ただJBLのスピーカーって一般的にオーディオ用として広く知られていますが、モニタースピーカーとしてはあまり聞いたことがないですよね。でも実際に聴いてみると、音もフラットな特性で、DTMのモニター用にもすごくいい感じだったのです。となると、ますます気になってくるのが、不思議な音の空間がどのように作られているのかという点です。そこでモノをお借りしたついでに、ヒビノの担当者に詳しい話を伺ってみました。
もちろんスピーカーですから、モノによって音は違うし、部屋の構造や材質などによっても合う、合わないという点はあると思います。ただし、デスクトップ上に置いて使うニアフィールドモニターの場合、どうしてもスウィートスポットが狭いという弱点はあります。つまり、定位置で作業をしているときはいいのですが、ちょっと立って機材の操作をしたりすると、明らかに音のバランスが崩れてしまうため、扱いにくい、という点です。
入力はリアにあるTRSまたはXLRが利用でき、音量は同じくリアにあるボリュームノブを使って調整します。このボリュームノブは無段階ではなく、MSP5 STUDIOと同様、カタカタカタ…と切り替えていくロータリースイッチ式になっているので、8段目とか10段目のように数えながら左右を揃えれば簡単にバランスを取ることが可能になっています。15Wの出力をもったモニタースピーカーですので、普通の家のDTM環境であれば、この目盛りで3~4あたりで十分過ぎる音量になると思いますよ。
電源を入れると、白いLEDランプが点灯するのが、なかなかオシャレでカッコいいですよね。ここで、印象的なのがツイーター部分の形状。しわが寄ったような妙なデザインですが、ここがコーン紙になっているというわけではありません。触ってみても、周りのシャーシと同じ樹脂素材のようで(もしかしたら、同じ素材なのは表面のコーティングだけかもしれませんが…)硬い構造となっているのです。ただ、こにいろいろな秘密が隠されていそうですよね。
田處:JBLは70年近い歴史を持つ会社ですが、いつも最初にフラグシップモデルを出し、その後、普及価格帯のものを出す順番で展開しています。LSR305は、まさにDTM用途などで用いる普及価格帯モデルなわけですが、その元となるフラグシップモデルは2013年の年末に日本でリリースされたM2というラージスピーカーです。JBLとしても、こんなに大きいものは出したことがなかったのですが、15インチの2Wayスピーカーとなっています。現在、アメリカを中心に多くのスタジオに導入されている注目の製品なんです。もっとも1本100万円程度の業務用ラージスピーカーなので、DTMユーザーにとっては、あまり縁のないものかもしれませんが……。
田處:そのとおりです。JBLではM2の周波数特性を一般的なスタジオモニターと比較する立体画像を公開していますが、これを見ても分かるとおり、かなり広い範囲でフラットに音を出すことが可能になっています。そのシステム的な詳細についてJBLでは情報を一切公開していないため仕組み自体はブラックボックスとなっていて、我々もわからないのですが、このイメージコントロールウェーブガイドにより実現しているようです。
田處:確かに、これまでのJBL製品とはだいぶ違う音作りです。これまでは、まさにアメリカンサウンドという音作りであり、そのファンも多かったわけですが、ここ2、3年でJBLとしての音作り全体が大きく変化してきています。従来は、JBLとしての音作りをしていたのに対し、最近は外部からプロデューサーを呼んで音作りをするといったケースも出てきています。実際、M2ではグラミー賞を6回受賞しているFrank Filipetti(フランク フェリペッティ)というエンジニアのアドバイスの下で開発をしており、「いかに原音に忠実に音を再現するか」にこだわった音作りになっているんです。また、今回の小型モデルであるLSR305のLSRはLinear Spatial Referenceの略でJBL独自の設計手法を取り入れています。具体的にはスピーカーの周囲360度にわたり、直接音、反射音、残響音場に関する72もの測定を行い、出力性能を最適化しています。
田處:日本のユーザーの方も安心して使えるよう、要望を出した結果、日本の家庭用の電源電圧でも安定して鳴るように設計されています。また、背面にはLF TRIM、HF TRIMという2つのスイッチがあり、低域、高域について+/-2dBの範囲で出力を増減できるようにしています。したがって、キャビネットが壁のすぐそばで低域が強調されるような場合は、LFの設定を-2dBにするなど、環境に応じた設定をしていただくと使いやすいと思います。
以上、JBLの担当者のお話を紹介しましたが、いかがでしょうか?明らかにスウィートスポットが広いのは不思議だし、すごく嬉しいところです。いろいろなお店でも展示しているようなので、機会があれば、ぜひ音を聴いてみると面白いと思います。
LSR305 | LSR308 | ||
形式 | 2-Way パワード・スタジオモニター | ||
周波数レンジ(−10dB) | 43Hz〜24kHz | 37Hz〜24kHz | |
最大音圧レベル(1m、Cウェイト) | 108dB SPL | 112dB SPL | |
ドライバー構成 | LF:5インチ(127mm)、HF:1インチ(25mm) | LF:8インチ(203mm)、HF:1インチ(25mm) | |
クロスオーバー周波数 | 1,675Hz | 1,800Hz | |
パワーアンプ出力 | LF:41W、HF:41W | LF:56W、HF:56W | |
入力端子・形式 | XLR×1、標準フォーン(3P)×1、電子バランス | ||
入力感度(−10dBV、1m) | 92dB SPL | ||
最大入力レベル(+4dBu) | +20.3dBu | ||
電源 | AC100V、50/60Hz | ||
消費電力 | 1/8出力時、ピンクノイズ | 15W | 20W |
電気用品安全法による | 15W | 20W | |
寸法(W×H×D) | 187×298×242mm(除突起部) | 257×423×300mm(除突起部) | |
質量 | 4.9kg | 8.8kg | |
付属品 | 電源ケーブル、ゴム足×4(1シート) |
【関連情報】
JBL LSR305/LSR308製品情報
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