マイクのポテンシャルを100%引き出す、Neumann初のスタンドアロン型マイクヘッドアンプV 402。定番マイクと宅録最高峰オーディオI/Fを録り比べ

2月25日にNeumann(ノイマン)から初のスタンドアロン型マイクヘッドアンプ、V 402が発売されました。NeumannはU 87というレコーディングの世界で大定番のマイクを開発しているドイツの老舗メーカー。マイク以外にも、KHシリーズのモニタースピーカーやNDH 20というモニターヘッドホンなども発売していますが、今回、新たにマイクプリアンプを開発・発売したのです。単体としては初ですが、実は1980年代にV 476 Bというミキシングコンソール用のプリアンプモジュールを開発し、スタジオで高い評価を得ていた、Neumann。そこから40年近い歳月を経て、まったく新たに開発されたV 402は、トランスレス回路を採用し、最大の透明度と音の純度を目指して設計されたとのこと。

2UのラックマウントサイズのこのV 402。実売価格が379,500円(税込)程度と、高価な機材ではありますが、通すだけで抜群に音がよくなるというのですから、やはり試してみたいところ。そこで発売元のゼンハイザージャパンにお願いしたところ、実機を借りることができたので、実際どんな音の違いがでるのか実験をしてみました。実験方法はU 87 Ai、audio-technica AT4050、Shure SM58の3つのマイクのマイクを使い、V 402を通す場合と、通さない場合でどう違うか、録り比べるというもの。今回はシンガーの中原涼(@nakaharasuzuka)さんに協力してもらって収録し、ここで聴き比べることができるようにしたので、実際どんな結果になったのか紹介してみましょう。

Neumann初のスタンドアロン型マイクヘッドアンプV 402が発売されたので、録り比べを行ってみた


Neumannといえば、レコーディングスタジオには必ず置いてあるマイクを開発している、音楽業界で代表的なブランド。プロ御用達のU 87は、世界中の楽曲で使われているので、これで録音された音源は絶対に聴いたことあるはずです。そんなNeumannの歴史は古く、設立は1928年のドイツ・ベルリン。その後いろいろなマイクをリリースしてきたわけですが、現在ではU 87の後継機にあたり現行機種のU 87 Aiは約30万円する一方、約6万円ほどで購入できるTLM 102など、手頃な価格のマイクも発売しています。

マイクといえばのNeumannなわけですが、実はKHシリーズというモニタースピーカーやNDH 20というモニターヘッドホンも手掛けており、1980年代にはV 476 Bというミキシングコンソール用のプリアンプモジュールを開発していました。プリアンプの開発は何世代にも渡っていたそうですが、その間技術を進化させていくとともにNeumannをはじめとする高品質なスタジオマイクに最適なプリアンプは何か、という疑問があったとのこと。そんな疑問を解決し、開発されたのが、マイク信号に不要な色付けやノイズや歪みなど無しに信号を増幅するプリアンプV 402。

トランスレス回路を採用し、最大の透明度と音の純度を目指して設計されたV 402

そもそも、マイクプリアンプとは、マイクロフォンプリアンプリファイアー(Microphone preamplifier)の略で、ヘッドアンプ(HA)などと呼ばれたりする、微弱な信号を増幅する装置。マイクの信号はとても小さく、信号を増幅する必要があるので、オーディオインターフェイスにも必ずマイクプリが搭載されています。

オーディオインターフェイスにも必ずマイクプリが搭載されている

マイクの信号を増幅するだけなら、なんでもいいというわけではなく、マイクプリによって色があったり、トランジェントの再現性が違ったり、S/N比に違いがあったりするので、エンジニアやクリエイターはこだわりを持って、マイクプリを選んでいます。だからこそ、レコーディングスタジオにはさまざまなマイクプリが置いてあるのですね。
さて、最大の透明度と音の純度を目指して設計されたトランスレス回路を採用しているV 402。マイクケーブルを繋ぐXLR端子はリアパネルにあり、ここにマイクを繋ぐことで、2チャンネル分使うことができます。またLIFTとGROUNDを切り替えるスイッチも装備されています。

V 402のリアにIN/OUTが搭載されている

またフロントには、DI入力のためのジャックも搭載されており、ギターやベースを接続することもできます。このDI入力に関しても、音の純度を高めるために設計されているらしく、色付けがなく細かいディテールの再現性が高くなっています。その隣にある、ゲインのツマミはノッチ式になっているため、ステレオで使うときにレベルを合わせやすくなっています。

DI入力も可能。ツマミはノッチ式になっており、ゲイン調整が行いやすくなっている

さらに上下に5つずつボタンがあるのですが、これはそれぞれのチャンネルごとに分かれていて、左からインピーダンスが高いソースのときに押すHI-Z、コンデンサマイクを使うときに押すP48、信号が大きすぎるときに-20dB減衰させるPADボタン、位相を反転させるフェイズ切り替えスイッチ、60Hzから下をカットするハイパスフィルターが搭載されています。

HI-Z、P48、PAD、フェイズスイッチ、ハイパスフィルターが搭載されている

また、ヘッドホン端子が搭載されており、ここで直接マイクの音をモニタリングすることができます。ヘッドホンアウトのボリュームノブとそれぞれのチャンネルのボリュームノブが搭載されているので、どんな音を拾っているのか確認できます。右上にあるのは電源ボタンですね。

ヘッドホンアウトから、マイクプリを通した音を直接モニタリングできる

デザインが洗練されていて高級アンプのような見た目をしているシンプルな機材なわけですが、肝心なのは出音ですよね。まずは、今回の比較テストの環境です。使用したマイクは以下の3本。

Neumann U 87 Ai
audio-technica AT4050
Shure SM58

やはり、Neumannのマイクプリなので、U 87 Aiはマッチするだろうと思い選択しました。また、手ごろな価格で人気の高いaudio-technica AT4050とライブシーンでも活躍するShure SM58。SM58だけは、ダイナミックマイクですがレコーディングでも、あえてSM58を使う場面があるので、少し実験的に採用してみました。AT4050は、ミドルクラスのコンデンサマイクの代表として選択。録音時は、U 87 AiとAT4050を上下に配置して、同時に録音しています。なので、この2本に関しては、まったく同じテイクの録音となっています。

上にAT4050、下にU 87 Aiを配置してレコーディングを行った

また、マイクプリの比較には、RMEのFireface UCXを用いました。RMEのFirefaceシリーズは、多くのプロ現場でも使われる定番オーディオインターフェイスであり、クセがなく非常にクリアな音であるから比較しやすいと思い、今回はこれを選択してみました。

比較用マイクプリ兼オーディオインターフェイスにはRMEのFireface UCXを使った

1パターン目は、Fireface UCXにマイクを直接接続して、ゲインを調整して録音。2パターン目は、V 402にマイクを接続してゲインを調整したアウトをFireface UCXに繋いでいます。このときには、Fireface UCXのゲインは一切上げず、V 402のマイクプリだけを通した音で録音しています。録音したボリュームは、それぞれゲインのツマミで調整し、なるべく同じになるようにレコーディングしています。

ゲインは同じになるように筐体側で調整

このような環境で、中原涼さんに何度か歌ってもらい比較してみました。楽曲は中原涼さんのアルバム「セレンディピティ」に収録されている楽曲「ガザニア」の1コーラス分。EQやコンプ、リバーブなどのエフェクトは一切掛けず、両機ともハードウェア側でハイパスフィルターなどの設定は行わず、ファンタムスイッチだけをオンにした状態で、歌っていただきました。実際に試してみた結果が以下のものです。

kenfujimoto 揃 Neumann V402 Comparison Test

聴き比べてみていかがでしょうか?Soundcloudに上げるとMP3化されてしまうので、その違いが分かりにくいかもしれませんが、基本的はクリーンなサウンドではありますが、V 402の方が中域が魅力的で暖かみを感じる印象です。といっても、古いアナログ感のある出音ではなく、トランジェントがよく、密度もあり、ボーカル以外でもいい感じになりそうですよね。ちなみに24bit/48kHzでレコーディングしたものをそのままSoundcloudへアップしています。また音源は、Studio One 5でレコーディングし、ボーカルを大きめにミックスしています。

Studio One 5を使ってレコーディング/ミックスを行った

そして、実際に歌った中原さんにも、どんな印象だったか聞いてみました。
U 87 Aiは、マイク自体がいいので、もともとしっかりしたバランスの音をしていますよね。実際録り比べてみて、V 402を通した音の方が、抜けがいいなと感じました。私の声が高音域が抜けづらく、もこもこしたニュアンスになりがちなんですが、V 402の方がモニターしやすくて、歌っていて気持ちがよかったです。またSM58ですが、歌いながらモニターしてても、すごい笑っちゃうくらい違いが分かりました。V 402を通さないと私の声が余計こもってしまって、相性がよくないと思っていたのですが、これを通すとSM58の欠点をカバーして、いい感じになりましたね。普段ライブでも、SM58ではなくBETA58を使うくらいで、マイクを持ち込むときはSENNHEISERのE 945を使うのですが、細かいニュアンスもハッキリ、クッキリして歌詞が聴き取りやすくなりました。もしかしたら、マイクが安くなればなるほど違いが分かるのかもしれないですね」とのこと。

今回ご協力いただいた、中原涼さん

決してRMEのFireface UCXだって安い機材ではないのですが、これだけ違いが出るのは面白いですよね。もちろん、どっちの音が好きなのかは好みの問題。とはいえ、オーディオインターフェイスに搭載されているマイクプリではなく、別途マイクプリを選ぶ理由は伝わったのではないでしょうか。マイクに対する相性や録る音源によって、いろいろ選択するわけですね。オーディオインターフェイスのマイクプリアンプの品質が低いものと比べると、より違いを実感できると思います。

以上、Neumann V 402を試してみましたが、いかがだったでしょうか?機材としては、すごくシンプルでしたが、マイクプリだけでも、マイクのポテンシャルが変わることが分かる、いい比較テストだったと思います。価格はかなり高価ではありますが、導入して後悔はしない製品だと思いますよ。

【関連情報】
Neumann V 402製品情報
中原涼さん公式サイト
アルバム「セレンディピティ」情報

【価格チェック】
◎Rock oN ⇒ V 402
◎宮地楽器 ⇒ V 402
◎サウンドハウス ⇒ V 402
◎イケベ楽器 ⇒ V 402
◎イシバシ楽器 ⇒ V 402
◎島村楽器 ⇒ V 402

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