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Pro Tools 11のAAXプラグインってどんなもの?

6月24日にインストーラのダウンロードが可能になったPro Toolsの新バージョン、Pro Tools 11。私のTwitterやFacebookのタイムライン上でも、すでに活用している人が数多くいるようですが、「大きなバージョンアップであっただけに、まだ躊躇している」という人も少なくないようです。とくに、なかなか情報が少なくて分かりにくいのが新プラグインのAAX(Avid Audio eXtension)についてです。

 

AAXとはどんなもので、ユーザーにとって本当にメリットがあるものなのか、またこれまでのプラグインであるRTASTDMがサポートされなくなったというのは本当なのか、など気になることがいっぱい。そこで先日、Avid Technologyに伺い、オーディオアプリケーションスペシャリストのDaniel Lovellさんに話を聞いてみました(以下、敬称略)。


Pro Tools 11のAAXとはどんなものなのか、Avid Technologyに詳しく聞いてみました


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--Pro Tools 10がリリースされるタイミングでAAXが登場し、Pro Tools 11においてはRTASやTDMのサポートが廃止されてAAXに一本化されました。そもそも、なぜAAXという新規格が登場したのか、その背景について教えてください。

Daniel:いろいろな理由があるのですが、まずTDMRTASのフォーマットの違いというものがあります。DSP(Digital Signal Processorの略:信号処理用のプロセッサのことで、専用の拡張ボード上に搭載されている)を使った演算をするTDMと、DSP不要でPCのCPUで演算を行うネイティブ処理のRTASという2つのプラグインフォーマットがあったわけですが、TDMは48bit固定小数点演算処理で、RTASは32bit浮動小数点演算処理となっていました。そのため同じ名前のプラグインで、画面も同じであったとしても、双方で、どうしても音に違いが出るという問題があったのです。そこでDSP処理もネイティブ処理も同じ音にできるようにしたかったというのが大きな背景としてあるのです。そこで誕生したAAXには、すべて32bit浮動小数点演算ができるようになったので、どんな環境でもまったく同じ音が出せるようになりました。


先日お話を伺った、Avid Technologyのオーディオアプリケーションスペシャリスト、Daniel Lovellさん

 

--AAXになって、普通にPCのCPUで処理ができるネイティブ環境でも、DSPボードを必要とする環境でも、AAXという1つのフォーマットに集約されたということなのですか?
Daniel:いいえ、ネイディブ環境で動作するAAX-Nativeと、DSP環境で動作するAAX-DSPがあり、それぞれ別のものではあるけれど、どちらでもまったく同じ音で処理できるようになったということです。ただ、実は新しいAAXにはハイブリッド動作ということも可能になっています。

 

--ハイブリッドってどういうことですか?
Daniel:たとえばリバーブを考えてみてください。リバーブ処理では、初期反射の処理と、残響音処理がありますが、初期反射については高速処理が必須でありDSPを使うのが効果的ですが、残響音処理はCPUでの処理が効率的です。そのような場合、適材適所で処理をネイティブとDSPで分担させることが可能なのです。もっとも、現時点ではハイブリッド対応のAAXプラグインはまだリリースされていませんが、今後いろいろと登場してくると思います。

 

--10年前であれば、確かにDSP処理をするメリットは大きかったと思います。でもCPU処理能力がこれだけ向上してくると、DSPなど不要で、すべてネイティブでOKなのでは……とも思うのですが、その点はどうでしょうか?

Daniel:確かに、CPU処理能力は飛躍的に向上したので、DTM用途においては、ネイティブで十分だと思いますし、私自身自宅でPro Toolsを使う際はネイティブです。また小規模なスタジオにおいてもネイティブでも十分なパフォーマンスを発揮できると思います。しかし、テレビ放送であったり、映画のミックスなど、大規模なプロジェクトになってきたら、やはりDSPが必要となってきます。DSPであれば、安全で確実ですから、システムが落ちたり、上手く動作しないといった危険を回避することができるのです。もちろん、ネイティブ環境が危険であるという意味ではないのですが、どんなことがあっても確実に動作させることができるのがDSPのアドバンテージなのです。


パワーはCPUによるネイティブ処理でも大きな力があるが、低レイテンシーや決定性ではDSPにアドバンテージがある

 

--ということは、大規模なシステムではない限りはDSPのメリットはあまりない、ということですか?
Daniel:演算処理パワーという点だけを捉えれば、確かにCPUは非常に強力になっており、DSPを上回る面もあります。でも計算能力だけがすべてではありません。ユーザーがオーディオ・エンジンに求めるものは3つあると私たちは考えています。それはパワー(POWER)、低レイテンシー(LOW LATENCY)、決定性(DETERMINISM)です。これらの3つが私たちの工学設計空間であり、こらをバランスよく実現する上ではDSPも大きなメリットを持つのです。とくにレイテンシーを追い求めるのであれば、DSPは大きな威力を発揮します。

 

--これまでPro Toolsを使ってきたユーザーにとって非常に気がかりなのは、これまでの資産がどうなるのか、という点についてです。つまりRTASプラグインをせっかく買い揃えてきたのに、それがサポートされないことに戸惑いを感じる人も多いと思うのですが、この点はどうですか?

Daniel:Pro Tools 10までのシステムは本体ソフトもプラグインもすべて32bitアプリケーションとなっていましたが、Pro Tools 11はパフォーマンスを大きく向上させるため完全な64bitアプリケーションとして開発されました。エンジン部分も従来のDAEから、AAEAvid Audio Engine)という64bitの強力なものに変わりました。そのため、システム構造が大きく異なるために、旧来のプラグインを使うことができないのです。ちなみに、Pro Tools 10で使っていたプロジェクトをPro Tools 11に読み込ませて再生させると、CPU負荷が大幅に低減します。もちろんどのくらい多くのプラグインを使っているかなど、プロジェクトにもよりますが、多くの場合、1/4程度にまで負荷を減らすことができます。

 

--なるほど、そこまで負荷が減るというのは大きな魅力ですね。でも、FXpansionが出しているVST-RTAS Adapter 2のようなラッパーを使って、RTASプラグインをAAX環境として使うことができるようになったりはしないのですか?

Daniel:サードパーティーがどうするかは不明ですが、Avidとして出す予定はありません。というのも、無理やり組み込んで使うと、いろいろなところに不都合が生じることが考えられるからです。RTASの場合、リアルタイム処理で動作するシステムであったため、ミックス処理をする際には、リアル時間をかけて処理することが必要でした。しかし、AAXではオフラインバウンスができるようになったので、非常に高速に処理ができるし、オフラインバウンス結果とリアルタイム処理結果は100%同じになるというメリットもあります。この環境にRTASを組み込んでしまうと、やはり問題が生じてしまうのです。


AAXプラグインになったことで、高速に処理できるオフラインバウンス機能もサポートされた

 

--ということは、やはりPro Tools 11を使う以上は、RTASプラグインの資産は諦めなくてはならないということですね。
Daniel:そうしたユーザーのために、Pro Tools 11にはPro Tools 10のライセンスも含まれており、RTASやTDMプラグインを使いたい場合にはPro Tools 10を起動して使えるようにしています。同じマシンに2つのソフトを同居できるようになっていますから、必要に応じて切り替えて使っていただければと思います。

 

--ここでどうにも不思議に感じるのは、なぜAAXプラグインがPro Tools 10の環境でもPro Tools 11の環境でも組み込むことができるのか、という点です。RTASやTDMが32bitアプリケーションだからPro Tools 11に組み込めないというのは分かりますが、なぜAAXだけはOKなのでしょうか?
Daniel:実はAAXには32bit版と64bit版が存在しており、Pro Tools 10では32bit版、Pro Tools 11では64bit版を使うようになっているのです。ただ、32bit版と64bit版が必ずしも別のソフトになっているというわけではありません。以前、MacがPowerPCからIntelに移行した際、ユニバーサルバイナリーというものがあり、1つのプログラムでどちらの環境でも動作するというものがありました。このAAXも同じような考えで、多くのAAXプラグインが、両方で動作できるように設計されているのです。中にはAIRのプラグインのように32bit版と64bit版が別々にリリースされているものもありますが……。


数多くのAAXプラグインがすでに揃ってきている

--なるほど、そんなトリックが仕込まれていたのですね。
Daniel:多くのユーザーにスムーズに移行していただけるよう、いろいろと工夫しているのです。Pro Tools 11はMacならMountain Lion、WindowsならWindows7またはWindows8の64bit版が必要など、動作条件にも制限があります。古いマシンもサポートして欲しい、という要望もいただいておりますが、やはり64bit環境で高速に動作させるためには、どうしても現行のPCシステムが必要となってしまう点には、ぜひご理解いただければと思っております。すでに、AAXのプラグインライブラリも数多くそろってきました。ぜひPro Tools 11そしてAAXの快適さを多くの方に体験いただければと思います。

 

--ありがとうございました。
【関連サイト】
Pro Tools 11製品情報
Avid Japan Music Blog


Commentsこの記事についたコメント

2件のコメント
  • ねむねむ☆

    こんばんは。
    記事内容がとても分かり易い構成で、すんなりと頭に入ってきました。
    Avid TechnologyやPro Toolsの前進していく姿勢も明確に見えて良かったです。

    2013年8月9日 7:56 PM
  • 藤本健

    ねむねむ☆さん
    コメントありがとうございます。お役に立てたようで、よかったです。
    実は私自身がよくわからなかったので、自分で理解するために
    取材して記事を作ったというのがホントのところですから(^^)。

    2013年8月9日 8:33 PM

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