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魔法のアプリ、Chordana Composerが持つ作曲テクニックを探る

先日「思い浮かんだ鼻歌を一瞬で曲に仕上げるChordana Composerがスゴイ!」という記事で取り上げたカシオの自動作曲アプリChordana Composer(コーダナ・コンポーザ)。iPhoneアプリのベストセラーとしてランキングされるとともに、地上波テレビの番組でも紹介されるなど、DTM界隈での大ニュースともなったので、すでに入手した人も少なくないでしょう。

 

頭に浮かんだ2小節、4小節程度の短いフレーズをモチーフに作曲してくれるというのは、魔法のようで驚くし、使えば誰もが感激すると思います。たった500円のアプリですが、なぜこんなことが実現できるのか、とっても不思議です。そこでカシオに伺い、Chordana Composerの企画担当者である阪下彰さん、開発者である南高純一さんに、自動作曲の秘密を聞いてみました(以下、敬称略)。


Chordana Composerの企画担当者である阪下彰さん(左)と開発担当者である南高純一さん(右)


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--Chordana Composer、大ヒットアプリになってますね。以前出された自動耳コピアプリ、Chordana Viewer、Chordana Tapにも驚かされましたが、今回のChordana Composerはさらに凄いですね。これは、どんな経緯で開発されたのですか?

阪下:Chordana ViewerChordana Tapをリリースしたのが2013年10月末でしたが、そのころからChordana技術を使って今まで不可能だったことができちゃうアプリを作ろう、と社内でディスカッションを重ねていました。そうした中、自然と「作曲ってなかなかできないよね」、「本当に楽曲として仕上げるには、知識も経験も必要だし、時間もかかるし……」、「もし、作曲が一瞬でできたら、すごいよね」と議論になっていきました。


Chordana Viewerなどをリリースした直後からプロジェクトをスタートさせたという阪下さん 

 

--これまでも「自動作曲ソフト」自体はいくつか存在していました。でも、それらと違ってChordana Composerって、ものすごく楽しく感じるんですよね。

阪下:社内でも新入社員にヒアリングしてみたり、サンプルを作って調査してみたりするうちに「コンピュータが作った曲ではなく、自分が作った感じが出せるかどうかが重要で、それがないと面白くない」ということが分かってきたのです。そこで、早いタイミングから、いかに自分が作った音楽であるかを実感できることを目指そうということになったのです。


思い浮かんだフレーズを鼻歌で入力するだけで曲ができてしまうChordana Composer 

 

--単にジャンルを選択すると自動で音楽が生成されるのと、自分の思い浮かんだフレーズがモチーフとなって曲ができるのとでは、受け取り方も全然違いますもんね。でも、そんな魔法のような技術、1年程度でできてしまうんですか?
南高:実は、ここに使われている自動作曲はカシオで長年研究しているテーマなんです。一番最初に手掛けたのは1988年ごろのことです。ちょうど当時、AI=人工知能がブームになっていて、これを楽器に取り入れられないか、と考えていました。そうした中「何かモチーフを入れたら曲ができる」というシステムの研究をスタートさせたんですよ。

 

--ええ?一朝一夕でできたアプリではなく、25年以上前から「モチーフを元に自動作曲」という研究をされてきた成果だったんですね。その当時も、Chordana Composerのような製品が出ていたりするんですか?

南高:その当時は、楽器としてPCMが一般化する直前という時代であり、いかに「いい音」にするかに力を注いでいた時代でした。先日アプリとして出したCZ App for iPadの元でもあるCZシリーズを出したのもそのころだし、FZ-1が出たのも1987年です。その後、結果的にPCM音源が主流の時代へと移って行ったわけですが、それとはまた別の研究として、コンピュータに曲を作らせる実験を繰り返していました。ただ、そのころは「いかにも計算機が生み出した曲」というものしかできなかったし、コンピュータの処理能力が低かったために、ワークステーションと呼ばれる高価で高性能なマシンを使う必要があり、直接、曲が作れるような製品を出すことはできませんでした。ただ似たようなことができる製品は2つほど出しているんですよ。


1992年に発売されたカシオトーン、VA-10はChordana Composerのルーツ的な存在 

 

--Chordana Composerのルーツともいえる製品があるんですね?具体的にはどんなものだったんでしょうか?
阪下:1992年にカシオトーンのシリーズとして出したVA-10や、その後1997年ごろに発売したGK-700といった製品がそうです。GK-700の場合、楽器としては単体で動作し、シーケンス機能や自動伴奏機能も搭載しているほか、テレビに接続できて、音符表示などができるようになっていました。

南高:入力したメロディーの音符を判別して、安定的な音なのか、危ない音なのかを色で表示することができるようになっていました。その意味では、今回のChordana Composerのヒント機能と同じようなものであり、その原型ともいうべきものでした。


テレビと接続でき、音の危なさ度合などを色で表示させる、今のヒント機能的なものを持っていたGK-700 

 

--そのヒント機能について、少し詳しく教えてください。この前、私が作ったデモでもそうでしたが、微妙にコードから外した音をモチーフに入れて作曲させると、その外した音を引きずる形で曲ができていき、まさに危ない音として赤く表示されていました。これはどういう意味を持っているのですか?
阪下:できあがった曲のメロディーは五線譜上で修正可能となっていますが、そのメロディーの各音がコードに合う音なのか、テンション度合を上げる音なのか、といった視点から音符を5種類に色分けするものが「ヒント機能」というものなのです。具体的には以下のような5つです。


Chordana Composerのヒント機能で表示される音符の色の分類

南高:ここでは和音=コードと調=キーが非常に重要になってきます。たとえばハ長調であるならば「ドレミファソラシド」という音階が決まり、メロディーがその音階に乗っているのか、そうでないかで分類できます。その次に、コードが出てきたときに、コードに含まれる音なのか、それ以外なのかで分類ができます。さらにテンションといわれるものとそれ以外に分類できます。そうして6通りに分類したのが先ほどの表です。実際にはコードに乗った音ならば、どちらも同じということから5通りの分類です。当然、黒いコードトーンが最も安全な音であり、赤いアボイドノートが最も危ない音。こうした判断をしながら曲を作っていくわけです。こうした判断があるから、このメロディーはいいとか、悪いと、コンピュータが判断することができるのです。


ヒント機能により自動作曲されたメロディーの中で、外れた音=危険な音は赤で表示されている 

 

--このChordana Composerを使ってみて、とにかくすごいと感じたのは、入力したモチーフをうまく使いながら曲が展開されていくという点です。これはどのようにしているのですか?

南高:いろいろなノウハウを投入していますが、メロディーを作っていくうえで、音の繋がりのルールというのはいろいろあります。作曲の基本として「同型反復」というものがあります。まったく同じフレーズを繰り返すというだけでなく「ドレミファソ」ときたら「ソファミレド」反転としたり、「ミファソラシ」と音をズラすなど、いろいろな反復法があります。また、隣り合う音符の繋がり具合をどうするのか、さらにはAメロに対してBメロ、Cメロ、サビがどう展開するのかといったものを時間をかけてルール化していったのです。それらルールのデータベースをルールベースと呼んでいますが、このルールベースを利用して自動作曲を行っていくわけです。


自動作曲などの技術開発に1988年ごろから携わってきたという南高さん

 

--ということは、Chordana Composerが持つルールベースにしたがってメロディーを作るから、どれも同じような曲になってしまうのですか?
南高:いいえ、そうならないために、モチーフをユーザーに入力してもらうわけで、そのモチーフによって、曲のイメージはまったく違うものになってきます。だからこそ、Chordana Composerが作曲した曲の著作権はユーザーにあるわけなのです。著作権の判例などで「4小節まったく同じものはダメ」というありますが、そこは通じるものがあるな、と感じています。実際に4小節あれば、その曲の良さって、すごくわかりますよね。これはモチーフがいかに大切かの裏返しだと思うのです。

 

--一方で、バッキングパートのほうも、なかなかよくできていますよね。ただ、「ジャズ」-「バラード調」とか「ロック」-「ノリの良い」など設定する際、同じ設定だと、結構にた雰囲気になってしまいますよね……。

南高:この辺はユーザーのみなさんのリクエストにお答えしつつ、改善していきたいと思っています。こうしたアレンジのバリエーションを増やしていくというのも一つの方向性だろうと考えているところです。


 Chordana Composerのシステム構成図

 

--もうひとつ、多くの読者から指摘が出ていて、私自身もぜひお願いしたいのは、こうして作曲した結果をオーディオだけでなくMIDIファイルとして書き出せるようにしてほしいということです。これができるなら、もっと高くても買う人がいっぱいいるんじゃないでしょうか?
阪下:はい、いろいろな方から要望が来ていますので、前向きに対応していきたいと思っています。その際、オプションとするのか、別アプリにするかなども含めて、現在検討しているところです。

 

--ぜひ、そうした機能拡充はお願いしたいですが、自動耳コピ、自動作曲に続く、ビックリするようなアプリをまた作ってほしいですね。
阪下:はい、Chordanaシリーズとして、また新しいものを企画しているところなので、ぜひ楽しみにしていてください。

 

--ありがとうございました。


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