株式会社インターネットが、同社のDAWであるABILITYをメジャーバージョンアップし、2026年2月5日にABILITY 6 ProおよびABILITY 6 Elementsを発売しました。アメリカ製、ドイツ製などさまざまなDAWがあるなか、唯一の国産DAWとして進化を続けるABILITYは、カモンミュージックの流れを継ぐ数値入力のエディタを備えつつ、世界の潮流に乗るDAWとして最新の機能を整えています。
前回のABILITY 5から約1年2か月ぶりとなる今回のバージョンアップでは、視覚的な操作を実現するソングエディタ、サムネイルを表示するVSTパネルからのドラッグ操作、19種類のプロセッサーを搭載するIK Multimedia社T-RackS 6の収録(Pro)、Noise Generator収録(Pro)、バーチャルトラックを使用したパンチイン、一目でトラック種別がわかるトラック色設定可能なミキサー、ストリップチャートにエンベロープモード追加、ボーカルエディタでのピッチ変更・ビブラート処理のアップデート、DAW Project対応、高DPIネイティブ対応など、多数の新機能を搭載しています。発売に先立ち、開発元の株式会社インターネット代表取締役・村上昇さんにお話を伺いながら、実際にABILITY 6 Proを試すことができたので、どんな機能が強化されたのか詳しく見ていきたいと思います。
1. より視覚的になったソングエディタの操作
まず大きく変わったのがソングエディタでの視覚的な操作です。従来、オーディオブロックの音量設定はフェーダーで行っていましたが、ABILITY 6ではフェードを含め、より視覚的な表示、設定になりました。
オーディオブロック毎に音量、フェードイン/アウトが設定できるようになっており、棒状のハンドルをドラッグすることで直感的に調整が可能です。音量を上げると波形も一緒に大きくなるので、見た目で分かりやすくなっています。
さらにブロック毎に波形の拡大縮小設定が可能になったほか、拡大/縮小の虫眼鏡モードも追加されました。クリックした位置を中心に拡大/縮小が行えるため、細かい編集作業がしやすくなっています。
2. VSTパネルでサムネイル表示&ドラッグ設定に対応
今回のバージョンアップで最も作業効率が上がると感じたのが、VSTパネルの追加です。オーディオトラックへのFXインサート、MIDIトラックへのVSTiの設定が、従来のメニューやVSTブラウザに加え、VSTパネルからのドラッグ&ドロップで行えるようになりました。
VSTパネルでは各VSTのサムネイルが表示されるため、視覚的にプラグインを探すことができます。このサムネイルは、標準で入っているプラグインや自社製のプラグイン、IKのプラグインなどは自動的に表示されますが、それ以外のプラグインについてもエディット画面にあるキャプチャーボタンを押すことでサムネイルを作成できます。
VSTFX はミキサー、ミキサーインスペクタの目的のスロットにドロップすることで設定可能。VSTi はソングエディタのトラック設定部やVSTiウインドウの目的のスロットにドロップすることで設定できます。これまでメニューから探していた手間が大幅に削減され、直感的な操作が可能になりました。
3. T-RackS 6とNoise Generator FXを新たに収録(Proのみ)
ABILITY 6 Proには、IK Multimediaの定番ミックス&マスタリング・スイートT-RackS 6が新たに収録されました。19種類のプロセッサー、8種類の新作モジュール、サイドチェイン対応、使いやすくなったメーター、モジュール・マネージャー、プリセット・ブラウザ、Master Match Xによる自動マスタリングを含む新しいマスタリング・コンソールなど、プロフェッショナルなミキシング環境が整います。
特に注目したいのがChannel Strip XとMaster Match Xです。Channel Strip Xはさまざまな楽器やアンサンブルに合わせたEQプリセットを収録しており、わずかな調整でプロフェッショナルな結果を導き出すことが可能。Master Match Xは、リファレンスを選択するだけで、EQ、バランス、コンプレッション、リミッターなどをマッチングして、自分のトラックに適用できる自動マスタリング機能です。
また、ABILITY 6 Proには自社製のNoise Generator FXも新たに収録されています。ホワイトノイズ、ピンクノイズ、ハムノイズ、レコードノイズを生成でき、EQと合わせて使うことでローファイ感を出すことができます。
4. 32bit float録音に対応
最近のDAWのトレンドとして32bit float録音への対応が進んでいますが、ABILITY 6もこれに対応しました。ZOOMのオーディオインターフェイスなど32bit float対応のオーディオインターフェースを使用することで、クリップすることなく録音が可能になります。
村上さんによると、「元々内部は64bitダブルにも切り替えられるので、編集でクリップすることはなかったんですが、今回オーディオインターフェースからの入り口にも対応した」とのこと。これにより、ZoomのF3/F6などの32bit float対応レコーダーやTASCAMの対応機器を使った録音で、0dBを超えた場合も内部ではクリップすることなく記録されます。ソングエディタ上のウェーブブロック、ウェーブエディタの表示では、波形表示の縮小により0dBを超えた部分が表示されるため、視覚的にも確認できます。
5. バーチャルトラックを使用したパンチイン機能
オーディオトラックのバーチャルトラックにRECボタンが追加され、バーチャルトラックを使用したパンチインが行えるようになりました。
バーチャルトラックとは、オーディオトラックの子トラックのような存在で、ミキサーは親トラックのものがかかる仕組みです。従来であれば、リテイクをかける際に前のテイクが上書きされてしまいましたが、バーチャルトラックを使えば前のテイクは親トラックに残したまま、パンチしたものがバーチャルトラックに入るため、後で聞き比べたり、リージョンを切って入れ替えたりといったことが可能になります。
また、「バーチャルトラックを使用したチェーンプレイ」機能も追加されています。リージョンをいくつか切って、それぞれで親トラックやバーチャル1番、バーチャル2番などを切り替えることで、複数のテイクを組み合わせた一本の演奏を作り上げることができます。村上さんも「上書きされないで別のバーチャルトラックに入れられるので、後でやっぱりどっちがいいかなって言った時に切り替えられますよ」と、その利便性を強調していました。
6. トラック色が設定可能になったミキサー
ABILITY 6では、ミキサーのトラック色を設定できるようになりました。MIDI、Audio、Group、FX、FADER、RECトラックそれぞれに色を設定可能で、一目でトラック種別を確認できます。
特にRECトラック(録音対象のトラック)は赤くハイライト表示されるため、「どのトラックに録音されるのか」が視覚的に分かりやすくなっています。多数のトラックを扱う場合、この機能は作業効率の向上に大きく貢献しそうです。
7. 和音入力が大幅に強化
ABILITY 6では、和音入力の機能が大幅に強化されました。スコア、ピアノロール、ステップの各エディタで、選択したノートをルートにした和音をメニューコマンド、ショートカットで瞬時に入力可能になっています。
例えば、単音で入力されているノートを選択し、メジャー7やマイナー7などを指定すると、それをルートとした和音が一発で入力されます。入力後はショートカットでそのまま回転(ボイシングの変更)も可能です。村上さんは「そんな大した機能ではないですけど、実際には割と重宝するんじゃないかな」とコメントしていましたが、確かにコード進行を組み立てる際には非常に便利な機能です。
さらに、コード進行の設計を支援するCHORD PADからも、入力したコード名の和音をそのまま入力できるようになりました。回転、音符長、ストロークの設定も同時に行えるため、コード進行の入力作業が大幅にスピードアップします。
8. ストリップチャートとピアノロールエディタの機能強化
スコア、ピアノロールの各エディタの下部にあるストリップチャートに、新たにエンベロープモードが追加されました。
入力後にエンベロープポイントのドラッグやエンベロープ上への新たなポイント入力、調整などの編集が行えるようになっています。オートメーションの細かい調整が、より直感的に行えるようになりました。
また、ピアノロールエディタでは、キーボードでカーソル移動(左右、上下)ができるようになり、パレットで選択した音符をリターンキーで次々入力することが可能になっています。マウスを使わずにキーボードだけで素早く入力できるため、作業効率が向上します。
さらに、フレーズエディタがノートエクスプレッション対応になり、エクスプレッションエディタではノート(音符)ごとにPitch Bend、Control Change、VST3エクスプレッションの入力・編集が行えるようになりました。これらの情報は音符の移動や、コピー&ペースト時にノートと共に移動、ペーストされます。
ステップエディタでは、表示される各コントローラの表示色をコントロールごとに設定できるようになり、視認性が向上しています。
9. DAW Projectに対応
異なるDAW間でオーディオデータ、MIDIデータ、プラグイン情報、オートメーション、FX/Send設定などのデータをやり取りできるフォーマット「DAW Project」に、ABILITY 6も対応しました。
村上さんによると、「結構いい加減で、DAWの機能の制限でこれできる、できないとか色々ある」とのこと。例えばあるDAWではデータが入ってないところのVSTiは出力されなかったり、DAW Projectのフォーマット自身がVSTiのマルチアウトに対応していないといった制限があるそうです。とはいえ、基本的な使い方であれば問題なくやり取りできるとのことでした。
現在、Studio One、Bitwig、Cubaseなどが対応しており、DAW Projectでのやり取りでだいたいまかなえるようになっています。
10. 高DPIにネイティブ対応
最後に紹介するのが、高DPI対応です。これは地味ながらも、実は今回のバージョンアップで最も時間がかかった部分だと村上さんは語っています。
ディスプレイの拡大表示(高DPI)にネイティブ対応したことで、フォント、画像がぼやけることなく、4Kディスプレイなどでの拡大表示が行えるようになりました。125%や150%といった表示でも全く問題ありません。「Windowsに任せると画面がぼやけるので、そこをぼやけなくっていう感じ」と村上さん。各ウィンドウごとに全部対応しないといけないため、「ネイティブコードでとんでもない」労力がかかったそうですが、その甲斐あって快適な作業環境が実現しています。
以前、私が150%表示を使っていた際に表示がうまくいかない問題がありましたが、今回のABILITY 6ではそうした問題は完全に解消されています。
以上、ざっとABILITY 6についての新機能を紹介してみましたが、村上さんによると、今回のバージョンアップでは内部的にもかなりブラッシュアップしているとのこと。例えばVSTの管理方法が変わったため、従来であればプラグインを更新した場合に改めてプラグインのスキャンのし直しが必要だったのが、自動的に認識するようになっているなど、発表されていない細かな改善点も数多くあるそうです。
また、このタイミングで、MusicSchool WOOD講師の立川恵三さん、小谷明さんによるABILITY6の新機能紹介動画も公開されているので、よかったらご覧になってみてください。
なお、ABILITY 6 Proには前述のT-RackS 6、Noise Generator FXに加え、IK MultimediaのAmpliTube 5 SE、SampleTank 4 SE、MODO DRUM 1.5 SE、MODO BASS 2 SEなど、多数のプラグインやインストゥルメントが付属しています。
ABILITY 6 ProおよびABILITY 6 Elementsは2026年2月5日発売となりました。現在、インターネット社製品からのバージョンアップを受付中で、2025年12月1日以降にABILITY 5の初回アクティベーションをされた方は、無償でバージョン6へアップグレードできるキャンペーンも実施中とのことです。
【関連情報】
ABILITY 6製品情報
【価格チェック&購入】
◎インターネット公式 ⇒ ABILITY 6 Pro , ABILITY 6 Elements
◎Rock oN ⇒ ABILITY 6 Pro , ABILITY 6 Elements
◎宮地楽器 ⇒ ABILITY 6 Pro , ABILITY 6 Elements
◎オタイレコード ⇒ ABILITY 6 Pro , ABILITY 6 Elements
◎Amazon ⇒ ABILITY 6 Pro , ABILITY 6 Elements
◎サウンドハウス ⇒ ABILITY 6 Pro , ABILITY 6 Elements
















コメント