高音質オーディオインターフェイスで定評あるMOTUが2万円台のエントリー機、M2とM4の2機種投入

プロのレコーディングエンジニアの中でも「音質面から絶対にMOTU製品を選ぶ」という人も少なくない高品位オーディオインターフェイスで高い評価のあるアメリカのMOTU。高音質にこだわってきたメーカーだけに、やや高価な製品が多かったのも事実ですが、そのMOTUが2万円台という手ごろな価格のオーディオインターフェイスを2機種、リリースしました。

国内では11月末発売となるMOTUのM2M4はそれぞれ最高で24bit/192kHzに対応し、2IN/2OUT、4IN/4OUTというスペックで、USB Type-C端子を通じてUSBバスパワーで動作するというもの。価格はM2が税抜実売価格が21,800円前後、M4が27,800円前後となっています。Windows、Macで利用できるのはもちろんのこと、USBクラスコンプライアントなデバイスなのでiPhoneやiPadでも利用可能。しかも、PCに接続しなくてもM2、M4スタンドアロンで起動し、マイクプリアンプまたヘッドホンアンプなどとしても使える仕様となっています。さらにPerformer Liteという新たに誕生したDAWも付属してきます。国内発売に先駆けて、このMOTUのM2およびM4を試すとともに、11月19日に放送したDTMステーションPlus!でもこれらを使ったレコーディングテストなども行ってみたので、どんな製品なのか紹介してみましょう。

MOTUから2万円台で購入できるエントリー向けオーディオインターフェイスM2(上)とM4(下)が誕生

このMOTUのM2とM4、ブラックのメタリックボディーで、アナログの入出力およびMIDI入出力を持ったオーディオインターフェイスとなっています。MOTUが満を持して出してきたエントリー向けのオーディオインターフェイスとのことですが、音質を決めるDACチップにはESS Sabre 32 Ultraを採用するなど、MOTU上位機種と同等のものとなっているのがポイント。そのために、他社の2IN/2OUT、4IN/4OUTのオーディオインターフェイスと比較するとやや高めな値段設定ではありますが、音質にこだわるクリエイターのために、性能面では妥協しないという開発方針のようです。

M2およびM4のリアパネル。デジタル入出力やワードクロック入出力などはないが、音質は上位機種と同等

ただし、28IN/32OUTの828esや24IN/28OUTの8PRE-ESなどと比較すると入出力数が少ないだけでなく、ワードクロックやS/PDIFやADATなどのデジタル入出力を装備しないこと、TIME CODEの入出力もないし、AVBとの接続機能もないなど、機能面では削り、音質はキープしたままコストを落とした、ということのようです。そのM2、M4共通の特徴を箇条書きで示すと以下のようなものが挙げられます。

・USB Type-C バスパワー駆動オーディオインターフェイス
・優れたアナログサウンドを実現するESS Sabre32 Ultra?DACテクノロジー
・120 dBのダイナミックレンジを測定したメイン出力
・-129 dBu EINを実現したクリーンなプリアンプ
・ESSテクノロジーがもたらすヘッドフォン出力
・2.5 ms往復レイテンシーを実現(96 kHz / 32サンプルバッファーを使用時)
・クラス唯一の入力&出力LCDフルカラーディスプレイ
・ループバック対応
・クラスコンプライアントドライバ
・100種類以上の楽器音色を含むバーチャルインストゥルメンツを搭載した新しいDAWソフトウェア、Performer Liteがバンドル
・Ableton Live 10 Liteライセンス
・Big Fish Audio、Lucidsamples、Loopmastersが提供する6GBのループ・サンプルパック

ではその入出力部分から簡単に見ていくと、まずM2のほうはフロントに2つのコンボジャックを搭載しているので、コンデンサマイク、ダイナミックマイクはもちろん、ライン入力、ギターやベースとの直結も可能となっています。それぞれ独立した形で48Vのファンタム電源が入れられるのもポイントです。それぞれ独立した形で入力ゲインの調整が可能になっています。MONというボタンもありますが、これはそれぞれの入力をそのまま出力に送るためのダイレクトモニタリング用となっています。

M2のフロントにあるXLR/TRS兼用のコンボジャック。48Vでファンタム電源、MONでダイレクトモニタリングがONになる

フロントパネル右側にはヘッドホン出力があり、その出力を調整するノブがあるとともに、大きいノブでメイン出力をコントロールできるようになっています。このノブのトルクがやや重めで滑らかなのも、気持ちのいいところです。

ヘッドホン出力調整とメインアウト用のMONITOR出力調整は独立している

リアにはTRSフォンのメイン出力と並行してRCAピンジャックでの出力も可能で、左側にはMIDIの入出力も用意されているのが分かると思います。PCとの接続はUSB Type-Cの端子を用いる形となっており、バス電源供給で動作するのはMOTU製品としては少し珍しい感じですが、ACアダプタが不要な分、より手軽に使えるようになっています。USBバス電源供給なのに、接続しても何も反応せずに…おや?と思ったのですが、リアパネル左側に電源スイッチが付いているんですね。これをONにしたら、すぐに使うことができました。

M2のリアパネル。USB Type-Cでの接続で、左側には電源スイッチを装備

4IN/4OUTのオーディオインターフェイスであるM4も見た目はそっくりなのですが、M2より若干横幅が長くなっています。フロントにはM2と同様にコンボジャックが2つ搭載されているとともに、ヘッドホン出力、ヘッドホン出力用のノブ、メイン出力用のノブが用意されています。

4IN/4OUTのオーディオインターフェイスのM4

そして中央部分にもう一つノブが用意されていますが、これはINPUT MONITOR MIXと書かれていることからもわかるとおりPCからの出力音と入力のダイレクトモニターのバランスを調整するためのもの。レコーディングしている際、オケに対して自分の入力音のモニターバックが小さい……といった場合、これで調整するわけです。

M4フロントの中央部にあるINPUT MONITOR MIXノブ

M4は4IN/4OUTというオーディオインターフェイスであるため、リアのほうの端子数が増えています。右側から見ていくと一番右にあるのはTRSフォン端子での3/4chの入力。その左は出力で1/2chのMONITOR出力、3/4chのライン出力、さらにその左はRCAピンでのMONITOR出力、ライン出力という構成。一番左にはM2と同様MIDI IN/OUTが用意されています。

MOTU M4のリアパネル。M2と比較すると端子数が多いのが分かる

また外観からも分かる他社製品との違いの一つがフロントパネルに用意されたフルカラーLCDです。M2では入出力2chずつが、M4では4chずつがレベルメーターで表示されるので、視認性という点で非常に優れています。

M2、M4ともにフルカラーLCD搭載で入出力がレベルメーター表示される

さて、そのMOTUのM2およびM4はUSBクラスコンプライアントであるためPCと接続すれば、すぐに使うことが可能です。ただし、DAWで使うことを考えるとWindowsの場合、MOTUが配布しているドライバをインストールするのは必須であり、これでASIOで利用可能になります。Macの場合はドライバなしでも使うことは可能ですが、ドライバをインストールすることでバッファサイズをさらに小さくし、レイテンシーを極めて小さい形で使用することが可能です。

44.1kHz~192kHzのサンプリングレートで利用でき、バッファサイズは16サンプルにまで縮められる

たとえば48kHzのサンプリングレートにおいてはバッファサイズを16サンプル、96kHzで32サンプルに設定することが可能になっており、非常に低レイテンシーでの運用ができるようになっています。

ところで、このMOTUのM2およびM4には、Ableton Live LiteとともにMOTUのPerformer LiteというDAWが付属してくるのも重要なポイント。そのM2とPerformer Liteを用いて、先日放送したDTMステーションPlus!でボーカルおよびドラムのレコーディングを実践してみたので、まずは以下のボーカルレコーディング風景をご覧ください。

歌ってくれたのは声優の葵井歌菜さん。曲はRe:Unionという2.5次元舞台のテーマソングである「Be with you」。番組を一緒にやっている作曲家の多田彰文さんによる作曲・編曲で、作詞はDTMerの小岩井ことりさん。ここではボーカル用のマイクにはShureのSM58を使い、M2でレコーディングしています。また、ダイレクトモニタリングだとボーカルが生声となってしまうので、Performer Liteからのモニタリングにするとともに、Performer Liteに入っているプラグイン、proverbというリバーブを掛けています。

一方、葵井さんは実はドラマーでもあり、先日行われたRe:Unionのライブ版、Live of Re:Unionでもドラマーを務めています。そこで、先ほど録ったボーカルに重ねる形でドラムもレコーディングしてみました。その様子がこちらです。

番組中での収録ということもあり、ここでは最小限ともいえる2点録り。キック用にTASCAMのTM-50DBというマイクを使う一方、トップからAKGのC480Bを使い、これもM2でレコーディングしました。レコーディング中はクリックも出していますが、その後のプレイバックではクリックを消しているので、そちらも聴いてみてください。番組放送中での一発録りではありますが、非常にいい音で録れているのがお分かりいただけるのではないでしょうか?

ちなみに、このときのオーディオ設定は24bit/48kHz。番組を一緒にやっている作曲家の多田彰文さんが用意した10トラックのオーディオにボーカル、そしてドラムをそれぞれ録っていった形です。番組中にも話をしていたのですが、そのままモニタースピーカーで出したときの音が明らかに良かったのが印象的でした。ほかのオーディオインターフェイスと何がどう違うのか、そのときは細かく検証はできていないので、あくまでも感想、印象でしかないのですが、音の芯がしっかりしていてクッキリした音でモニターすることができました。それが、上記のYouTubeの状態に圧縮された段階でどこまで伝わるかは分かりませんが、その雰囲気は感じていただけるのではないかと思います。

このPerformer LiteはDigital Performer 10のライト版というDAWでMIDIとオーディオ合わせて16トラックまで使うことが可能となっています。もちろんMac、WindowsハイブリッドのDAWであり、Digital Performer 10に搭載されているインストゥルメント、エフェクトの半分程度がここでも使えるようになっているので、とりあえずこれでレコーディング、MIDI入力、ミックス……といったことをしていく上で十分な機能、性能を備えています。

M2およびM4に付属のDAW、Performer Liteでレコーディングを行った

もし、Performer Lite標準搭載のプラグインだけでは物足りないというのであれば、VST2、VST3、さらにMacであればAudio Unitsのプラグインも含めて、このPerfomer Liteで使うことができるので、かなり柔軟性の高いDAWであると思います。もっとも細かな波形エディットまではサポートしていないものの、上記のビデオからもわかるとおり、普通にレコーディングし、パンチイン、パンチアウトし、各トラックのバランスを整え、エフェクト処理をしていく……といった流れにおいては、問題なく使えてしまいます。

ちなみにPerformer Lite自体はオーディオインターフェイスの制限があるわけではないので通常はM2やM4でレコーディングやプレイバックをしつつも、移動中に編集、ミックス作業する場合は、PC本体のサウンド機能だけで使う……といったことも可能になっています。

Performer LiteにはDP10付属のインストゥルメントやエフェクトが多数入っているがDP10へのクロスグレードも可能

またPerformer Liteでは機能的に物足りないようであれば、Digital Performer 10へのクロスグレードということも可能になっていますし、ちょうど現在クロスグレードを40%オフのキャンペーン価格で販売しているタイミングなので、通常48,000円のところ30,000円で入手できるのも嬉しいところです。

ただいま数量限定でDP10へのクロスグレードの40%オフのセールが展開中

そのほか、冒頭でも触れたとおり、M2およびM4はUSBクラスコンプライアントのデバイスなので、iPhoneおよびiPadでも使うことが可能です。ただし、この場合、iPhoneやiPadから電源供給ができたいため、Lightning-USB3アダプタを使うことで、ACアダプタから電源供給ができ、これで動作させることが可能となります。また電源供給機能付きのUSBハブを利用することでも使えることを確認しました。

iPhone 11 ProにLightning-USB3アダプタ経由でM2を使うことができた

一方、PCと接続しなくてもM2およびM4のUSB Type-C端子に電源供給すれば、スタンドアロンで使うことも可能です。この場合、マイク/ラインインをヘッドホンでもモニターすることが可能となり、かなり高品位なヘッドホンアンプとして利用することが可能となります。またM2およびM4につないだマイクの出力をメインアウトからも出力できるため、マイクプリアンプとしても利用可能となっているのも見逃せないポイントです。

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