先日、このスコアメーカーの一般ユーザー向けの新製品発表会に行ってみたところ、別室でこれまであまり表に出ていなかったさまざまな情報を聞くことができました。驚いたのはその楽譜認識技術において、Finaleが出力したPDFなら、ほぼ100%の認識率を実現できているということです。この楽譜ソフトの世界で、海外メーカーのソフトと何が違うのか、カワイの持つ技術力とはどんなものなのかなど、株式会社河合楽器製作所 電子楽器事業部コンピュータミュージック室 室長の岡雅章さんに話を伺ったので紹介してみましょう。
岡:そうですね、最初のバージョンが登場したのは1995年。Windows 95が出る直前のWindows 3.1の時代です。当時は、音楽帳という主に学校向けの、楽譜を作成するためのソフトも出していて、そちらはすごく売れていましたね。ちょうど小学校、中学校のコンピュータ化が進み出した時代で、楽譜の読み方、書き方を学習するためのツールとして使われていたのです。
岡:ちょうどその時期に、社内の研究所で楽譜認識技術の実用化のメドが付き、これをスコアメーカーとして商品化したのです。今から見れば、まだまだ原始的なものではありましたが、それでもスコアメーカーとして基礎がこの辺で固まっていったのです。それから約10年間、地道に機能向上させながらバージョンアップを図っていきました。それがスコアメーカーの第1世代です。
岡:はい、2006年に設計を1から見直して作り直した第2世代となるスコアメーカーFXをリリースしています。ここではノーテーション=楽譜作成機能を完全リニューアルするとともに、それまでに研究所で積み上げてきた認識エンジンの最新版を搭載。さらにソフトウェア音源もそこで初めて搭載しています。それまでは、DTM用の外部音源がいろいろとあった時代で、当社でも「サウンドパレット」という製品を出していましたが、世の中的にもソフトウェア音源が一般的な時代に入ってきたこともあり、オリジナルの音源を組み込んだのです。
岡:第2世代になったことを示すために名前を変えたかったのです。第1世代がバージョン5まで進んだので、6番目のバージョンということで、A・B・C・D・E・Fと6番目のアルファベットということでFとし、新しいeXperienceということでXをつけてFXですね。その後、FX2、FX3……FX6と順当に進化させてきて、一巡したところでFXをとって「スコアメーカー7」が一つの転機となり、第2.5世代という感じの位置づけになりました。
岡:外見上、特別大きな進化があったわけではないのですが、第2世代の最初のころから気が付いていたあることを改めて前面に押し出そうということになりました。それは、スコアメーカーは単なる楽譜作成ソフトではないということなんです。そこで改めてスコアメーカーのユーザーの利用状況やサポートセンターへの問い合わせ内容を見てみたところ、Finaleなどとは大きな違いが見えてきたんです。
そして昨年はスコアメーカー20周年モデルということでスコアメーカー10をリリース。さらに今回UIも大きく変えた第3世代として、バージョン名を廃した上で、Platinum、Standard、Elementsという3つのグレードの製品を発売したのです。
岡:楽譜を使う人といえば、歌をやっている人、楽器をやっている人が多いと思いますが、当社のユーザーを見るととりわけ多いのが合唱ユーザーです。というのも楽器なら楽譜を演奏すれば音が出ますが、歌の場合、どんなメロディーの歌なのか自分で声を出さなくてはならないから、ガイドが必要なんですね。そのため音取りのツールとしてスコアメーカーがかなり普及しているようなのです。そうしたユーザーにとって、どうすればより使いやすくなるのかという点を徹底的に追求するとともに、やはりバージョンアップユーザーが非常に多いので、これまでのユーザーさんにとっても使い慣れた操作方法がそのまま利用できるということで今回の形にしました。
岡:そうですね、ただし全員が全員、スコアメーカーでスキャンしてということではなく、メンバーの一人がスコアメーカーでデータ化した上で、そのファイル形式であるSDXファイルを配布して利用するというケースも多いようですね。ちょうど、PDFを読むツールとしてAdobe Readerがあるように、SDXを表示し、演奏し、印刷するためのスコアプレイヤーというソフトを無償配布しているのでそれをダウンロードして利用していただければいいのです。
岡:楽譜作成ソフトとして、練習に使うソフトとしての使い安さを徹底的に追求するのと同時に、楽譜認識ソフトのありかたそのものをイノベーションしていく、という考え方で臨みました。従来は楽譜を取り込んで認識するモードと、それを修正するモードとが完全に切り離されていて、認識結果の修正が大変ということがよくありました。今回は取り込んだ画像上で直接認識結果の修正を行える仕組みを強化したので、ここでしっかり認識結果の確認をすることで、後はレイアウトを整えたり、移調やパート譜にしたり、演奏表現を付けたりに専念できるような持って行ったのです。
岡:はい、いろいろと研究開発を進めてきた結果、そこまで実現できるようになりました。楽譜作成ソフトから直接PDF出力したものであれば、条件によりますが100%に近いレベルにあります。この技術は、実は「PDFミュージシャン」というiPadアプリで先に実現していたんです。
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