高音質で話題のSuper UAをさまざまなDAWで試してみた

Rolandのオーディオインターフェイスの新ラインナップ、Super UAって音を聴いてみたことはありますか? DTM界隈よりもハイレゾオーディオ・ファンの方々の間で人気になっているオーディオインターフェイスで、24bit/96kHzや24bit/192kHzのオーディオ再生の音がいいのはもちろんながら、16bit/44.1kHzの再生で他のオーディオインターフェイスやUSB-DACの出音と大きな差が出ると話題になっているんですよね。

実際にCDをリッピングしたデータをDAW上で聴いてみると、「あれ、この曲に、こんな音が入ってたっけ!?」なんて思うことがあるほどで、とっても解像度が高く、不思議な思いもするんです。そこには、アップサンプリングや1bit化など、Rolandの技術を駆使した秘密もあるのですが、これは各種DAWでしっかり動くのかが気になるところ。そこでWindows、Macの環境で数多くのDAWを起動して、テストしてみました。

RolandのSuper UAをさまざまなDAWで使ってみた


Super UAは、Mobile UAの兄貴分という位置づけで発売されたオーディオインターフェイス。Rolandのオーディオインターフェイスとしては、DTMユーザーの間ではお馴染みのQUAD-CAPTUREOCTA-CAPTURESTUDIO-CAPTURE、またDUO-CAPTURE EX……といったCAPTUREシリーズがありますが、このSuper UA、Mobile UAはそれらとは別ラインナップという位置づけで、レコーディングよりも再生、モニタリングにより重点を置いた製品となっています。

デスクトップにおいて、大きなノブで音量調整などができるSuper UA

ユニークなのはその形状。CAPTUREシリーズとは異なり、デスクトップに置いて、使う形になっており、大きなノブを使って音量調整をおこなったり、このノブを押すとミュートできるようになっています。設定レベルがノブの回りのLEDで表示されるとともに、その上にある大きなレベルメーターで出力音量が表示されるのもカッコいいところです。


フロントに標準ジャックおよびミニジャックのヘッドホン端子が用意されている

また、このノブの右上にはPHONES、A、Bというスイッチがありますが、これを押すことで、出力先を切り替えることができるようになっている、というのもモニターを重視する点では優れものです。PHONESは手前にあるヘッドホンジャックからの出力、Aは本体リアにあるTRSフォンのラインアウトからの出力、そしてBはブレイクアウトボックスに搭載されているXLR端子からの出力で、これらを切り替えながら、出力音を聴き比べられるようになっているのです。


Super UAの本体のリアパネル。中央にあるのがTRSフォンのラインアウト

仕様的には2IN/2OUTの2 Channelモードと、2IN/6OUTの6 Channelモードがあり、上記のスイッチで出力を切り替えるのは2 Channelモードのときとなっています。また、音質的にSuper UAが本領を発揮するのも2 Channelモードのときとなっています。


 2 Channelモード

6 Channelモード

ここで上の2つの図をご覧ください。2 Channelモードでも6 Channelモードでも、PCから出力された音はSuper UA内で自動でアップサンプリングされる仕掛けになっているんです。さらに、2 Channelモードの場合は、1bit化=DSD化されるようになっているのです。


S1LKiでのアップサンプリング、1bit化の流れ

この技術のことを「S1LKi」と呼んでおり、これによって高音質化を図っているんですね。流れとしては以下の図のようになっています。これを見ると分かるとおり、176.4kHzまたは192kHzにアップサンプリングされた後に2.8MHzへと1bit化されているので、前述の16bit/44.1kHzで大きな効果があるだけでなく、96kHzや192kHzのデータでも効果を発揮するわけです。

この辺の詳細については、以前、AV Watchの記事「ローランドからDSD対応USBオーディオ、Mobile UA。高音質の秘密“S1LKi”とは?」で書いているので、興味のある方はそちらもご覧になってください。

この記事にもあるように、S1LKiで行っているのは、音を変化させることではなく、記録されている情報を正確に取り出すこと。44.1kHzを再生する場合でも単に音を出すというよりも、そこにある情報を徹底的に骨までしゃぶりつくすようにして再生するので、これまで気づかなかったような音がクッキリと聴こえてきたりするわけです。


ブレイクアウトボックスにはファンタム電源が利用できるマイク入力がステレオで用意されている

さらにもう一つ重要なのはSuper UAは32bit floatに対応しているということです。多くのオーディオインターフェイスは24bit/96kHzや24bit/192kHzであるのに対し、Super UAは32bit float/192kHzに対応しているということです。そしてドライバレベルで32bit floatでやりとりできるので、非常に高精細な音の表現が可能なんですよね。
このように、出力の音質にとことんこだわっているSuper UAですが、もちろん入力機能も用意されています。本体にTRSフォンのライン入力がステレオで用意されているほか、ブレイクアウトボックスにはファンタム電源に対応したXLRのマイク入力が用意されているので、ここからレコーディングすることができるようになっています。

2INという仕様ですから、ライン入力にするかマイク入力にするか、または片チャンネルずつ使うかは選択する形となっており、切替は本体の入力切替スイッチで操作します。もし、入力も出力もブレイクアウトボックスのXLR端子が不要ということであれば、これを切り離して本体だけで使うこともできますよ。自宅のDTM環境においてはブレイクアウトボックスとセットで使い、外出先においては本体のみ、という使い方もよさそうです。


Super UAは小さいボディーながら内部にS1LKiという技術が搭載されており、高音質化が図られる

そして、この入力においても32bit floatが有効になっています。正確にはSuper UAのA/D変換は24bitですが、各入力にコンプ/EQが付いており、ここで32bit floatに変換され、USBを経由して32bit floatの信号がPC、そしてDAWへと送られるようになっているんですね。

つまり、取り込んだ音はコンプ/EQを経由しても、劣化したり、演算結果の端数が切り捨てられるようなことはなく、高精度なままDAWへレコーディングできるというわけですなのです。技術的にいうとMacのCoreAudioではそのまま32bit floatが通り、WindowsのASIOの場合はDAW側の要求に応じて24bitから32bit floatかなど接続状況が変わるようになっているのです。


アプリとして提供されているUA-S10 Control Panelを使うことで、各種設定ができ、コンプやEQもここで細かく設定できる

このようにアップサンプリングや1bit化などを行う仕掛けがあったり、32bit floatにも対応しているSuper UAですが、やや特殊なシステムであるだけに、各DAWとの相性は気になるところです。せっかく、最高なモニター環境が構築できると思っても、うまく動いてくれなくては無意味ですからね。

そこで、Windows、Macそれぞれにおいて、各種DAWを動かして、問題なくSuper UAが使えるのか、1つずつ試してみました。まずはWindowsからです。

Windows 8.1(64bit)にSuper UAのドライバをインストールした状態で、4つのDAWを試しています。1つ目はCakewalkのSONAR Platinum(64bit)。最新のバージョンで使っていますが、あっさりSuper UAのASIOドライバを認識し、使うことができました。再生はもちろん、レコーディングも問題なくできます。


SONAR Platinumにおいて動作を確認

次にSteinbergのCubase Pro 8。これももちろん64bit版を使っていますが、バッファサイズを最小にしても、まったく音が途切れることなく、再生、録音ともしっかり使うことができました。


Cubase Pro 8でも問題なく動作

3つ目は、PresonusのStudio One 3 Professional。つい先日リリースされたばかりの最新DAWですが、これも64bit版をインストールしたところ、あっさりと動作し、録音、再生ともに試してみましたが、安定して使うことができました。


最新のStudio One 3 Professionalでも問題なく使える

4つ目は国産のDAWであるインターネットのAbility Pro(64bit)です。毎週のようにアップデータを出して新化しているAbilityですが、最新版にアップデートして試してみましたが、こちらも問題なく使うことができました。どのDAWで使ってみても安定しているし、本当に「分解能が高い!」という感じのいい音でモニターすることができました。

これら4つのDAWともに32bit floatの信号で入出力できているようでした。ちなみに32bit floatが通っているかどうかは、入力と出力をケーブルで直結した上で、-90dBとか-100dB程度の微弱な波形を再生し、別トラックでレコーディングしてみることで確認できます。もちろん、入ってくる信号は微弱なのですが、それをノーマライズするなど増幅したときに、24bitだとガタガタな信号になるのに対し、32bit floatなら多少ノイズは入ってもキレイな波形として確認できるので、ぜひみなさんも試してみてください。


国産DAW、Ability Proでもバッチリ動く

ではMacのほうはどうでしょうか?こちらも最新版、Mac OS 10.10、Yosemite環境で4つのDAWを試しています。

1つ目はMacに標準でバンドルされているGarageBandからです。Super UAの注意書きを見ると、GarageBandを起動する際、Super UAの設定ソフトである「UA-S10 コントロール・パネル」とGarageBandを同時に起動してはならないとありましたが、それを守っている限り、安定して動いてくれるようです。


Macに標準装備のDAW、GarageBandでも使える

また、現在はGarageBandの上位ソフトという位置づけになってきているAppleのLogic Pro Xでも試してみました。こちらもSuper UAの注意書きにLogicを使う際の事前の設定、というものが記載されているので、それを実行してみました。


Logicで使う場合は、注意書きにしたがってエンバイロメントの設定が必要となる

具体的な方法は、Rolandのサイト上に「GarageBand や Logic を Super UA でお使いのときの注意点」というPDFがあるので、そちらをご覧いただきたいのですが、エンバイロメントにおけるデフォルトの設定を1つ削除する必要があるのです。これも1回行ってしまえば、あとは普通に使うことができました。またバッファサイズも最小の32Sampleで安定して動いてくれましたよ。


エンバイロメント設定さえしてしまえば、Logic Pro Xでしっかり使える

3つ目はAvidのPro Tools 11。私の予算の関係でまたPro Tools 12は入手できていないのですが、このPro Tools 11で試した限り、やはり最小のバッファサイズの32 Sampleで快適に動かすことができました。現時点、オーディオエンジンはPro Tools 12もPro Tools 11も変わっていないと聞いていますので、最新版でも問題なく使えると思います。


Pro Tools 11.3において、32Sampleのバッファで気持ちよく使える

そして4つ目はWindows版でも試したCubase Pro 8。まあ、当然ではありますが、Mac環境においても、まったく問題なく使うことができました。Windowsで使ったVOCALOID 4 Editor for Cubaseを使ったプロジェクトをそのまま読みましたが、まったく同じように使えますね。


Mac版のCubase Pro 8でももちろん問題なく動作する

以上、Windowsで4つ、Macで4つのDAWを動かし、それぞれでSuper UAを使ってみましたが、どれでも安定して動作し、バッファサイズも最小の32Sampleで音が途切れることなく録音、再生することができました。そしていずれの場合でもS1LKiを使った音でモニタリングできたので、44.1kHzや48kHzのプロジェクトであっても、かなり高品位なサウンドでモニタリングできたという点でも快適でした。このS1LKiによるサウンドを体験したことない方は、ぜひ一度、聴いてみることをお勧めしますよ。
【関連情報】
Super UA製品情報

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Commentsこの記事についたコメント

2件のコメント
  • jr9_oda

    再生時の音がよい音質で聴けることは、
    リスナー視線でとても良いことだと思います。
    気になるところは、不味い音はちゃんと不味い音で聴こえてくれるのかな?
    というところです。
    (大丈夫だと思っていますが、一応まで・・・ 機材更新時の候補として少し考えています)
    製品で思ったところは、外部BOXがコンボ端子でHI-Z対応していると
    使い勝手がいいように思います。(オプションとかどうでしょうか・・・)
    ちなみに、色々と評判の悪いウィンドウズメディアプレイヤーの音質は
    改善されるのでしょうか?

    2015年7月21日 11:47 PM
  • 藤本健

    jr9_odaさん
    確かにHi-Z入力がないのが、ギターユーザーにとって困るところではありますね。
    基本的に間にエフェクトを噛ませろ、ということなんでしょう。
    ハイサンプリング、1bit化しても、ちゃんと悪い音は悪く聞こえます。
    EQで、いい音に補正するわけではなく、より原音に忠実にするものなので、
    聴き心地を良くするわけではないですね。
    ただし、Windows Media Playerからの音やその他PlayerでMMEドライバを
    経由した音であっても、アップサンプリング、1bit化の恩恵はありますね。
    できれば、ASIOドライバで再生できるプレイヤーを使ってもらいたいところですが、
    Windows Media Playerでも悪くはないですよ。

    2015年7月22日 10:18 AM

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