MS-20やSQ80も登場!32種類のシンセをパックにしたArturiaのV Collection 9が発売開始

5月11日、フランスのArturiaから同社20年の歴史の集大成ともいえるソフトシンセの全部入りパック、V Collection 9が発売されました。ここには新たに登場したKORGのアナログシンセ、MS-20を再現するKORG MS-20 VやENSONIQのSQ80を再現するSQ80 Vのほか、エミュレーションではないまったく新たなシンセとしてAugmentedシリーズというものも2種類登場しています。

これまでArturiaが培ってきたアナログシンセを忠実にエミュレーションするというTrue Analog Emulation (TAE) 技術を用いた各種音源から、物理的モデリングによるピアノ音源や、ハイブリッド弦楽器まで32種類のインストゥルメントを搭載した形になった強力な製品になっています。価格はオープンプライスとなっていますが、発売記念のINTROセールが開催されており2022年5月25日まで49,800円(税込)となっています。そのV Collection 9を一足早く使うことができたので、少し試してみました。どんな製品なのか紹介してみましょう。

Arturiaから32種類の音源がセットになったV Collection 9が発売された

32種類のソフトウェア音源を収録

Arturiaは創業して間もないころにMOOG Modular IIIをソフトウェアで再現するMOOG Modular V(現在はMoogからの公認がなくなり、3番目のバージョンとことで、Modular V3)をリリースしたのを皮切りに、Prophet-5やJupiter 8、DX7、Fairlight CMI、Emulator II……と数々のビンテージシンセを忠実にソフトウェア化してきたメーカーであり、DTMの世界に大きな革命を起こしてきた企業ともいえます。

V Collection 9のパッケージ

そのArturiaが、これまで出してきたインストゥルメント、ソフトウェアシンセをすべてまとめてパックにした製品をV Collectionとして出してきたわけですが、その新バージョンとして今回リリースされたのがV Collection 9です。
手元のインストーラー(Arturia Software Center)で確認する限り、このV Collection 9に含まれているインストゥルメントは以下の33種類。

Analog Lab V
ARP2600 V3
Augmented STRINGS
Augmented Voices
B-3 V2
Buchla Easel V
Clavinet V
CMI V
CS-80 V4
CZ V
DX7 V
Emulator II V
Farfisa V
Jun-6 V
Jup-8 V4
KORG MS-20 V
Matrix-12 V2
Mellotron V
Mini V3
Modular V3
OB-Xa V
Piano V3
Prophet-5 V
Prophet-VS V
SEM V2
Solina V2
SQ80 V
Stage-73 V2
Synclavier V
Synthi V
Vocoder V
Vox Continental V2
Wurli V2

プレスリリースなどを見ると32種類となっており、その文面からはProphet-5 VとProphet-VS Vを1セットとしてカウントしているようなので、それを別で数えれば33種類ということなのだと思います。いずれにせよ著名なビンテージシンセは片っ端から揃っている感じです。

VST2/3、AU、AAX、スタンドアロンが用意されている

また、Windows、Macハイブリッドで、VST2、VST3、AU、AAX、そしてスタンドアロンで使えるほか、Native InstrumentsのKOMPLETE KONTROLでも動作するNKS対応となっています(Analog LabのみNKS非対応)。

インストーラーでThird Party Resourcesにチェックを入れることでNKSにも対応

KORG MS-20を再現するKORG MS-20 Vが誕生

そのV Collection 9の中で今回のバージョンの目玉となるのがKORG MS-20 Vです。そうKORGが1978年に発売したアナログのセミモジュラーシンセの名機。すでに本家であるKORGがKORG Collectionの一つとしてソフトウェア化しているので、どこまでのニーズがあるかは分かりませんが、それとはまったく別開発の製品としてリリースしたわけです。

新たに登場したKORG MS-20 V

ご存知の方も多いと思いますが、現在Arturia製品は、KORGが輸入代理店となっているので、この二社は協力関係にあり、だからこそKORG MS-20 VとKORGの名称が入った公認ソフトとなっているようです。

各ケーブルをマウス操作でパッチングしていくことができる

実際試してみると、ちゃんとケーブルのパッチングもできるようになっているし、各パラメーターを動かすと、まさにMS-20という感じで音が変化していきます。また昔MS-20用に出ていたシーケンサSQ-10を再現させた機能も搭載。SQ-10を忠実に再現というよりは、SQ-10風のより使いやすいステップシーケンサになっているようです。

SQ-1風だけど、より高機能で扱いやすい形になっているシーケンサ機能

さらにエフェクトもFX1~FX4と4系統搭載しており、それぞれにディレイ、ディストーション、コンプ、リバーブ…と16種類の中から設定が可能で、4つを直列につなぐことと2つずつの並列で接続することも可能になっています。このエフェクトなどは、完全にArturiaのオリジナルですが、本家KORGによるKORG Collection MS-20とどっちが本物に近いか、試してみると面白いかもしれませんね。

エフェクトも4系統搭載されている

もう一つ搭載されたのがEnsoniqのSQ80 V。これはすでに昨年9月に発表され、単品では発売されていたので、ご存知の方も多いと思いますが、これはEnsoniqがESQ-1の後継として1988年ごろ発売したクロスウェーブシンセ、SQ-80を忠実に再現すると同時にさまざまな機能を搭載したもの。波形データをフロッピーディスクで保存できる形になっていたので、画面左側にフロッピーディスクが見えますが、ここを触っても特にギミックなどは施されてないようですね。

昨年発売されたSQ 80 VもV Collection 9に収録された

そのSQ-80オリジナルの機能に加え、16音ポリでの発音機能、アルペジエーター、ユニゾンモード、Mod Filter、ディスパーションモード、MPE対応などなどさまざまな機能が追加されているのも面白いところです。

新音源Augmented STRINGSとAugmented Voicesが登場

そして、もう一つ、今回のV Collection 9での大きなトピックスが新音源Augmentedシリーズとして、Augmented STRINGSとAugmented Voicesの2種類が搭載されたこと。これまでV CollectionというかArturiaは、既存のビンテージシンセを復元することを主眼として製品開発をしてきたわけですが2018年にPigments、Piano Vというオリジナル音源を開発し、多くの評価を受けてきました。そのPigmentsは先日Pigmentsになり、今回Piano V3へとバージョンアップを果たしているのですが、それに加えた新シリーズが誕生したのです。

まったく新たに誕生したストリングス音源、Augmented STRINGS

そのAugmentedシリーズはV Collection製品の中では唯一鍵盤を持たないシンセであり、ノート1つを入力したり、コードを入力するだけで、音楽を作り出してくれるといった感じの音源。試しにAugmented STRINGSを使い、全音符で4つのコードを鳴らしてループさせた状態で、いくつかのプリセットを鳴らしたりパラメータを動かしてみたので、以下のビデオをご覧になってみてください。

こんな感じドとミは4小節鳴らしっぱなしで、一番高い音だけを動かしているのですが、いい雰囲気で鳴ってくれるます。ストリングス系の音色がメインではあるけれど、オルガンやリード、パッド……といろいろなシンセ音色も揃っています。

Advanced画面に入るとシンセの各パラメーターを調整していくことができる

またここでは表に出ているMORPHという大きいノブを使って、異なる音色間をモーフィングさせているほか、Colorというパラメータで音の雰囲気を変化させたりFX A,Bでエフェクトを掛けたりといじってみましたが、右上のAdvancedというボタンを押すと画面が切り替わり、シンセとして細かく音色づくりができるようになっています。

LFOも2系統が装備されている

オシレーター、フィルター、エンベロープといったパラメータが動かせるのはもちろん、LFOも細かく調整できたり、シーケンサも内蔵。数多くのエフェクトも搭載されていて、自由にFX A、FX Bのそれぞれに割り当てられるなど、シンセとしても優れています。

細かなエディットも可能な強力なシーケンサも搭載されている

もう一方のAugmented Voicesのほうも使い方は基本的に同じですが、こちらはボイス系のシンセサイザになっています。といってもVOCALOIDやSynthesizer V、CeVIOといった歌声合成ではなく、声をサンプリングした音を元にコーラスのような感じで鳴らすための歌声音源。クワイヤーなどとして使うシンセサイザとなっているのです。

ボイス系の音源であるAugmented Voices

どう使うかはアイディア次第ではありますが、既存のV Collectionとはずいぶん違う音源として利用できるので、制作の幅も広がりそうです。

物理モデリングのピアノ音源、Piano V3やProphet-5 Vも刷新

12種類の物理モデリング音源が収録されているPiano V3

これら新音源だけでなく、前述の通りPiano VがPiano V3となっており、ピアノを鳴らすための物理モデリングを一新しているとのこと。ここには日本のグランドピアノなどを含め12種類のピアノ・モデルを搭載しており、実際に試してみても軽いのに、非常にリアルなピアノサウンドを鳴らすことができました。

まったく新たに作り直されたというProphet-5 V

さらにシンセファンにとって嬉しいのはProphet-5 V、Prophet-VS Vもよりリアルに再現するためにプログラムをゼロから作り直しているようです。またCS-80 VにおいてはDSPモデリングを一新したまったく新しいサウンドエンジンへと進化しているとのことです。

ProphetーVS Vもリビルドされている

以上、Artuiraが発表したV Collection 9について紹介してみました。冒頭でも触れた通り、5月25日までINTROセールが展開されているので、気になる人は早めに検討してみるとよさそうです。

【関連情報】
V Collection 9製品情報

【価格チェック&購入】
◎Rock oN ⇒ V Collection 9
◎宮地楽器 ⇒ V Collection 9
◎OTAIRECORD ⇒ V Collection 9
◎Amazon ⇒ V Collection 9
◎サウンドハウス ⇒ V Collection 9