先日、JDSoundの社長、宮崎晃一郎さんに開発の背景や、この音質・音量を実現できた秘密についていろいろと伺うとともに、開発中のプロトタイプをお借りして試してみました。その結果、音楽鑑賞用やビデオ再生用としてはもちろん、DTMのモニタースピーカーとしてもなかなかな性能を発揮してくれたので、実際どんなものなのか紹介してみたいと思います。
世界初、フル完全デジタルのUSBスピーカー、OVO
実はこのスピーカー、突然登場したのではなく、すでにあった機材からスピーカー部分を切り出したものなんです。そうOVOは以前「クラウドファンディングで大成功のデジタルDJ機、GODJ Plusが一般に向けて発売開始だ!」という記事でも紹介したDJ機器、GODJ Plusのアンプ、スピーカー部分だけを抜き出して製品化したもの。
「GODJ Plusはスピーカー内蔵のDJ機器ですが、このスピーカーが思いのほかいい音の出るものに仕上がりました。その結果、多くのユーザーのみなさまから、『このスピーカー部分だけを切り出したものを売って欲しい』という声が届いたのです。
OVOはGODJ Plusに入っていたスピーカー部を切り出したもの
そこで、このスピーカー部だけの商品化を検討し、設計し、今回のクラウドファンディングへとつながりました」と話すのは宮崎さん。
見せてもらったプロトタイプは中身がむき出しの状態で見えるのですが、左右に直径40mmほどのスピーカーユニットが埋め込まれています。このくらいのサイズだと高域は出てもも低域が弱いのが常識。ところが、音を出すとズンズンとかなりの低音が出るんですよね。もしかして、低音用にウーファーが入っているのかなと思って、宮崎さんに聞いてみると
「ウーファーは使っていません。中央部分がパッシブラジエーターとなっており、高周波溶着により完全密閉した空気を共振させることで、小型な筐体からは想像もつかない迫力のある重低音を作り出しています」とのこと。
2つのドライバの間にあるパッシブラジエーターで力強い低音を出している
見た目からその低音に驚かされるものの、サブウーファーのような無理やりな重低音というわけではなく、気持ちいい響き。いろいろな曲を聴いてみると、低域~中域~高域まで、かなりフラットな特性であることも分かってきました。これ、かなり使えそうですね。
今回試した機材はまだ試作のもので、USB接続およびDnoteの回路が別モジュールになっていた
「OVOでスピーカーを駆動するシステムにDnoteというものを組み入れました。これはDACを使わずにデジタル信号を元にそのままスピーカーに接続することが可能になっているのです。そのため、外部からのノイズの影響を受けることなく、音を出すことができるため、極めて高音質に音を出すことができます」と宮崎さん。
デジタルのまま直接スピーカーを駆動できるというDnote回路とUSB接続回路が1つになった基板
このDnote、Trigence Semiconductorという日本の会社が生み出した技術で、だいぶ以前に私もAV Watchで取材したことがありましたが、ようやく具体的な製品となって登場してきた、ということなんですね。
「いま、小さなスピーカーは、ほとんどがBluetooth接続となってきています。でも、圧縮ではないいい音を出したい、充電不要のデバイスが欲しい、ペアリング不要ですぐ使えるスピーカーがいい、遅延のないものがいい……といった声もよく聞きます。このOVOはそうしたニーズにお応えできる高音質なスピーカーだと自負しております。音楽鑑賞用としてはもちろんですが、たとえばHuluやNETFLIXなどの動画視聴用のスピーカーとしても、ベストマッチだと思います」と宮崎さん。
ちなみに、OVOはUSB Class Audio 2.0対応のデバイスであるため、ドライバなしですぐに使うことが可能です。ただし、対応しているのはWindows 10以上またはMacとなり、Windows 7やWindows 8だと使えないのでご注意ください。
Macの場合接続すれば、すぐにオーディオデバイスとして認識される ※製品版では表示内容が少し変わる
さて、そこで気になるのは、やはりこれをDTM用のモニタースピーカーとして使えるか、という点です。これはLINE INなど外部入力がないため、オーディオインターフェイスと接続することはできませんが、これ自体が出力専用のオーディオインターフェイスを兼ねるため、レコーディング不要であれば、よりコンパクトなDTM環境を構築できそうです。
MacのStudio Oneではまったく問題なく使うことができた
まずMacで試したところ、まったく問題なく使うことができました。USB接続すると、USB Audioとして自動認識されます。これを各種DAWから選ぶわけですが、たとえばCubaseやStudio Oneで試してみたところ、なかなか快適に使うことができました。
MacのCubaseでもバッチリ動作し、快適に使うことができた
24bit/44.1kHzのプロジェクトにおいて64Sampleで、ノイズも乗らずに使うことができ、Cubaseでは出力が3.515msec、Studio Oneでは2.47msecのレイテンシーと表示されている通り、まったく遅れなく使うことができますね。
では、Windowsではどうでしょうか?こちらも快適に使うことが可能ですが、うまく使うためにはちょっとしたコツがあるので、その点を紹介しておきましょう。
OVOはUSB接続すれば、ドライバ不要で即使えるという仕様であるだけに、ASIOドライバを使うことができません。その点ではWindowsでのDTMには不向きにも見えますが、今やCubaseもStudio OneもASIOなしでも、かなり快適に使えるようになっているんですよね。
Cubaseの場合であれば、Generic Low Latency ASIO Driverを使えばバッチリです。同様に、Studio Oneの場合はASIOではなくWindows Audioを選んでください。
Windows版Studio OneならWindows Audioを利用する
CubaseおよびStudio One以外ではASIO4ALLを利用しよう ※製品版では44.1~192kHz対応となる
Cubase、Studio One以外のDAWの場合は、フリーウェアのASIO4ALLを利用するといいでしょうASIO4ALLだと、バッファサイズを128Sample以上にしないと、やや厳しい感じですが、再生用途であれば問題ないですからね。
MacおよびWindowsのDAWから実際、音を出してみると、なかなかいいモニタースピーカーとして使えました。左右のスピーカーの幅が15cm程度となっているので、ステレオ分離よくリスニングするためにはスピーカーから50~80cmの範囲でいる必要がありますが、分解能も高く低音もしっかり出てくれるので、なかなかよさそうです。
自宅で利用できるのはもちろんですが、出先でしっかりした音で聴きたいという人にとっても、手軽に持ち歩けるので、重宝しそうですよ。
さらに、フルデジタルのスピーカーではありますが、ここに3.5mmのアナログ入力も装備されたので、オーディオインターフェイスほか、各種アナログ機器からの入力も受け入れることが可能になっています。ここでは、A/Dコンバータを搭載し、デジタルにしてからスピーカーに送るという、ちょっと珍しいシステムになっているようですよ。
今回、使ったのはスピーカー部と電子回路部分が分離されたプロトタイプでしたが、製品化された時点では、回路部分が内蔵されてコンパクトにまとまります。また、このユニットにはステレオのレベルメーターが搭載されているのもなかなかカッコイイところ。DTM用途においてもなかなかグッとくると思います。
とはいえ、中にはLEDのレベルメーターは邪魔だ、という人もいるかもしれません。そんな場合は設定で、レベルメーター表示させないようにしたり、白くLEDを光らせるといったことも可能です。その設定も、本体底面にあるシャトルスイッチを使うだけなので、簡単ですよ。
LEDの点灯の仕方は、ボトムにあるシャトルスイッチで変更することができる
Lightning-USBカメラアダプタおよびACアダプタを使うことで、iPhone/iPadとの接続も可能
以上、現在クラウドファンディング実施中の完全フルデジタルのUSBスピーカー、JDSoundのOVOについて紹介してみました。正式発売時には16,800円のものが、クラウドファンディング実施期間中に注文すれば、9,800円、10,800円、11,800円、12,800円(早く申し込むほど安く購入できる)という価格で入手することが可能なので、早めに入手しておくとよさそうですよ!
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