iPad用でVSTも使える超高性能24/96のDAW、Auriaを使ってみた

以前「iPad用にVSTプラグインが動く48トラック本格派DAWが登場だって!?」という記事でも紹介した、Auria。発表されてから、なかなかリリースされなかったのですが、先日の連休の最終日7月17日にApp Storeに登場していました。今日現在、日本円で4,300円とiPadアプリとしてはなかなか高価ではありますが、PCのDAW価格から考えれば破格値ともいえる低価格。実際どんなアプリで、まともに使えるものなのか使ってみました。

ダウンロード購入して最初に気づいたのは、ファイルサイズがでかいこと。ダウンロードに結構時間がかかります。また初回起動時だけはイニシャライズにかなり時間がかかり、5分程度を要しました。インストール後、確認すると638MBありましたが、GarageBandと比べるとそれでも半分なんですね。
VSTプラグインが使えるPC顔負けの高性能DAW、Auria


さっそく起動してみると、なかなか迫力あるミキサーコンソール画面が起動してきます。最大で48トラックまで使えますが、必要に応じてトラック数は変えられます。また、通常のレコーディングトラックのほかに、バスが8系統用意されており、各トラックからは直接マスタートラックに送るほか、これらバスへ送ることも可能になっています。

48トラック(左)+8バス(中)+マスタートラック(右)という構成 

画面はiPadの角度によって横位置、縦位置を選べるようになっています。基本的な画面はこのミキサーコンソール画面とトラック画面の2つ。PC用のDAWを使った経験のある方なら、誰でもすぐに使い方は理解できるはず。実際、マニュアルはまったく見ませんでしたが、戸惑うことなく使うことができました。

ミキサーコンソールは縦位置にも対応

トラック画面もDAWユーザーならすぐに使えるUIになっている

以前、iPad/iPhoneのレコーディングで利用できるのは24bit/48kHzまでだと思っていたのですが、これは24bit/96kHzに対応。サンプリングレートは新規プロジェクトを作成するときに設定するようになっています。すでに、Multitrack DAWが24bit/96kHzに対応していたわけですが、徐々にPCとの差は確実に埋まってきていますね。

新規プロジェクト作成時にサンプリングレートを設定する

では、もう少し具体的に見ていきましょう。Auriaの最大の特徴といえるのは、なんといってもVSTプラグインが使えるというところでしょう。48のトラックおよび8つのバストラック、そしてマスタートラックの一番上に「FX」というボタンがあり、これをオンにするとPSP Audiowareのチャンネルストリップが登場します(マスタートラックだけはマスターチャンネルストリップになっている)。

FXボタンをタップするとチャンネルストリップが起動する

そしてこの右には、4つのスロットがあるのが確認できますよね。ここにプラグインを組み込めるようになっており、具体的には
PSP StereoDelay(ディレイ)
PSP StereoChrus(コーラス)
ClassicVerb(リバーブ)
Convolution Reverb(IR設定可能なコンボリューションリバーブ)
ReTune(ピッチ補正)
のそれぞれ。いずれも、市販のVSTプラグインとなっており、これが各トラックで利用できるわけです。
5種類のエフェクトをインサーションの形で4つまで差し込める

ためしにUSBオーディオインターフェイスを介し、3つのエフェクトを挿した状態でレコーディングしてみたところ、モニターにはエフェクトのかかった音がほとんどレイテンシーを感じることなく返ってきます。なかなか優秀ですね。

自動ピッチ補正のためのプラグイン、Mu TechnologiesのReTune

また、マスタートラックには二つのAUXラックがあり、ここにも1つずつエフェクトの設定が可能で、各トラックからはセンド・リターンの形で利用することができます。

オプションの形で販売されているVSTプラグイン
さらに、AuriaStoreという機能があり、ここにアクセスすると追加のプラグインが購入可能になっています。PAS AudiowareFabFilterOverLoudの著名プラグインで、$9.99~$19.99で追加可能となっています。ちなみに、ここで追加可能なVSTプラグインはPC用のプラグインではありません。以前の記事の追記にも書いたので、そちらを参照していただきたいのですが、ちょっとしたトリックとなっています。
オートメーションを書き込むとトラック画面で確認でき、エディットも可能
このコンソール画面でトラックのWボタンをONにしてから再生中にフェーダーやパンを動かせば、オートメーションとして記録されていくのも一般のDAWと同様。その結果はトラック画面のほうで確認し、エディットすることも可能です。この辺の機能を見ても、PCのDAWと遜色なく、かなり高機能なDAWといえそうですね。

機能面でいえば、MIDIがないのが最大の違いでしょう。この辺がGarageBandとの最大の違いともいえるあたりです。GarageBandは、遊び要素いっぱいの楽しいDAWであるのに対し、Auriaは本気のDAW。プラグインの画面やチャンネルストリップからもプロ仕様であることを前面に出した強力なアプリに仕上がっています。

性能面という点では、セッティング画面を見ると、だいたいのニュアンスは伝わるのではないでしょうか?ミキサー部分は64bitフローティング処理にすることも可能であるなど、この辺のこだわりも徹底していますね。
Auriaのセッティング画面
右下のDevice Linkingのところを見ると、WISTでの同期機能も用意されています。さらに今回は試しませんでしたがAuriaLinkなるものも用意されています。これはBluetoothを利用して2台のiPadをリンクして使うというもの。何か昔あったSteinbergの分散処理、VST System Linkを思い出してしまいました。
AuriaLinkではBluetoothを使って2台のiPadを接続でき、最大96トラックが使える

また、画面最上部のサンプリングレートの下を見ると分かるのですが「INT」となっている場合はiPadの内蔵音源、「USB」となっているときは、USBオーディオインターフェイスが接続されていることを表します。試しにTASCAMのiU2およびLine6のMobileInを接続してみましたがバッチリ動作してくれました。

と、ざっと機能紹介をしてみましたが、じゃあ、実際使ってどうなのか、というのがポイントですよね。4,300円を出す価値があるのか、と。私個人の感想ですが、十分買う価値はあると思いました。iPadでここまでできるのか、というのを実感できます。

外部とのやりとりの機能も充実、AudioCopyにも対応している

また、PCとの連携機能もかなりしっかりしており、基本的にDropboxを経由させることで、さまざまなオーディオデータをやり取りすることが可能です。もちろん、iPad上の各種DTMアプリとオーディオデータをやりとりするAudioCopyにも対応していますよ。

ただし、これが完璧なアプリなのか、というとそうではありません。やはりいろいろなところに限界を感じました。最大のポイントはCPUパワーです。今回、iPad 3rdを使ったのですが、18トラック使ったデモ曲をいじると、確かに普通に再生はできますし、たくさんエフェクトも利用しているのですが、CPUパワー的には精一杯という感じ。つまり、さらにエフェクトを追加しようとしたり、何かいじると、処理能力オーバーになって止まってしまいます。
トラック数が多くなるとCPU負荷オーバーでストップすることもしばしば
また、これはバグなのではないかと思いますが、特定の動作をさせると、音が止まってしまうことがありました。具体的には記事用に画面キャプチャをすると、音が止まり、Auriaを再起動させないと復帰しないんです。この辺は今後のアップデートに期待するところかもしれませんね。

今後、より高性能なCPUを搭載したiPadが登場することで、マシン負荷の問題は解決していくのだと思いますが、現在のところはあまりトラック数やエフェクト数を駆使したレコーディングを行うのではなく、まあ10トラック前後で使っていくというのが気持ちよく利用するためのコツかもしれません。

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