マイクプリアンプで音は変わるのか?オーディオインターフェイス内蔵のマイクプリとAPI 312を比較してみた

プロが使用するレコーディングスタジオでは、SSLやNEVE、API…などのマイクプリを通し、マイクの音を収録しています。一方、DTM環境ではオーディオインターフェイスに内蔵してあるマイクプリで、ボーカルなどをレコーディングするのが一般的。そこで、プロのようにオーディオインターフェイス内蔵ではないマイクプリを使ったら、どんな音がするのか、気になったことのある方も多いのではないでしょうか?といっても、自分で試すには、そもそも機材が必要ですし、スタジオを借りたりする必要があるなど、少々ハードルが高いですよね。

そこで今回は、ミックスウェーブ株式会社の協力の元、取り扱い製品であるAPIマイクプリを使った実験を行いました。比較に使用したのは、音質面の評価も高いMOTU M4というオーディオインターフェイス。MOTU M4内蔵のマイクプリとAPIを代表するマイクプリAPI 312で収録した音を、記事内で比較試聴できるようにしました。シンガーは小寺可南子(@cana_ko_tera)さんに協力いただき、ボーカルのサウンドを比べています。ちなみに今回使用したAPI 312は現在通常117,000円(税込128,700円)のところ、2024年5月31日(金)までの期間、15%OFFの数量限定(無くなり次第終了)セール特価99,800円(税込109,780円)で販売されています。さて、プロが使用するマイクプリを用いると圧倒的にいい音になるのかどうか、見ていきましょう。

APIのマイクプリAPI 312で、どこまで音が変わるのか比較テストしてみた

いまさら聞けない、マイクプリとは?

そもそもマイクプリとはどういものか、改めて確認しておきましょう。マイクプリとは、マイクロフォンプリアンプリファイアー(Microphone preamplifier)の略で、ヘッドアンプ(HA)などと呼ばれたりする、微弱な信号を増幅する装置。マイクの信号はとても小さく、信号を増幅する必要があるので、オーディオインターフェイスにも必ずマイクプリが搭載されていますよね。ただマイクの信号を増幅するだけなら、なんでもいいというわけではなく、マイクプリによって色があったり、トランジェントの再現性が違ったり、S/N比に違いがあったりするので、エンジニアやクリエイターはこだわりを持って、マイクプリを選んでいます。だからこそ、レコーディングスタジオにはさまざまなマイクプリが置いてあるわけです。

そんな音にこだわるプロが使うマイクプリの定番のメーカーの1つとして、APIも肩を並べており、クリアでパンチのあるサウンドがほしいときに、APIのマイクプリは選ばれます。APIのマイクプリはトランジスタを使用した回路設計を採用しており、高速なトランジェント特性と広い周波数帯域を実現しているので、特にロックやポップスなどの音楽ジャンルで選択されることが多い印象ですね。

プロが使うマイクプリの定番のメーカーの1つがAPI

1968年に設立されたAPIの歴史

そんなAPIのプリアンプを代表するマイクプリがAPI 312なのですが、先に簡単にAPIの歴史についても振り返っておきましょう。API(Automated Processes Incorporated)社は、1968年に設立されたアメリカの企業。ビートルズ、ローリング・ストーンズ、クイーン、U2…など、数え切れないほどの音楽で使われている定番中の定番メーカー。ちなみにNEVEが1961年設立、SSLが1969年設立で、どちらもイギリス生まれである一方、APIは同世代のアメリカ生まれ。NEVEやSSLがイギリスサウンドで、APIはアメリカンサウンドと形容されることも多いですね。APIはマイクプリ以外にも、API 550A、API 550B、API 2500…といったEQやコンプなども開発していますが、ここではAPI 312にフォーカスしていきます。

2520オペアンプが搭載されているのが確認できる

API 312は1970年代に設計されたマイクプリアンプで、API創立者であるSaul Walker氏が設計を行い、そのヘッドルームの広さ、ナチュラルで暖かみのあるサウンドから、今もなお多くのファンを虜にしている最も人気のあるマイクプリアンプの1つ。API 312はSaul Walker氏が初めて設計したマイクプリで、2520オペアンプと独自のトランスを組み合わせで作られています。この2520オペアンプは、今でもほぼすべてのAPI製品に使用されており、API 312の音質を決める主要なパーツ。ディスクリート構成を採用しているため、オペアンプIC特有のノイズや歪みが少なく、長時間の使用にも耐えられる堅牢な作りにもなっており、高い信頼性を実現。もともとはカスタムコンソールを作る際に発明されたもので、自然で滑らかな音質と、豊かな倍音成分による暖かみのある音質が特徴となっています。特に中低域の表現力に優れており、ボーカルでも楽器でも生き生きとした音を収録することが可能です。

ランチボックスに収められたAPI 312

その後、コンソールに搭載されていたAPI 312が今の形で使えるようになったのには、もう1つの大発明品API ランチボックス(lunchbox)を知っておく必要があります。プリアンプ、EQ、コンプなど、好きなモジュールを必要に応じて挿し替え可能なランチボックスの誕生は1985年。すべてのAPI 500シリーズのモジュールおよび、API標準5.25″ X 1.5″モジュールが使用でき、ゲーム機でたとえるのであれば、これはゲーム機本体。ゲームカセットを抜き差しするように、簡単に好きなモジュールを組み合わせることができ、API 312も、ランチボックスで使えるAPI 500シリーズに対応するようモジュール化されることとなったのです。

API 500シリーズに対応するようモジュール化されたAPI 312のスペック

そんなAPI 312は、0VU=+4dBuのビンテージスタイルのアナログVUメーターを搭載しており、ゲインレンジは+34dB~+69dBで設計されています。20dB PADスイッチ、位相反転スイッチ、48V ファンタム電源などの切り替えボタンを装備しており、ON時は出力ゲインの比率が1:3から1:1となり約-10dBの出力レベルとなる、3:1 出力トランスタップというボタンも搭載しています。当時のサウンドを表現するため、入力トランスにはラックモデルの3124Vにも搭載されているAP2516を搭載し、王道の2520オペアンプと組合わさり、表現を損なわないAPIサウンドを得ることが可能となっています。

アナログVUメーターを搭載している

ステップアップのために買うのは、高いオーディオインターフェイスor独立型のマイクプリ?

さて、ここまでAPIの歴史とAPI 312の概要を書いてきました。冒頭でも書いたようにプロは、こういった独立したマイクプリを使っているわけですが、現在もし5万円ぐらいのオーディオインターフェイスを持っていて、アップデートを考えているのであれば、10万円〜20万円のオーディオインターフェイスを買うか、独立したマイクプリを買うかという選択肢がありますよね。10万円を超えるオーディオインターフェイスは、RME、UA、APOGEE、Antelope…などなどありますが、別に多チャンネルは必要ないのであれば、マイクプリを導入するというのは、かなり有効な手段だと思います。

オーディオインターフェイスはさまざまな機能が付いている一方、独立しているマイクプリはマイクの信号を増幅することしかできません。そう考えると、たとえば20万円という価格を見たときに、マイクプリにコストを割けるのは、当然独立型のマイクプリ。たとえば、多チャンネルの入力が必要、スピーカーアウトやヘッドホンアウトの音質も向上させたいなどなど、複合的な理由で機材のアップデートを考えているのであれば、高級なオーディオインターフェイスを選ぶ方がいいですが、単純に入力の音を最高のものにしたいのであれば、独立型のマイクプリに軍配が上がります。

そして初めて独立したマイクプリを買うにあたって、おすすめなのがここまで紹介してきたAPI 312なわけです。API 312を使用するには、別途約10万円するランチボックスが必要ですが、省スペースなので宅録には最適なんです。また前述の通りVPR Alliance規格に適合した各種モジュール、つまりサードパーティ製のものも使用できるといった拡張性も兼ね備えています。しかも、この手のアナログ機材は、ほぼ値崩れしないので、もし手放す際もそれなりの価格が付きますしね。

MOTU M4とAPI 312を比較してみた

さて、ここまで前置きが長くなりましたが、では実際にMOTU M4とAPI 312にどれだけの音質の差があったのか比較していきましょう。

MOTU M4のマイクプリとAPI 312のマイクプリを比べてみた

共通部分として、DAWはPro Tools、マイクはSoyuz 017 TUBEを使用しました。シンガーは小寺可南子さんで、楽曲はDTMステーションCreativeレーベルの第1弾ミニアルバム「Sweet My Heart」からSweet My Heartの一部分。

小寺可南子さんに歌ってもらった

APIのセッティングとしては、まずレコーディングの1時間ほど前から、動作を安定させるために電源を入れました。また3:1のボタンをオンにしています。APIの製品は、最大音量時にピークLEDが付くぐらいでGAINを設定すると、S/Nがよく、最大限マイクプリの性能を引き出せるので、そのように設定しています。ちなみにピークLEDは+18dBuで点灯しますが、まだ10dB以上余裕があるので大丈夫とのこと。ヘッドルームが広いので、ピークLEDに恐れず、出ている音を聴いて判断がAPIのスタンスとのことなので、最終的な出音で判断していきます。

ピークLEDが点く程度にGAINをセッティングし、出音で判断していく

1パターン目は、マイクをAPI 312に接続、そのアウトをMOTU M4のラインインに接続。2パターン目は、MOTU M4のマイクプリを使って収録しました。収録時のゲインレベルやボーカリストの立ち位置など、マイクプリ以外の条件はなるべく同じになるよう実験を行っています。

なるべく同じ環境を作り、レコーディングを行った

用意した比較音源は、ボーカルをEQとコンプで軽く整えた2mix、ボーカルをEQとコンプで軽く整えたボーカルソロ、一切エフェクトを掛けていないボーカルソロの3種類。EQとコンプの設定はAPI 312、MOTU M4ともに同じにしています。

EQとコンプの設定は、API 312、MOTU M4ともに同じにしている

データは48kHz/24bitのものをSoundcloudへアップしています。

dtmstation · API 312

いかがでしょうか?やはりMOTUの音もなかなかいいですよね。それでもAPI 312の方が解像度を高く感じます。それぞれキャラクタが異なるので、周波数バランス的な違いはもちろんありますが、API 312はEQやコンプを掛けても位相が崩れたりすることなく、音が遠くならず、主役のまま前に出てきてくれますね。またAPI 312のサウンドは非常にチュラルでクセが少なく、低音域から高音域まできれいに録れています。エフェクトなしの音源を聴いていただくと分かる通り、太い音を収録できているので、その後のエフェクト処理は自由自在。一方、M4はエフェクトなしでも、エフェクト処理後のようなサウンドをしており、自由度は下がるものの使い勝手のいいサウンドをしていますね。API 312は、しっかり音が立っていて、明るく抜けてきて、反応もよく、輪郭もしっかりしている、まさに元気なサウンドです。

マイクはSoyuz 017 TUBEを使用した

以上、API 312について紹介しました。MOTUの音で十分という人もいれば、やっぱりAPI 312みたいなプロ機材の音がほしいという人もいると思います。API 312は現在通常117,000円(税込128,700円)のところ、2024年5月31日(金)までの期間、15%OFFの数量限定(無くなり次第終了)セール特価99,800円(税込109,780円)で販売中です。ぜひこの機会に、憧れのスタジオ機材を導入してみてはいかがでしょうか?

【関連情報】
API 312製品情報

【価格チェック】
Rock oN ⇒ API 312 , その他API製品
宮地楽器 ⇒ API 312

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