生粋のPCユーザーであり、現在のメインマシンも自作PC。DAWにはSONAR Platinumを使って、数々の楽曲を制作しているとのこと。その一方でアナログエフェクター開発者としても有名で、私も以前に購入した本「ド素人のためのオリジナル・エフェクター製作」は2万部も売れているのだとか!? また今年6月には月蝕會議という制作集団であると同時に全員がプレイヤーでアーティストであるユニークなグループを結成して話題になっています。そのエンドウ.さんに先日お会いして、いろいろとお話を伺ったので、紹介してみましょう。
エンドウ.:僕はGEEKSというパンクバンドをやっているのですが、GEEKSとは、まさにオタクという意味で、元々アニメが大好きだったことから、こんな名前を付けたんですよ。もっともGEEKSはオタク音楽ではなく、完全なパンクなんですけどね。そのアニメ好きが高じてか、声優さん、アニソンのお仕事に恵まれ、最近ますますお仕事が増えてきて、今に至っています。今年の6月には「月蝕會議」というグループを立ち上げました。これはメンバー全員が作詞・作曲・編曲を手掛ける人であり、かつアーティスト・プレイヤーであるバンドなんです。いわゆる制作集団というのはあったけど、それがちゃんとバンドで活動しているという形態はなかったように思うので、面白いな、と。ちなみにGEEKSは2008年スタートですが、その前にはアカツキというバンドで活動していて、メジャーデビューは佐久間正英プロデュースという形で2003年でした。
エンドウ.:高校生くらいからですね。当時パソコンが大好きで、Windows 3.1のころから触れていたけど、Windows 95が出てから本格的に触るようになり、Singer Song Writer Audio 4というのを使ってデモを作ったのが最初でした。その後、バンドをはじめたのですが、そこからはMTRに移行しました。具体的にはTASCAMのPORTASTUDIO 414というカセットテープのMTRですね。その後、RolandのVS-2480を買ってハードディスクレコーディングというのをやり、これで作ったサウンドをPCに取り込んで使っていました。この際、SONAR HOME STUDIO 6を使っていたのですが、これでバランスをとってEQやコンプで処理してCD-Rに焼いていたんですよ。これがアカツキのころですね。
エンドウ.さんがその昔使っていたTASCAMのPORTASTUDIO 414
エンドウ.:2012年のころかな、青木繁男さんと一緒にアニソンシンガーのバックバンドを組んだことがあったんですよ。当然、彼はCubaseだし、Cubaseを見ていて「良いな」と思うようになり1年間使ったことはありました。でも、やっぱりギターを録ったり、オーディオを録音するにはSOANRのほうが使いやすかったので、SONARで録ってからCubaseへ変換するというような使い方をしていたんです。それなりにCubaseに慣れようとは思ったのですが、なんかUIというかビジュアルが好きで、結局SONARに戻りました。SONARが使いやすいんです。
SONAR Platinum上のエンドウ.さんのプロジェクト。画面左端がPro Channel
エンドウ.:みんな好きなのですが、やっぱりPro Channelが最高すぎますね。どれだけの音の違いがあるのかはよくわかりませんが、Pro Channelを見ちゃうと、ほかのDAWを使う気になれないんですよ。見た目がいいと音がいい気がするんですよね(笑)。たとえばPro Channelにチューブサチュレーターがあるけど、あれはいいですね。シンセを打ち込んだときに、チューブサチュレーターをかけると、エンジニアさんから音を褒められるようになったんですよ。実際、なんかミックスしやすい音になるんですよね。単音でパッと聴いただけでは何が変わったのかよく分からないんですが、ちょっとかけるだけで、違うんだな……と思って、それ以来離れられなくなりましたよ。
MIDIの打ち込みは基本的にこのピアノロール画面で行っているという
エンドウ.:パンクバンドのGEEKSでは、ガラガラ声で歌うことも多くて、V-VOCALでは全然ピッチを拾ってくれなかったので、ダメだったんですよ。ところがMelodyneにしたら、どんなグチャグチャなデスボイスでも、雑音のような声でもしっかり拾ってくれるので、断然よくなりました。SONARに付属するのはMelodyne 4 Essentialですが、これだとピッチの上下はできますが、ピッチカーブを描いたりフォルマントを変えるといったことができません。そのため、今はMelodyne 4 Editorにアップグレードし、これを駆使しています。
Melodyne 4 Editorを用いてボーカルをエディットする
エンドウ.:僕はプラグイン収集癖はないので、できるだけSONAR付属のものを使うようにしてます。とくにEQやコンプなどはPro Channelがいいなと思って使ってますし、そもそも基本的にEQもそんなには使わないんですよ。何かをカットするくらいですね。みんなEQやコンプについて熱く語ってますけど、僕はあんまり分からなくて…(笑)。
エンドウ.:僕は楽器がギターで、それ以外の楽器は鍵盤も弾けないためエレキギターを弾きながら鼻歌でアイディアを作っています。ただ、これは特にレコーディングするわけではなく、なんとなくメロとコードを決めていく感じです。これができたら、最初にベースを打ち込みます。最近はIK MultimediaのMODO BASSが気に入っていて、これを使いルート音だけをベタ打ちです。アニメの曲などは秒数の制約もあるために、これでまずは89秒サイズを作っちゃうんです。これができたらドラムを打ち込んでいきます。打ち込みは全てマウス(トラックボール)です。ドラムとベースができたら、ここにメロを入れて、仮ギターを録音して……といった流れですね。
メロディー用にはフリーウェアのMagical 8bit Plugを使っている
エンドウ.:これももちろんピアノロールで打ち込みで入れていくのですが、問題は音色でした。このメロディーは歌い手さんに必要なので、シンセメロで分かりやすく、また歪んでなくて、オケから分離してハッキリと聴こえることが重要です。いろいろ試してみたものの、結果的に行き着いたのがYMCKのYokemuraさんが開発したフリーウェアのMagical 8bit Plugです。これが結果的に一番いいんですよね。大変重宝しています。
いまは発売されていないNIのPro-53もシンセ音源としてよく使っている
エンドウ.:やっぱり寂しいので、エレキギターを両脇に仮に入れるのですが、普段パンクバンドをやっているので、そことの切り分けという感じで楽曲提供の際はあまりギターを入れたくはないんですよ。だからいったん入れた後で、あとからほかの音源を盛り込んだ後にギターを抜いたりすることが多いですね。ほかのトラックは打ち込みがほとんどで、やっぱりKONTAKTは使うのですが、これも使う音色はそこそこ決まっていて、ハープとグロッケン、タンブラーベルなんかをマンネリのように使ってます。また、昔のNative Instruments製品にあったPro-53は今もよく使いますね。これもプリセット音色ですけどね。シンセでいうと、フリーウェアのSynth1もよく使っています。
ストリングスやティンパニーにはUVIのOrchestral Suiteを活用
エンドウ.:比較的最近までQUAD-CAPTUREを使っていたのですが、エンジニアさんから、「いい加減、いいものを使ってくれ、もっといい音で録れるはずだ」って言われて、RMEのFireface UCXを導入したんですよ。自分ではあんまりピンとこないのですが、ブラインドテスト的な意味も込めて、いくつかのオーディオインターフェイスで録音したものを送ったりするのですが、どのエンジニアさんもRMEで録ったものを「いい」っていうから、やっぱりそうなんでしょうね。ちなみに、最近出先で録音する場合はTASCAMのUS-2×2を使うケースが多いですね。
--ありがとうございました。
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