ALESIS iO DockとTASCAM iU2、どっちがいい??

以前、「iPadのDTMにおける究極の周辺機器、ALESIS iO Dockが登場だ!」としてALESISiO Dockを紹介しました。その時点では究極だったと思うのですが、先日、TASCAMからコンパクトなオーディオ&MIDIインターフェイス、iU2が発売され、必ずしもiO Dockだけがベストともいえない状況になってきたようです。

iU2の詳細については、先日AV Watchの連載記事、「第503回:iPhone/iPad/USB対応ティアック「iU2」を試す~デジタル出力/MIDI入出力も可能なI/F ~」でもレポートしているので、ぜひそちらをご覧ください。ここではiO DockとiU2、仕様上そっくりのこの2つを実際に使ってみてどう違うのか、DTMを考えたとき、どちらがいいのかを比べてみました。

TASCAM iU2とALESIS iO Dock



iO DockとiU2に共通するのはオーディオインターフェイス兼MIDIインターフェイスであるということ。どちらも仕様上は1系統のステレオ入出力、1系統のMIDI入出力という点であり、マイク、ライン、ギターの入力に対応しているなど、とってもよく似ています。

でも2つを並べるとかなり見た目も大きさもまったく違いますよね。ガッチリとしたiO Dockコンパクトで機動性の高いiU2といったところでしょうか。一番気になる値段ですが、この記事を書いている2012年5月10日現在、Amazonでの価格がiO Dockが17,471円iU2が12,869円と約5,000円の差となっています。

iO Dockのいいのは、やはりそのガッチリしているところ。重量的にも結構あるので、ステージなどで使っていても安心という面があります。その反面、融通はきかないんですよね。まず、画面は横位置固定となっているので、iPadを縦で見たり、反対方向にすることは、ちょっと無理。また、DOCK接続がかなりしっかりしているこため、抜き差しもしにくいという面もあります。また、標準ではiPad1に対応していて、iPad2で使うには付属のトレイのようなアダプタが必要となります。そして、iPad3(新しいiPad)では使えないんですよね。それもあって、先日名称が、「iO Dock(Pro Audio Dock For iPad & iPad2)」とサブタイトルが付いたようですね。

それに対し、iU2ははるかにコンパクトで軽い機材。ケーブルでDOCK接続するだけなので、縦横利用を含めて自由に取り回しが可能だし、iPad3でも問題なく接続できます。また、iO Dockにはない非常に大きなメリットとして、iPhone、iPod touchでも使えるという点もありますね。確かに頑丈な機材とはいえませんが、ケーブルはカッチリとハマるので、抜けやすいといった心配はないと思います。

非常にコンパクトでiPad側からの電力で動作するiU2 

次に電源について。iO DockはACアダプタ接続が必須であるため、電源がないと使えないけれど、充電しながらのプレイができるので、バッテリー切れになるような心配がない、というメリットもあります。それに対し、iU2は超低消費電力設計になっているようで、iPad、iPhoneからの電源供給だけで動作することが可能です。ヘッドホン出力の音量を比較する限り、どちらも変わらないかなり大きな音を出すこともできますね。では、長時間使う場合、バッテリー問題が出てくるかというと、それを回避する方法も用意されていました。iU2にはUSB端子があり、ここにACアダプタ経由で電源を送ってあげれば、充電しながらのプレイも可能になるのです。このACアダプタは別売となっていますが、わざわざTASCAM製品を買わなくてもUSBミニケーブルさえあれば、iPad用のアダプタが使えるので問題ありませんよ。

iU2には3つのTRSフォン入力端子、iO Dockは2つのコンボジャック 

今度は入力について比較してみます。iO DockはXLRとTRSフォン入力が可能なコンボジャックが2つ搭載されています。それに対してiU2はギター入力と、TRSフォン入力が2つ。もっともギターとTRSフォンのLチャンネルは切り替えとなっているのですが。ではXLRのマイクが接続できないかというと、そうではありません。TRS-XLR変換コネクタケーブルが2つ付属しているので、これを使えばいいのです。

端子の切り替え、ファンタム電源のオン/オフなどはボトムパネルのスイッチで行う

ただし、コンデンサマイクを使う場合には1点注意が必要です。ご存知のとおり、コンデンサマイクには+48Vのファンタム電源供給が必要なのですが、これを行うためには、前述のACアダプタ接続が必須iPad/iPhoneからの電源供給の場合は、ファンタム電源供給ができない仕様になっているのです。

iU2には電源供給用のUSB端子とS/PDIFコアキシャル出力がある

そして私個人的にiU2が非常にいいと思っているのは、ここにはS/PDIFコアキシャルのデジタル出力を搭載しているという点。これを使えば、iPad/iPhoneの音を劣化ナシに取り出すことができるわけです。これをPCにデジタルのままレコーディングするということもできるわけですから、これだけを目的にiU2を買ってもいいのでは、と思うほどです。

対するiO Dockにはビデオ出力端子が装備されています。といってもiPadの画面がビデオ出力できるのではなく、YouTubeなどの動画を再生させる場合に、その動画をビデオ出力できるというもの。それがほしい人にはいい製品なのだと思いますが、DTMユースという意味ではあまり関係ないように思うんですよね。
iO DockにはMIDI端子が装備されているが、iU2は専用ケーブルを用いる

MIDIについては、どちらも機能的には同等です。iO Dockは本体にMIDI端子があるのに対し、iU2は付属ケーブルを使うという仕様。ケーブルの自由度においてはiO Dockに軍配が上がります。
それからオマケ機能ともいえますが、PCとのUSBでの接続性においてもiO DockとiU2では大きな違いがあります。iO DockはPCと接続すると、MIDIの入出力デバイスとして見えるようになっています。つまり、PC上のソフトシンセを、iPadのGarageBandの鍵盤で演奏するといったことができるのですが、あまり使い道はなさそうです。それに対し、iU2の場合は、iPad/iPhoneの世界とは切り離し、iU2自体がPCのオーディオインターフェイス兼MIDIインターフェイスとなる形になっています。もっとも16bi/44.1kHzという仕様だから、あまり期待するほどのものではないと思いますが……。

以上、iO DockとiU2を比較してみましたが、いかがでしょうか?S/PDIFの話を別にすれば、業務用で使うならiO Dock、DTMユースならiU2というのが結論だと思うのですが、どうでしょうか?

【追記】
私も含めてですが、すでにiO Dockを購入した人も多いと思います。この記事を読んで感じられたと思いますが、あえてiU2に買いなおすという必要はないですね。私の場合は、記事での必要上、両方入手しましたけどね。S/PDIF出力がどうしても必要、やっぱりiPhoneで使いたいといった場合は別ですが、iPad1/2であれば、iO Dockは今後もずっと使えると思いますよ。

モバイルバージョンを終了