら揺れるアニメーションを見て感動したのは今でもよく覚えています。
その感動もあって、リットーミュージックから「最先端を行く音楽制作ツール Reasonのすべて」という本を松前公高さん、Yasushi.Kさん、高山博さんとの共著で出版しました。さらにバージョンアップしてReason 3になったタイミングでは、BNN新社から「MASTER OF REASON 3.0」という本も出しています。
その後、DAWが全盛期を迎えていく中でReasonの存在感が薄れていったのは否めないと思います。当初のReasonはスタンドアロン専用であり、DAWと連携するにはPropellerheadとSteinbergが共同開発したReWireという特殊な規格を使う必要がありました。そのReWireも今ではなくなってしまいましたね。社名がPropellerheadからReasonへと変わったり、プラグイン対応が加わるなど、時代に合わせて少しずつ進化してきましたが、かつてのようにDTM界の主流に戻ってきているとはなかなか言いにくい状況です。それでも、今でもReasonで制作のすべてを行っているというユーザーも一定数いらっしゃいます。DTMステーションが毎年末に行っているDAW利用調査アンケートでは、昨年は2,185票中20人の方がReasonを選んでおり、約1%のシェアを維持していました。
LANDRとはどんな会社か、そして買収の経緯
LANDRは2014年にカナダ・モントリオールで創業した音楽テクノロジー企業です。機械学習を使ってEQやダイナミクス処理を自動で施すAIマスタリングサービスとして登場し、当時まだ珍しかった「AIによる音楽制作支援」というコンセプトで世界中の注目を集めました。現在は世界700万人以上のユーザーを抱えるプラットフォームへと成長しており、マスタリングにとどまらず音楽配信、サンプル素材、プラグイン、オンライン教育コンテンツなど、音楽制作のさまざまな場面をカバーするサービスを展開しています。また、VocAlignやRevoice Pro で知られるSynchro Artsも傘下に持っており、プロフェッショナル向けのオーディオツール企業としての存在感も増しています。
そのLANDRが今年1月6日、Reason Studiosの買収を正式発表しました。Reason StudiosはPropellerhead Softwareとして1994年に設立され、2017年からはノルウェーの成長投資ファンドVerdaneが筆頭株主となっていましたが、今回のLANDRによる買収でVerdaneはその投資を回収する形となりました。LANDRのCEOパスカル・ピロン氏は発表に際し「これはReasonを変えることが目的ではない。Reasonが成長するための場を与えることだ」とコメントしており、Reason Studiosは引き続き独自のブランドとして運営を続けるとしています。
また買収にあわせて、著名なプロデューサーやReasonの長年のユーザーで構成される「アーティスト・カウンシル」の設立も発表されました。このカウンシルがReason の開発ロードマップに直接意見を反映させる仕組みを持つとのことで、ユーザーコミュニティを重視する姿勢が示されています。今後はSynchro Artsとの連携強化やAIを活用した新機能の追加なども予定されているようで、LANDRの傘下でReasonがどのように進化していくかが注目されます。
昔のReasonしか知らない人へ──バージョン4・5時代との比較
かつてReasonを使っていたけれど、その後離れてしまったという方に向けて、特にバージョン4・5あたりの時代と現在のReason 14を比べてみましょう。一言でいえば「制約だらけのユニークな箱から、本格的なDAWへ」という変化です。
スタンドアロン専用からプラグイン対応へ
バージョン4・5の時代のReasonは、完全にスタンドアロンで動作するソフトでした。CubaseやLogicといった他のDAWと一緒に使いたい場合は、PropellerheadとSteinbergが共同開発したReWireという仕組みを通じてMIDIやオーディオをやりとりするしかなく、セットアップも一筋縄ではいきませんでした。そのReWireも現在は廃止されてしまいましたよね。
現在のReason 14では、Reason Rackという形でVST3 / AU / AAXプラグインとして動作します。つまりAbleton LiveでもLogic ProでもCubaseでも、使い慣れたDAWのプロジェクトの中にReasonのラックをそのまま呼び出せるのです。ReWireの時代を知る方にとっては、隔世の感があるのではないでしょうか。
オーディオ録音ができなかった時代
バージョン5まで、Reasonは生の音声(オーディオ)を直接録音することができませんでした。MIDIによるシンセ演奏やサンプラーの再生はできましたが、ボーカルやギターをそのまま録音する機能はなく、それが他のDAWとの大きな差でもありました。Reasonの姉妹ソフトとしてRecordというものが出た後、それを統合したReason 6(2011年)でようやくオーディオ録音に対応し、本格的なDAWとしての機能が整ったのです。Reason 14ではもちろんオーディオ録音が可能で、マルチトラックの音楽制作環境として一通りの機能が揃っています。
サードパーティプラグインが使えなかった時代
かつてのReasonはVSTやAudio Unitsなどのプラグインをホストする機能を持っておらず、使えるデバイスはReason内蔵のものだけでした。これがReasonの独自性でもありましたが、他のDAWを使うユーザーとの間には大きな壁でもありました。現在のReason 14はVSTプラグインをホストできるため、自分が持っているお気に入りのサードパーティプラグインをReason上で動かすことも可能になっています。
ラックとケーブルのUIはそのまま
大きく変わった点がある一方で、あのラック型UIとケーブルのパッチングは健在です。本体の裏側を表示するとモジュール間のケーブルがぶらぶら揺れる、あの独特の操作感はそのままに残されています。
SUBTRACTORやNN-XTといった定番デバイスも引き続き使えますし、新しいデバイスも加わっています。「あの感触はそのままで、できることが劇的に増えた」というのが、Reason 14の変化を一言で表すとすればそうなるのではないかと思います。
Reason DAWとReason Rackの違い
Reason 14には、スタンドアロンのDAWとして使う「Reason DAW」と、ほかのDAWのプラグインとして使う「Reason Rack」の2つのエディションがあります。どちらを選べばいいか迷う方のために、主な違いをまとめました。
| Reason DAW | Reason Rack | |
|---|---|---|
| 動作形態 | スタンドアロン(単体起動) | プラグイン(他DAW内で動作) |
| DAW機能・シーケンサー | あり | なし |
| ラックシステム | あり | あり |
| 対応フォーマット | ― | VST3 / AU / AAX |
| 価格(買い切り) | 299ドル | 199ドル |
| 価格(サブスク) | 169ドル/年(Reason+) | 99ドル/年 |
| こんな方に | Reasonをメインの制作環境として使いたい方 | 使い慣れたDAWはそのままに、Reasonのラックやサウンドだけ活用したい方 |
Reasonのラックやシンセに興味があるけれど、DAWはAbleton LiveやLogic Proなどをすでに使っているという方には、Reason Rackが手軽な入り口になります。一方、Reasonの世界をフルに楽しみたい方にはReason DAWがおすすめです。なお、Reason+(年間サブスクリプション)に加入すると、Reason DAW・Reason Rack・各種デバイスや追加コンテンツをまとめて利用できます。
Reason 14の主要な新機能
では、Reason 14で具体的に何が変わったのかを見ていきましょう。
ワークフローの再設計とUIの刷新
今回のアップデートの目玉のひとつが、制作スピードを落とさないための「ワークフローの効率化」です。デフォルト設定が大きく変わり、「ダークモード」がデフォルトに採用されました。また「シーケンサー」テンプレートが標準となり、起動後すぐに打ち込みを開始できます。ラックは別ウィンドウとして分離して表示できる「シングルカラム・モード」が基本スタイルとなり、画面のスペースを有効活用できるようになりました。トランスポートバーや各種ボタンのデザインも刷新され、全体的な視認性が向上しています。
新機能:トラック・オーバービュー・パネル
ラックをいちいち開閉する手間を省き、メイン画面上ですべてを完結させるための新しいパネルが追加されました。各トラックの音源、プレイヤー、エフェクトがリスト表示され、「+」ボタンから即座にデバイスを追加できます。エフェクトの順序をドラッグで入れ替えるだけで接続(ルーティング)が自動で再構築されるのも便利なところ。さらに、デバイスにマウスを乗せるだけでパッチ選択が可能になり、試聴と差し替えのスピードが大幅に上がっています。
トラック・フォルダーによる整理
大規模なプロジェクトでも迷子にならないための整理ツールが強化されています。最大3レベルまでの階層フォルダーに対応し、フォルダーを閉じた状態でも中にどのようなデータが入っているかを視覚的に確認できます。フォルダー内のトラックカラーを一括変更したり、ミュート/ソロをまとめて制御することも可能です。
シーケンサーとクリップ編集の進化
直感的なエディットを実現するための改善も多数行われています。クリップやノートを選択することなく、端にカーソルを乗せるだけでリサイズができる「エッジ・ホバー・リサイズ」、ノート下部にハンドルが表示されてペンツールに持ち替えずにベロシティを直接調整できる「ベロシティ・ハンドル」などが追加されています。クリップの上部をドラッグするだけでループを作成でき、作成されたループは「エイリアス(複製)」として機能するため、1つを編集すればすべてに反映されます。また「チェイス・ノート(Chase Notes)」機能により、ノートの途中から再生しても音が鳴るように設定可能になりました。長いパッドやドローン系の音色を扱う際に重宝しそうな機能です。
新デバイス:RV9 リバーブ・ステーション
長年使われてきたRV7000に代わる、次世代の主力リバーブとして「RV9 リバーブ・ステーション」が新たに搭載されました。ルーム、ホール、キャセドラルに加え、「シマー(Shimmer)」や「スペクトラル(Spectral)」などのモダンなアルゴリズムを搭載しています。入力音に合わせてリバーブ音を抑えるダッキング機能も標準装備されており、ミックスの明瞭度を保つのに役立ちます。スペクトラル・モードではアディティブ合成(加算合成)によるリバーブ生成が可能で、倍音成分を個別にコントロールした独自のリバーブデザインが楽しめます。
サウンドライブラリの拡充
EuropeやRV7000向けに900以上の新規パッチが追加されたほか、ドラムマシン「606」の完全なサンプルセットなど、即戦力の素材も新たに加わっています。
おわりに
25年以上前に衝撃を受けたあのReasonが、新たなオーナーのもとで大幅に生まれ変わりました。ケーブルがぶらぶら揺れるラックのUIはそのままに、現代のDAW環境に合わせた機能強化が着実に積み重ねられています。思い入れのあるソフトが元気にアップデートされているのを見ると、やはりうれしいものです。かつてReasonを使っていた方にも、今のReasonを知らなかったという方にも、一度触れてみる価値は十分あるのではないでしょうか。
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