あらゆるものを楽器にする魔法のシステム、Mogees(モジーズ)発売開始

机を叩くとスネアの音に、コップを叩くとコンガの音、花瓶をペンで叩くとシンセの音が……そんな風に、あらゆるものを楽器にしてしまう、とってもユニークな機材、Mogees(モジーズ)が発売されました(実売価格:15,800円前後)。2年ほど前にクラウドファンディングKickstarterで支援者を募集していたので「これ、見たことある……」なんていう人も多いと思いますが、それがついに製品となって実現したのです。

机を叩く音をリアルタイムで別の音に変換するというシステム自体は、Mogeesが初というわけではありません。たとえば、KORGのWAVEDRUM miniなんかもそれに近いことができましたが、Mogeesの場合、同じ机を叩くにしても、表面を素手で叩く、表面をモノで叩く、または金属フレーム部分を叩くのでは、それぞれ違う楽器として認識することが可能になっていて、さらに進んだシステムになっているのです。しかもiPhoneやiPadで実現できると同時に、MacやWindowsでは先進的な使い方ができるなど、用途の広い使い方ができるのです。この発売されたばかりのMogeesを実際に試してみたので、どんなシステムなのか紹介してみましょう。

あらゆるものを楽器にしてしまう魔法のシステム、Mogees


言葉で説明するよりも、まずはビデオを見たほうが分かりやすいと思うので、こちらをご覧ください。

いかがですか? 音階を付けた演奏も可能ではあるけれど、基本的には「あらゆるものを打楽器にする」と捉えたほうがいいかもしれません。でも、このMogeesって、とっても不思議なシステムだと思いませんか?

Mogeesのセンサー 

使い方はとっても単純です。机を楽器にするなら机に、コップを楽器にするならコップに、Mogeesのセンサーを取り付けます。KORGのWAVEDRUM miniの場合はクリップで取り付けるのに対し、Mogeesのセンサーは粘着素材が取り付けられているので、どこにでも貼り付けることができるのが大きなポイントです。

センサーの裏側部分には粘着素材が貼り付けられている

しかも、何度でも付けたり、外したりできるし、両面テープのようにベタベタが残ってしまうようなこともないので、気兼ねなく好きなところに貼り付けられますよ。粘着素材が汚れたら洗うこともできるし、予備粘着素材も付属しているんです。

コップのような湾曲した面にも簡単に取り付け可能 

そして、このセンサーから延びるケーブルの端子をiPhoneやiPadのヘッドホン端子へと接続します(MacやWindowsの場合については後述)。さらに、その反対側にある端子にヘッドホンを接続するとハードウェア側の準備は完了です。

Mogeesセンサーのケーブルの先にはiPhone/iPadに接続するための端子がある 

ここで無料アプリのMogeesを起動し、シンセやドラム、パーカッションなど5種類までの音色を選んで、ちょっと学習させることで、アプリ側の準備も完了。あとは、机を叩いたりすることでさまざまな音が出るようになるのです。

でも、何でいろいろな音が出るのか不思議でしょ?実はその「ちょっと学習させる」というのがポイントになっているんです。このMogeesのセンサーとは、簡単に言ってしまえばマイクなんです。貼り付けたところに響いてくる音を捉える高感度なマイク。

iPhone/iPadに接続し、ヘッドホンをつなげば準備完了 

たとえば机を叩くと一言でいっても、表面を手のひらで叩くのと、縁の部分を棒で叩くのでは、普通に聴いても音が違いますよね。さらに、机の素材が木と金属で構成されている場合、木の部分を叩くのと、金属部分を叩くのではやはり音が違ってきます。このセンサーでは、それらの音を正確に捉えて上で、アプリに送るわけです。そして、アプリはそれがどんな音であるかを聞き分けた上で学習していくのです。

Mogeesアプリ(iPad版)の起動画面。利用するにはログインする必要がある

この学習では、同じ叩き方をある程度の回数を繰り返すと認識完了となり、その叩き方をすれば指定した音が出るようなります。同様に別の叩き方を学習させ、そこに別の音を割り当てれば、これで叩き分けられるようになるわけです。
音色を選択した上で、机を叩いたり、擦るなどジェスチャーをして学習させていく

この学習させる際、音を捉えると、それが平面上にプロットされていきます。正確に同じ音を繰り返していれば、小さな円になり、バラツキがあると大きな円になってきます。アプリは最大5種類の音を聴き分けることが可能となっていますが、認識した音の範囲が重なり合っていると、アプリ側もどちらの音なのか、判断しづらくなるので、なるべく違うことが出せるように工夫はしておく必要がありますね。

学習を終えると認識された情報が円で表示される(iPhone版) 

ここで気になるのがレイテンシー、つまり音の遅れです。机を叩いた音をアプリが判別した上で発音するので、当然システム的に見ると、必ずレイテンシーがあるはずです。そのレイテンシーが大きいと、やはり楽器として弾くのは、なかなか難しい、ということになってしまうのですが、このMogeesは、そのレイテンシーを感じさせないんです。これはちょっと驚きのレベルです。仕組みを理解した上で使ってみると、ちょっと信じられないほど。叩くとリアルタイムに音が出てくるから、かなり楽しく演奏できますよ。

計5つのジェスチャーを学習でき、●、■、▲、◆の4つのシーンを記録可能(iPhone版画面)

また、このMogeesのアプリでは、最大4つのシーンを記録させることができます。前述の通り、1つのシーンで5種類の叩き方を学習して、それぞれに異なる音を割り振れるのですが、その5種類の叩き方において、また別の組み合わせの音の割り振りができるので、演奏のバリエーションも増やすことができますよ。

よくiOSでこれだけのことができるものだと感心していましたが、これと同様のことがPCでも実現可能であり、PCではさらに面白いことができるんです。2016年5月現在、使えるのはMacのAudioUnitsとVSTプラグイン環境で、WindowsのVSTプラグインには近々対応とのことなので、ここではMac上で試してみました。

付属のアダプターでオーディオインターフェイスに接続可能な形にする

まずは、MogeesのセンサーをMacのオーディオインターフェイスに接続する必要があるわけですが、そのためのアダプターが付属しているので、まずはセンサーとアダプターを接続します。さらにこのアダプターの反対側とオーディオインターフェイスをフォンケーブルで接続すればOK。前述の通り、これは基本的にマイクなので、マイク入力として扱った上で、マイクゲインを適当なところに設定します。

一方で、MogeesのプラグインはMogeesサイトから無料でダウンロードできるので、DAW環境に合わせてAudioUnitsからVSTプラグインを入手してインストールしてください。

DAWのオーディオトラックにインサーションの形でMogeesプラグインをセットすればOK 

このMogeesはインストゥルメントの扱いなのかな?と思っていたら、エフェクトという位置づけなんですね。そこでDAWでオーディオトラックを作成し、ここにインサーションとしてMogeesのプラグインを組み込みます。すると、ここから先は基本的にiOS上のアプリとまったく同じであり、叩く音を学習し、それに合わせて音源を鳴らすことが可能になります。

ここでのレイテンシーは、オーディオインターフェイスのバッファサイズによって大きく変わってくるので、できるだけバッファサイズを小さく設定しておくといいようですね。感覚的にはiOSで使っても、Macで使ってもレイテンシーにほとんど差はないというか、ほぼレイテンシーを感じずに演奏することができますね。

でも、DAWでMogeesを使うことにより、iPhoneやiPadではできないことがいろいろと可能になります。まずは、演奏をレコーディングしていくことです。基本的にはMogeesのセンサー=マイクで拾った、机を叩くような音を録音していくわけですが、エフェクトであるMogeesプラグインを介して、ドラムなどの音に変換される形になります。
Mogeesプラグインの中央下に、MIDI Input/Outputのチャンネル設定項目があるのに気づく

さらにこのプラグイン版の画面下のほうを見るとMIDI INとMIDI OUTというのがあるんですよね。これはMogeesに認識された音ごとにMIDIチャンネルが異なるようなっているのですが、Mogeesが音を出す都度、ここからMIDIのノート信号が発せられるのです。これをMIDIトラックへ送ることで、机を叩き分けた音をMIDIトラックに記録することもできるわけなのです。また、そのMIDI情報をよく見てみると、叩く強さによってベロシティーも変化していることが確認できました。

MIDIトラックからMogeesプラグインがMIDI入出力として見えるので、これを設定することでいろいろ活用できる

ということは、Mogeesから発せられるMIDI信号を別のソフトウェア音源に送ることで、これを鳴らすこともできるのです。つまり、机を叩くことでMogees以外の音源も演奏することができるわけなのです。今後Mogeesの音色数は増えていくそうではありますが、それを待たなくても自在に好きな音色を割り振ることが可能ですね。

反対にMIDIトラックの出力をMogeesプラグインへMIDIノート信号を送ることで、同じところを叩いていても、音程を変化させてメロディアスな演奏をさせることが可能になります。もともとMogeesプラグイン側で設定したMIDIノートは各ジェスチャー固定となっているのですが、DAW側からMogeesプラグインへMIDIノートを送ることでさまざまなプレイが可能になるんですね。

このMogeesプラグインは、現在はまだMacのみの対応ですが、近いうちにWindowsでも使えるようになるとのことなので、応用範囲はますます広がっていきそうですね。


【価格チェック】

◎Amazon ⇒ Mogees
◎サウンドハウス ⇒ Mogees
◎MI7ストア ⇒ Mogees

【関連情報】
Mogees製品情報

【ダウンロード】
Mogeesアプリ・ダウンロード
Mogeesプラグイン・ダウンロード

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