顔認識アルゴリズムで音作り!? 人工知能でミックス、マスタリングができるZynaptiqのINTENSITYとは?

最近、人工知能を前面に打ち出したDTMツールがいろいろ登場してきています。以前「マスタリングエンジニアの職が危うい!?人工知能搭載のOzone 8とNeutron 2の登場は革命かも!」といった記事を書いたこともありましたが、iZotopeOzoneNeutronに搭載されているAssistant技術がその代表例ともいえるしょう。まさにそのiZotopeの競合となりそうなツールが、ドイツ・ハノーバーの会社、Zynaptiq(ザイナプティク)から登場してきました。

INTENSITYというWindows/MacのVST、AU、AAX対応のこのプラグインは、DAWのトラックに挿すだけで、いい感じに音を調整してくれるし、マスタートラックに挿せば、マスタリングまでできてしまうというもの。その技術には顔認識アルゴリズムが使われているというのですが、顔認識が音とどう関係あるのか、まったく見当もつかないのも気になるところ。とにかく、これがどんなもので、どんな効果があるのか実際に試してみたので紹介してみましょう。

Zynaptiqがリリースした魔法の音作りツール、INTENSITY



Zynaptiqの製品に関しては、以前も「既存曲のコードを自在に変えられる魔法のツール、PITCHMAPを使ってみた」、「ステレオミックスからドラムを消せる魔法のツール、UNMIX DRUMS」といった記事で紹介したことがありましたが、魔法のようなツールを次々と出しているソフトウェアメーカーです。

Zynaptiqのロゴには「science, not fiction」という表記がある


Zynaptiqのロゴマークの下には「science ,not fiction」と書かれているのも面白いところですが、どのツールも常識ではありえないようなことを実現してくれるものばかりで、いつも本当に驚かされます。

では、今回登場したINTENSITYとはどんな効果をもたらすものなのか、まずはデモ動画があるので、これをご覧になってみてください。

なんとなくお分かりいただけたでしょうか?このINTENSITYを使うことで、音がクッキリとして、前に出てきた感じがするんですよね。

これを実際にどう使えばいいのか?これが実に単純・簡単なんです。たとえば「ドラムの音をもうちょっと、いい感じの音にしたい」と思ったとしましょう。そんなときは、ドラムトラックにINTENSITYをインサートし、画面左側のINTENSITYのノブをグイッと持ち上げるだけ。かなり不思議なんですが、ホントにそれだけで、いい感じに前に出てくるんです。


トラックにINTENSITYを挿して、左側のINTENSITYを上げるだけ

普通なら、EQを使って、ある音域を強調させたり、ある音域を削ったりするとともに、コンプレッサなどを使って、調整して細かく音作りをしていくわけですが、INTENSITYなら、ホントに挿して、INTENSITYノブで効き具合を調整するだけ。「えぇぇぇ!?」と思ってしまいます。

考え方としてはiZotopeのNeutronのTrack Assistantに近いのですが、Neutronの場合は、しばらくトラックの音をNeutronに聞かせ、それを人工知能が考えるのに対して、INTENSITYの場合、挿したら瞬時にスタンバイ状態なんです。

でも、そもそも顔認証アルゴリズムと、このトラックの音作りに何の関係があるのでしょうか?Zynaptiqの国内代理店であるエムアイセブン ジャパンの担当者に聞いてみたところ、「一般的なFFT変換やヘルツやデシベルといった数値ではなく、人間が知覚するオーディオに関する情報をオーディオから抽出することを可能にしたテクノロジーが基本のフレームワークです。ここには顔認識、音声認識、機械学習アルゴリズム、補聴器開発に関連した知覚モデリングなどを統合させております。詳細は当社のWebページでも説明しているので、ぜひご覧ください」とのことでした。

トラックにINTENSITYを挿すだけ
ちょっとキツネにつままれた感じもしますが、結果がすべてと考えれば、それも納得。もうひとつNeutronと決定的に違うのは、Neutronの場合、コンプやEQ、エキサイター、トランジェントシェイパーなどのエフェクトを組み合わせた上で、それにマッチしたパラメータを人工知能が考えてくれるのに対し、INTENSITYの場合、これ自体が従来にないまったく新しいエフェクトなんだとか……。

INTENSITYの製品情報を見ても「先進のニューラル・ネットワークに基づく分析とZynaptiq独自の入出力変換を組み合わせ、信号をストロークとディテール特性とに分割。ストロークはそのままにディテールを強化することで、サウンド独自の特性が増強され、マスキング効果が緩和され、ディテールが際立ち、密度と知覚ラウドネスが向上します」とあって、肝心なところはベールに包まれているみたいですね。

考え方的にはコンプっぽいですが、そもそもRMS検出機能もないし、スレッショルド、レシオ、アタック/リリースタイムの設定もないんです。またどのトラックにかけるかによって、その効果も大きく変わってくるので、やはり従来エフェクトと直接比較してはいけないものなのかもしれません。

製品情報を見ても「ナレーション、SFX、ギター、ベース、ピアノなどの楽器の個々のトラックおよびフルミックス、マルチチャンネル・ステム、ドラム・バス、その他の複雑なコンテンツの処理にも最適」とあるので、まさにオールラウンドに使えるエフェクトであり、使用用途によって、効果もまったく変わってくるので、なんとも不思議です。

23種類のプリセットが用意されている
では、ユーザーが調整できるのは左側のINTENSITYというパラメーターで効き具合を調整するだけなのか、というと、そうではなく、ほかにもいろいろあるようです。まずは、23種類用意されているプリセットの選択です。

通常は起動したときのdefaultでOKなのですが、温かい感じにしたい、とかソリッドな雰囲気にしたいとか、目的とピッタリしたものが見つかれば、これを選択してみるのも手です。これによって、大きく変わることもあれば、あまり変わらないこともあるようですが、ちょっと占い(!?)的に選んでみるのもよさそうです。

自分でBIAS CURVEを選択することもできる

もう一つは画面中央部にあるBIAS CURVE MODEの選択です。真ん中をクリックすると、いろいろなカーブのグラフが表示されます。これも適当に選んでみてもいいのですが、横軸は周波数、縦軸が強さを意味しているので、周波数特性のグラフのようなものと考えるといいでしょう。ただ、そういうEQになるのではなく、INTENSITYの効き具合の特徴を決めるものと考えるといいみたいですね。このカーブはCUSTOMを選択することで、自分で描くことも可能になっています。


BIAS CURVEを自分で描くことも可能

さらに、その右側にBIASというのがありますが、いま選択したBIAS CURVEの効き具合を決めるためのものとなっています。最大の+1.00にすると、選択したカーブそのものとなり、最小の-1.00にすると逆相になる仕様になっています。ただ、これをいじればどういう音になるのかというのは、なかなか想像できないのが難しいところ。やはり、左側のパラメータをグイッと上げて気に入らなければ、少しいじってみるという感じかもしれませんね。

右側のBIASパラメータを調整することで、設定したBIAS CURVEのかかり具合が変わる
そうした、ほとんど人口知能にお任せのプラグインであることを考えると、これまでの経験と実績を元にして綿密に音作りをしていくプロのレコーディングエンジニアが使うツールではないのかもしれません。音作りの細かいことは任せて、曲作りに専念したいという人にとっては、すごくいい選択ではないでしょうか?もちろん、このINTENSITYと既存のエフェクトを組み合わせるというのもありですよ。

INTENSITYがオフの状態だと、ほとんどマシン負荷はない

一つ気になって試してみたのは、INTENSITYのCPU負荷です。Core i7-6700 3.4GHzというCPUに16GBのメモリを搭載したマシンにおいて、各トラックに5つ挿して試してみました。Studio One 4のパフォーマンスメーターを見てみると、プラグインオフの状態では4%のCPU負荷がオンにすると45%に。各トラックの状況を見ると、音が出ているトラックでは25~40程度とかなりの負荷がかかっているんですね。

5つのトラックにINTENSITYをかけると45%もの負荷がかかった
この状況を考えると、全トラックに挿して使うのではなく、INTENSITYで気に入った音ができたら、それをバウンスしてしまう、というのがいいのかもしれませんね。

なお、このINTENSITY、通常価格は36,800円ですが、7月31日までは発売記念のイントロ・プライスということで半額以下の15,500円(税込)。試しに買ってみても損はないと思いますよ。

【製品情報】
INTENSITY製品情報

Zynaptiq CEO、Denis Goekdagインタビュー

【価格チェック&購入】
◎Rock oN ⇒ INTENSITY(ダウンロード版)
◎サウンドハウス ⇒ INTENSITY(ダウンロード版)
◎MI7 Store ⇒ INTENSITY(ダウンロード版)

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