先日4月19日(金)に東京・渋谷のライブ&イベントスペース、LUSH HUB(ラッシュ・ハブ)で、スペシャルセミナーイベントが開催されました。今年4月20日にメディア・インテグレーションは35周年を迎え、CIを一新。今年は35周年ということで、さまざまなイベントを開催するとのことですが、その初回となるこのイベントでは、青木征洋さん、DJ RENAさん、Bob Clearmountain(ボブ・クリアマウンテン)さんとNeeraj Khajanchi(二ラジ・カジャンチ)さんらによる、豪華セミナーが行われました。会場では、LEWITT未発表新製品やTeenage Engineering EP-133 K.O.II & Choir、Positive Grid Spark LIVE & Spark LINK、映画『バジーノイズ』特設展示、イマーシブ体験、プレゼント抽選会なども行われ、かなり楽しいイベントとなっていました。
当日は配信もあったので、メディア・インテグレーションのYouTubeチャンネルから視聴した方もいると思います。ただ、ボブ・クリアマウンテンさんと二ラジ・カジャンさんの配信は行われていないので、セミナーを観れたのは来場者のみ。とはいえ、このセミナーでは世界トップのエンジニアによる対談となっていたので、ミックス・マスタリングしている方にとっては、参考になる話ばかり。そこで、今回DTMステーションでは、「ボブ・クリアマウンテンが二ラジ・カジャンチと語る音楽とミキシングの今」というセミナーをピックアップして、今回のイベントの様子をお届けしようと思います。
35th 2024 Resonate! ring of groove開催
4月19日に東京・渋谷のライブ&イベントスペースLUSH HUBで行われた35th 2024 Resonate! ring of grooveでは、青木征洋さんによる「AIと音楽家の未来」というセミナーや、DJ RENAさんによる「常識にとらわれない先鋭のビートメイキング術」のセミナー。そして「ボブ・クリアマウンテンが二ラジ・カジャンチと語る音楽とミキシングの今」が行われました。最後にはDJ RENAさんのライブパフォーマンス、プレゼント抽選会もあったりと、かなり面白いイベントでした。
セミナー以外にも、AMS NEVEの新製品1073SPX-DやAPOGEE Symphony I/O Mk2を使ったボブ・クリアマウンテンミックスの体験会、Teenage Engineering EP-133 K.O.II & Choir展示、Positive Grid Spark LIVE & Spark LINK展示などなど、1日中楽しめる場所となっていました。「AURAセンサーテクノロジー搭載でオートフォーカスのように音を捉える世界初のコンデンサマイク、LEWITT RAY誕生」、「DTMをメイン題材にした青春音楽映画、『バジーノイズ』が5月3日より全国ロードショー」という記事でも紹介した、機材たちを実際に試すことができたりもしました。
新しいロゴ/CIの発表も35th 2024 Resonate! ring of grooveにて行われました。
そんないろいろなイベントが開催されていた35th 2024 Resonate! ring of grooveですが、当日は配信もあったので、ご覧になった方も多いと思います。ただ、冒頭にも階たようにボブ・クリアマウンテンさんと二ラジ・カジャンチさんのセミナー配信はなく、観れたのは会場に居た人たちのみ。そこで、ここからは「ボブ・クリアマウンテンが二ラジ・カジャンチと語る音楽とミキシングの今」をピックアップして、その内容を紹介していこうと思います。
ボブ・クリアマウンテンが二ラジ・カジャンチと語る音楽とミキシングの今
みなさんご存知のとおり、ボブ・クリアマウンテンさんはDavid Bowie、Bruce Sringsteen、TOTO、Bryana Adams、The Rolling stones、Bon Jovi、INXS……とさまざまなヒット作を手掛けてきたエンジニアであり、長年、音楽制作において世界の最先端を走り続けてきた方。そのボブ・クリアマウンテンさんがミックスに使用していたということでYAMAHAのNSー10M Studioがデファクトスタンダードになったというのも有名な話ですよね。
続いて二ラジ・カジャンチさんは、Michael Jackson、Mariah Carey、Boyz II Men……といった海外アーティストから、三浦大知、MAX、SKY-HI (AAA)、SUGIZO、LUNA SEA、[Alexandros]などの国内アーティストも手掛ける日本で活躍しているエンジニア。お二人とも、音楽を作っているのであれば、知らない人はいないトップエンジニアですよね。
そんなお二人が音楽ミキシングについて語ったセミナーの様子を抜粋してお届けします。
レコーディング時のちょっとしたアクシデントから驚くようなサウンドが誕生
ボブ:David Bowie(デビッド・ボウイ)のLET’S DANCEは、レコーディングもしてミックスもしているのですが、その曲ではナイル・ロジャースが素晴らしいギターを披露していますよね。このギターのリフとディレイやリバーブを組み合わせたサウンドは、まさにレコーディング時のアクシデントから生まれました。最初ナイル・ロジャースが、演奏したギターフレーズはとてもシンプルなリフでした、私はそのギターフレーズを気に入っていたのですが、ナイル・ロジャースから「リバーブやディレイでより面白くしてくれ」と注文を受けたのです。当時テープディレイを使っていたので、そのセッティングをする際、もともと別のチャンネルに立ち上げていたものを、間違えてそのままギターのチャンネルに立ち上げてしまったのです。すると、リターンの音は大きすぎるし、何度もフィードバックしてしまい、私は完全に間違えたと、慌てて再生を止め、セッティングし直そうとしました。そしたら、David BowieとNile Rodgers(ナイル・ロジャース)の二人が、「止めるな!今のサウンドはパーフェクトだから、そのままの設定にしてくれ」と言ったのです。結果、そのサウンドがそのままレコードに収録されたんですよ。これが、自分がミスだと思っていたところから生まれたサウンドですね。今やこのサウンドが、私が監修したclearmountain’s domain にプリセットとして収録されているので、不思議なものですよね。
アメリカでのDolby Atmosの普及の違い
ボブ:今Dolby社はどんどん大きくなっていますが、まだ一般に浸透しきっている状況でないと思っています。ですが、現在の仕事ではステレオのミックスの依頼がある際、セットでDolby Atmosのミックスも納品してほしいという要求がレーベルからありますね。
二ラジ:5.1チャンネルのときは、みんなスタジオをアップグレードしていなかったのですが、5年前ぐらいからアメリカの有名なエンジニアはDolby Atmos対応したスタジオを作っていましたね。この流れで、日本にもDolby Atmosの流れが来ると思い、僕も2年前の2022年終わりに自分のDolby Atmosスタジオを作りました。まだまだ黎明期ですが、今後この流れが加速すると面白いですね。
ボブ:今、Apple Musicで曲を再生するとDolby Atmosのミックスが最初に流れるので、ステレオと近い感じでミックスするか、その自分のステレオミックスよりいいミックスを作り上げるよう意識はしていますね。
Dolby Atmosミックスでのテクニック
二ラジ:Dolby Atmosミックスをするときに、いろいろなアメリカのエンジニアに相談し、なるべくセンターを使わないほうがいい、とアドバイスをもらったんです。なるべくファントムセンターを大事にしたほうが、安いサウンドバーでも1番狙った音がちゃんと出るから、そっちのほうがいいよって。だからセンターのスピーカーをなるべく使わないようにしていたのですが、ボブさんは逆にセンターのスピーカーを活用しているんですよね。
ボブ:センターにスピーカーがあるということが大事ではなく、どこにフォーカスさせたいかが重要です。音を聴いている人にどこを聴いてほしいか、という理由でセンターを作っています。ステレオミックスのときと同じようにキック、スネア、ボーカル、ベースを大切に作っていますね。またセンタースピーカーを活用することで、スウィートスポットから多少外れていても、アテンションをきちんとキープできるんです。映画館と近い考え方ですが、音楽でもスタジオでミックスチェックする際、1人しかど真ん中で視聴できないので、その隣の人でも同じようなバランスで聴こえるようにしています。
以上、4月19日に行われた35th 2024 Resonate! ring of grooveのレポートをお届けしました。前述の通り、今年はメディア・インテグレーション35周年の年。今後も、さまざまな豪華イベントが開催される予定とのことなので、ぜひ次回は足を運んでみてはいかがでしょうか?
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