圧倒的な低レイテンシーを実現する2万円強のUSB 3.0オーディオインターフェイス、ZOOM UAC-2の実力

みなさんはオーディオインターフェイス選びで何を一番の決め手にしますか?入出力数や音質、大きさ、メーカー/ブランド、バンドルソフト、そしてもちろん価格……など、いろいろな要素があり、それを総合的に考えて決めると思いますが、「次に買うならレイテンシーにこだわりたい」、そう考えている人も少なくないのではないでしょうか?

数多くのオーディオインターフェイスが存在する中、とくにかく低レイテンシーを実現してくれるのが日本のメーカー、ZOOMUSB 3.0対応のオーディオインターフェイス、UAC-2です。発売されたのは2015年5月と3年以上前であるため、最近話題になることも少なくなりましたが、今でもレイテンシーにおいては右に出るものはほとんどないほど。価格もこなれて店頭の実売価格が2万円ちょっと(税抜き)と手ごろなのも嬉しいところ。改めて、これがどんなオーディオインターフェイスなのかを紹介してみましょう。
超低レイテンシーなオーディオインターフェイス、ZOOM UAC-2

UAC-2はハーフラックのコンパクトな2IN/2OUTのオーディオインターフェイスです。ユニークなのは、これがUSB 3.0対応のオーディオインターフェイスである、という点。現在数多くのメーカーからオーディオインターフェイスが発売されていますが、いち早くUSB 3.0したのがUAC-2であり、現在もUSB 3.0対応のものは少ないので、ちょっと珍しい製品ともいえます。

UAC-2のリアパネル。バランス対応のステレオ出力とMIDI入出力のシンプルな構成
USB 3.0で接続するには専用のUSB 3.0ケーブルが必要であり、PC側も青い色のUSB 3.0端子に接続することが必要。UAC-2にもUSB 3.0ケーブルが付属していますが、そもそも普通のUSB 2.0/1.1とは端子形状が異なるので、見るとわかりますね。
接続はUSB 3.0ケーブルを利用する。電源はUSBバスパワーで動作する

もっともUAC-2は絶対にUSB 3.0での接続が必要というわけではないのもちょっと面白いところ。そう黒いUSB 2.0端子に接続し、一般のUSB 2.0ケーブルで接続しても使うことができるんですよ。ただし、レイテンシーの面でギリギリまで追い込むのであれば、USB 3.0接続するほうが性能が出せるので、やはりUSB 3.0接続がお勧めであることは間違いありません。

PC側も青いUSB 3.0端子に接続する
では、実際にどのくらいの性能が出せるのか。以前にもテストしたことがありましたが、最新のファームウェアである1.10にアップデートした上で試してみた結果が以下の通りです。
サンプリングレート192kHzでは1.24msec

サンプリングレート96kHzでは2.21msec

サンプリングレート48kHzでは3.31msec

サンプリングレート44.1kHzでは3.61msec

お分かりになるでしょうか?192kHzのサンプリングレートにおいては1.24msec、96kHzで2.21msec、48kHzで3.31msec、44.1kHzで3.61msecと一般的なオーディオインターフェイスの半分程度の値を叩き出してくれています。

ファームウェアを1.00から1.10にアップデートした上で実験を行った

「これ、どういう意味?」という方もいると思うので、改めてレイテンシーの測定について簡単に説明しておきましょう。ここで使ったのはCEntranceというメーカーが出しているWindows用のASIO Latency Test Ulitiltyというフリーウェア。誰でもダウンロードして使えるので、興味があればお手持ちのオーディオインターフェイスで試してみるといいと思います。

理論値を表示するCubaseのオーディオインターフェイス設定画面

CubaseなどのDAWでもバッファサイズを設定するとレイテンシーが表示されますが、ここに表示されるのはあくまでも理論値。でも実際にはほかにもいろいろな要素があり、実際にはもっと遅れるので、それを実測するのがこのツールなんですね。これをテストするためには、入力と出力をケーブルで接続した上で「Measure!」ボタンを押して測るのですが、要するに出た信号が入ってくるまでどのくらいの時間がかかるのかを測定するわけです。つまりこれによって往復で何msecかかるのか、それが何サンプル分なのかを見ているわけです。

ZOOM UAC-2にはCubase LE 9がバンドルされているのも魅力の一つ

ちょっと話が難しくなりましたが、実際にDAWを使ってレコーディングしたり、ソフトウェア音源を鳴らす場合、オーディオインターフェイスのレイテンシーがある分、モニター音が遅れて出てきます。これが大きくなると、非常に気になって使いにくくなるので、レイテンシーはなるべく小さいものが望ましいのですが、どこまでレイテンシーを詰められるのかはメーカーの技術力次第。ここにはハードウェアの設計能力とドライバーの設計能力の両方が必要になってくるのですが、ZOOMはとっても優秀ということですね。

このCEntranceのツールがWindows専用で、Macでは試すことはできなかったのですが、ZOOMによれば、Macでもほぼ同等の性能を発揮してくれるとのこと。ただしMac版のCubaseで96kHzでの設定を確認してみると、入力レイテンシー、出力レイテンシーともに、Windows版とは少し異なる値にはなっているようでした。
MacのCubase上でも理論値が表示されるがWindowsとは少し違う結果に…

ところで、どうしてZOOMのUAC-2では、ほかのオーディオインターフェイスよりレイテンシーを小さくすることができるのでしょうか?実は、ここには他社とは少し違うテクノロジーを使っているからなのです。

詳細は以前、私が書いているインプレスのAV Watchの連載記事「USBオーディオ伝送の違いで音が良くなる? Bulk Petはどんな技術なのか」で紹介しているので、そちらをご覧いただきたいのですが、ドライバ部分は日本の開発会社、インターフェイス株式会社とZOOMが共同開発を行っており、ここにBulk転送という方式を採用したことで実現していたんです(一般のオーディオインターフェイスはIsochronous転送が使われています)。ここでは、これ以上難しい話をするのは避けますが、こうした技術によって超低レイテンシーを実現していたのです。

その後Bulk Petと名付けられた技術のベースとなるBulk転送方式が用いられている

ややオカルトチックな話をすると、Bulk転送にすると音が少し変わって良くなるのだとか……!?この辺もここでは深追いは避けますが、興味のある方は試してみると面白いと思いますよ。そう、このUAC-2のリアパネルにはCLASS COMPLIANT MODEというスイッチがあり、通常はこれをOFFにして使い、この場合Bulk転送になります。しかし、ONにするとIsochronous転送になるので、レイテンシーも音も変わるというんですね。

CLASSCOMPLIANT MODEのスイッチでBulk転送とIsochronous転送の切り替えができる

ただしWindowsの場合、CLASS COMPLIANT MODEをONにするとASIOドライバが使えなくなるので、DTMには使えません。Macの場合は、ONでもCoreAudioドライバが使えるので、レイテンシーの違いは実感できると思います。さらに、これをONにすることでiPhoneやiPadで利用することができるというのもポイントですね。

USB-Lightningアダプタと別売のACアダプタは必要となるがiPad/iPhoneとも接続可能

なお、WindowsおよびMacで使う場合、ドライバのほかに、UAC-2 MixEfxというツールもインストールして利用します。これはUAC-2のすべての機能をコントロールすることができるソフトであり、入力部のHi-Z(ギター入力)対応の設定やローカットの設定、位相の反転やファンタム電源のON/OFFといった設定はもちろん、ループバックの設定、さらには内蔵DSPによるリバーブの設定などもできるし、その設定を最大3つまでメモリーしておくこともできるんですね。
UAC-2のすべてをコントロールできるUAC-2 MixEfx
このリバーブについては、基本的にモニター用であって、DAWにレコーディングするためのものではありません。とはいえ、PC側の負荷なしに、ボーカルレコーディング時などにリバーブを返せるというのは便利に使えるところですね。

とはいえ気になるのは、「で、音はどうなの?」という点。私個人的な感想でいえば「何のクセのない音」。悪く言えば「そっけない音」、よく言えば「非常にクリアな音」といえます。よく「いかにも〇〇で録った音だよね」なんて表現をすることがありますが、そうしたクセが何も付かない透明な音なんです。だからこそ扱いやすく気に入っているオーディオインターフェイスでもあります。

これだけの性能をもった機材が2万円ちょっとで入手できるのですから、いい世の中になったものですよね。なお、18IN/20OUTを装備するUAC-2の上位機種、UAC-8というものもあり、レイテンシーにおいてはほぼ同じとなっています。価格も52,000円程度と手ごろなので、より多くの入出力が必要な場合は、UAC-8を選ぶのがよさそうですね。

【価格チェック】
◎Rock oN ⇒ UAC-2
◎Amazon ⇒ UAC-2
◎サウンドハウス ⇒ UAC-2
◎Rock oN ⇒ UAC-8
◎Amazon ⇒ UAC-8
◎サウンドハウス ⇒ UAC-8

【関連情報】
UAC-2製品情報
UAC-8製品情報

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Commentsこの記事についたコメント

3件のコメント
  • ココロブサイク

    たまに楽しく拝見しています。
    質問なのですが、レイテンシーが早い事は良く分かったのですが測定時に「設定はできるけどレコーディングでは使えないレベルのプチノイズ」などは発生していないのでしょうか?

    2018年9月18日 5:58 PM
  • sugi8936

    初めまして。いつも製品レビュー拝見させて頂いております。藤本様がご使用されました、zoomのオーディオインターフェイスUAC-2につきまして何点かお聞きしたいのですが、現在購入を検討しておりアコースティックギターを接続しiPad のDAWにてエフェクトかけライブ等でPAスピーカーから出力したいと考えおります。この場合レイテンシーの問題があるかと思いますが、この製品は非常にレイテンシーが低い製品なのですが実際ライブ会場で出力した場合、演奏には支障無い程度の遅延でしょうか?

    2019年5月12日 12:39 PM
    • 藤本 健

      sugi8936さん

      こんにちは。UAC-2が低遅延で大きな威力を発揮するのは、ドライバとの組み合わせによってです。つまりWindowsやMacにドライバを入れて使った場合であり、USB
      クラスコンプライアントのオーディオインターフェイスとして、iOSで使った場合、そこまでレイテンシーは小さくならないと思います。実測していないので分かりませんが、10~20msecのレイテンシーはあると思ったほうがいいでしょう。おそらく、ほかのオーディオインターフェイスを使うより、レイテンシーは小さいですが、その程度のレイテンシーというかディレイがかかった音がモニターされる、と考えるいいと思います。もっとも10msec程度であれば、3m離れたアンプから音を出しているのと同じ感覚なので、慣れれば演奏に支障はないと思いますが…。

      2019年5月12日 1:04 PM

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