週末音楽家のCHEEBOWさんはnanaの開発者でもあった!

女子中高生を中心に爆発的なヒットをしている音楽SNSアプリのnana。「コラボ」という形で、人がアップロードした楽曲に、ユーザーが自由に歌や演奏を重ねて(オーバーダブして)いくことができるのが特徴です。そのnanaは最近、PCからのアップロード機能やGarageBandからのアップロード機能などの機能が追加されたり、コンボリューションリバーブをはじめ、強力なエフェクトが追加されると同時にUIもブラッシュアップされるなど、どんどん進化しています。

その背景には多くの開発エンジニアが日夜、機能向上に取り組んでいることがあるのですが、その開発エンジニアの1人にDTM界隈でも広く知られている著名人がいます。そう、数多くのアイドル楽曲を手掛ける週末音楽家CHEEBOW(@cheebow)さんです。週末は音楽制作に取り組み一方、平日はプログラマ・エンジニアとしてnanaのシステム開発に関わっていたんですね。先日、そのCHEEBOWさんにお会いし、コンピュータを始めたキッカケや音楽制作を始めたキッカケなど、いろいろとマニアックにお話を伺ったので、紹介してみたいと思います。


アイドルに数多くの楽曲を提供している週末音楽家のCHEEBOWさんはnanaの開発にも携わっていた!



--夢眠ねむ愛乙女☆DOLL丸山夏鈴Luce Twinkle Wink☆RYUKYU IDOLじぇるの!MOSAIC.WAV……と数多くのアイドルに楽曲提供されていますが、CHEEBOWさんの本業は作曲家というわけではないんですよね?
CHEEBOW:はい、あくまでもプログラマが本業です。nanaを含め、いくつかのプロジェクトに携わっていますが、基本的に現在はiOSアプリの開発を専門におこなっています。直近でいうとトレタというレストランの予約アプリや、pixivのiOSアプリの開発なども行っています。もっと以前はAndroidアプリの開発もしていたし、Windowsのプログラミングも数多くやっていましたが、なんでも受けていると際限なく仕事が増えてしまうため、いまはiOSアプリ専門で仕事をしているんですよ。

--CHEEBOWさんが、コンピュータを始めたのはいつごろだったんですか?

CHEEBOW:最初にコンピュータに興味を持ったのは小学4年生のときでした。数学の読み物に「コンピュータは0と1の組み合わせで動いている」というのが書いてあって、「なんでなの?」とすごく不思議に思ったんですよ。でも当時コンピュータは非常に高価なもので、まったく手も出せませんでした。その後、中学校に入ってから、体が弱く、病気で長らく寝込んだことがありました。父から、「お前はもう長くないかもしれない。何でも好きなものを買ってやる」と言われたので、「マイコンが欲しい!」ってねだったんですよ。1980年だったと思いますが、入手したのが当時148,000円で販売されていた日立のベーシックマスターLevel2でした。もう、本当に嬉しくてね。近所のコンピュータ教室にも通わせてもらったんですが、それが楽しかったからか、みるみる元気になりました(笑)。

いまもCHEEBOWさんの手元に残してある日立Basic Master Level 2
--私はTK-80に触れてからNECのPC-8001だったので、まさに同時代ですね。そのベーシックマスターでどんなことをしていたんですか?
CHEEBOW:毎日家でゲームを作って遊んでいました。そのゲームでやっぱり音楽を鳴らしたいと思って、MUSIC文を使って「ドレミファソ」ってやっていたのですが、適当に入れたんでは、音楽にならない。やっぱり適当じゃダメなんだと思い、妹がやっていたエレクトーンも使いながら試行錯誤していました。ただ、単音しかならないので、ドミソを高速にループさせながら鳴らして和音っぽくしたほか、リレーを使うと、カチカチと鳴るので、これをパーカッション的に使うなど、いろいろと工夫をした覚えがあります。

--CHEEBOWさんは、楽器はその当時からやっていたんですか?
CHEEBOW:実は、いまも楽器はほとんど弾けないんですよ。ただ唯一高校のときに、吹奏楽部でホルンを吹いたくらいです。高校に入学したとき、音楽をやりたいと思い、軽音も考えたのですが、何も弾けないとやはり厳しそうでした。一方、吹奏楽部は「何もできなヤツのほうがいいよ」と言われて、素直に入ったんですよ。最初はパーカッションをやりたいと思って入ったものの、コントラバスに行け、と。試しにやってみたけど、どうにもうまくできそうにないので「吹くのがいいです!」と言った結果、空きがホルンしかなく、ホルン担当になったんです(苦笑)。でも、結果的にこのときの経験が今すごく生きているんですよ。ホルンをやったおかげで、対旋律を考えるのが得意になったというか、裏メロが自然に浮かぶようになったんですよ。ホルンではまず主旋律を吹かないですからね。

--では、高校のときは、吹奏楽部に青春を捧げたわけですね!
CHEEBOW:確かに、吹奏楽部の部活は異様に忙しかったんですが、すごく多趣味に行動をしていました。やっぱりコンピュータは続けていて、ゲームを作って文化祭で売ってましたよ。当時、ヤマハのMSXを購入して、このシーケンサとFM音源で遊んでいたんです。自分ではフュージョンやテクノが好きで、4小節をループするようなミニマルな曲を作ったり、吹奏楽部用のビックバンドのアレンジをしたり……。一方で、漫画も描いてたんですよ。漫研で文化祭に出す会報に載せていたほか、その当時から小説も書きだしてノートに書いて、クラスのみんなに読んでもらったりもしました。ノートを回すと、校内のいろいろな人が感想を書いてくれるのが楽しくて……。
 
--あまりにも多趣味過ぎでしょ!!でも、そのころにCHEEBOWさんのベースが確立されていったんでしょうね!大学は確か工学部でしたよね?

CHEEBOW:はい、電子工学科で、電子回路をやっていました。そこで種田と出会ったんですよ(※注、種田さんとはソフトウェア音源の開発者である種田聡さん、「海外で大ヒット、強烈なiOSシンセは日本人開発のアプリだった!」、「世界が注目。種田聡さん開発のiPadシンセの新作、金属系サウンド音源が気持ちいい!」を参照)。彼の家に入り浸って曲を作ったりしていました。またボクと種田でSF研究会に入って、漫画を描いたり、小説を書いたり……。もっとも、音楽は誰かに聴かせることなんかまったく考えてなく、二人で遊んでいたという感じですね。

その当時レコーディングに使っていたYAMAHAのMTR,CMX100II

--それだけ、いろいろ曲を作ってたならデモテープをどこかに送ったりということは?
CHEEBOW:まったく考えもしなかったですね。作り手としての意識はなく、ホントに好きで遊んでいただけ。まだDAWなんてない時代でしたから、レコーディングはYAMAHAの4TRのカセットMTRであるCMX100IIを、またドラムマシンとしてBOSSのDr.Rhythm DR-550を使ってました。ボクはバイトもしてなかったので、お金がなくて、それが精いっぱい。一方、種田のところにはM1があったり、レコンポーザがあったり、と、いろいろなものがあったので、本当に楽しませてもらいましたよ。

ドラムマシンにはDr.Rhythm DR-550を使っていた
--そのまま音楽家になってもよかったような気もしますが、CHEEBOWさんは大学卒業後、普通に就職してるんですよね。
CHEEBOW:はい、某大手メーカーの子会社に入社し、初任給でヤマハのSY-99を買いました!最初ハードウェアの設計をしていたのですが、途中でハードは向かないなと思い、ソフトウェアを希望してファームウェアの開発に行きました。ステッピングモーターの制御をCを使ってプログラミングすることが、楽しくて楽しくて!いまブラック企業の話題が出ますが、当時月間残業100時間とか余裕で超えて毎日夜中まで仕事してましたね。ただ、途中で異動になり、プログラミングができなくなってしまい、このままではエンジニアとして生きていけなくなると思って、4年ほどでその会社を辞め、フリーのプログラマとして仕事をするようになったんです。Windowsのプログラミングを中心にやっていました。

CHEEBOWさんが平日働いている職場
--今はご自身の会社なんですよね?
CHEEBOW:フリーのころに一緒にやっていたウチの社長と「じゃあ、一緒に会社を作ろうか」ということになり、設立したのが1998年。だから今年でちょうど20年目になるんですよ。この間、いろいろな仕事をしてきました。Windowsのアプリ開発からCD-ROMのコンテンツ制作、Palmの仕事をしたこともあるし、MovableTypeの日本語化なんていうのをしたこともあったし、iPhoneもやり、Androidもやって、いまiOS周りだけに落ち着いている感じですね。

--その会社のお仕事と並行して、プロとして楽曲制作をしているわけですよね。
CHEEBOW:もともと、音楽でお金をもらおうとか、プロのミュージシャンになろうなんて思ったことはなかったし、誰かに曲を提供するなんてことも考えたこともありませんでした。同人の世界で漫画描いたり、しばらくして同人音楽なんてジャンルがでてきたので、それをやったりしてただけなんです。そんな中、2009年だったと思います。知人のWebデザイナーが、秋葉原ディアステージでサイトのデザインをしていたのですが、彼から「同人で音楽作ってるんなら、ディアステージで曲を書いてみないか?」って誘われたんです。そこで作ることになったのが、でんぱ組.incができる前の、夢眠ねむちゃんの曲でした。それが、ボクがアイドルに書いた最初ですね。それまでも、ネットの知り合いに書いたり、それをまとめてアルバムにしたといったことはありますたけれど。

--実際、夢眠ねむさんに曲を書いてみてどうだったんですか?
CHEEBOW:思いのほか評判がよかったんですよ。それで、ディアステージ所属の別のアイドルグループにも書かないか、なんて言われて少しずつ書き始めたんです。ちなみに、つい先日、夢眠ねむちゃんに久しぶりに会いました。いまは超有名人ですもんね。彼女のキャッチフレーズが「永遠の魔法少女未満」なんですが、その言葉の元になった「魔法少女☆未満」という曲をボクが作っていたんです!

--すごい実績ですよね。CHEEBOWさん的には、音楽制作については仕事と捉えていたのですか?

CHEEBOW:わずかならがお金ももらってはいたのですが、こちらはあくまでも趣味と捉えて書いていました。ところが、その子たちは、みんな真剣に音楽をやっている。その一方で、作る側が、いい加減な思いでは、よくないな…と思うようになったんです。ちょうどそのころ、ももクロ週末アイドルと言っていたので、それを真似て、「週末音楽家」と名乗るようになったんです。それ以来、いろいろなところから声をかけてもらうことが多くなりました。その中でも、Luce Twinkle Wink☆というグループのデビューシングルとして提供した「刹那ハレーション」という曲は、自分としてはかなり評価されたので、思い入れは大きいですね。

CHEEBOWさんとして思入れがあるというシングル「刹那ハレーション」
--実際、その週末の音楽制作でどのくらいの数の曲を作っているのですか?
CHEEBOW:2014年には24~25曲を作っています。さすがに多すぎたので、少し減らして2016年は14~15曲、昨年は12曲だったと思います。ただ、そのほかにもコンペにも出しているので、作っている曲数自体は結構あるんですよね(笑)。
 
--せっかくなので、CHEEBOWさんの、現在のDTM環境について教えてもらえますか?
CHEEBOW:そんなにたいそうなシステムというわけではないですよ!PCは自分で組み立てたマシンで、Windows 8.1が動いています。ここにCubase Pro 9.5を入れていて、オーディオインターフェイスはSteinbergのUR28Mを使っています。スピーカーはYAMAHAのHS5、ヘッドホンはMDR-CD900ST、MIDIキーボードはKORGのmicroKEY-49を使ってます。

あまり公開したことがないというCHEEBOWさんの自宅のDTM環境
--プラグイン類はいかがですか?
CHEEBOW:TRILIANAddictive DrumsBattery、それにSteinbergのVirtual Guitarist、ピアノはAddictive Keys、またNexusやRobPapenのBlue IIなんかも使ってます。もちろんCubaseの音源であるHalion SonicRetrologueなんかも使ってますね。エフェクトはWavesのを使っているほか、FabFilterくらいですから、それほど変わったものは使ってないですよ。

--ところで、話を最初に戻し、いまCHEEBOWさんの本業のほうではnanaのプログラミングを行っているとのことですが、その辺もう少し詳しく教えてもらってもいいですか?そもそもnanaでの仕事歴は結構長いのですか?
CHEEBOW:実際の仕事をするようになったのは、昨年の4月からなので、それほど長くはないです。ただ、nanaとの出会いは古いんですよ。まだ、ほんとにnanaがサービスをスタートしたばかりのころだから、5年くらい前でしょうか。まだ渋谷のコワーキングスペースでやってたときに、社長の文原明臣さん、前取締役の辻川隆志さんとお話もしていました。仕事を…という話もあったのですが、なかなか条件面などが合わなかったんですよね。そうした中、改めて昨年、文原さんからお声がけいただき、いま楽しく仕事をさせていただいています。

--音の部分に関わったりはしないのですか?
CHEEBOW:なぜか、プログラマとしては、音楽モノをやってみようと思ったことがあまりないんですよね。nanaにおいても、エフェクトなどではなく、あくまでもUIが中心です。最近のアップデートにおいてはコンボリューションリバーブのエンジンなどは、別のエンジニアが行っていて、DryとWetの調整など、エフェクトそのものではなく、エフェクトをコントロールする部分をボクが作るという感じ。もちろん、ユーザーとしての観点からより使いやすいものにしようとブラッシュアップしています。

--実際、CHEEBOWさんがnana上でアップしたりもしているんですか?
CHEEBOW:そうですね、まだ、ちょっとですが…。ボクが曲を書いているアイドルたちの中にもnanaのアカウントを持っている人もいますし、曲の仮歌を頼んでいる人もアカウント持っていたり。nanaの広がりを感じて面白いですね。ボク自身は人に声をかけたりするのは苦手ではないのですが、苦手に感じている人にとっては、nanaに伴奏さえ上げれば、いろいろな人が歌ってくれるというのはすごい魅力ですよね。普段、いろいろな曲を作っている立場からすると、90秒のモノラルというのは、すごい制限に感じる面がある一方、この制限だからこそ、気軽に楽しめるという良さも大きいと思います。たとえばDTMで伴奏を作るにしても、フル尺だと、どうしてもギターソロとかを入れるなど大変ですが、90秒ならワンコーラス分なので、、だいぶ楽ですしね。今後は、自分でも楽しみながらもっとnanaを使っていこうと思っているところです。

--今後も週末音楽家として、そしてプログラマとしてのCHEEBOWさんに期待しています!ありがとうございました。
実は当日、nanaの担当者も同席していたのですが、その担当者によると、現在nanaではエンジニアを募集しているとのこと。興味ある方は、問い合わせ・応募してみてもいいかもしれませんよ!

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