先日の「Pro Tools 12はお金を払い続けないと使えなくなるという噂…は間違い!?」という記事で、結構大きな反響があった最新のPro Toolsのライセンス制度ですが、その一方で、「Pro Toolsって今どんな機能になっているの?」、「個人が使う音楽用とのDAWとしては使えるものなの?」といった基本的な質問も結構寄せられました。

確かに最近DTMステーションでもPro Toolsを正面から取り上げる記事が少なかったようにも思うので、改めてPro ToolsとはどんなDAWなのか、DTM用途として見たときどんな機能を持っていて、ほかのDAWと比較した際のアドバンテージがどんなものなのか…といったことを簡単にまとめてみようと思います。


最新版のPro Tools 12.4
 
みなさんはPro Toolsってどんなイメージを持っていますか?「プロのレコーディングスタジオで使われる業界標準システムだよね」「個人では手が出せない超高価なものなんでしょ?」「映画製作のMAなどで使われることが多いんだよね」「Mac版を使っている人が多いけどWindowsでも動くんだっけ?」「昔あったM-Boxに付属してたソフト」、「そういえばM-Poweredなんてバージョンがあったような」……とさまざまな印象、記憶がある人がいると思います。でも、そこには誤解があったり、現在のPro Toolsとは違った認識をしている人も多いようですので、少し整理していきたいと思います。


世界中のプロのレコーディング現場で業界標準として利用されているPro Tools 

ご存じのとおり、Pro Toolsは世界中の音楽スタジオで導入されているシステムであり、まさにプロが使う業務用のDAW。国内でも、どのレコーディングスタジオに行ってもPro Toolsが導入されているデファクトスタンダードです。ただし、一言でPro Toolsといっても、正確に言うと
・Pro Tools | HD
・Pro Tools
・Pro Tools | First
という3つのラインナップが存在しており、プロのレコーディングスタジオなどに導入されているのはPro Tools | HDというもの。これはPro Tools | HDXやPro Tools | HD Nativeという専用ハードウェアと組み合わせて使う業務用であり、レイテンシーの極めて小さい環境で膨大なチャンネルを同時録音できたり、より多くのトラックを扱えるなど高性能なものとなっているからこそ、プロの世界で高い信頼性があるものなんですよね。


大きく3つのバリエーションに分かれるPro Tools シリーズ


一方、そのPro Tools | HDとほぼ同じ機能、ユーザーインターフェイスを備えながら、自宅のMacやWindowsにオーディオインターフェイスを接続した環境で使えてしまうのがPro Toolsであり、ソフトウェアとしてのDAWなんです。もちろんPro Tools | HDとデータの互換性もあるので、レコーディングスタジオで録ったセッションデータを自宅に持ち帰って編集する…といったこともできるんです。


Pro Tools | HDとセットで使うハードウェア、Pro Tools |HDXシリーズ 

Pro Tools | HDとPro Toolsがどう違うのか、また無料版のPro Tools | Firstと何が違うのかなどはAvidのサイトにまとめられているので、そちらをご覧いただきたいのですが、Pro Tools | HDより入力チャンネル数やトラック数が少ないとはいえ、同時に32ch入力が可能で、オーディオトラック数も128まで使えるのでDTM用途としては十分すぎるほどの性能を持っているんですよ。

そのPro Toolsの購入方法や価格については、いくつかのバリエーションがあるので、詳細は先日の記事を参照してもらうとして、完全に新規ユーザーがパッケージソフトとして購入する場合で74,600円。もし1か月だけ使うというのなら、たった3,500円から始めることもできる手頃なソフトでもあるのです。


現在のPro Tools 12はTASCAM、Roland、Steinbergなど各社のオーディオインターフェイスで使うことができる 

確かに以前はM-BoxやM-Audioのオーディオインターフェイスなど、特定の機器とセットでないと使うことができないDAWでしたが、現在はその点が大きく変わり、完全にオープンなアーキテクチャとなっているのです。つまり各社のオーディオインターフェイスで利用できるようになっており、MacならCoreAudioドライバ、WindowsならASIOドライバで動作する、普通のDAWなんですよ。

またMacでもWindowsでもまったく同じように動くというのも重要なポイントとなっています。つまり、スタジオのMacで録ったセッションデータをWindowsで開いてもまったく同じように扱うことができ、そのWindowsで編集した結果を、Macで使っている別のPro Toolsユーザーに渡してもそのまま開ける柔軟性を持っているのもPro Toolsの重要なポイントとなっているのです。


Windows 10で動かしたPro Tools 12 

そうはいっても、Pro Toolsって音楽制作用として見てどうなの?」と思っている方も少なくないと思います。確かに「スターウォーズの最新作の音声部分で使われた」といっことが話題になるなど、ポスプロでの利用に目が行きがちですが、もちろん音楽制作用DAWとしても非常に強力な機能を備えています。すべて紹介していったらキリがありませんが、たとえばMIDIのエディット機能一つをとっても、その充実度合いは見えてきます。


ピアノロール、数値エディット、スコアエディタなど、各種MIDI編集機能を搭載している

ピアノロール画面のMIDIエディタ、数値を使ったイベントリスト、さらには楽譜エディタまで備えており、どれもシームレスに扱うことができるようになっています。リストエディタがあることからも想像できる通り、かなり細かなエディットが可能です。このMIDIエディットにおいては、複数トラックのMIDIノートを同時エディット可能で、主旋律と裏メロや、ドラムとベースなど、関連性の高いトラックの位置関係を考えたエディットが簡単になっているのもポイントです。

ここで気になるのがプラグイン環境についてでしょう。現在Pro Toolsが採用しているプラグイン規格はAAX(Avid Audio eXtension)というものです。従来あったRTASからAAXに完全に切り替わっており、エフェクトも音源もすべてAAXです。このAAXについては以前「Pro Tools 11のAAXプラグインってどんなもの?」という記事でも書いているので、そちらも参照いただきたいのですが、Pro Tools 12単体で考えると、このAAXに対応したエフェクト、音源が膨大にバンドルされているので、通常はこれで十分過ぎるほど使うことができます。


Pro Tools 12に標準バンドルされているマルチ音源のXpand!2 

Xpand!2、Boom、DB33、Mini Grand……といったAir Music TechnologyのインストゥルメントがセットになったAir Creative Selection(VST/AU版は有料で販売されています)が標準バンドルされているのも大きなポイント。もちろん、すでに定番モノのプラグインのほとんどがAAX対応しているので、これらをインストールして使うことも可能です。


バーチャルアナログシンセのVacuumも標準搭載されている

とはいえ、VST/AUのプラグインも使いたいという方もいるかもしれません。そんなときは、以前「VST、AU、AAX、RTAS…何でも来い、Blue Cat PatchWorkが超便利!」という記事で紹介したPatchWorkというソフトを使ったり、Vienna Ensemble Proなどを使うことで利用できますから心配はいりませんよ。


BlueCatAudioのPatchWorkを使って、フリー音源の定番、Synth1を動かしてみた 

ここでちょっと紹介しておきたのが、Pro Tools 12になってから追加されたコミットという機能。これを使うことで、AAXのインストゥルメントで鳴らすトラックを、そのままオーディオトラック化させてしまうことが可能なんです。マシン負荷を減らすという点ではフリーズ機能と同様ですが、オーディオトラック化できるから、エフェクトの扱いやフェーダーの扱いなど、ほかのオーディオトラックと同じように扱えるというメリットは大きいですね。また、コミットではインストゥルメントまでをオーディオ化させて、後段のエフェクトは編集可能にしておく、といった使い方も可能となっています。


「コミット」機能を使うことで、インストゥルメントトラックをオーディオトラック化できる 

しかもこのコミット機能はAAXのインストゥルメントだけでなく、ReWire接続する外部ソフトに対しても行えるのもほかのDAWにはない特徴ですね。たとえばAbleton LiveやReasonと接続したものを、即オーディオ化して、波形で見れてしまうのはやっぱり便利ですよ。

さらにAUXトラックもコミットもしくはフリーズ可能となっています。そのためマルチアウトできるBFDやBatteryなどのプラグインはマルチの状態でコミットできるのもほかのDAWにはない便利なポイントですね。


elastic audio機能によって、オーディオのストレッチやクォンタイズなども自由に行える 

もちろん、オーディオを扱う機能が抜群に優れている点は、従来通りです。elastic audioによる、パワフルなリアルタイム・クォンタイズ、位相管理マルチトラック・ワープ編集、高品位で定評のあるX-Formプラグインのアルゴリズムを標準搭載している点などなど、挙げていけばキリがないほどですね。

このように、音楽制作用途においても、まだまだ進化しているPro Toolsですが、間もなく実装される機能として大きな注目を集めているのが、Cloud Collaborationというもの。これは、クラウドを介して、メンバー同士で共同で音楽制作をできるようにする、というもの。私自身は、まだ触っていないのですが、以前デモを見せてもらったところ、かなり軽快に動いているのを確認しました。このCloud Collaborationについては、また近いうちに詳しくチェックしてみたいと思っているところです。

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