新登場のSONARのエントリー版、SONAR HOME STUDIOを使ってみた

TASCAMからWindows用のDAWであるSONARシリーズのエントリー版と位置付けられるバージョン、SONAR HOME STUDIOが実売価格10,000円(税込み)で発売されました。この手頃な価格でありながらも、たくさんのソフトウェア音源、プラグインエフェクトを装備するとともに、ループ素材も数多く揃っているので、インストールすればすぐに音楽制作ができるツールとなっています。

また、初心者が迷わず・困らず操作できるように、1つのパラメーターだけで、いい感じに音作りができるStyle Dial FX Pro Channelモジュールを搭載したのも大きなポイントとなっています。実際どんなDAWとなっているのか試してみたので、紹介してみたいと思います。

発売されたばかりのSONARのエントリー版、SONAR HOME STUDIOを使ってみた


SONAR HOME STUDIOと聞いて「懐かしい!」という方もいるかもしれませんが、この名前で登場したのはSONARがRoland時代だった2009年以来なので8年ぶり。これまで初心者用として、SONARとは一線を画す形で存在していたCakewalk MUSIC CREATORがなくなり、SONARシリーズのエントリー版として今回新たに誕生したのです。


SONAR HOME STUDIOのパッケージ

これによってSONARシリーズは上から

 


パッケージの中には簡易マニュアルとライセンスカードのみ。ソフトと詳細マニュアルはネットからダウンする 

という4種類となり、幅広い選択ができるようになったのです。上位版と同様に、店頭で販売されているパッケージの中には、簡易マニュアルと、ライセンスカードが入っているだけで、CD-ROM/DVD-ROMなどは入っていません。結構容量が大きいだけに、ネットからダウンロードしてインストールする形になっているんですね。

エントリー版とはいえ、SONAR HOME STUDIOでも最大64オーディオトラック・128MIDIトラックを装備しているので、普通に使うのであれば十分すぎるトラック数となっています。4製品の基本的なスペックを見ると以下のようになっています。

PLATINUM PROFESSIOAL ARTIST HOME STUIDO
同時入出力数 無制限 無制限 無制限 16モノ/ 8ステレオ
最大オーディオトラック数 無制限 無制限 無制限 64
最大シンセ使用数 無制限 無制限 無制限 64
最大オーディオトラック数に依存
最大MIDIトラック数 無制限 無制限 無制限 128
最大センド/バス数 無制限 無制限 無制限 5/8
最大録音サンプリングレート 384k 384k 384k 48k
最大録音ビットレート 64bit 64bit 64bit 24bit
内部ミキシングエンジン 64bit 64bit 64bit 64bit
Rewire64ビット対応

MIDIで打ち込みをしていくこともできるし、オーディオでボーカルやギターなどの楽器をレコーディングしていくことも自在です。その打ち込みにおいてポイントになってくるのが、あらかじめどんなソフトウェア音源が搭載されているのか、という点でしょう。


非常に強力な音源であるRapture Session

SONAR HOME STUDIOでは計6種類のソフトウェア音源が用意されているのですが、その中でも大きなポイントとなるのがRapture Sessionの存在です。これはPLATINUMに搭載されていて、29,000円程度で単体発売もされているRapture Proというシンセサイザーの演奏専用版ともいえるもの。

Rapture Sessionはプレイバック音源ではあるが、ある程度の音色のエディットは可能になっている

Rapture Proはウェーブテーブルシンセを中心とした、超強力な音源でゼロから音作りができるタイプのものなのに対し、Rapture Sessionは、まったく同じシンセサイザ・エンジンを搭載しながら、プリセット音色を鳴らすことを基本とした音源となっているのです。とはいえ、4GBにもおよぶ膨大なプリセット音色が用意されているのとともに、ある程度のパラメータはいじれるので、自分の好みの音に調整することは可能。いわゆるシンセサウンドはもちろん、アコースティックピアノやオーケストラのストリングスなどのリッチなサウンドも数多く装備しているので、さまざまな用途で活用できます。

POWERED BY ROLANDと書かれたGM2マルチ音源のTTS-1も搭載されている
またRoland時代の遺産ともいえるTTS-1というGM2音源が入っているのも結構便利なところです。ここには、一通りどんな音色でも入っていますから、困ったときはここから選べばいいわけですからね。

好きなVSTプラグインを追加することも可能。画面はフリーウェアのSynth1を使ってみたところ
もっとも、SONAR HOME STUDIOで使えるのは、用意されている6音源だけでなく、VST2/VST3のプラグインであれば何でも追加して利用することが可能です。たとえば人気のフリーウェアSynth1をインストールすれば、普通に問題なく使うことができましたよ。

次に紹介したいのが、ミックスストリップという機能についてです。SONARの上位版であるPLATINUMやPROFESSIONALにはPro Channelという強力なコンソール機能が備わっているのですが、それを初心者でも簡単に操作して音作りができるようにしたものであり、SONAR HOME STUDIOの最大の特徴ともいえるいえるのが、ミックスストリップなのです。

ミックスストリップをオンにすると画面左側に4バンドのEQが現れる

ミックスストリップをオンにすると、専用の4バンドEQが表示され、ここで音作りができるのはもちろんなのですが、さらに、Style Dial FX Pro Channelモジュールという8つのエフェクトが追加できるようになっているのです。

8種類あるStyle Dial FX Pro Channelモジュール 

マキシマイザーのMAX、自然なニュアンスにするGRIT、空間を広げるSPACE、臨場感を失わずに耳障りな周波数を取り除くSMOOTHER、ノイズゲートのGATER、音に広がりを持たせるDEPTH、トレモロ効果を与えるPULSE、トランジェントシェイパーのSHAPERのそれぞれ。いずれも大きいノブが1つだけというものなのですが、これを動かすだけで、簡単に効果的な音作りができるので、非常に便利ですよ。

画面左のミックスストリップに大きなノブを持つエフェクトが並んでいく

さらにエフェクトとしてはOverloud社のTH3アンプシミュレーターが搭載されているのも重要なポイントです。これはさまざまなギターアンプをリアルにモデリング・エミュレーションしてくれると同時に、数多くのストンプエフェクトも装備されているので、これ1つあればギターの音作りは完璧というもの。ある意味、このOverloud TH3だけのためにSONAR HOME STUDIOを購入しても損はないと思います。


Overloud TH3 アンプシミュレーターも搭載されている

こうした機能を持ちつつ、DAWとしてMIDIの打ち込み機能やオーディオ機能のほうもバッチリ装備されています。


強力な編集機能を装備するピアノロールエディタを装備 

MIDIにおいてはとっても強力なピアノロールエディターが搭載されているので、これを利用しながらリアルタイムレコーディングしたものを編集することもできるし、ゼロから打ち込んでいくことも可能です。

譜面入力・譜面表示機能も装備されている
また譜面入力機能も装備されているので、五線譜を見ながらデータを入力したり、エディットしたりできるし、ここに歌詞を入力したり、強弱記号を入力したり、コードを入力できるというのも譜面に慣れている方にとっては、かなり有用に使えるはずです。

MIDIステップエディタもかなり大きな威力を発揮してくれる
さらにMIDIのステップエディタも搭載されているので、これを使ってドラムパターンを入力したり、シーケンスパターンを作成していくなど、まさに打ち込み用として大きな武器となってくれます。

ループ素材をエディットできるループコンストラクションビュー
一方、オーディオのほうでもループコンストラクションという画面が用意されています。ここでは、ループ素材を自在にエディットできるだけでなく、自分でレコーディングした音をスライスしてタイミングをいじったりループ素材化して保存することができるなど、なかなか便利に使うことができますよ。

このように、SONAR HOME STUDIOは安価なDAWでありながらも、強力な機能を備えたツールになっていることがお分かりいただけたのではないでしょうか?レコーディングにおいては先ほどの表のとおり、24bit/48kHzにまでしか対応していないので、ハイレゾレコーディングまではできないのですが、内部的には64bitオーディオ処理をしているので、かなり高音質でのレコーディング、編集が可能です。

DSDファイルのインポート、エクスポート機能を装備

またちょっぴりアンバランスな気はしますが、このSONAR HOME STUDIOでも上位版と同様にDSF/DFFのインポート、エクスポートができるので、DSD用のツールとして使えてしまうのも面白いところではありますね。


YouTubeへ直接アップロードする機能も搭載されている

できあがった曲をYouTubeへアップロードしたり、SoundCloudへ直接アップロードする機能を備えているのも、今時のDAWという感じではありますね。

これからDTMにチャレンジしてみたいという方はもちろん、ほかのDAWでくじけたので、初心者用の別のDAWを使ってみたいという人も、SONAR HOME STUDIOは試してみる価値があるソフトだと思いますよ。

【関連情報】
SONAR製品情報

【価格チェック】
◎Amazon ⇒ SONAR HOME STUDIO
◎サウンドハウス ⇒ SONAR HOME STUDIO
◎Amazon ⇒ SONAR PLATINUM

◎サウンドハウス ⇒ SONAR PLATINUM
◎Amazon ⇒ SONAR PROFESSIONAL
◎サウンドハウス ⇒ SONAR PROFESSIONAL
◎Amazon ⇒ SONAR ARTIST
◎サウンドハウス ⇒ SONAR ARTIST

Commentsこの記事についたコメント

9件のコメント
  • KoY

    廉価版とは言え、VSTがサポートされているんですね。
    IFも他のDAWよりも何となくポップでとっつきやすそうな印象です。
    ただバージョン違いによる使用制限を考えると、ART12600円とHOME9000円で実質約3600円(先程、記事内のリンク先アマゾンで確認)ほどの差額ならARTを選ぶ方がメリットがあるのでは・・という気もします。
    本家サイトを見たら、英語版でしょうけどイントロプライス約50ドル(=約5500円?)とあり、
    2016/12/9まで・・と明記があるにも関わらず、その下のリンクはまだ生きてるみたいでしたw

    2017年3月27日 11:50 AM
  • とぅ

    ARTIST→月刊アップデート会費必要
    HOME→買い切り
    機能と価格を見たらHOMEはStudioOne Proよりも良い選択かも知れませんね。
    Tracktionが今のところ良いかも。70ドルでメロダイン付いてくるし、Host不要でVST対応してるし。

    2017年3月27日 2:40 PM
  • trackiss

    ほう、こんなものが発売されていたのですね…
    SONAR Professional使いですが、かれこれ一年程前からメンバーシップの更新していなかったので、Cakewalk公式ホームページに訪れる機会もなく…知らなかった…
    バンドルの音源を殆ど使用していない私にとっては、これでも十分だったように思いますね。打ち込みばかりで、オーディオトラックもそんなに使いませんし
    …チェイスMIDI機能が結構欲しいので、メンバーシップ更新しようかな。正直言うとLTSが欲しかったですが、Platinumだけ異常に高いんですよね…

    2017年3月27日 5:22 PM
  • poco

    sonarユーザーから言わせて頂くと、タブレットモードとかios版とか、モバイルレコーディングを意識した、ひねりが欲しかったですね!せめて既存のグレードと比べて凄く軽くてatomとかでもサクサク動くとかあれば良いのですが、記事を拝読させて頂いた限りでは、単なる新規ユーザー獲得バージョンみたいでガッカリです。

    2017年3月27日 8:08 PM
  • Uターンライダー

    DTMやってみたいなー、と悩んでいる方は、とりあえずこれを触ってみるのもいいかもしれません、僕もSONARからはじめました、藤本さんのわかりやすい解説書が助けになりました。

    2017年3月27日 9:29 PM
  • 藤本健

    Uターンライダーさん
    ありがとうございます。SONARもTASCAM時代になってからは私も書籍を出してないんですよね…。まあ、根幹は変わっていないので、SONAR X1 LEの本なども、ほぼそのまま使えそうではありますが…。

    2017年3月27日 11:14 PM
  • SONAR X3 LEとの比較が知りたいです。

    2017年3月28日 10:44 PM
  • 傍観者

    実はsteam経由だと安く買えます・・・
    ようやくsynth1が使えるようになったのですが、私の環境では
    環境設定の画面で
    「関連したvst2プラグインを非表示」
    をoffにする必要がありました。onだとdllは読み込んでいるのですが
    表示されずに使えない状態でした。
    他にも悩む人がいるかもしれないのでコメントさせていただきました。

    2017年4月19日 11:58 PM
  • kiyohide

    まず、ノートパソコンでは動きません
    それなりのスペックがないとDTMはできません
    中途挫折しないためにもきちんと情報を集めてそれなりの準備をして
    楽しんでほしいと思います

    2017年4月25日 3:48 PM

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です