DTMステーション、M3-2018春に参戦。作曲家の多田彰文さんと新レーベル始動し予算・会計も大公開。第1弾シンガーは小寺可南子さん!

CD制作って、いくらくらいかかるのか」、「実際に販売するとして、儲かる話なののか」、「各担当者ごとにいくらくらい分配するのが適正なのか」……なかなか分かりにくいことも多いですよね。そこで、それを自らレーベルを作って、その様子をすべて公開したら面白いんじゃないか……、そんな話をDTMステーションPlus!を一緒に運営している作曲家の多田彰文(@akifumitada)さんと話していたのですが、それを実践してみることにしました。

もちろん、やるからには本気でいい作品を作ろう!と制作を開始し、一昨日レコーディングも終えたところです。新レーベルの名称は「DTMステーションCreative」。第1弾となるのは2曲入りのミニアルバム「Sweet My Heart」で、作詞・作曲は多田さん、シンガーにはコテカナこと小寺可南子(@cana_ko_tera)さんを迎えることにしました。ミックスはDTMステーションEngineeringでもお馴染みのプロのエンジニア、飛澤正人(@flash_link)さんにお願いすると同時に、VRミックスなる、かなり前衛的なテクノロジーにもチャレンジしてみることになったのです。CDのリリースは4月29日に行われる音系・メディアミックス同人即売会M3-2018春」を目指します。そんなすごいメンバーにお願いして、予算的に成り立つのか、破産してしまうことはないのか、ちゃんと報酬は払えるのか……と心配なこともいっぱいですが、プロであるみなさんとも相談しつつ、予算・会計も大公開しながら、プロジェクトを進めていきます。

※M3についてご存知ない方は「実はCDが売れてないのはメジャーだけ!? 万単位の人が押し寄せ、CDを買い漁る、音系・メディアミックス同人即売会[M3]」、「1万人超がCDを買い急ぐ、音系・同人展示即売会M3の威力」などの記事も併せてご覧ください。


新レーベル、DTMステーションCreative始動。次回のM3でリリースします!



今回の新レーベル「DTMステーションCreative」に関しては、ニコニコ生放送Fresh!によるネット番組「DTMステーションPlus!」でも何度か紹介してきたので、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、まずはこれが何なのかを改めて簡単に紹介しましょう。

DTMステーションCreativeは、DTMステーションPlus!と同様に、私、藤本健と作曲家の多田彰文さんで立ち上げるレーベルであり、この二人が企画・運営、つまり二人がプロデューサーとして活動する新規事業です。


DTMステーションCreativeはDTMステーション、Plus!、Engineeringと連携しながら運営する新事業

一方、DTMステーション・グループ(?)としては、エンジニアの飛澤正人さんと運営しているDTMステーションEngineeringもあるので、ここともタッグを組みながら活動していこうとスタートしたものなのです。


ちょうど1年前のDTMステーションPlus!の番組で、コテカナさんに歌ってもらったのが今回の企画のキッカケだった

ここで、最初に考えたのが、第1弾(と呼ぶだけに、その後も続けていく気は満々です)で、誰をアーティストとして起用するか、ということ。いろいろな案はあったのですが、多田さん、藤本ともに、最初に挙げたのがコテカナさん。歌唱力は抜群だし、人気も絶大。一方で1年前のapollo twinの番組に出てもらった際には、多田さん書下ろしの楽曲を歌ってもらったということもあり、それを完成させれば1つできる、という思惑もあったのです。

当初考えた予算案
そのコテカナさんを頭に描きつつ、多田さんとザックリ予算感を出し、DTMステーションPlus!の番組内でもお見せしたのが上の図でした。さらに、ここから簡単に損益分岐点を考えると下のように500枚程度は売らないと、赤字になるということも見えてきたのです。なかなか簡単ではなさそうですよね。

当初想定していた損益分岐点

その後、コテカナさんに正式に依頼したところ、二つ返事でOK!もちろん、作詞・作曲は多田さんの担当です。売れっ子作家さんですから、超多忙な中、作ってもらったのです。当初3曲入りという構想もあったのですが、4月29日にリリースということは、1か月前の3月末にはプレスに出す必要もあるということで、時間的に厳しいことから断念。その分、中身の濃いものにしようと2曲(ボーカル入り2曲とインスト版2曲の計4曲)のミニアルバムとなったのです。

DTMステーションCreative、第1弾はシンガーに小寺可南子さんを起用

具体的にはバラード調の「Sweet My Heart」、アップテンポのポップス系の「Appreciation 100」の2曲。作詞・作曲だけでなく、編曲、つまりDAWを用いた打ち込みから楽器演奏のレコーディング、コーラスレコーディングまで、すべて多田さんの担当です。


「Sweet My Heart」、「Appreciation 100」ともに多田さんによる作詞・作曲・編曲

たとえば「Sweet My Heart」の場合、打ち込み以外でレコーディングに使った楽器は、アコースティックギター、バイオリン、ホルン、パーカッションなど6楽器・12パート。Appreciation 100でもコーラスを入れて8パートとかなり豪華なんです。一般にこれをスタジオミュージシャンに頼んでレコーディングした場合、1パート1時間で1万円程度。つまり、これだけで20万円かかっちゃうところです。

が、ご存知の方もいらっしゃるとおり、多田さんは超の付くマルチプレイヤー!どんな楽器でも自分で演奏しちゃうので、これらの演奏も編曲料として入れてもらってしまいました。その編曲料は、プロの料金設定として一般的な最低ラインといわれる10万円(最近はもっと低いケースも多いとは聞きますが……)。まあ、演奏料を考えれば、多田さんにはかなり安くお願いしたのではないかな、と思っているところです。

ここで気になるのは、作詞料や作曲料をどうするか、です。もちろん、買取で1曲いくら、と設定することも可能ですが、ここは本気モードなので、著作権管理団体であるJASRACに委託する形での著作権印税処理、という形をとることにしました。つまり、多田さんの収入はJASRACからもらう形にする一方で、このレーベルとしてはJASRACに著作権使用料を支払うという形です。この金額、JASRACの「使用料計算シミュレーション」というWebページにおいて、定価や使用曲数を入力すると概算が出てくる仕組みになってるんですよ!最終的な請求額とは多少ズレることがあるそうですが、ここでの計算によると、64,800円という計算になりました。

コテカナさんへのギャランティーをどうすべきか……
つづいてはコテカナさんの歌唱料についてです。これも買取、印税、その組み合わせといった方法がありますし、相場も人によっていろいろのようです。以前、コテカナさんと話しをした際には「多田さんの素敵な楽曲を歌えるだけで十分。安くて構わないですよ」と言ってくれてはいました。が、もちろん、相応のものを支払う必要はありますよね。

多田さんに最近の相場について伺ってみたところ「イニシャルで支払う歌唱料は1、2万円~100万円以上と人によっていろいろ。一方で、アーティスト印税=歌唱印税というものがありますが、普通1%あればいいほうですね」とのこと。そこで算定したのは、歌唱料10万円、歌唱印税5%という数字。同人レーベルですから、そんな多くの枚数を望めないことは重々承知の上ではありますが、コテカナさんにとっても、お仕事としてなんとか成り立つ数字ではないかと、これから正式交渉をしようと思っているところです(まあ、もうレコーディングは終わったタイミングですけどね)。

コテカナさんはこのギャランティーでこれから交渉!

そして、アルバム制作において、もう一つ重要な工程となり、予算も必要になってくるのがミックス、そしてマスタリングです。これをDTMステーションEngineeringへの発注という形式で飛澤さんにお願いすることにしたのです。DTMステーションEngineeringの詳細は以前のサービス概要をご覧いただきたいのですが、これは一般DTMユーザーを対象に超破格値で飛澤さんがミックスしてくれるというもの。基本価格は1曲7万円でトラックの差し替えなど大幅な直しがあった場合1トラック1万円の追加、となるものです。

実際どうなるかは、これからやってみないとわからないのが正直なところですが、私と多田さんの読みとして「Sweet My Heart」は基本料金だけで行けるはず、「Appreciation 100」は大幅な直しなどあるのではと10万円を見込んでいました。


飛澤さんによるVRミックスを行ってもらうことに!

その飛澤さんと公開ミーティングということで、先日のDTMステーションPlus!の番組に出演いただいた際、爆弾発言が飛び出したんです。「1曲、VRミックスをやってみましょうか」と。VRミックスの詳細は、また改めて記事にする予定ですが、おそらく世界中で飛澤さんにしかできないのでは、と思われる手法を用いたミックスで、2chで聴いているのに、立体的なバイノーラルサウンドに仕立て上げるというもの。これは相手がプロでもアマチュアでも1曲あたり30万円で一切値引きはしない、というものだそうです。

とはいえ、さすがにそんなお金をポンと出せる余裕はなく、「どうしようか…」と多田さんとコソコソ話をしていたところ、飛澤さんから「今回はDTMステーションCreatveの設立祝いということで、特別に通常ミックス料金でやりますよ」という、なんともありがたいお申し出をいただき、遠慮せずに、それに乗っかることにしました。これだけでも、かなり期待できそうなアルバムですよね!

宮地楽器のRECスタでレコーディングを実施
そんな枠組みが決まった中、先日、コテカナさんのボーカルレコーディングをしてきました。どこのスタジオを使うかを考えたのですが、これもDTMステーションネタといことで、以前記事でも取り上げた、東京神田の宮地楽器RECスタを使うことにしました。

ここは、いわゆるレコーディングスタジオとはちょっと違い、DAWを使える人が自ら機材を操作してレコーディングを行うというちょっとユニークなスタジオ。ボーカルも録れるし、ドラムも録音することもでき、1時間の使用料は機材込みで4,000円+税と破格値。しかも3時間パックなら10,000円+税となっているので、予算の少ないレコーディングにおいては非常に嬉しいスタジオです。

宮地楽器のRECスタ/Drumスタには新ドラムセットYAMAHA PHXが導入されていた

ここのドラムは、スネア、キック、タム、トップなどそれぞれに個別のマイクがあらかじめ10本以上仕込んであるので本気のレコーディングができるのが特徴。先日、YAMAHA PHXという871,000円もする新品のカスタムドラムを入れたとのことで、ドラムレコーディングにとっては、最高の環境になっていたのですが、今回はあえてドラムは端に追いやって、ボーカルブースを作ってここで、コテカナさんのレコーディングを行いました。

スタジオでのセッティングに飛澤さんが立ち会ってくれた!左から藤本、コテカナさん、飛澤さん、多田さん

多田さんのアレンジデータを2MIXしたものを、ここのPro Toolsに流し込んでのレコーディング。実は、その話を飛澤さんに話をしたところ、ボランティアとしてセッティングだけ立ち会ってくれるとのこと。そんなありがたい話に甘えてしまいました!

SONYの新マイク、C-100にチャレンジ

ここでは、私からの提案として、マイクにSONYから出たばかりの新製品、C-100を試してみたのです。これについては、先日AV Watchで開発者インタビューをしたばかりですが、あのC-800Gに近いテイストでありながら、50kHzまでフラットにレコーディングできる特性を持っているというのです。とはいえ、スペックだけを信じてこれに決定するわけにもいきません。そこで、定番のNeumann U-87AiとC-100を並べて同時録音した上でどちらがいいかを飛澤さん、多田さん、コテカナさん、藤本の4人で聴き比べてみました。

Neumann U-87AiとSONY C-100を比較してみた

結論は全員一致で「C-100がいい!」というもの。たしかにU-87Aiはいい音であり、無難であることも間違いなかったんですが、コテカナさんの声質に合ったこと、そして何より、すごく繊細に音をとらえることができるのが聴いてみて一発で分かったからですね。そのU-87AiとC-100を同時に使えるヘッドアンプが必要ということで、オプション料金1000円/時間を支払い、NEVE 5024を借りて使いました。


オプションのヘッドアンプ、NEVE 5024を使用してレコーディングしてみた

また2曲のレコーディング、3時間では終わらなったので、延長1時間をしたため、RECスタでの支払いはトータル18,000円+税。飛澤さんがセッティングを手伝ってくれるという、ちょっと反則ワザもありましたが、いいレコーディングができました。ちなみに、当日のPro Toolsオペレーションは、DTMステーションPlus!のスタッフでもある中村太樹君が担当してくれました。


Pro Toolsのオペレーションは中村太樹君が担当
この後、飛澤さんに全データを渡して、ミックス作業に入るという段階。本当ならその後にマスタリングという工程もありますが、今回は2曲であり、その2曲とも飛澤さんが担当なので、ある意味、マスタリングの意味合いまで含めてお願いする形で、どうなるか楽しみなところ。

最後はプレスということですが、多田さんがネットで見つけたよさそうな会社にお願いすることを予定しています。金額的にはこの表のとおりであり、500枚刷るよりは1,000枚がいいだろうということで、これで発注していきます。

これでだいたいの予算が立ったわけですが、最後はプロデューサーとしての私のフィー。「そもそも、藤本はお金の勘定だけで、何もしてないじゃないか!」という指摘はその通りですが、まあ、このレーベルを企画し、お金はいったんすべて私が出すということでのリスク代ということ。これについてどのくらいがいいか、多田さんと相談したところ、「いや、そのお金の勘定こそがプロデューサーのメインの仕事ですよ。プロデューサーなんだから20%くらいでいいんじゃないの?」と、かなりどんぶり勘定のようなお返事をいただきました。それをちょっと控えて15%と入れて作った損益分岐表が以下のものです。

CDタイトル Sweet My Heart
概要
  内容・曲数 4曲入り (歌2曲・同曲インスト2曲)
  頒布・販売価格 ¥1,000
  作成枚数 1,000枚  
  サンプル(資料用見本)設定枚数 50枚    
  頒布・販売枚数 950枚    
  完売時売上見込 ¥950,000    
         
制作費        
  多田彰文 作詞料(2曲分) ¥0 著作権印税処理 → JASRACからの分配
  多田彰文 作曲料(2曲分) ¥0 著作権印税処理 → JASRACからの分配
  多田彰文 編曲料(2曲分) ¥200,000    
  ミュージシャン演奏代(2曲分) ¥0 編曲料に含む  
  小寺可南子 歌唱料(2曲分) ¥100,000 歌唱印税処理 → CD1枚毎に5%
  歌唱録音スタジオ使用料 ¥19,440
  飛澤正人 Mix&Mastering料
(Sweet My Heart)
¥70,000
  飛澤正人 Mix&Mastering料
(Appreciation 100)
¥100,000  
  藤本健 プロデュース料 ¥0 プロデュース印税処理 → CD1枚毎に15%
  M3出店費用 ¥14,100
  ジャケット制作料 ¥0    
  プレス発注料 ¥70,000 1,000枚分
  JASRAC著作権使用料 ¥64,800 1,000枚分  
  宣伝物作成料(POP・フライヤー等) ¥5,000 5,000円〜10,000円
  ケータリング他雑費 ¥5,000
  レコーディングアシスタント(中村) ¥5,000
合計 ¥653,340
ペイライン(損益分岐点) 769枚以上

これによると、損益分岐点は769枚と、ちょっと途方もない数字。M3で売りさばけるのは、1サークルせいぜい250枚が限界といわれているので、M3だけでは大赤字。1年くらいをかけて、いろいろ宣伝をしながら売っていきたい、その途中経過なども報告していきたいと思っているところです。

なお、DTMステーションCreativeならではの企画としては、単にCDで売るだけではなく、iTunesmoraなど配信サイトを使ってのリリース、ハイレゾ版のリリース、さらにはマルチトラックのデータの販売など、いろいろと考えているところです。これらについても、詳細が確定したら、順次発表していきたいと思っております。

4月29日のM3-2018春は第二展示場1階、か-18a,bでお待ちしてます!
というわけで、大赤字覚悟の企画ではありますが、よかったらぜひ、4月29日のM3-2018春の第二展示場1F「か-18a、b」にお越しいただき、新譜「Sweet My Heart」(1,000円)をご購入いただけると嬉しいです!多田さん、コテカナさん、私の3名でお待ちしております!

【M3-2018春のご案内】
DTMステーションCreativeの第1弾アルバム「Sweet My Heart」は以下の日時での頒布を行います。ぜひ、みなさんのご来場をお待ちしております。
日時:2018年4月29日(日) 11:00~15:30
場所:東京流通エンター[第二展示場 1階かー18a,b]
頒布作品:「Sweet My Heart」(価格:1,000円)
※会場への入場には入場券代わりとなるカタログの購入が必要となります。詳細はM3のサイトをご覧ください。カタログは3月31日より前売りも行われます。

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