Zoomから、新世代のミキサーLiveTrak L12nextが登場しているのはご存知でしょうか?L12nextは、2017年に発売され、デジタルミキサーの常識を覆すヒットとなったLiveTrak L-12の後継機種にあたるモデル。アナログミキサーのような直感的な操作性を持ちながら、中身は高機能なデジタルミキサー兼レコーダーであるというコンセプトはそのままに、今回のL12nextでは各チャンネルに「ノブの位置情報」を可視化するLEDインジケーター付きエンコーダーを採用するなど、使い勝手の面で劇的な進化を遂げているのです。
昨年2025年12月下旬に発売されたこの製品。ライブでの同期演奏用として、またバンドのリハーサル用やレコーディング用として、まさに全部入りといえるスペックを誇っています。さらにマスタートラックへのミックスダウン録音は、32bitフロート対応。14イン/4アウトのUSBオーディオインターフェースとしても使えるため、DTMユーザーにとっても見逃せない存在です。ZOOM STORE価格は84,900円(税込)。実際、何がどう変わったのか、実際に試してみたのでその実力を紹介していきましょう。

アナログ操作感とデジタルの利便性が融合!Zoom LiveTrak L12next
30個のLEDエンコーダーを搭載!直感操作を極めた新インターフェース
LiveTrakシリーズの最大の魅力は、デジタルミキサーでありながらメニュー画面を潜らずに操作できる直感性にあります。前機種L-12では、チャンネルを選択してから本体右側にあるエンコーダーでパラメータを操作する必要がありましたが、今回のLiveTrak L12nextではそのインターフェースを一新しています。

デジタルミキサーとアナログミキサーのいいとこ取りをしている
本機では、LEDインジケーター付きのロータリーエンコーダーを各チャンネルに採用し、右側にあるチャンネルノブ選択キーから機能を選び、各チャンネルのエンコーダーでコントロールする形にアップデートされました。

各チャンネルにLEDインジケーター付きのロータリーエンコーダーが搭載された
この各ノブの周囲にあるLEDが現在の設定値をリアルタイムに表示してくれるため、暗いステージ上でも視認性は抜群。どのツマミがどういう設定になっているかが一目瞭然。これにより、アナログミキサーのような即興性と、デジタルミキサーのリコール性の高さを高次元で両立させた、極めて使い勝手の良い操作系に仕上がっています。

前モデルも使いやすかったが、LiveTrak L12nextはより直感的に使えるようになっている
前モデルのL-12ではアナログ仕様だったGAINとCOMPに関しても、本機ではLEDインジケーター付きのロータリーエンコーダーに変更されています。前機種では、シーンを呼び出してもGAINとCOMPの位置は物理的にそのままで、1から設定し直す必要がありました。一方、L12nextは、これらGAINとCOMPも、前作のEQと同様にLEDインジケーター付きのロータリーエンコーダー対応となったため、シーンの呼び出しで、いつもの設定を瞬時に呼び出せるようになったのです。
強化されたマイクプリと入力チャンネル仕様
では各チャンネルの操作子を上から順に見ていきましょう。入力端子はCH1から8までがモノラルのXLRとTRSコンボジャック、CH9と10および11と12がステレオ入力となっており、これらはTSフォン端子での接続に対応しています。

マイクプリ8基、ステレオ入力を2ch装備
各チャンネルのエンコーダーで操作するGAINについてですが、入力チャンネル自体は最近のZoom製ハンディレコーダーのような32bitフロート対応のDual AD仕様ではありません。あくまで従来のミキサー同様、GAIN調整で適切なレベル合わせが必要です。

入力は最大24bit仕様
とはいえ搭載されているのはEIN -128 dBuの超低ノイズフロア、+70 dBまで対応の高性能なマイクプリアンプ。前モデルからさらに強化されており、音の解像度やクリアさが向上しているので、ボーカルやアコースティック楽器の繊細なニュアンスも余すところなく捉えることが可能です。
さらにCH1から8には入力感度を26dB減衰させるPADスイッチを装備。CH1とCH2にはギターやベースを直接繋げるHi-Zスイッチも搭載されており、DIを使わずに楽器を直接入力することが可能です。またコンデンサーマイクを使用する際に必要な+48Vのファンタム電源スイッチは、CH1から4までとCH5から8までの4チャンネルごとのグループでオンオフ可能です。

ファンタム、Hi-Z、PADを搭載
CH9から12のステレオチャンネルにはUSB Audio Returnスイッチが装備されていて、これを押すことでPCからのUSBオーディオ信号をステレオチャンネルに立ち上げることができるため、BGMや同期音源をPCから流す際にも使うことができますよ。

PCからの出力もチャンネルに立ち上げることができる
マスタートラックのみ32bitフロートに対応
レコーダー機能についても触れておきましょう。microSDカードへのレコーディングは、12の入力チャンネルにマスターミックスであるLとRを加えた計14トラック同時録音に対応しています。

microSDカードスロットを搭載
各オーディオトラックの録音フォーマットは16bitまたは24bitを選択可能。ここでは、入力段階でのクリップを防ぐためGAINノブでピークを超えないようにしっかり調整する必要があります。
ミックスダウン用のマスタートラック(L/R)については32bitフロートを選択でき、個別のオーディオトラックが歪んでいない限り、ミックス時に音量を上げ過ぎて音が割れてしまうといった失敗がありません。

Inputは16bitまたは24bitを選択可能
ミキサー内部のデジタルミキシング処理は32bitフロートで行われているため、たとえ各トラックの音が重なり合ってマスターのレベルが0dBを超えてしまったとしても、内部的には音は割れていません。これを32bitフロートモードで録音しておけば、クリップしていない波形データのままSDカードに記録されます。

Masterは32bitフロートに対応している
ライブ録音などで盛り上がってしまい、ついフェーダーを上げすぎてマスターが赤く点灯してしまったという経験は誰しもあるでしょう。そんな時でもL12nextなら安心。後からDAWに読み込んでレベルを下げれば、歪みのないクリアな2ミックスが復元できるのです。個別トラックはしっかりゲイン管理、マスタートラックは32bitフロートで保険をかけるという運用ができるようになっています。
また、マスタートラックには専用のCOMPも搭載されています。-10 dB〜10 dBの間で調節でき、入力ゲインを上げると、コンプレッサが強くかかるようになります。ライブ配信時などに全体の音圧を整えたり、ピークを抑えて聴きやすくしたりといった処理が、追加機材なしで手軽に行えるのは非常に強力です。

マスタートラックにCOMPも搭載している
5系統の独立モニターミックスもLEDエンコーダーで作成
またL12nextでは、5系統の独立したモニターミックスを作成することができます。前機種L-12では「FADER MODE」ボタンを使ってフェーダーで各モニターへの送り量を調整していましたが、フェーダーがモーター駆動ではないため、切り替え時にフェーダー位置と実際の値がズレてしまうのが難点でした。

モニターミックスも簡単につくれる
L12nextでは、このモニターミックスの作成もLEDエンコーダーで行う仕様に刷新されました。本体右側のチャンネルノブ選択キー4またはチャンネルノブ選択キー5を押すと、SEND A〜SEND Eへの送りを、各チャンネルのLEDエンコーダーでコントロールできるようになります。

A〜DのMONITOR OUT
LEDの点灯状態で現在の送り量がひと目でわかるため、たとえば「モニターAのドラムを少し下げたい」といった場合も、ドラムチャンネルのエンコーダーを左に回すだけ。この仕様変更により、メインミックスはフェーダー操作、モニターミックスはエンコーダー操作を完全に分離して考えられるようになり、操作の混乱が大幅に減りました。バンドのリハーサルでメンバーそれぞれの好みに合わせた5つの異なるバランスを作る際も、ストレスなくスムーズに行えますよ。

右上のPHONESでは、MASTER以外にも各モニターチャンネルを選べる
GAIN、COMP、EQも直感的にコントロール可能!
ついでにGAINやCOMP、EQについても触れておくと、チャンネルノブ選択キーの1〜3が、これに割り振られており。たとえばチャンネルノブ選択キー1を選択すると、GAIN、COMP、LOCUTがそれぞれのチャンネルのLEDインジケーター付きのロータリーエンコーダーに割り振られます。

チャンネルノブ選択キー1を選ぶとGAIN、COMP、LOCUTが割り振られる
前述した通り、L12はGAINやCOMPがアナログ仕様であったため、正確な数値は確認できなかったのですが、L12nextではこれらも含め全パラメータがディスプレイに表示されるようになりました。

値がディスプレイに表示される
COMPはLiveTrakシリーズのワンノブコンプを踏襲しており、少し回せば音量を整える感じのコンプになり、大きく回せば派手な掛かり方をする、いい感じの仕様になっていますよ。ちなみにLOCUTは、回せば周波数を調整でき、12 dB/octでの減衰をコントロール可能です。
チャンネルノブ選択キー2は、EQ HIGH、EQ LOW、PANが割り振られ、EQ HIGHは10kHzシェルビング、EQ LOWは100Hzシェルビングとなっています。各チャンネルにエンコーダーが付いたので、PANが一度で確認できるのも嬉しいポイントですね。

PANの位置も一目瞭然
そして音作りの要となるのチャンネルノブ選択キー3には、EQ MID、MID FREQ、MID Qが割り振られており、EQ MIDで中域のブースト/カット。MID FREQで100Hz~8kHzの間で中心周波数を設定でき、MID Qで周波数の帯域幅を調整可能。L-12ではQまでは調整できなかったので、これもL12nextのアップデートポイントですね。
これにより、ピンポイントでハウリング周波数をカットしたり、逆に広帯域で持ち上げて音の存在感を増したりといった、プロフェッショナルなEQ処理が可能になりました。いずれの操作においても、調節量はノブ周りのLEDインジケーターでリアルタイムに表示されるため、現在どのパラメータを操作しているか、値がどうなっているかが瞬時に分かりますよ。

Q幅も調整できるようになった
プロ品質の内蔵エフェクトとシーンメモリ機能
ミキシングに欠かせないリバーブやディレイ機能も充実しています。TYPEノブを回すとエフェクトを切り替えることができ、各チャンネルのエンコーダーを使ってエフェクトセンド量を調整できます。内蔵エフェクトはホール、ルーム、プレートなどのリバーブ系から、ディレイに至るまで全16種類を搭載。TIMEやTONEなどのパラメータも専用ノブで細かく調整でき、TAPボタンも搭載され、ボーカルに艶を与えたり、ギターに広がりを持たせたりといった音作りが本体のみで行えます。

全16種類の空間系エフェクトを搭載している
また、作り込んだミキサーの設定はSCENE機能を使って保存可能です。最大10個までのシーンを保存でき、リハーサル用、本番用、曲ごとの設定などを瞬時に切り替えることができます。前述の通り、L12nextでは各チャンネルのエンコーダーがLED化されているため、シーンを呼び出した瞬間に設定値が視覚的にも反映され、パラメータのズレに悩まされることがありませんよ。

10個までシーンを保存可能
PCレスで完結!MTRとしてのレコーディング機能
L12nextは単なるミキサーではなく、SDカードへのマルチトラックレコーディングが可能なMTRでもあります。RECORDERセクションには、再生、停止、録音といったトランスポートキーなどが配置されており、DAWを使わずに本格的なレコーディング作業が行えます。

PCいらずでレコーディングできる
既存の録音を聞きながら新しい音を重ねるオーバーダビングはもちろん、演奏を間違えた箇所だけを録り直すパンチイン/アウトも可能です。さらに、録音開始前にカウント音を鳴らすプリカウント機能や、内蔵メトロノーム機能も搭載されており、ドラムのレコーディングなどでも威力を発揮します。

パンチイン・アウト、オーバーダビングもできる
録音が終わったら、各トラックのバランスやエフェクトを調整して、2チャンネルのステレオファイルにまとめるミックスダウンも本体内で行えますよ。
また、レコーディング現場で必須となるTALKBACKボタンと内蔵マイクも装備されています。このボタンを押している間だけ内蔵マイクの音声が各モニター出力へ送られ、コントロールルームにいるエンジニアからブースにいる演奏者への指示出しがスムーズに行えます。トークバックの送り先も、各モニターアウト個別に設定することができます。

トークバックマイクも搭載している
待望のBluetooth対応とUSBオーディオIF機能
そして今回のL12nextで忘れてはならない大きなアップデートポイントが、Bluetooth接続への対応です。前機種L-12はBluetooth接続に対応していなかったため、本体から離れて操作することはできませんでした。しかしL12nextでは、専用のBluetoothアダプタであるBTA-1を接続するための端子が側面に用意されています。

離れた場所からもコントロールできるようになった
これにより、無料のiPad専用アプリL12next Controlを使ったワイヤレス操作が可能になりました。たとえばエンジニアが客席の中央に移動してメインミックスを調整したり、ステージ上のミュージシャンが手元のiPadで自分のモニターバランスを調整したりといったことが、ケーブルの制約なしに行えるのです。
またL12nextはミキサーやレコーダーとしてだけでなく、14イン4アウトのUSBオーディオインターフェースとしても機能します。12チャンネルの入力信号とマスターフェーダー通過後の2ミックス信号を、USB経由でDAWソフトにマルチトラック録音することが可能です。


14イン4アウトのUSBオーディオインターフェースとしても機能する
以上、ZoomのLiveTrak L12nextについて紹介しました。アナログライクな操作性を追求しつつ、30個ものLEDインジケーター付きエンコーダーによる操作性革命を実現した、まさに実用性重視の傑作機でしたね。ミキサーとしても使えて、レコーダーとしても機能する、そしてオーディオインターフェイス機能を持って84,900円はかなりコストパフォーマンスが高いです。PA現場でも、配信でも、レコーディングでも、もちろんDTM環境でも、あらゆる場面に対応可能なL12nextをぜひ試してみてはいかがでしょうか?
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