DTM用MIDIキーボードの定番として、多くのユーザーに愛用されてきたNovationのLaunchkeyシリーズ。その最新モデルであるLaunchkey MK4が、2024年の登場以来、前モデルを遥かに凌ぐ勢いで売れているとのこと。メーカー担当者によれば、その販売台数は前モデルの倍以上。この驚異的なヒットの背景には、これまで定評のあったAbleton Liveとの強力な連携はそのままに、Cubaseへの対応を大きく強化したことがあるようです。
前モデルからは、単なるマイナーチェンジにとどまらない、根本的なアップデートが行われており、より表現豊かになった鍵盤やポリフォニック・アフタータッチ対応のパッド、視認性の高いOLEDディスプレイなどを新搭載。さらに、音楽理論の知識がなくても曲のアイデアがどんどん湧き出てくるインテリジェントなコード/スケール機能や、アルペジエーター機能など、クリエイティビティを刺激する機能も満載です。ラインナップも、コンパクトなMini 25鍵モデル(17,200円税込)から、本格的な演奏にも対応する61鍵モデル(42,900円税込)まで幅広く用意。今回実際に試してみたので、その実力をチェックしていきましょう。
制作スタイルで選ぶ、充実したLaunchkey MK4シリーズのラインナップ
DTMの世界で定番と呼ばれるMIDIキーボードはいくつかありますが、NovationのLaunchkeyシリーズもその一つとして、多くのDTMerに愛用されてきました。そのLaunchkeyがMK4へと進化し、2024年発売以来、前述の通り異例のヒットを記録しています。この異例のヒットを支えている大きな要因の一つが、ユーザーの多様な制作スタイルに応える、考え抜かれたラインナップ構成。
| Launchkey Mini 25 | Launchkey Mini 37 | Launchkey 25 | Launchkey 37 | Launchkey 49 | Launchkey 61 | |
| 価格(税込) | 17,200円 | 21,500円 | 25,700円 | 30,000円 | 35,800円 | 42,900円 |
| キーボード | 25 | 37 | 25 | 37 | 49 | 61 |
| キーサイズ | ミニ | ミニ | フルサイズ | フルサイズ | フルサイズ | フルサイズ |
| 鍵盤のタイプ | シンセ鍵盤 | シンセ鍵盤 | シンセ鍵盤 | シンセ鍵盤 | セミウェイテッド | セミウェイテッド |
| ホワイト | ✘ | ✔ | ✘ | ✘ | ✔ | ✘ |
| ポリフォニック アフタータッチ付きパッド |
16 | 16 | 16 | 16 | 16 | 16 |
| エンドレス・エンコーダ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ |
| フェーダーとフェーダーボタン | ✘ | ✘ | ✘ | ✘ | ✔ | ✔ |
| ピッチ/モジュレーションホイール | 2x | 2x | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ |
| 有機ELディスプレイ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ |
| コードモード | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ |
| スケールモード | 30スケール | 30スケール | 30スケール | 30スケール | 30スケール | 30スケール |
| ステップ・エディター付き アルペジエーター |
✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ |
| ゾーン | ✘ | ✘ | ✘ | ✘ | ✔ | ✔ |
| クリップ/シーンのローンチ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ |
| カスタムモード | パッドとエンコーダー | パッドとエンコーダー | パッドとエンコーダー | パッドとエンコーダー | パッド、エンコーダー、 フェーダー |
パッド、エンコーダー、 フェーダー |
| MIDI アウト | 3.5mm | 3.5mm | 5ピン | 5ピン | 5ピン | 5ピン |
| サステイン入力 | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ |
| バスパワー | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ |
省スペースと機動性を両立する「Mini」シリーズ(25鍵 / 37鍵)
まず、制作環境をコンパクトにまとめたい、あるいはラップトップとともに持ち出して場所を選ばずに制作したいユーザーに最適なのがMiniシリーズです。
Launchkey Mini 25 MK4は、横幅32cm程度と極めてコンパクトで、バックパックにも余裕で収まるサイズ感。ビートメイキングやループのトリガー、簡単なベースラインの入力が主体であれば、このサイズでも十分に性能を発揮します。一方、Launchkey Mini 37 MK4は 鍵盤数が1オクターブ増えることで、右手でメロディを弾きながら左手で簡単なコードを押さえるといった、より本格的な作曲スケッチが可能なサイズと演奏性のバランスが取れたモデルとなっています。
デスク上での制作を快適にするフルサイズ鍵盤シリーズ(25鍵 / 37鍵)
次に、デスク上でしっかりとした演奏感を求めつつ、省スペース性も重視したいユーザーには、フルサイズ鍵盤を備えたLaunchkey 25 MK4とLaunchkey 37 MK4が適していますよ。Miniシリーズよりも弾きごたえのある新アクション鍵盤を搭載しており、細かなベロシティの表現がしやすくなっています。
この両機種は、多くのDTMerにとってスイートスポットともいえる鍵盤数で、両手を使ったフレーズ作りにも対応できるため、制作の中心機材として長く活躍してくれるはずです。
スタジオの中核を担うフラッグシップモデル(49鍵 / 61鍵)
そして、スタジオのマスターキーボードとして、より本格的な演奏やDAWのフィジカルなコントロールを求めるユーザーには、Launchkey 49 MK4とLaunchkey 61 MK4がおすすめ。これらは弾き心地のよいセミウェイテッド鍵盤を採用しているだけでなく、DAWのミキサー操作に絶大な効果を発揮するフェーダーを搭載。
ほかモデルでも8つのツマミを使ってDAWのミキサーを操作することは可能ですが、フェーダーがあることにより、トラックのボリューム調整はもちろん、シンセのパラメータやドローバーオルガンの操作など、より直感的な音作りが可能。両手を使ったピアノパートの演奏から複雑なミキシングまで、手元で完結させたいプロフェッショナルなニーズに応えるモデルとなっています。
なお、ピアノと同様の88鍵を求めるユーザー向けには、MK3シリーズのLaunchkey 88 MK3が継続して販売されています。さらに、2025年5月下旬頃からはMini 37鍵と通常版の49鍵に、白色モデルも追加されています。
演奏体験を格段に向上させるハードウェアの進化
さて、まずはハードウェア部分から見ていきましょう。Miniシリーズのミニ鍵盤ですが、これは前モデルと比較して格段にしっかりとした打鍵感になっており、安価な製品のようなペラペラ感がなく、さらに弾きやすいものに進化しています。ベロシティの追従性も良好で、単なるノート入力用のツールとしてだけでなく、ある程度の表現力を持った演奏にも応えてくれるものとなっています。
一方、フルサイズ鍵盤を搭載する25鍵と37鍵モデルには新アクション鍵盤が採用されており、こちらもMK3のやや軽めのタッチから、適度な重みとコシのある弾き心地へと改良されています。これにより、細かなベロシティコントロールが可能になり、リアルタイムでのメロディ演奏はもちろん、リズムパートの打ち込みにおいても微妙なニュアンスを表現しやすくなりました。長時間の演奏でも指が疲れにくい、バランスの取れた設計となっていますね。
さらに、49鍵と61鍵モデルには、新たにセミウェイテッド鍵盤が採用され、シンセサイザの演奏に最適な、軽やかでありながらもしっかりとした重みを感じられる鍵盤を採用。DTM環境の本格的なMIDIキーボードという以外にも、ライブパフォーマンスでの使用に最適なモデルとなっていますよ。
またパッドの進化も見逃せません。ベロシティの感度が非常に高く、軽く触れるだけの繊細なタッチから力強いヒットまで、意のままに強弱を表現できます。たとえば、ドラム音源を打ち込む際に、ゴーストノートのような微細な表現も的確に入力することができます。リアルなグルーヴを生み出したいDTMerにとって、これは制作クオリティを左右する重要なポイントですね。
さらに、MK4のパッドはポリフォニックアフタータッチに対応。これは、パッドを押し込む圧力によって、ノートごとに個別のパラメータを変化させられる機能で、たとえば、パッドで押さえたストリングスの和音の、特定の音だけを後から盛り上げる、といった表現が可能になり、演奏の幅が大きく広がります。シンセパッドのフィルターをノートごとに開閉させたり、ビブラートを個別にかけるなど、これまでDAW上でオートメーションを描かなければ実現できなかった複雑な表現が、リアルタイムの演奏で可能になるのです。
操作性という面では、8つのツマミがすべてロータリーエンコーダになった点も大きな改良点。通常のツマミと違い、どこまでも回し続けることができるため、DAW上のパラメータを操作する際に、ツマミの物理的な位置とソフトウェア上の値のズレに起因する、急な数値の変化が起こりません。ライブパフォーマンス中や、集中してミックス作業を行っている際に、こうしたストレスがないことは、制作効率の向上に直結しますよね。
49鍵と61鍵モデルにはフェーダーが搭載されており、ミキシング作業において大きな効果を発揮します。61鍵モデルは9本、49鍵モデルは8本のフェーダーを備えており、DAWのミキサーと連動させることで、各トラックのボリュームを直感的に操作できます。また、シンセサイザのエンベロープパラメータ、いわゆるADSRのコントロールや、ドローバーオルガン音源の操作など、多彩な用途に活用できるのも大きなポイントです。
新たに搭載されたディスプレイも、制作フローの効率化に一役買っています。この有機ELディスプレイによって、操作しているエンコーダのパラメータ名や数値、選択しているスケールやコード名が手元で確認できるため、PCの画面に視線を移す頻度が減り、より演奏や操作に集中できるようになりました。
接続端子としては、PCとの接続に使うUSB-C端子に加え、Miniモデルは3.5mm、それ以外は5ピンMIDI OUT端子やサスティンペダル入力も装備しているため、外部ハードウェア音源のコントロールや本格的なピアノ演奏にも対応できる拡張性を備えています。
Ableton Liveユーザー以外にも広がる、DAWとの強力な連携
これまでLaunchkeyシリーズは、同社のLaunchpadの影響もあり、「Ableton Liveと最も親和性の高いMIDIキーボード」というイメージが定着していました。もちろん、Launchkey MK4もAbleton Liveとの連携は完璧で、USBケーブルで接続するだけで瞬時に各種パラメータがマッピングされ、快適な操作環境が整います。
しかし、MK4が大きく進化したのは、Ableton Live以外のDAWへの対応を大幅に強化した点です。とくにCubaseとの連携は、今回のバージョンの目玉機能の一つといえるでしょう。Ableton Liveでの使用時と同様に接続するだけで、ミキサーのボリュームやパン、選択トラックのソロ・ミュート、さらにはプラグインのパラメータまで、Launchkeyのエンコーダやフェーダーで直感的に操作できるようになっています。
Cubaseの「クイックコントロール」機能とも連動するため、純正プラグインだけでなく、サードパーティ製のプラグイン・エフェクトやインストルメントのパラメータも自由に割り当てが可能です。これまでマウスで行っていた細かい調整をフィジカルなコントローラで操作できるため、より音楽的なアプローチでサウンドデザインやミックス作業を行うことができます。
この連携機能は、Logic Pro、Reason、FL Studio、Studio One、Reaperといった他の主要なDAWにも対応しており、複雑な設定なしに、トランスポートコントロールやミキサー操作が可能になっています。こちらにNovationのチュートリアル記事があるので、ここから、Pro ToolsやStudio One、Logic Proのセットアップ方法を確認することができますよ。
自分だけのコントローラを作り上げるカスタムモード
Launchkey MK4の柔軟性をさらに高めているのが、Novation Componentsというソフトウェアを使ったカスタムモードの存在。これはブラウザ上、またはスタンドアロンのアプリケーションとして動作するエディタで、Launchkeyのパッドやエンコーダー、フェーダーのMIDIアサインをユーザーが自由に設定できる機能となっています。
たとえば、特定のソフトウェアシンセサイザのパラメータをエンコーダーに割り当てて、自分だけのシンセコントローラを作成したり、ライブパフォーマンスで多用するDAWの機能をパッドに集約したりと、用途に合わせて最大4つまでカスタム設定を本体に保存できます。設定はドラッグ&ドロップで簡単に行え、ノートやCC、プログラムチェンジなど、さまざまなMIDIメッセージを割り当て可能です。
音楽理論不要で作曲のアイデアが湧き出るインテリジェント機能
またLaunchkey MK4シリーズが持つ大きな魅力は、単なるコントローラにとどまらず、クリエイティブなアイデアを引き出してくれるインテリジェントな機能を搭載している点です。とくに、ピアノが弾けない人や音楽理論に自信がない人にとって、スケールモードとコードモードは作曲の強力な味方となります。
スケールモードをオンにすると、設定したキーとスケールから外れた音が出なくなり、鍵盤を適当に弾くだけでメロディが成立します。MK4ではこのスケールの種類が30種類にまで増強。一般的なメジャー/マイナースケールだけでなく、ドリアン、リディアンといった教会旋法、ブルーススケール、さらには日本の音階まで網羅しています。
コードモードについては、Miniシリーズにも搭載されたコードマップ機能は秀逸で、パッドを押すだけで、選択したキーに沿ったコードを鳴らすことができます。単に基本的なコードを鳴らすだけでなく、エンコーダを操作することで、ハーモニーの複雑さを調整する「Adventure」、コードの種類を切り替える「Explore」、構成音の重ね方を変える「Spread」といったパラメータを駆使し、多彩な響きを生み出すことが可能です。「Adventure」が5段階、「Explore」が8段階あるため、実に40種類ものコードバンクから響きを探求できます。これにより、自分では思いつかないような、おしゃれで現代的なコード進行を簡単に見つけ出すことができますよ。
アルペジエーター機能も、パターンやリズム、ゲートタイムなどをエンコーダーで直感的にエディットでき、多彩なフレーズを生み出すことが可能です。これらの機能はLaunchkey本体に内蔵されているため、PC上のDAWだけでなく、USB-Cケーブルで接続したiPadやiPhoneのアプリ、たとえばGarageBandなどでも使用可能です。場所を選ばず、手軽に作曲スケッチができるのも大きな魅力といえるでしょう。
ハードウェアシンセもコントロール、スタンドアロンでの活用
またLaunchkey MK4は、DAWとの連携だけでなく、スタンドアロンのMIDIコントローラとしても非常に優秀。Miniシリーズでは3.5mm、ほかモデルに標準装備された5ピンMIDI OUT端子により、DAWを介さずにハードウェアのシンセサイザやドラムマシン、音源モジュールを直接コントロールできます。
たとえば、ライブパフォーマンスのセットアップで、PCのDAWをコントロールしつつ、MIDI OUTから外部のシンセサイザにシーケンスフレーズを送るといった使い方が可能。前述のスケールモードやアルペジエーター機能はスタンドアロンでも動作するため、ハードウェアシンセと組み合わせることで、DAWレスの環境でも複雑な演奏や作曲が行えます。DTMだけでなく、ハードウェアを中心とした制作環境を持つユーザーにとっても、Launchkey MK4は強力な中核機材となりますよ。
購入後すぐに始められる、充実のバンドルソフトウェア
Launchkey MK4シリーズのもう一つの大きな魅力は、購入してすぐに本格的な音楽制作を始められる、充実したバンドルソフトウェア群。DAWであるAbleton Live LiteとCubase LEに加え、プロクオリティのプラグインが多数付属します。
Klevgrand からは、ミキシング、エフェクト、ドラム用の高品質プラグイン3種。さらに、GForce の伝統的なシンセ、Native Instruments や Orchestral Tools の音源、Melodics のレッスンコンテンツも含まれており、これだけで楽曲のクオリティを一段階引き上げることができます。これらのソフトウェアを個別に購入すると十数万円に相当するため、かなり嬉しいポイントです。
以上、Novation Launchkey MK4シリーズについて紹介しました。ハードウェアの質感、DAWとの連携、作曲支援機能、拡張性、そして豊富なバンドルソフトウェア。そのすべてが非常に高いレベルでまとめられており、前モデルから販売台数を大きく伸ばしているのも納得の完成度となっていました。これからDTMを始める最初の一台としても、長年制作を続けてきた経験者の新たな相棒としても、最適なモデルとなっています。ぜひ制作スタイルに合った一台を見つけて、その実力を体験してみてはいかがでしょうか?
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Novation Launchkey MK4シリーズ 製品ページ
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