ボーカル処理を人工知能で。EQ、コンプ、ディエッサなどを駆使して最適な音に調整してくれるiZotope Nectar 3がスゴイ

iZotopeのボーカル処理ソフト、Nectarをご存知でしょうか?Nectarは録音したままのボーカルを非常に艶やかな歌声に仕立て上げることができるソフトとして、プロエンジニア御用達のツールとしても知られていたソフトです。先日そのNectarが久しぶりのバージョンアップを果たし、Nectar 3へと進化しました。

今回のバージョンアップの最大の目玉はVocal AssistantおよびVocal Assistant: Unmaskという人工知能によるボーカル自動処理機能。そう、ユーザーがボーカル処理に対して何の知識がなくても、コンピュータがボーカルやほかのトラックの音を分析するとともに、自動でEQやコンプ、ディエッサ、ディレイ、ディレイ……といったエフェクトを適切にかけて処理してくれるのです。まさにレコーディングエンジニアいらずの超強力なソフト。実際、どれだけのことができるのか試してみたので紹介してみましょう。


iZotopeのボーカル処理ソフト、Nectar 3

人工知能の採用により、プラグインの世界で圧倒的な威力を誇っているのがアメリカのiZotopeです。DTMステーションでも「人工知能プラグイン、Neutronはホントに使い物になるのか!?」、「マスタリングエンジニアの職が危うい!?人工知能搭載のOzone 8とNeutron 2の登場は革命かも!」といった記事などでも取り上げたことがありました。


人工知能を利用し、ボーカルをいい感じに仕立て上げてくる

まあ、「人工知能とは何なのか」という定義がハッキリしていないので、これらを本当に人口知能と呼んでいいのか分からない面はあるものの、音をソフトウェアが自動解析するとともに、レコーディングエンジニアやマスタリングエンジニアが操作するがごとく、その音にマッチした形に音を加工してくれるという意味では、やはりまさに人工知能。その凄さには本当に驚かされます。

その人工処理機能を搭載したボーカル処理専用のツールが、今回するNectar 3なのです。Nectar 3はさまざまな機能を備えていますが、まずはその目玉機能、Vocal AssistantおよびVocal Assistant: Unmaskを使っているところのビデオをご覧ください。

この曲はDTMステーションCreativeレーベルの第1弾として4月にリリースしたミニアルバム、「Sweet My Heart feat.小寺可南子」の2曲目、「Appreciation 100」の冒頭部分。録りっぱなしのボーカルが、Nectar 3による分析によって徐々にいい感じに変わっていくのがなんとなくお分かりいただけるのではないでしょうか?

DAWでトラックにNectar 3を挿しVocal Assistant

実はこのデータ、リリースされたバージョンとはだいぶ異なるもので、作曲・編曲を行った多田彰文さんによる仮ミックスのオケに、小寺可南子さんが試しに録音した一発目のテイクが手元に残っていたので、それを素材にしています。そのため、CDやiTunesなどの音楽配信での作品とはだいぶ雰囲気も違うのですが、もう少し具体的に見ていきましょう。

ASSIST機能およびUNMASK機能のどちら(もしくは両方)を行うかチェック

ここではボーカルトラックにNectar 3を挿した上で、Vocal Assitantを起動。すると何をするか、と聞いてくるので、ASSIST機能およびUNMASK機能にチェックを入れて、どんな雰囲気にするか、どのくらい強く変化させるかを指定するとともに、UNMASK処理するためのソースとしてオケを指定。あとは実際に曲を再生すると、自動的に解析して、調整しているのがわかると思います。


どんな雰囲気にしたいか、どのくらい強くしおりするかなど簡単に設定

実際処理した結果を見てみるとさまざまなエフェクトが設定されていますが、まずはEQ1。ここでは低域から中域、高域と4か所で微妙に音を削っているのがわかります。またボーカル中の「さしすせそ」の発音など歯擦音をカットするディエッサーも設定されています。


EQポイントが細かく設定されている


ディエッサで、気になる歯擦音をカット

さらにEQ2では中高域を少し持ち上げる処理が行われ、コンプレッサで音圧を調整し、リバーブで音に奥行きをつけています。先ほどのビデオからもわかる通り、単にプリセットを割り当てたというのではなく、このボーカルにマッチした形で個別に調整してくれているんですよね。


コンプを使って、より聴きやすいボーカルに調整

でも、先ほどのビデオだけではよくわからないという方もいると思うので、ボーカルだけを聴いてみると、その違いがハッキリ分かると思います。普通、生のボーカルを公開ということはありしませんが、小寺可南子さんにお願いしてみたところ、快くOKをいただいたので、ぜひ細かくチェックしてみてください。

なお、先ほどのVocal Assistant機能でもう一つ重要なのがUNMASKという機能です。これは、ほかのトラックとのぶつかりを解消するためのすごい機能。レコーディングした結果、周波数帯的にボーカルとギターのある部分がぶつかって聴こえにくくなる…というケースはよくありますが、そうした場合、ミックス処理でEQや音量を調整して解消していきます。慣れないとなかなか難しい操作ですが、これもNectar 3では人工知能が自動的に聴きやすい形に処理してくれるんですね。

リバーブ処理もNectar 3が自動で行ってくれる

こうしたボーカル処理はこれまでなかなか難しいものでしたし、そのために熟練したレコーディングエンジニアにお願いすると、コストも非常にかかってしまうという問題がありましたがNectar 3ならそれが簡単にできてしまうわけなのです。

Nectarにはほかいにさまざまなエフェクトがあり手動で設定することも可能

と、ここまでVocal Assistant機能だけを見てきましたが、もちろんNectar 3はすべて全自動で行うだけのソフトというわけではありません。いま見てきたEQ、コンプ、ディエッサ、リバーブなどを1つ1つ手動で設定できるのはもちろん、ディレイ、ディメンジョン(コーラス、フランジャー、フェイザー)、ゲート、サチュレーションといったエフェクトも用意されており、これらで自由に音作りをすることも可能。


さまざまなタイプを選べるサチュレーション機能

たとえばサチュレーションの場合、テープ、真空管、アナログ、レトロ…といったプリセットから選んでの音作りもできるので、とっても楽しくボーカルの音作りが可能です。

さらに重要な存在が、ピッチ補正機能です。これを使うことでボーカルの音程が外れたときでもキレイに補正することができるわけです。この際、スケールを設定して、それに合った形で補正できるほか、補正度合いや補正スピードなどを調整することで違和感のない形で補正していくこともできれば、AutoTune的な声作りも可能です。またフォルマント(Formant)パラメータを動かすことで、女性の声を男性的にしたり、男性の声を女性的にするといったこともできますよ。


とても便利に使えるピッチ補正機能

そしてもう一つ有効なエフェクトがハーモニー。これを使えば、3度下とか5度上といった指定をしてハーモニーを生成でき、しかも5度上とか6度上でも声質が非常にキレイなんですよ。必要あればMIDIを使って自由な音程で歌わせてしまうことも可能になっているんですね。


5度上とか3度下のハーモニーなどを簡単に作れるハーモニー機能

ちなみに、Nectar 3のEQには新開発のFollow EQ modeというものが搭載されているのも大きな特徴の一つです。これは、たとえば「600Hzあたりを持ち上げる」という設定をしたとき、ボーカルの音程が変わっても声質を同じように保てるように、音程によって持ち上げる周波数を変化させるという機能。これがすごく効果的に機能する場合と、そうでない場合があるので、試してみると面白いですよ。

ほかにもALM(Auto Level Mode)という機能が用意されており、手書きでボリュームオートメーションを書くことなく、自動的に録音音量のばらつきを調整してくれるのも便利なところですね。

でも読者のみなさんの中には「ボーカルエディットといったら、ダイナミックスや声質の調整よりも、まずピッチ修正でしょ!」という方もいると思います。Nectarも前バージョンにはそうした機能が用意されていたのですが、最新版では、餅は餅屋ということで、そこはMelodyneに任せることになったようです。そのため、Nectar 3にはMelodyne 4 essentialがバンドルされており、これで事前に修正してからNectar 3で調整する形になっています。


ボーカルの各音の音程や音長などはMelodyne essenntial 4でエディットしておくのが便利

また、ブレスが目立ちすぎるので、これを調整したいという場合は、RX7 Breath Controlというプラグインも別途入っているので、Nectar 3の本体ではなく、こちらで除去する形になっていますよ。

このように、Nectar 3にはボーカルをエディットするためのさまざまな機能が用意されており、それほほぼ自動できるという意味で、とっても強力なツールです。通常は25,000円なのですが、1月7日までは発売記念セールということで19,900円となっています。なくならないうちに購入しておくのがお勧めです。また、Vocal Synth 2やRX ElementsなどとセットになったVocal Chain Bundle、RX 7 Standard、Ozone 8 Advanced、Neutron 2 AdvancedなどもセットにあんったMusic Production Suite 2などもセール展開しているので、気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか?

【関連情報】
Nectar 3製品情報
Music Production Suite 2製品情報
Vocal Chain Bundle製品情報

【セール情報】
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宮地楽器

【iZotope 日本語SNSアカウント】
Twitter:@iZotopeJapan
Youtube:iZotope Japan

【価格チェック&購入】
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Commentsこの記事についたコメント

2件のコメント
  • あわてんぼうのななしさん

    だらけてトライアルしないでいたので、今 慌ててテストしていますw
    高くなる前に評価せねば…

    2019年1月3日 8:39 PM
  • あわてんぼうのななしさん

    今まで使用していた他社(の単機能もの)より優れていたので買いました。
    お値段もなかなか立派なんですが、機能も多いのでまあ良いかなと。

    ただ安売りで買いまくったWavesの立場が可哀想?ですがw

    2019年1月3日 11:27 PM

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