Apolloはどうして高いのに売れるのか? グラミー受賞作品も次々と生み出すApolloに内蔵されるUAD-2の破壊力

いろいろなところで話題になるUniversal AudioApollo。小さなサイズのApollo Soloから、ラックマウントサイズのApollo xまでさまざまなバリエーションがありますが、売れ筋のApollo Twin X QUAD Heritage Editionだと、実売価格が184,800円(税込)とかなり高価で、簡単には手を出せない機材のようにも思えます。確かに他社のオーディオインターフェイスと比較して、相当割高に感じますが、その理由はこれが単なるオーディオインターフェイスではなく、ここにUAD-2という強力な機能が搭載されているからです。

そう、このUAD-2があるからこそ、国内外の多くのミュージシャンがApolloを導入しており、これを使った数多くの著名作品が生まれ、グラミー賞を受賞する作品も次々と登場しているのです。「Apolloって、ちょっと気になるけど、難しそうでよく分からない……」という人も少なくないと思うので、ここでは改めてApolloとはどんな機材なのか、ほかのオーディオインターフェイスと何が違うのか、まったくApolloを知らない方のために、基本的な部分を紹介してみたいと思います。

UAD-2というシステムを内蔵している点で、Apolloは一般のオーディオインターフェイスとは大きく異なる機材といえる

Apolloはアメリカ・カリフォルニア州にある老舗メーカー、Universal Audioが開発するオーディオインターフェイスです。現在はThunderbolt 3接続の機材が中心となっていますが、USB接続のもの、Thunderbolt 2接続のものがある一方(古くはFireWire接続のものもあった)、機能的、性能的にも異なるいくつかのバリエーションもあります。

Thunderbolt 2接続のApollo Twin(左)とThunderbolt 3接続のApollo Twin X(右)

現在の売れ筋製品であるApollo Twin Xはトップパネルに大きなノブがある機材でフロントにギター入力とヘッドホン出力、リアにはマイク/ライン入力兼用のコンボジャックx2、TRSフォンの出力が4系統あるほか、ADATおよびS/PDIFに対応した光入力を1つ装備し、USB Type-C端子を使ったThunderbolt 3接続の機材となっています。

音質が抜群にいいということは置いておいて、オーディオインターフェイスとして見た場合、光入力を装備していることとThunderbolt 3接続であることを除けば、比較的普通なスペックともいえます。ところが、ここにUAD-2という機能が備わっているのが、ほかのオーディオインターフェイスにはない、最大の特徴となっています。

かなり以前「ビンテージエフェクトを忠実に再現する、プロ御用達のUAD-2ってどんなもの!?」、「超強力エフェクト満載のUAD-2を使ってみた」といった記事で紹介したことがありましたが、UAD-2とは、Universal Audioが作り上げたエフェクト規格であり、各種DAWのプラグインとして動作させることが可能な仕組みです。

VST、AudioUnits、AAXといったプラグインとして動作させることが可能なのですが、その信号処理においてはMacやWindowsのCPUを使わず、Apollo内蔵のDSPで処理をするというのが大きなポイント。つまりDAW側にほとんど負荷をかけずにエフェクト処理ができるのです。

UADプラグインをたとえばCuabseのVSTプラグインとして使うことができる

DSPを搭載するオーディオインターフェイス自体はRME、MOTU、Autelope、Steinberg、TASCAMなども出していて、もはや珍しくはないかもしれませんが、Universal AudioのApolloの場合、UAD-2という仕組みにより、DAWの普通のプラグインとして使えてしまうというのが大きな違いです。

そしてUniversal Audioは、そのプラグインの選定、そのクオリティーに尋常ではないこだわりを持っているのがポイントであり、そこがプロユーザーにウケているところ。どういうことかというと、業務用スタジオに置かれているさまざまなビンテージ機材を完璧なまでに再現しているということ。つまり、Apolloがあれば、まさに業務用のスタジオにいるかのように、各種ビンテージ機材を使うことができるのです。

Universal Audio自らが復刻させている1177LNリミッター

まあ、CPUベースで動作するプラグインでも、ビンテージ機材をエミュレーションするものは、いろいろあるのは事実ですが、Universal Audioが実現さているのは、あくまでもホンモノ。だから、それっぽいものを作るのではなく、各機材を作り出したメーカーに正式に企画を提案した上で、共同でUAD-2ベースのプラグインを開発し、徹底的に、ホンモノに作り上げた上で、オリジナルメーカーもホンモノであると認めた上でリリースしているのです。まあ、そもそもUniversal Audio自体が、50年の歴史を誇るビンテージメーカーであり、1176LA-2A610 Consoleなど生み出した会社ですから、それを再現させるところからスタートしているのはもちろんです。

各メーカーと協力体制をもって開発しているので、プラグインでありながらホンモノである

協業しているメーカーを挙げると、上記のロゴのとおり、AKGLexiconNeveFenderMarshallEventideSSLKORGMoog……とそうそうたるところが共同開発に参加していることが分かります。

このUADプラグイン、すでに15年以上もの歴史を持つこともあり、現在では100種類を超えるライブラリが揃っています。もちろん、数多くのビンテージ機材の復刻版だけでなく、上記のブランドの中にAntaresがあったことからもお気づきの通り、Auto-Tuneのような現代のエフェクトもあるし、中にはこれまでにない新たなエフェクトも存在していたりもしますが、ベースとなっているのはビンテージエフェクトなのです。

AntaresのAuto-Tune Realtime AdvancedもUAD-2のプラグインとして存在してる

これらのエフェクトは、Apolloをミキサーコンソールとして使うためのアプリ、Console 2.0上に立ち上げて、そのまま掛け録りをすることができるのが大きな特徴。このConsole上に各種エフェクトを立ち上げた場合、PC上ではなく、完全にApolloのハードウェア内で動作するため、Apollo自体が独立したエフェクター、もっといえば大型コンソールにエフェクトが組み合わせた、まさにスタジオとして機能してくれるのです。

Console 2.0上でUADプラグインを起動させれば、完全にApolloのハードウェア内で完結する

一方、前述のとおり、VST、AU、AAXの環境で動作するので、自分の使っているDAW上で立ち上げることも可能で、これならば普段扱っているプラグインなどと同様な感覚で、自由に使うことができます。もちろんMacでもWindowsでも利用でき、ルーティングは自由自在です。2021年4月末現在、macOS 11.x、Big Surには対応しているものの、Apple M1 Sillconはサポートされていないのがちょっと残念なところではありますが、近い将来対応するものと思われます。

先日、AntelopeのZenGo Synergy Coreを紹介した記事の中で、Apolloを引き合いに出したことがありましたが、Apolloの場合、掛け録りだけでなく、普通にDAWのプラグインとしてシームレスに使えるが大きな違い。Antelope以外でもMOTUやRMEなどオーディオインターフェイス内にDSPが搭載されていますが、プラグインとしてそのまま普通に使えるのはUAD-2の最大の特徴といってもいいと思います。

このUADプラグイン、同時に複数使うこともできますが、一般のプラグインを多数立ち上げるとCPU負荷が大きくなるのと同様、多数立ち上げればApollo搭載のDSPの負荷が大きくなり限界がきます。そのため、使い方に応じてDSPをいくつ積んだものにするか選択できるようになっています。たとえばApollo Twin X QUADは4つだし、DUOは2つといった具合です。

ユニークなのは、複数のApolloを接続するか、Apolloに加えてSatelliteというDSPだけを搭載したモジュールを追加接続することでDSPの数を増やせるのも特徴となっています。

UAD-2を動かすDSPだけをモジュール化したSatellite

では、100個以上あるプラグインをどれでも好きなだけ自由に使えるかというと、そうではないんです。購入した機材によって、付属するプラグインが異なって、そこに入っていないものはオプション扱い。つまり別途購入する必要があります。1つ1つ購入するとなると、単価が149ドルとか、399ドル、699ドル……といった価格なので、トータルするとかなりの金額になります。割安になるセット製品もあるので、どう選ぶかは難しいところです。

昨年から発売されているUAD-2のプラグインを数多くバンドルしたApolloのHeritage Edition

ただし、2020年に発売されたHeritage Editionという期間限定での製品は、通常版より少し価格はUPしますが、より多くのUADプラグインが付属しているのが特徴。たとえば、Apollo Twin X QUAD Heritage Editionの場合、通常版に付属のものに加え

UA 1176 Classic Limiter Collection
Teletronix® LA-2A Classic Leveler Collection
Pultec® Passive EQ Collection
UA 610 Tube Preamp & EQ Collection
UA Pure Plate Reverb

という5つ、金額にして1,345ドル分が付属するので、トータルで見るとかなり割安となっています。

もっとも、2021年4月現在、新規に出荷されているのはHeritage Editionのみとなっているのが実情。とはいえ、とりあえずUADプラグインは後でいいので、まずは少しでも安くハードが欲しいという方は、まだ市場在庫として通常版の製品も各ショップで販売しているケースも多いので、それらを探してみるのがよさそうです。

2021年6月30日までデスクトップ・プラチナ・ボーカル・プロモーション展開中

一方、6月30日まで、デスクトップ・プラチナ・ボーカル・プロモーションなるキャンペーンが実施されています。これはApolloのデスクトップモデル、具体的には

Apollo Twin X QUAD Heritage Edition
Apollo Twin X DUO Heritage Edition
Apollo Twin USB Heritage Edition
Apollo Twin MkII DUO Heritage Edition
Apollo Solo Heritage Edition
Apollo Solo USB Heritage Edition

のいずれかを新規購入するとともに、自身のアカウントへ製品登録を行うと購入モデルに応じて Auto-Tune、Helios、Teletronix、UA といった、ハイクォリティーなボーカル収録を実現可能な UADプラグインがもらえるというもの。

実はこのプロモーションにはちょっとしたトリックがあり、表向きHeritage Editionが対象となっているけれど、実は市場在庫としてある通常版も対象となっており、この期間にアカウント登録してしまえば、Auto-Tuneなどが入手できるので、かなりお得感もありそうです。ちなみに、Apollo Twin X QUAD Heritage Editionを購入した場合は

Antares Auto-Tune Realtime Advanced
Century Tube Channel Strip
EP-34 Tape Echo
Oxide Tape Recorder
Helios Type 69 Preamp & EQ
Teletronix LA-3A Classic Audio Leveler
V76 Preamplifier

の7つのプラグイン、トータル1,543ドル分がもらえるので、大きなチャンスといえそうですね。

実際にApollo Twin X QUADを試してみた

以上、とっても簡単にApolloがどんなものなのかをまとめてみましたが、ほかのオーディオインターフェイスとの違いをご理解いただけたでしょうか?今回は紹介できませんでしたが、ほかにもApolloの入力チャンネルにおいてUnisonテクノロジーというものが搭載されており、電気的に見てもホンモノの機材と同等にする機能があり、それをUADプラグインと組み合わせることで、よりホンモノにしているという特徴もあるし、前述のConsole 2.0により、仮想的に大規模コンソールと同等の機能を実現できるなど、さまざまな面で、一般のオーディオインターフェイスとは大きく異なるのがApolloなのです。

安い機材ではありませんが、ものすごく大きな付加価値を持っているオーディオインターフェイスがApolloなのです。いろいろなバリエーションがあるので、どれを選ぶかは難しいところですが、せっかく買うならこうしたキャンペーンを実施しているときに入手するのが有利なのとは間違いないので、検討してみるにはいい時期ではないでしょうか?

【関連情報】
Apollo Twin X製品情報
Universal Audio : デスクトップ・プラチナ・ボーカル・プロモーション情報

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Commentsこの記事についたコメント

2件のコメント
  • コロンビア

    まさに今月Apollo Twin Xを買おうとし、6/30までのキャンペーンを見て興奮し、
    念の為と思い調べたらM1 Sillconに対応していないのを知って誠に残念な気持ちになっているところ、
    藤本さんの記事を読み、ますます残念です。

    現在のバージョンはM1で動く、との話もありますが、フックアップさんにに問い合わせてみたら
    「現在のハードでは対応できないかもしれない」との答えがあり、
    動くという話はオフィシャルではないので購入するのに躊躇しています。
    しかし本国の公式サイトには「M1 Sillconに対応するべく動いている」という一文があるので、
    なんとか5月くらいに対応していただければと心待ちにしております。

    質問なのですが、DUOにしようか、QUADにしようか、シリコン対応になった暁にどっちにするか
    非常に迷っております。
    使いたいのは御多分に洩れず、1176、LA-2A、API500、SSL 4000などです。
    Unison使用も含めて、DSP1基で、いったいどのくらいのプラグインが動くのでしょうか?
    チャートを見てもいまいちよくわかりません。
    https://help.uaudio.com/hc/en-us/articles/215262223-UAD-2-DSP-Chart

    たとえば、Neve 1073 だとモノラルで40.1%のDSP%とありますが、
    DSPシングルで100%と考え、2チャンネルなら使える(80.2%、残り約20%)、
    3チャンネルだと(120.3%)となり使えない、
    DUOにすれば200%となり、200%-120.3%=残り約80%、
    といった考え方で間違っていませんでしょうか?
    不勉強ですみませんが、ご教授いただけたら嬉しいです。

    2021年4月24日 8:55 PM
  • 藤本 健

    コロンビアさん

    こんにちは。そうですね、まだM1は正式サポートではないです。が、このキャンペーンに合わせて、先に入手してしまうのはありだと思います。いま、世の中的に半導体付属で、今後値上げする可能性も高まってきているので…。
    DSPの計算、それで正しいです!余裕があれば、QUADがいいですね。

    2021年4月24日 9:21 PM

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