VST3、VST2、AAX、Audio Unitsと何でも動かせるプラグインコンバーター、Blue Cat’s PatchWorkの威力

ご存じのとおり、エフェクトやインストゥルメントをDAWに追加するためのプラグインにはいくつかの規格が存在しています。主なものとしてVSTAudio UnitsAAXがあり、ひとことでVSTといっても従来からのVST2と現在主流のVST3があり、プラグインによっては片方しかサポートしていない……といったことも多くあります。またSteinbergがVST2のサポート終了を打ち出すなど、規格自体も移り変わってきています。そうした中、どんなプラグイン規格であっても、間を取り持って変換してくれる便利なソフトがあります。それがBlue Cat Audioが出すBlue Cat’s PatchWorkというWindowsでもMacでも使えるソフト。

このBlue Cat’s PatchWork自体もプラグインの一つなのですが、これを介すことで、まったく別の規格のプラグインを扱うことが可能になるのです。そのため「このプラグイン、VST版しかないのでLogic Pro Xで動かせない」、「Pro ToolsだとAAXしか動かせいないから……」といった問題も解決できるし、Blue Cat’s PatchWork自体がスタンドアロンで起動するためDAWなしでソフトシンセを起動して使う…といったことも可能になるのです。そのBlue Cat’s PatchWork、あまりセール展開されることがないのですが、5月いっぱいはクーポンを使うことでわずかではありますが10%オフが適用されるようになっています。

VST3にしか対応していないCeVIO Pro (仮)をBlue Cat’s PatchWork経由でLogic Pro Xで動かすことができた

実はこのBlue Cat’s PatchWork(以下PatchWork)については、8年も前に「VST、AU、AAX、RTAS…何でも来い、Blue Cat PatchWorkが超便利!」という記事で紹介したことがありましたが、2017年12月のV2.0としてメジャーバージョンアップし、機能も大きく変わっています(旧バージョンのユーザーは有償にてバージョンアップ可能)。その後も頻繁にアップデートを繰り返し、最新バージョンは2.52となり、M1 Macにもネイティブ対応する強力なソフトへと進化しています。そこで、改めて最新のPatchWorkの機能について紹介していきましょう。

Mac版のインストーラは1種類、Windows版はシチュエーションごとに8種類が用意されている

このPatchWorkはMac、Windowsのハイブリッドで提供されているソフトですが、Mac版はインストーラーが1つで、全機能がインストールできる仕様になっている一方、Windows版は環境に環境に応じて8種類ものインストーラに分かれています。たとえば先日リリースされたPro Tools 2022.4でVSTのプラグインを使いたいのならWin-x64 AAXを、Cubase AI 12で多くのプラグインを立ち上げたいならWin-x64 VST3を、またDAWを使わずスタンドアロンでプラグインを使うのならWin-x64 App(Standalone)をインストールする…といった形になります。

GarageBandの1つのトラックに2種類のインストゥルメントをレイヤーしてみた

たとえばLogic Pro XやGarageBandの場合、基本的にAudio Unitsのプラグインしか使えないため、数多くあるVSTのみに対応したプラグインが利用できず、歯がゆい思いをしてきた方も多いと思いますが、このPatchWorkを使えば、簡単にVST2でもVST3でも使えてしまいます。

使い方は簡単。まずDAWからプラグインとしてPatchWorkを読み込みます。その後、PatchWorkから目的のプラグインを読み込んで立ち上げればOKなのです。

Pro Tools上でもCeVIO Pro (仮)を動かすことができた

先日「WindowsはもちろんMacでも使え、DAW上のVSTiとしても動作するCeVIO Pro (仮)がα版として無償配布開始」という記事で話題になったCeVIO Pro (仮)もVSTのみのサポートですが、PatchWorkを介すことで、Logic Pro Xなどで動かすことはもちろん、Pro Toolsで動かすことも可能でした。

Pro Tools上で、Synth 1やDexedを動かすことができた

このようにPatchWorkを使うことで、プラグイン規格間を乗り越えることが可能なのですが、この際、エフェクトを使うのが目的であれば通常のPatchWorkを、インストゥルメントを使う場合はPatchWork Synthというシンセ版を起動するようにしてください。通常版は外部サイドチェイン入力を持っているのが特徴で、シンセ版のほうは外部へルーティングするための複数の出力バス(最大16ch)を装備しているのがポイント。つまりドラム音源などでパラアウトして別々にエフェクトを掛けたい…といった場合にPatchWork Synthが役立つわけですね。

シンセ版のPatchWork(上)とエフェクト用の通常版のPatchWork(下)

通常版なのかシンセ版なのかは起動した際の画面右側のメーター表示を見れば確認できます。もっとも違いはサイドチェイン入力を持っているか、パラアウトができるかだけであり、ほかは同じなので、普通の使い方であれば、通常版でもシンセ版でも同じように使うことが可能です。

このPatchWorkの画面を見てもわかる通り、プラグインを組み込むスロットがいっぱいあるのが大きな特徴となっています。以下の画面がそのいっぱいのスロットにどのように信号が流れるかを示したものです。

信号はPREからPARALLEL CHAINSを経由し、POSTを通って出力される

各スロットにエフェクトを挿していくことができるのですが、画面左側のPREが縦に直列にプラグインを並べていくことができる部分。ここから中央にあるPARALLEL CHAINSで並列に展開され、それがまとまった上で画面右のPOSTへと信号が流れ、ここで再度直列にプラグインを通していくことができるのです。

これを見るとPREで4つ、PARARELL CHAINSで4つに並列されながら2つずつ、そしてPOSTで4つの計16個のプラグインを同時に使うことができる形になっています。これだけでも十分すぎる気はしますが、設定を変えることで、最大64個ものプラグインを一度に使うこともできるんですね。

最大で64個のプラグインを使うことができる

まあ、それだけのマシンパワーがあるかどうかにかかってくるわけですが。実はこのことがDAWによっては大きな意味を持ってきます。たとえば、Cubase AIの場合、1つのオーディオチャンネルにさせるインサートエフェクトのスロットが4つまでとなっていますが、PatchWorkを使えば、Cubase側からは1つのエフェクトを使っているとみなされ、ここに最大64個ものエフェクトを入れることができるわけですから、すごい拡張機能を持っていることになります。

PatchWorkの中に33種類のエフェクトが内蔵されている

さらに実はPatchWork自体に33種類ものエフェクトが装備されています。コンプ、EQ、リバーブ、コーラス、フランジャー、ディレイ…と一通り何でも揃っています(ディストーションやアンプシミュレーター系は入ってないようですが…)。どれもすごく軽くていいエフェクトなので、これはこれで便利に使えると思います。ちなみに33種類のエフェクトのうち2つがPatchWorkとPatchWork Synthとなっているので、これを使えばさらにエフェクトのスロットを増やすことが可能ということですね。

PatchWorkの中にPatchWorkを組み込んで、さらに使えるプラグイン数を増やすことも可能

一方プラグイン・インストゥルメントを楽器として使用したい…、という人にとって便利なのがPatchWorkをスタンドアロンで起動させることが可能なことです。つまりDAWを一切利用せずPatchWorkを起動させることで、ここに直接プラグインであるインストゥルメントやエフェクトが利用できてしまうのです。この際、利用するオーディオインターフェイスやMIDIデバイスを指定できるから、WindowsやMacをまさに楽器として使ったり、エフェクトとして利用することが可能になるわけです。ライブのステージ上でプラグインを演奏したい、といった場合、非力なノートPCであっても比較的軽く、安定して動作してくれるので、かなり便利に使うことができます。

DAWを使わず、PatchWork上でソフトシンセやエフェクトを動かすことができる

この際、並列のスロットに複数のインストゥルメントを並べてレイヤーして演奏することもできるし、その後段にエフェクトを入れて使うのもあり。また、そのように設定した結果をプリセットとして保存することもできるので、いろいろ便利に使えると思います。

スタンドアロン環境でもシンセのレイヤーを組んで使うことができる

なお、万能に見えるPatchWorkではありますが、できそうでできないことが2つあったので、それについても書いておきますね。

1つは64bitのDAWに32bitのプラグインを読み込むことができない、という点。いま需要は減ってると思いますが、古い32bitのプラグインをどうしても現在の64bitのDAWで動かしたいという場合に、PatchWorkが使えるのでは…と期待してしまったのですが、これはできませんでした。開発元のBlue Cat Audioのブログを見たところ、32bit/64bit変換をすると、非常に無駄な負荷がかかり安定性が損なわれるということであえてサポートしてないようですね。

もう1つ、同様の制限があるのがM1 Macについてです。昨年11月にPatchWorkがVersion2.51になった時点でM1ネイティブ対応したのアナウンスがあったので、これでM1 MacでIntel CPU用のVSTプラグインも使えるようになったのでは、と期待したいのです。ご存じの方も多いと思いますが、CubaseやStudio One、Ableton Live、Bitwig Studioなどが次々とM1ネイティブ対応していますが、M1ネイティブで動かすと、Intel CPUのVSTプラグインが使えなくなってしまいます。Audio UnitsにおいてはIntel版も動かすことができるのですが、ここがネックです。それをPatchWorkで乗り越えることができるとベストなのですが、現時点うまくいきません。開発元のBlue Cat Audioに聞いてみたところ、やはり「Audio Unitsは使えるけれど、VSTは現時点サポートしていない」、とのお返事。ぜひ、ここは今後のバージョンアップでの対応を期待したいところですね。

以上、Blue Cat AudioのBlue Cat’s PatchWorkについて紹介してみました。ぜひ、誰もが持っておいて損のないプラグインだと思います。なお冒頭でも紹介したとおり、PatchWorkはセールがあまりないソフトではありますが、以下のクーポンコードを利用することで5月末まで10%オフで購入することが可能です。

クーポンコード: DTMPATCH10
割引後価格:12,370円(税込)円→11,133円
有効期限 : 2022年5月31日(火)まで
利用方法 : 以下のページから商品をカートに入れた後に、クーポンコードを入力してください。
販売ページ :Blue Cat’s PatchWork

ぜひ、この機会に入手してみてはいかがでしょうか?

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Blue Cat’s PatchWork製品情報

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◎beatcloud ⇒ Blue Cat’s PatchWork

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