特定楽器の音を抜き出せる画期的ソフト、SpectraLayers Pro誕生!

DTMソフトというかオーディオエディットソフトに、またトンでもなくすごいものが現れました。ある種、革命的ソフトといってもいいと思うのですが、米SONY CREATIVE SOFTWARESpectraLayeres Pro(標準価格39,900円)というのがそれ。ご存知ソニーのアメリカ子会社であり、ループシーケンサのACIDや波形編集ソフトのSoundForgeなどを開発しているところが出した今回の製品は、従来とはまったく概念の異なるアプローチで音を加工できるソフトなのです。

私も、以前ニュース記事を見て、その存在は知っていたのですが、難しそうで何をするソフトなのか、理解できていませんでした。しかし、実際に触ってみると、ちょっと驚くべき内容でした。国内では12月21日より発売される製品の評価版を一足早く借り、私もインストールしたばかり。そのため、まだ使い方をしっかり把握できているわけではないのですが、ちょっとこれは大事件なのでは!?と思い、ファーストインプレッションとしての記事を書いてみました。

革命的オーディオ編集ソフトともいえるSpectraLayers Pro



このSpectraLayers Pro、その名前のとおり、音をスペクトル表示させ、レイヤーに分けて管理していくもの。まあ言葉で説明してもさっぱりわからないですよね。そこで、まずは以下のビデオをご覧ください。The BeatlesDear Prudenceを素材に、SpectraLayers Proの利用例を示す、すごく分かりやすいビデオです。

どんな操作をしたかの理解はともかくとして、ここで行っているのは、まず曲からベースパート、ギターパート、そしてボーカルをそれぞれ抜き出してレイヤーに分けています。また、その中のボーカルレイヤーだけを利用して、別の人が演奏するピアノとミックスするという流れになっているわけですが、結構すごいですよね。

2chミックスした曲から、特定の音を抜き出すという技術やソフト、最近いろいろと登場しています。RolandのR-MIXもそうですし、CelemonyのMelodyneのDNA機能もそのひとつ。目的としては同じことを目指しているものの、そのアプローチがそれぞれでまったく異なるのが面白いところです。

では、SpectraLayers Proはどんなアプローチになっているのか、その考え方を紹介してみましょう。通常、オーディオエディットソフトというのは、横軸が時間、縦軸が音量として波形を表示します。

一般的なオーディオエディットソフトは横軸が時間、縦軸が音量となる(画面はSoundForge10)

しかし、SpectraLayers Proは横軸は時間ですが、縦軸が周波数となっており、画面上のほうにいくと高い周波数、下が低い周波数となっています。もちろん、全体を俯瞰する形で表示することもできますし、ある部分を拡大して表示させることも可能です。これをスペクトル表示といい、このこと自体はそれほど珍しいものではありません。
SpectraLayers Proでは縦軸が周波数となっており、上にいくほど高い音になる
この画面はステレオで上半分が左チャンネル、下半分が右チャンネル

実際、SteinbergWaveLabなどは、スペクトル表示を1つの特徴として打ち出しており、表示された中から一部を切り出すといったこともできます。たとえば、コンサートを録音した中に、咳払い入っていた場合に、そこを狙って取り除くといったことが可能です。

それに対し、SpectraLayers Proも同様のことは可能なのですが、さらに発展した使い方が可能なのです。先ほどのビデオからも少し感じられたと思いますが、表示されたスペクトルを、AdobePhotoshopのような感覚でエディットしていくことができるのです。

Photoshopの操作と似た感じで、音の成分を選択し、レイヤーを作っていくことができる

たとえば、マウスカーソルのペンを「周波数の抽出」というものに持ち替えた状態で、ある音クリックすると、その音全体を自動的に範囲選択することができます。しかも選択したものをレイヤーとして切り分けることができるのです。

「倍音の抽出」にしておくと、自動的に倍音成分も選択される

もっとも、一般的な楽器の音というのは、単純に1つの周波数帯で構成されているわけではありません。数々の倍音成分が組み合わさってその音色ができているわけなのですが、ペンを「倍音の抽出」というものに持ち替えておけば、その倍音成分も自動的に選択してくれるから比較的簡単に、その音全体を選ぶことが可能になっているわけですね。

こうすることで、ベースのレイヤー、ギターのレイヤーといったものを作り出すことができます。レイヤーに分けられれば、あとは自由自在。ギターレイヤーだけを再生すれば、ギターソロとなるし、ギターレイヤーの位相を反転させた状態で、背景レイヤーとミックスすれば、ギターを消せるというわけですね。

このようにSpectraLayers Proは、2chミックスされたデータから特定パートを抜き出したり、消したりするといった目的で利用できるほか、邪魔な音を消し去るといったことも可能。ちょうど、写真に入り込んでしまった電信柱や電線を選択し、レイヤーとして切り分けた後に削除するというのと、同じ感覚でグラフィカルな操作が可能なのです。以下のビデオでは、ニュースの現場中継からサイレンの音をキレイに消し去るという例が示されています。

もっとも、SpectralLayerは「誰でも手軽に簡単に」というコンセプトのソフトではありません。それなりに、操作方法は覚える必要があるし、根気のいる手間のかかる作業になることがあるのも事実です。でも、そうすることで、従来のオーディオ編集ソフトでは絶対に不可能であったことを実現できるようになっているのです。

使い込んでいくと、もっといろいろな利用法が見つかりそうです。便利な使い方がわかったら、また記事にしてみたいと思っています。

【関連情報】
SpectraLayers Pro製品情報(フックアップ)

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