• DOTEC-AUDIOが6年の試行錯誤の末にたどり着いた、理想のマキシマイザをDeeMMaxのアップデートで実現

一世を風靡したDOTEC-AUDIO(ドーテック・オーディオ)のレバーをグイっと持ち上げるだけで音圧を思い切り上げることができるマキシマイザ、DeeMaxが発売されて6年。これまで、マスタリング専用の高音質マキシマイザDeeMMax、SNSや音楽ストリーミングサービスでカッコよく音を聴かせるマキシマイザDeePopMax、DeeMaxシリーズのフラグシップモデルにあたるDeeMaximizerがリリースされてきました。

これらのプラグインを開発してきたDOTEC-AUDIOのフランク重虎さんは、最初のマキシマイザDeeMaxを開発しているときには、すでに理想とする最高のマキシマイザのイメージがあったそうですが、それをどう実現すればいいか、ずっと試行錯誤を続けてきたのだとか。そして、ようやくその理想としていたマキシマイザがついに完成したというのです。この6年間で培った、経験、知識、アイディアを総動員させたエンジンを完成させ、それをDeeMMaxに搭載したとのこと。今回、新製品としてではなく、DeeMMaxのV3.0.0へのアップデートという形での提供であるため、すでにDeeMMaxを持っている方であれば、無料で使うことが可能。そんな新発明の威力を試すとともに開発をしたDOTEC-AUDIOのフランク重虎さん、飯島進仁さんにお話しを伺ったので紹介していきましょう。

マキシマイザの完全形。6年間の構想の末に完成させたエンジンをDOTEC-AUDIO DeeMMaxに搭載


新バージョンとなるDeeMMax V3.0.0は、デザインは大きく変わってないですが、Mという文字が金色になったので、これで最新バージョンか判断することができます。

DeeMMax旧バージョン(左)と新バージョン(右)。見た目はまったく同じだが真ん中のMが黄色くなったのが唯一の違い

今回のアップデートの特徴として、
アルゴリズムを完全に別視点から新開発し、ピーク耐性が飛躍的に向上しました。これにより従来にないレベルでリダクション感を感じさせないマキシマイズが可能になりました。またロングリリースの歪みにくさとショートリリースの原音維持を両立したので、マキシマイズされている事が分からないほどの原音維持が可能です。音に味付けがなく、苦手な音源が無いのもDeeMMax V3.0.0の特徴です」とのこと。

DOTEC-AUDIO開発者のフランク重虎さん

一般的にマキシマイザは音に味付けがあるとともに、得意不得意があります。そして不得意な音源だと、音圧を上げようとしても音が割れてしまって思うように上がりません。一方DeeMMaxは味付けがないので、これまでも他のマキシマイザーと比較して音圧を上げやすく、私自身も愛用していたのですが、それでも不得意な音源はあり、思うようにいかないケースもありました。

しかし、今回のアップデートで、不得意を克服したので、ほとんどの音源において、期待通りの音圧を得られるようです。ほかのマキシマイザと組み合わせば、それらが苦手とした音源も味付けだけを活かして、音圧を上げることができるとのこと。なので、いつも自分が使っているマキシマイザを活かしたまま、さらに音圧を稼ぎたいときに、後段でDeeMMaxを使って持ち上げる、というワザが使えるわけです。そのため、たとえばiZotopeのOzoneとか、FabFilterのPro-L2、SonnoxのInflator V3など、今使っているお気に入りのマキシマイザを利用しつつ、それを置き換えるのではなく、その後に追加する形でも使えるので、最終兵器という意味で持っておく価値は大きいと思います。

一方で、いわゆるTruePeak処理を行うプラグインとして存在していたDeeTPを、このDeeMMax V3.0.0の中に統合した、とのこと。

TruePeak処理自体も完全に新しく作り直して、DeeMMaxに統合しました。詳しくは言えないですが、DeeMMaxの後段に統合したのではなく、同時処理させることによって、より良好な結果を出しています」と重虎さん。

実際どのようなエンジンになっているか知りたいところですが、そこは企業秘密とのこと。ただ、他社製のマキシマイザとの比較実験の結果は提供していただけたので、これについて見ながら、どう違うのかを見ていきましょう。

ここは、あえて最短リリース(DeeMMaxは0.1ms)に揃えた最も歪みやすいシビアコンディションで比較をしています。というのも、リリースが短い状態でピークを圧縮すると、そのたびにリダクション量が大きくなり、変化が急になるからです。一方でリリースが長いとゲインリダクションを長く保持することになり、再度ピークを圧縮する際のリダクション量の変化が小さくて済みます。ただし、常にリダクションが掛かり続けるため、音圧は上がりにくくなるのです。

なお、比較実験で使用しているマキシマイザAとマキシマイザBは、すべての実験で共通の製品を使用しています。また、AとBのいずれも、プロも使う定番の製品で、世の中的に評価の高いマキシマイザを使っているとのことです。

比較1 左右で位相差が大きくレベル差もある波形を+18dBゲインした場合

Aはうまく処理されているが、Bは位相差につられてゼロクロスでゲインが乱れている。
DeeMMaxはAのよさに加えて片チャンネルがゼロからの立ち上がり部分も早く追従している

比較2 矩形波からレベル違いのサイン波へスイッチした波形を+18dBゲインした場合

Aは波形の乱れはないが、サイン波へのスイッチが間に合ってない。これはショートリリースに設定してもRMSが大きい時に自動で長く再設定されているから。矩形波はRMSが非常に大きくなるため、その影響を長く引きずっている。またTruePeak処理が過度に働き全体のゲインが上がりきっていない。
Bは均等にゲインされているが、サイン波が飽和している。スイッチ部分は矩形波に置き換えられている。
DeeMMaxはリリース設定どおり、かつ破綻させずにゲインリダクションされている。

比較3 ZOOM F3でフィールドレコーディングした32bit floatデータのピーク処理をした場合

Aは最大ピークを処理しているが、Bは破綻が大きい。
DeeMMaxは元の音量をキープしながらピーク箇所だけノーマライズした波形に最も近い。

比較4 リバーブが深く歪みやすい音源をシビアコンディションで比較。すべて+15dB。
(WAVデータはすべて24bit/48kHz)

Aは綺麗に処理されているが、ピークに若干サイドで歪みがある。
Bはリバーブ成分がピークで歪んでしまっている。
DeeMMaxはまだ余裕がある。

 

4つの比較実験を見てきましたが、比較3にもあるようにZOOM F3の32bit floatデータにも使えるのも、まさに最新のプラグインという感じ。32bit floatの大きなピークを持つフィールドレコーディングデータを、空気感を変えずに処理できるプラグインは非常に少ないので、この処理に使うだけでも価値がありそうです。

一方、比較4の楽曲は、「10月31日開催のM3-2021秋に参戦!今回は朗読劇『空の欠片の深いあお。』のサントラにチャレンジ。劇伴制作の裏舞台公開」という記事でも紹介したことのある「空の欠片の深いあお。Original soundtracks」の中にある青木俊明(@syun_0321)さんが作ったトラック15「KirikaCheckSix_PfMelo」の一部。

2021年秋にDeeMMax V2を用いてマスタリングしたサウンドトラック「空の欠片の深いあお。Original soundtracks」

実は、このサウンドトラックはすべてマスタリングを私が担当したのですが、その際に、できる限り原音の雰囲気を残したまま、音圧をCDレベルとして上げるとともに、聴感上22トラックのレベルが揃うようにするために、DeeMMaxの前バージョンを使っていました。操作も簡単で思い通りに音圧アップを実現できていたのですが、1つ問題が発生していました。

それが、このトラック15「KirikaCheckSix_PfMelo」でした。DeeMMaxで上げようとしても、少し上げただけで音が歪んでしまうのです。ほかにもさまざまなマキシマイザを試してみたのですが、どれも同様で、その中ではDeeMMaxが、比較的よいという状況でした。聴いてわかる通り、アコースティックピアノに思い切り深いリバーブをかけた音であり、マキシマイザにとっては非常に苦手な音らしいのです。そのタイミングで、重虎さんにも相談していたのですが、当時は解決できず、どうしようもありませんでした。

ですが、それが今回のアップデートで完全解決できたのです。このようなリバーブの深い音源のマスタリングに困っているのであれば、DeeMMaxを使う価値は大いにあると思います。

また以前のバージョンと現バージョンのDeeMMaxでどれだけの違いがあるかを示すのが以下のものです。

新旧比較
マキシマイザに共通して処理しづらい条件となる、ほぼ同一の波形で左右に位相差があり断続した音(深いリバーブ成分など)を+18dBいっぱいまでゲインを加えて視覚的にわかりやすくして比較した場合。

旧バージョンでは矢印で示した箇所に意図しない倍音が発生し、歪み音の原因となっている。

なお、DOTEC-AUDIOには、4つのマキシマイザが揃っているので、あらためてその特徴をおさらいしておきましょう。

・DeeMax
低音がどっしりした太い音が特徴で、軽量なので各トラックでの音圧上げにも最適。
ドラム、ベース、リードなどの存在感アップが大得意。

・DeeMMax
MはマスタリングのM。マスタリング時の最終音圧アップに特化した性能。
ステレオミックスに影響を出さずにクリアで強大な音圧が得られます。

・DeePopMax
配信用やJ-POPサウンドのバランスを作りながら音圧を上げます。
スマホやスモールスピーカーなどで再生しても聞き映えする音が得られます。

・DeeMaximizer(Maxシリーズ上位)
32バンドマルチバンドで音圧が上げやすいバランスを作りながら音圧を上げます。
ラフなミックスを入力しても纏まりのある整ったサウンドに仕上げる事ができ、 マスタリングの下地作りから最終まで広い範囲の仕事を一台で完結。

今回のDeeMMaxは上位のDeeMaximizerを含め、マスタリング最終段で音圧を上げる事に関しては最も優れています。そのため他のシリーズ、他社の味付けを利用し、最終的な音圧を任せる連携プレイがお薦めです」と、重虎さん。
DOTEC-AUDIOのお二人、フランク重虎さん(左)、飯島進仁さん(右)

以上、DeeMMaxV3.0.0について紹介しました。今回いろいろな比較実験をしてみましたが、人の音源で比較するより、自分の音源で試すのが一番よくわかるので、まだ持っていないのであれば、まずは無料デモを使って実際に音を聴いてみると、そのすごさをすぐに実感できると思います。

これだけ実用性があって、5,000円+税と安価なプラグインではありますが、DOTEC-AUDIOの製品は、どれか1つ持っていれば、購入時にそのシリアル番号を入力することで1,500円引きになるシリアル割というものも用意されています。すでに何等かを購入した…という人であれば3,500円+税=3,850円で手に入れることができるので、ぜひ入手してみてください。

冒頭でも書いたように以前にDeeMMaxを購入した、という人であれば無料アップデート可能です。この夏のコミケや秋のM3などに向けて作品作りをしている人にとっても、今なら十分間に合うはず。ぜひ次の発表作品のマスタリングにDeeMMaxを活用してみてはいかがですか?

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