世界各地の民族音楽に魅了され、楽曲制作に取り入れたいと思ったことはありませんか?アフリカの太鼓、中東の弦楽器、アジアの笛、南米の打楽器など、それぞれの地域に根ざした独特な音色は、現代の音楽制作においても非常に重要な要素となっています。しかし、これらの楽器を実際に入手し、演奏技術を習得するのは現実的ではありません。
そんな課題を解決してくれるのが、ドイツのBest Serviceから2025年5月にリリースされ、国内ではSONICWIREが販売を行っている「ETHNO WORLD 7」です。20年以上の歳月をかけて熟成されてきたこのシリーズの最新作では、380種類以上の世界中の民族楽器と声を収録。COMPLETE版は税込みで62,887円(為替レートにより日々変動します)という価格ながら、映画音楽、ゲーム音楽、ポップスからアンビエントまで、あらゆるジャンルの楽曲制作で活用できる、まさに民族音楽の宝庫とも言える音源ライブラリとなっています。本記事では、この究極の民族音楽総合ソフトウェア音源の魅力に迫ります。

世界中の民族楽器のサウンドや歌声を再現できるETHNO WORLD 7がリリースされた
ETHNO WORLD 7とは
ETHNO WORLD 7の詳細に入る前に、まずは以下のトレーラーをご覧ください。
いかがでしょうか?わずか数分の映像の中に、世界各地の民族音楽のエッセンスがぎっしりと詰め込まれていることがお分かりいただけたと思います。こんなサウンドを簡単に作り出すことができるのがETHNO WORLD 7なんです。
ETHNO WORLD 7は、ドイツのBest Serviceが開発し、国内ではSONICWIREが販売を担当している民族音楽総合ソフトウェア音源です。世界中の民族楽器と声を網羅的に収録し、現代の音楽制作環境で手軽に活用できるよう設計されています。
最大の特徴は、380種類以上もの楽器と声を収録していることです。しかも、これらは単純なマルチサンプルだけでなく、各楽器特有の奏法(アーティキュレーション)やフレーズも含んでいるため、打ち込みでは表現が困難な楽器本来の表現力も再現できます。
ドイツのBest Serviceが作るETHNO WORLDシリーズ
Best ServiceはドイツのMünchen(ミュンヘン)に拠点を置く、サンプリング技術とソフトウェア音源開発の老舗メーカーです。1995年の設立以来、高品質なサンプルライブラリの制作で定評があり、特に民族音楽分野においては世界的なリーディングカンパニーとして知られています。
同社の製品は、ハリウッド映画の劇伴からゲーム音楽、ポップスまで幅広い分野で使用されており、プロフェッショナルからアマチュアまで多くのミュージシャンに愛用されています。
ETHNO WORLDシリーズは2000年代初頭にスタートし、現在まで20年以上にわたって継続的に開発されてきました。各バージョンでは新たな楽器や地域の音楽が追加され、まさに「秘伝のタレ」のように熟成を重ねてきたシリーズです。

ETHNO WORLD 6から7への追加音源だけでも膨大にある
したがって、最新のETHNO WORLD 7はこれまでのETHNO WORLDシリーズをすべて含む形となっています。別の見方をすれば、ETHNO WORLD COMPLETE 7の場合、前バージョンである、ETHNO WORLD 6 COMPLETEに60種以上にのぼる新規サウンドを収録したのがETHNO WORLD 7 COMPLETEである、というわけです。収録サウンドの詳細は製品ページに一覧が掲載されているので、そちらをご覧いただけると、その数の多さがすぐに理解できるかと思います。
シリーズの特徴として、楽器本来の音質を重視していることが挙げられます。過度なリバーブやエフェクトを加えず、あくまで楽器そのものの音を忠実に収録することで、ユーザーが自分の楽曲に合わせて自由に加工できるよう配慮されています。
ETHNO WORLD 7の3つのラインナップ
ETHNO WORLD 7は、ユーザーのニーズに合わせて3つのバージョンが用意されており、いずれもSONICWIREから購入できます。
ETHNO WORLD 7 INSTRUMENTS:楽器のみを収録(47,124円)
ETHNO WORLD 7 VOICES:声のみを収録(¥23,485円)
楽器のみ、または声のみが必要な場合は単体版を選択でき、両方必要な場合はCOMPLETE版がお得になっています。

ETHNO WORLD 7は大きく3つのラインナップがあり、さらにアップグレード版などもある
またETHNO WORLD 5または6を持っている方であれば、アップグレード版で安く購入することも可能になっているので、購入の際はチェックしてみてください。
いずれもNative INSTRUMENTSのKONTAKTベースで動作するライブラリとなっており、それぞれ別の音源という扱いです。また製品版のKONTAKT 7以降のバージョンで利用できるのはもちろん、無料のKONTAKT Playerでも利用可能になっています。もちろんWindows、Macのスタンドアロン、VST3、AU、AAXの各プラグイン環境で利用することが可能になっています。

KONTAKTベースの音源になっている
ちなみにインストールは、Best Serviceサイトからインストーラをダウンロードして行う一方、アクティベーションはNative Accessを使って行うという形になっていました。

Native Accessでアクティベーションを行う
それでは、ここからETHNO WORLD 7 Instrumets、ETHNO WORLD 7 VOICESと、それぞれの音源を順番に紹介していきましょう。
世界を網羅する豊富な楽器群、ETHNO WORLD 7 INSTRUMENTS
ETHNO WORLD 7 INSTRUMENTSには、文字通り世界各地の民族楽器が収録されています。アフリカのカリンバやジャンベ、中東のウード、インドのシタール、南米のチャランゴなど、普段なかなか触れる機会のない楽器も含まれています。日本の尺八なども入っていますが、和楽器はやや少なめなので、もし和楽器だけが目的だとすると、別のものを選んだ方がいいかもしれません。

ETHNO WORLD 7 INSTRUMENTSの画面
地域別に分類された楽器群は、それぞれの文化圏の音楽的特徴を忠実に再現しています。アジア圏では中国の二胡、韓国のカヤグム、タイのクルーイといった弦楽器や管楽器から、インドネシアのガムランまで幅広くカバー。ヨーロッパではケルト音楽に欠かせないイリアンパイプスやボドラン、東欧のツィンバロムなど、各地域の伝統音楽を代表する楽器が揃っています。

世界中、各地域ごとの民族楽器のサウンドが収録されている
アフリカ圏では、西アフリカのカリンバ、ジャンベ、バラフォンから、北アフリカのウードやダルブッカまで、大陸全体の音楽文化をカバー。南北アメリカでは、南米のチャランゴ、ケーナ、パンフルートから、北米先住民のフルートやドラムまで、新大陸の豊かな音楽遺産が収録されています。
楽器カテゴリーの詳細構成
楽器は演奏方法や音色特性によって整理されており、弦楽器、管楽器、打楽器、その他の特殊楽器に大別されています。弦楽器カテゴリーには撥弦楽器、擦弦楽器、打弦楽器が含まれ、それぞれ異なる奏法や音色バリエーションが用意されています。

各楽器ごとに、アーティキュレーションも含めて再現できるようになっている
管楽器では、リード楽器、フルート系、ホルン系など、息の吹き方や構造の違いによる音色の変化も忠実に再現。打楽器においては、材質や形状、演奏方法の違いによる微細な音色差も丁寧にサンプリングされています。
リアルな奏法の再現
単純なマルチサンプリングだけでなく、各楽器特有の奏法(アーティキュレーション)も収録されているのが大きな特徴です。例えば、弦楽器のベンドやビブラート、打楽器のロール奏法、管楽器の装飾音など、その楽器でなければ表現できない技法も含まれています。
特に注目すべきは、楽器固有のピッチベンドや一般的な12音階ではないマイクロチューニングの表現です。中東音楽で重要な4分音、インド音楽のガマカ(装飾音)、日本の雅楽における微分音など、西洋音楽とは異なる音律体系も正確に再現されています。

マイクロチューニング機能により、一般的な12音階ではない音程で演奏することも可能になっている
また、演奏速度に応じた音色変化も収録されており、ゆっくりとした演奏から高速パッセージまで、自然な表現が可能です。特に打楽器では、弱打から強打まで複数のベロシティレイヤーが用意され、ダイナミクスの変化に応じたリアルな音色変化を楽しめます。
使いやすいインターフェース
操作画面は直感的で分かりやすく設計されています。楽器の選択から音色の調整まで、スムーズに行えます。また、各楽器には英語にはなりますが、とても詳細な説明も付属しているため、初めて触れる楽器でも安心して使用できます。各楽器のページには、その楽器の歴史的背景、伝統的な演奏法、現代音楽での活用例なども記載されており、単なる音源を超えた教育的価値も提供しています。

各音色ごとに、細かな説明が英語で用意されている
リアルタイムコントロールも充実しており、MIDIコントローラーとの連携により、エクスプレッションペダルでビブラートの深さを調整したり、モジュレーションホイールでフィルターカットオフを変化させたりといった、より表現力豊かな演奏が可能です。

プリセットでさまざまな楽器を選ぶだけでなく、細かな調整も可能になっている
各楽器には即戦力となるプリセットが用意されており、そのまま楽曲制作に使用できます。同時に、詳細なパラメーター調整も可能で、自分好みの音色にカスタマイズすることもできます。

EQやコンプ、ディレイ、コーラスなど、エフェクト調整もできる
具体的にはEQ、コンプレッサー、ディレイ、リバーブ……といった基本的なエフェクトを用いて調整していくことが可能です。
多様な歌声の表現を実現するETHNO WORLD 7 VOICES
ETHNO WORLD 7 VOICESには、世界各地の伝統的な歌唱法による声が収録されています。モンゴルのホーミー、ブルガリアの女性合唱、アフリカの部族歌唱、グレゴリオ聖歌など、地域色豊かな歌声の表現が楽しめます。
収録されている歌声の種類は実に多彩で、男性ソロ、女性ソロ、児童合唱、混声合唱など、さまざまな編成での歌声が含まれています。特に注目すべきは、各地域の伝統的な発声法や装飾技法が忠実に再現されていることです。

世界各国の伝統的な歌い方を再現できるETHNO WORLD 7 VOICES
ヨーロッパ圏では、グレゴリオ聖歌やルネサンス期の宗教音楽、ケルト音楽の哀愁漂う歌声、東欧の力強い民謡歌唱など、時代と地域を超えた多様な表現が楽しめます。ブルガリアの女性合唱で有名な鋭い倍音を含んだ歌声や、北欧のヨイクと呼ばれる即興的な歌唱法も収録されています。
地域別の歌唱特性
アジア圏では、中国の京劇で使用される独特な発声、インドの古典音楽におけるガマカ(装飾音)を多用した歌唱など、各文化圏の音楽的特徴が色濃く反映された声が収録されています。

地域ごとに分類されており、さらにその中でさまざまな歌声が収録されている
モンゴルのホーミー(喉歌)は特に印象的で、一人の歌手が同時に複数の音程を発声する倍音歌唱の神秘的な響きを体験できます。チベットの僧侶による低音の詠唱も収録されており、瞑想的で荘厳な雰囲気を演出できます。
アフリカ圏では、西アフリカの部族歌唱、南アフリカのズールー族の戦いの歌、北アフリカのアラブ系歌唱など、大陸の多様性が声にも表れています。特にポリフォニー(多声音楽)の伝統が強い地域の合唱は、複雑なハーモニーと独特なリズム感を持っています。
歌詞と意味
収録されている歌声の多くには、その地域の言語による歌詞が含まれています。古代サンスクリット語、ラテン語、各地の方言など、言語そのものが持つ音韻的な美しさも楽しめます。

各歌声に関しても、その解説が用意されている。宗教系のものなどは、使い方にある程度配慮が必要なケースもある
ただし、宗教的な意味を持つ歌詞については、使用時に配慮が必要な場合もあります。各サンプルには詳細な説明が付属しており、その歌の文化的背景や適切な使用方法についてのガイダンスも提供されているので、これらを確認するのが良さそうですね。
楽曲に深みを与える効果
これらの歌声は、楽曲に独特な雰囲気と深みを与えます。映画音楽やゲーム音楽において、特定の地域や時代の雰囲気を演出する際には非常に効果的です。

エフェクトを使って調整も可能
現代のポップスやエレクトロニカにおいても、これらの伝統的な歌声をサンプリングして使用することで、楽曲に異文化的な要素や神秘性を加えることができます。特にアンビエント音楽やワールドミュージックの制作では、これらの歌声が楽曲の核となることも多そうです。
また、ハリウッド映画でよく聞かれるような、壮大なオーケストラと組み合わせた合唱の表現も可能です。エピックな場面での女性合唱、戦闘シーンでの男性合唱など、映像作品の演出効果を高める用途でも威力を発揮してくれます。
フレーズとソロ両対応
単音での歌唱だけでなく、伝統的なフレーズパターンも収録されているため、より本格的な民族音楽の表現が可能です。また、これらを組み合わせることで、オリジナルの楽曲にも活用できます。
フレーズサンプルには、その地域の音楽で典型的なメロディライン、リズムパターン、装飾技法が含まれており、これをそのまま使用することで、簡単に本格的な民族音楽の雰囲気を演出できます。同時に、これらのフレーズを分解して、個々の音符やシラブルとして使用することも可能です。
ソロ歌唱のサンプルでは、ピッチベンド、ビブラート、ファルセット、シャウトなど、人間の声が持つ豊かな表現が収録されています。これらを組み合わせることで、既存の楽曲に民族的な色彩を加えることも可能です。
技術的な特徴
ETHNO WORLD 7 VOICESの技術的な特徴として、高品質なサンプリングレートと、自然な音の減衰まで含めた長時間の録音が挙げられます。
MIDIコントローラーとの連携により、リアルタイムでの表現力のコントロールも可能で、ベロシティに応じた音量変化はもちろん、モジュレーションホイールでのビブラートの深さ調整、アフタータッチでの音色変化なども設定できます。
さまざまな制作シーンで活用可能なETHNO WORLD 7
ETHNO WORLD 7は、映画やゲームの劇伴音楽制作において特に威力を発揮します。舞台設定に合わせた地域色の演出や、時代背景の表現において、これほど豊富な選択肢を提供する音源は他にありません。
もちろん現代のポップスやエレクトロニカにおいても、アクセントとして民族楽器を取り入れることで、楽曲に独特な個性を与えることができますし、瞑想音楽やヒーリング音楽の制作においても、世界各地の伝統楽器は非常に効果的です。特に自然音との組み合わせで、深いリラクゼーション効果を生み出すことができると思います。
以上、ETHNO WORLD 7についてみてきましたが、いかがだったでしょうか?ETHNO WORLD 7は、世界中の民族音楽の魅力を現代の音楽制作環境で手軽に活用できる、まさに究極の音源ライブラリです。380種類以上という圧倒的な楽器・声の収録数、楽器本来の音質を重視した高品質なサンプリング、そして20年以上にわたって培われてきたノウハウが結集されています。
映画音楽やゲーム音楽の制作はもちろん、ポップスやエレクトロニカ、アンビエント音楽まで、あらゆるジャンルの楽曲制作において新たな可能性を開いてくれることでしょう。価格は決して安くはありませんが、その価値は間違いなくあります。世界音楽の扉を開く鍵として、ETHNO WORLD 7は多くのミュージシャンにとって貴重な創作パートナーとなるはずです。
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ETHNO WORLD 7 COMPLETE製品情報
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