2013年に誕生した中国のエフェクタブランドHOTONE(ホットトーン)から、120個のインパルス・レスポンス(IR)を搭載したリバーブエフェクタ「VERBERA(バーベラ)」が発表され、7月3日より発売が開始されました。HOTONEは、超ミニサイズの筐体ながら厳選されたパーツを惜しみなく使用し、リアルなサウンドを実現する画期的な「CDCM」モデリング技術を生み出した新鋭エフェクタブランド。
そんなHOTONEが開発した新たなエフェクタVERBERAは、現実の空間とデジタルの創造空間を自由に行き来できるデュアルエンジン設計を採用し、IRクローニング機能により自分だけのオリジナル空間も作成可能。最大1024個ものIRを保存できる驚異の拡張性を持っています。税込価格の市場想定価格は、50,000円。従来のハードウェアリバーブでは不可能だった革新的なサウンドデザインツールを紹介していきましょう。
HOTONEとは?革新技術で注目を集める中国エフェクタメーカー
HOTONEは、2013年に誕生した中国のエフェクタブランドです。同社の特徴は、リアルなサウンドを実現する画期的な「CDCM」モデリングを生み出した新鋭エフェクタブランドとして知られていることです。2001年頃、HOTONE開発チームはクラシックペダルやオールドアンプをどうやって再現するか、何度も研究を重ねていました。その結果、従来の「スタティックモデリング」を超えた、よりリアルなモデリング技術「CDCM」を完成させ、業界で注目を集めてきました。
特にマルチエフェクタAMPEROシリーズでは、独自のトーンキャプチャ機能「Sound Clone」を搭載。高度な信号分析とモデリングを用いてお気に入りのギアのあらゆるニュアンスをキャプチャできるなど、先進的な技術開発で業界をリードしています。
120種類のIRで実現する圧倒的な空間体験
そんなHOTONEが新たに開発したVERBERAの最大の特徴は、世界トップクラスのインパルス・レスポンス(IR)が120種類収録されており、さらにリバーブアルゴリズムセクション「XR」を備えたデュアルエンジン設計のリバーブエフェクタであることです。
搭載されている120種類のIRは非常に多彩で、シンフォニーホール、ヨーロッパの大聖堂、さらにはNASAの宇宙船格納庫といった特別な空間を、息を呑むほどのディテールで収録しています。さらにスプリングリバーブやプレートリバーブといった往年のスタジオ機材をモデルにしたIRも収録されているため、現実に存在する空間から定番のビンテージ機材まで、幅広い音響環境をカバーしています。
またHOTONE独自のオリジナルIRも多数収録されており、これらはSF映画に出てくるような未来的な空間や、現実には存在しない異次元的なサウンドスケープを楽しめるようになっています。
デュアルエンジン設計で実現するサウンドデザイン
これらのIRを最大限に活用するため、VERBERAの心臓部はデュアルエンジン設計で構成されています。一方はIRコンボリューションエンジンが現実空間や機材の繊細な反射音を捉え、もう一方は精密に調整されたアルゴリズムリバーブ「XR」がシュールで超次元的なアンビエンスをサウンドに与える仕組みになっています。
この2つのエンジンは独立してコントロールできるため、IRコンボリューションで作った空間感にXRアルゴリズムで超次元的な広がりを加えるといった、従来のリバーブでは不可能だった複雑なサウンドデザインが可能になります。
プロフェッショナル品質のハードウェア設計
こうした豊富なIRとデュアルエンジンの性能を最大限に引き出すため、VERBERAは単なる「ペダル」を超えた、スタジオグレードの音質処理能力を持っています。32bit/192kHzプロセッシング、リアルタイムIRスカルプティング、完全アナログのドライスルー回路を搭載したVERBERAは、楽器のあらゆるニュアンスを捉える能力を持っており、レコーディングスタジオでも通用する高品質な音響処理が可能です。
音質面でのもう一つの特徴として、最大20秒のリバーブテールに対応していることが挙げられます。ステレオ録音で最大10秒、モノラル録音なら最大20秒という長いリバーブテールを扱えるため、これは従来のハードウェアリバーブでは実現困難な仕様で、大聖堂のような巨大空間の長いリバーブも忠実に再現できます。
また、従来のコンボリューションリバーブの弱点の一つだった、IRの切り替え時に発生する音の途切れについても、VERBERAはリアルタイムIRエンベロープ調整とシームレスなIRスイッチングを実現しており、演奏中でも音の途切れなしにIRを切り替えることができます。
操作面では、VERBERAの6つのコントロールノブがそれぞれ重要な役割を担っています。DECAYはリバーブの減衰を調整し、ATK/PRE-DLはアタックやプリディレイを調整します。TONE/MODでは明るさや深さをコントロールし、MIXでドライ/ウェットミックスを調整できます。また、IRノブでは保存されたIRを切り替えることができ、ソート機能により最適なIRを素早く見つけることが可能です。これらのパラメータをリアルタイムで調整することで、収録されているIRをベースに、さらに細かな調整を加えて自分好みのサウンドに仕上げることができます。
IRクローニング機能で無限の拡張性を実現
VERBERAのもう一つの革新的な機能が、内蔵の120種類のIRに加えて、ユーザー自身がオリジナルのIRを作成できるIRクローニング機能です。VERBERAでIRクローニングを行う際は、本体のCLONEボタンを長押しすることでIRクローニングプロセスに入ることができます。この機能により、お気に入りのペダルやエフェクトのサウンドを本体内でカスタムIRとしてクローン化できるのです。手持ちのビンテージリバーブペダルや高価なハードウェアリバーブのサウンドを「キャプチャ」し、VERBERAの中に保存することができます。
さらに驚くべきことに、VERBERAは最大1024個のIRを保存できる圧倒的な容量を誇ります。120個のプリセットIRに加えて、900個以上のカスタムIRを作成・保存できるので、オリジナルサウンドを蓄積していくことが可能です。また、このような膨大なIRライブラリを効率的に管理するため、専用の「Neon Collector」ソフトウェアが用意されています。無料のWindows・Mac対応アプリケーションについては、後ほど詳しく紹介します。
ライブパフォーマンスでの実用性
一方で、VERBERAはスタジオでの使用だけでなく、ライブパフォーマンスでの実用性も十分に考慮されています。本体には6つのロータリーノブと高解像度LCDディスプレイが配置されており、暗いステージでも視認性の良いデュアルカラーLEDリングでエフェクトの状態を確認できます。
ライブでの操作性を重視して、フットスイッチは2つ搭載されており、フットスイッチ同時押しで2つの動作モードを切り替えることができます。プリセットモードでは、ACTIVEボタンで前のプリセットへ、FREEZEボタンで次のプリセットへの切り替えが可能です。一方、コントロールモードでは、ACTIVEボタンでリバーブのON/OFFを、FREEZEボタンでリバーブフリーズ機能のON/OFFを制御できます。これにより、ライブでの使用頻度が高い機能に素早くアクセスできるようになっています。
プリセット管理についても実用的で、VERBERAには最大200個のプリセットを保存できる機能があり、PRESETノブでこれらのプリセット間を移動できます。ALT/MENUボタンを長押しすることでメニューに入ることができ、ここではさまざまな詳細設定を行うことができます。メニューでは入力モード(Mono/Stereo/Auto)の選択や、MIDIやエクスプレッション・ペダルの設定なども可能となっており、より高度なセットアップにも対応しています。
多様な接続オプションと拡張性
VERBERAは入力モードを選択できるステレオ入出力を採用しており、モノラルからステレオまでさまざまな楽器に対応できます。入力部分では1/4TRSケーブルを使ってモノラル楽器を接続する場合とステレオ楽器を接続する場合に対応しています。
出力部分も同様に柔軟な設計になっており、1つの1/4TRSケーブルでOUT L/STEREOチャンネルを通じてモノラル楽器やTRSのステレオ入力デバイスに接続できるほか、2つの1/4TSケーブルでOUT L/STEREOとOUT Rチャンネルを使ってステレオデバイスと接続することも可能です。特に「ピュアアナログ・ドライスルー回路」の採用により、エフェクトをOFFにした際の音質劣化を最小限に抑えており、常にペダルボードに接続していても原音の品質が保たれます。
また、MIDI IN/EXPポートも備えており、MIDIデバイスやエクスプレッション・ペダルを接続することが可能です。これにより、DAWからのMIDIコントロールでプリセットの切り替えやパラメータの変更を行ったり、エクスプレッション・ペダルでリアルタイムにパラメータをコントロールしたりと、より高度で複雑なライブセットアップやスタジオワークにも対応できます。
特にDTM制作では、DAWのオートメーションと連動させることで、楽曲の展開に合わせてリバーブの特性を動的に変化させるといった高度な表現も可能になります。現代のDTMerにとって、VERBERAは単なるリバーブエフェクタを超えた創造的なツールとして機能します。たとえば、ボーカル録音時にシンフォニーホールのIRを使用して壮大な空間感を演出したり、ドラムループにインダストリアルなテクスチャーを加えたりと、楽曲のコンセプトに合わせた空間デザインが可能です。また、XRアルゴリズムとIRコンボリューションの組み合わせにより、従来のプラグインでは表現できない複層的なリバーブ処理を実現できるため、自分のオリジナルサウンド作りにも活用できます。
専用ソフトウェア「Neon Collector」で簡単管理
VERBERAの膨大なIRライブラリを効率的に活用するため、専用の管理ソフトウェア「Neon Collector」が用意されています。このソフトウェアは、Windows・Mac両対応の無料アプリケーションで、VERBERAをType-C接続でコンピュータに接続することで利用できます。
Neon Collectorの主要機能は多岐にわたります。まずIRライブラリの管理機能では、内蔵の120種類のIRに加えて、ユーザーが作成したカスタムIRも含めて、最大1024個のIRを効率的に整理できます。IRファイルの名前変更、カテゴリ分け、検索機能により、必要なIRやプリセットを素早く見つけることが可能です。
また、WAVファイルのインポート機能により、コンピュータ上で作成したオリジナルIRファイルや、インターネットで入手したIRファイルを簡単にVERBERAに追加できます。対応フォーマットは44.1kHz〜192kHzのさまざまなサンプルレートに対応しており、モノラル・ステレオどちらのIRファイルも読み込み可能です。
プリセット管理機能では、VERBERAの200個のプリセットスロットを活用して、お気に入りの設定を保存・呼び出しできます。プリセット名の編集、バックアップ、復元機能も搭載されているため、大切な設定を失う心配もありません。
以上、VERBERAについて紹介しました。同等の機能を持つコンボリューションリバーブはラックマウント型で10万円以上することが多く、ペダル型で120種類ものIRを搭載した製品は市場にほとんど存在しません。VERBERAは税込みで5万円という価格で、スタジオクオリティのコンボリューションリバーブを組み込めるので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか?
【関連情報】
VERBERA製品情報
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