AURAセンサーテクノロジー搭載でオートフォーカスのように音を捉える世界初のコンデンサマイク、LEWITT RAY誕生

これまでにない斬新なマイクやオーディオインターフェイスを次々と開発するオーストリア・ウィーンにあるメーカー、LEWITT(ルーイット)。そのLEWITTがまた非常に面白いマイクをリリースしました。今回発売したRAY(レイ:税込実売価格58,300円)はAURAセンサーなるものを搭載したことにより、ナレーターやボーカリストとマイクとの距離をリアルタイムに把握するとともに、その位置に合わせて適切な音量、適切な音質に自動で整えてくれるというこれまでにないユニークなマイクです。

本来、声がマイクに近づくと音量が上がると同時に近接効果により低音が強いブーミーな音になるし、マイクから遠ざかると音量がグッと下がってしまいます。しかし、このAURAセンサーにより音源とマイクとの距離を把握した上で自動でいい具合に調整してくれるのです。さらにある程度の距離以上離れると自動でミュートすることができたり、再度近づけばミュート解除して通常に使えるようになるなど、非常に便利に使うことができるマイクとなっています。音響面の知識があまりないYouTuberなどでも、まるでエンジニアがいるかのごとくいい音で配信することができるし、知識のある方なら必要に応じて自動機能を解除して使うこともできるなど、非常に融通の利くマイクとなっているのです。そのRAYが実際どんなものなのか少し試してみたので紹介してみましょう。

AURAセンサー内蔵で音源との距離を測りながら音量・音質を自動調整するLEWITTのマイク、RAY

カメラのオートフォーカスのように音を自動で調整する画期的マイク、RAY

ご存じの通り、ボーカルやナレーションなどを録音するには、それなりのスキルと知識、経験が必要になってきます。あらかじめレベルの調整を行った上で、レコーディング中には一定の距離を保ちつつ、安定した声量で録っていく必要があります。カメラにたとえれば一眼レフの操作に匹敵することが必要になるわけですが、もっと手軽に、まるでスマホで撮影するかのように簡単にレコーディングできるようにするマイクが、このRAYなのです。

RAYはラージダイアフラムを搭載したコンデンサマイクである

見てもわかる通りラージダイアフラムを搭載したコンデンサマイクであるRAYは、好感度に音を捉えることができるマイクです。実はそのマイクの基本部分は先日「録音した音声をAIがいい感じに仕上げてくれるiZotope VEAを声優・小岩井ことりさんと一緒に試してみた」という記事の中で使ったLEWITTのLCT 240 PROの上位版、LCT 440 PUREとほぼ同等のものとなっており、ボディもダイアフラムもまったく同じものが使われています。

LCT440 PURE(左)とRAY(右)。マイク自体は基本的には同じものとなっている

実際、LCT 440 PUREとRAYを並べてみるとソックリであることが分かると思いますが、このRAYのフロントを見ると、ちょっと不思議なデザインになっています。が、これ、単なるデザインではなく、最新の機能となっているのです。

音源との距離を自動測定するセンサーを搭載し、音量・音質を自動調整

まず、マイクのフロントの左側、赤い矢印が指す部分にAURAセンサーなるものが入っています。これはToF(Time of Flight)センサーベースのテクノロジーによるもので、赤外線を使って距離を測定する、というもの。

RAYの構造。赤い矢印で示した部分にAURAセンサーが内蔵されている

具体的にはここから赤外線を照射し、それが被写体ならぬナレーター/ボーカリストに当たり、その反射光が戻ってくるまでの時間をもとに距離を測定する仕組みになっています。ちょっと面白かったのは、肉眼で見たときは、この赤外線の照射口はまったく分からなかったのですが、写真で撮ると赤紫に光っているのが分かります。ちなみに右の部分はデザイン的に対象にしたダミーとのことです。

写真で撮影するとセンサー部分が紫に光っているのが分かる

そのセンサー、1秒に5回というタイミングで距離の測定をリアルタイムに行っており、その結果が正面のインジケーターに表示される形になっています。もちろん、距離を測定する目的は、このインジケーターに表示するためではなく、マイクとの距離により増減が予測される周波数成分を自動補正しつつ、音量をコントロールすること。この際、5段階表示のインジケーターより遥かに高い精度で調整することによって、マイクから近くても遠くても同じに聴こえるように、サウンドがシームレスにコントロールされる形になっています。

ここにその様子を紹介するビデオがあるので、ご覧いただくと、その威力がすぐにわかると思います(※2024.4.18追加)。

指定した距離以上離れるとミュートする機能も装備

こんな調整ができるので、マイクに関する知識がない人が初めて使っても、まさにプロフェッショナルなレコーディングをすぐに実現できるというわけです。

ミュートボタンを長押しすることで、MUTE by Distanceの設定ができる

ビデオにもあったとおり、RAYは単にターゲットとマイクの距離をチェックして、それに合わせて周波数成分や音量を調整するだけではありません。事前に距離を設定した上で、その距離よりも遠くに離れるとミュートする、「MUTE by Distance」という機能があるのです。このセンサーが把握できるのは赤外線を照射できる正面だけなので、マイクの前からすっと横にズレるだけでミュートする、ということもできるわけです。

一定の距離まではマイクがオンで、それ以上離れるとミュートされる

この自動ミュート機能が非常に有効であることは実際にRAYを試してみてよくわかりました。そう、マイクからの距離が離れていくとゲインが上がるので、ファンの音など周囲のノイズがだんだん目立ってくるのです。そのためある程度距離が離れたらミュートするというのは、とっても理にかなっているわけです。

マイクの前に人がいないと、自動でミュート状態になる

ちなみにMUTE by Distance機能を使うだけでなくミュートボタンを押すことでミュートさせることも可能。実はこうしたラージダイアフラムのコンデンサマイクにおいて(USBマイクを除く)、ミュートボタンを装備したものは、RAYが世界初なのだとか。ダイナミックマイクであればON/OFFスイッチがあるケースも多く、手元でミュートできますが、コンデンサマイクの場合は直接触ることを想定していないためか、存在していなかったんですね。

iZotopeのVEAが標準で付属するので、ノイズ処理を効率よく行える

一方でマイクにグッと近づくと自動的にボリュームが絞られる形となり、それに伴って周辺のノイズはほぼ消えます。また本来であれば近接効果で低域が強くなるところ、そこもうまく処理してくれるため、距離に関係なく、自然な声で録ることができる、というわけです。

ただ、遠くからしゃべる際に入ってくるノイズを軽減する方法も用意されています。このRAYには先ほどもちょっと触れたiZotopeのプラグイン、VEAが付属しているのです。このVEAを使うことにより、自然な感じでノイズを抑えることができるので、音量はRAY自体がコントロールしつつ、ノイズはVEAが抑制する形で連携させることにより、理想の環境を構築することができるのです。

RAYにはiZotopeのプラグイン、VIAが付属している

このようにRAYはセンサーを用いてリアルタイムに音量、音質調整しているわけですが、オーディオ回路自体はすべてアナログ処理をしているというのもRAYの大きな特徴となっています。つまりマイク内でA/D変換をして調整・補正するというわけではなく、アナログですべて処理しているから、非常に自然な音で、モニターしていてもまったく違和感がありません。その音の変化もナチュラルであり、急にゲインが上がったり、下がったりするわけではないので、とっても自然な音。そのため、配信などでのしゃべり用途においても、ボーカルのレコーディングにおいても気持ちよく使うことができそうです。

AURAセンサーをオフにすればLCT440 PUREになる

とはいえ、中には「ボーカルを録る際には、マイクとの距離感をうまく生かした録音がしたい」、「あえて近接効果による低域増強を利用したい」なんてケースもあるかもしれません。そんなときは簡単、単純にAURAセンサー機能をオフにすれば、普通のコンデンサマイクとして使用することが可能となっています。

LCT440 PUREの限定カラーモデルVIDA Edition(左)とRAY(右)を並べてレコーディングチェック

では、そのマイクそのものの性能はどうなのでしょうか?前述の通り、RAYの母体となっているのがLCT440 PUREというマイクです。この2つを並べて音質的な違いがないのか少しチェックしてみました。この際、距離によって音量が調整されないようにAURA機能をオフにしています。またせっかくなのでLEWITTのオーディオインターフェイス、CONNECT 6に接続してみました。

AURAセンサーをオフにして同じ距離で歌ってみたものをレコーディング

Input 1にLCT440 PUREを、Input 2にRAYを接続してみたところ、確かに音質的にはソックリですが、ちょっと気になったことがありました。それはCONNECT 6のコントローラー画面を見てもわかるのですが、入力ゲインを同じに設定すると微妙にRAYのほうの音量が小さいのです。そのため、RAYのゲインを少し上げてやるとほぼ揃うものの、このゲインを上げることによって微妙に音質的な違いが出るのです。

若干ではあるけれど、Input 1のLCT440 PUREのほうがInput 2のRAYより入力が大きい

この点について、LEWITTに確認してみたところ「これはAURA機能をオフにした時に突発的にレベルが跳ね上がるのを避けるため、AURA OFFモードのレベルを下げているために生じる事象です。AURAオンとAURAオフのレベルはマイクから30cmの距離で測れば同じになります。またLCT440 PUREとRAYの比較では、RAYとのセンサー上の距離が最大であれば、感度はLCT440 PUREとほぼ同じになるよう設計しています」との回答がありました。

比較テストにはLEWITTのオーディオインターフェイス、CONNECT 6を使った

まあ、この辺は微妙な違いなので、基本はLCT440 PURE相当である、と捉えればよさそうですね。以上、LEWITTの革新的なコンデンサマイク、RAYについて紹介してみました。これまで誰も発想しなかった距離をセンサーで測定し、それにマッチした音を自動で設定するというユニークな手法は、さまざまなシーンで便利に活用できそうです。とくに個人でネット配信をしている人にとっては、強力なアイテムとなりそうです。

【関連情報】
LEWITT RAY製品情報
LEWITT LCT440 PURE製品情報

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