• 1978年発売のJUPITERシリーズの原点、JUPITER-4をRoland自ら忠実に再現

Rolandのシンセサイザの代表製品として数々の音楽作品を生み出してきたJUPITERシリーズ。中でも1981年に発売されたJUPITER-8は80年代の象徴的シンセサイザの一つとして、今でもそのサウンドは広く使われています。でも、JUPITERシリーズの原点となる初代機はJUPITER-8の発売から遡ること3年。1978年に発売されたJUPITER-4というシンセサイザです。Rolandの創業は1972年なので、まだ7年目というときに発売された初の4音ポリフォニック・シンセサイザ。

そのJUPITER-4がこの度、Roland自らの手で、ソフトウェアシンセサイザとして再現されました。Rolandが誇るアナログ回路をデジタルで再現する技術、ACB(Analog Circuit Behavior)テクノロジーを駆使して開発された、このソフトウェア版のJUIPITER-4は、当時と同じ音、同じ操作性を実現するとともに、今の音楽シーンにもマッチするよう、エフェクトや、より高度なアルペジエーターなどを搭載するとともに、PC、DAWがない環境でもJUPITER-4を再現できるPLUG-OUTにも対応。そのソフトウェア自体は、Roland Cloudから入手可能となっています。そのJUPITER-4を一足早く試してみたので、どんなソフトなのか、紹介してみましょう。

JUPITERの原点、1978年に発売されたJUPITER-4がソフトウェアシンセサイザとして再現された

JUPITER-4はRoland初のコンピュータを搭載したシンセサイザ。アナログシンセサイザではあるけれど、デジタルコントロールを実現した4音ポリフォニックのシンセサイザとして、当時385,000円という価格で発売されたフラグシップモデルでした。そのデジタルコントロールによって、従来のアナログシンセサイザでは不可能だった、ユーザーが作ったサウンドを保存できるようになり、そのためのユーザーメモリーが8個用意されていたのです。

以前、浜松のローランド・ミュージアムで撮影したJUPITER-4の実機

またJUPITER-4では4つのVCOを同時にならすユニゾン・モードをRolandとして初めて搭載した機種でもあり、その厚みのあるサウンドは多くの楽曲で使われるようになっていった……という、まさにJUPITERの元祖であるシンセなのです。JUIPITER-8のソフトウェアシンセサイザとしての復元は、すでに行われていましたが、この度、満を持してJUPITERの原点、JUPITER-4がRolandのACBテクノロジーを使ってソフトウェアシンセサイザ化されたのです。以下がその紹介ビデオです。

Roland社内に残っている実機の各ハードウェアユニット、回路図、およびその他のさまざまな資料を基にして再現しており、オリジナルのJUPITER-4が持つさまざまなクセや、不安定さも含め再現しているとのこと。もちろんWindows、Mac対応で、VST、AU、AAXのプラグインに対応。またM1ネイティブ対応となっています。

Cubase上で起動させたJUPITER-4(画面サイズはズーム機能で自由に変更できる)

起動してみると、JUPITER-4の実機そっくりなUIが表示されます。先ほどの実機の写真と見比べてみると、いろいろな違いはありそうです。LFO周り、アルペジエーター周りなどがかなり拡張されているほか、目立ったところでは画面右上にVUメーターが搭載されており、ビンテージっぽさを演出しているようです。

また画面右下にある16個のボタン、オリジナルはユーザーメモリと固定のプリセットとなっていたようですが、このソフトウェア版ではプリセット選択となっているようです。実際に押してみると1978 BASS、1978 STRING、1978 FUNKY CLAVI……など、当時のサウンドが再現されるようになっています。

16個あるボタンでプリセットを選択できる

デフォルトの設定では、オリジナルのJUPITER-4を再現する形で4音ポリのシンセサイザとなるのですが、このソフトウェア版においては、いろいろ設定を変更できるのも面白いところ。OPTIONボタンを押すとメニューが出てくるのですが、デフォルトの4 Voicesのほかにも2 Voices、6 Voices、8 Voicesとあり、最大8音ポリのJUPITER-4へと拡張することも可能になっています。

実機は4音ポリだが、最大8音ポリにまで増やすことが可能

また、これまでのACBテクノロジーで復元してきたJUPITER-8やJUNO-106などと同様、CONDITIONというパラメーターがあるのでコンデンサなどアナログ回路の経年劣化を再現できるようになっているほか、Circuit Modというパラメーターが追加されています。これを動かすことで、経年劣化ではなく回路の状態を調整するものとなっています。昔のアナログ回路で構成されているオリジナルのJUPITER-4は、個体ごとにバラツキがあり、これを出荷前に調整するための半固定抵抗が数多く設置されており、これでバラツキを整える設計になっていました。もちろん経年劣化などにより、再調整しないと本来の音からはズレてくるのですが、そのバラツキをうまく表現するのがCircuit Modなのです。パラメーターは1つなので、複数の半固定抵抗をまとめて動かす形にしているのだと思いますが、この値を大きくしていくと、微妙に不安定になっていくあたりが面白いところ。Conditionパラメータと一緒に動かすことで、いかにも…というサウンドになってきます。

Circuit Modというパラメーターによりアナログ部品の状態を調整できる

前述の通り、1978年の出荷当時のプリセットサウンドが10個収録されているほか、今の音楽シーンでもすぐに活用できる音色が64個収録されているので、まさに即戦力として使えるシンセサイザになっているのですが、その音を鳴らしてみると、「え?これが40年以上前のシンセサイザの音なの?」という印象も持つのも事実。

今の音楽シーンで活用できる最新の音色プリセットが、64種類収録されている

というのもこのソフトウェア版ではオリジナルのJUPITER-4をさまざまな形で拡張しているので、こうしたサウンドが実現できているようなのです。中でも大きいのがエフェクトです。オリジナルには画面左下にあるENSEMBLEという機能のみありました。これは音に厚み、広がりをつけるためのエフェクトで、いわゆるコーラス。ただJUNOコーラスほどの威力はなく、少し広がる…といった感じです。

ENSEMBLEボタンをオンにすることで、コーラス効果を出すことができる

しかし、このソフトウェア版ではENSEMBLEを再現する一方、画面右側に3系統のエフェクトが追加されており、これで派手な演出が可能になっています。具体的にはEFFECT、DELAY、REVERBの3系統で、それぞれTYPE設定をすることでエフェクトの種類を設定できるようになっています。一番左のEFFECTはOVERDRIVE、DISTORTION、METAL、FUZZ、ENSEMBLE、PHASERの6種類。歪み系が中心ですがENSEMBLEを選択した場合は、先ほどのENSEMBLEボタンと連携し、より派手なコーラスを掛けることが可能になっています。

オリジナルにあるENSEMBLEボタンとは別に3系統のエフェクトが追加されている

また、DELAYのほうもTYPE選択でCHORUSやFLANGERを選べたり、REVERBもHALL、ROOM、PLATEを選べるなど、これらの設定を変えるだけでも、かなりサウンドの幅を広げることが可能となっています。

そして、もうひとつこのソフトウェア版のJUPITER-4の重要なポイントは、これがPLUG-OUTに対応している、という点です。「PLUG-INじゃなくて、PLUG-OUTって何だ?」と不思議に思う方もいると思いますが、これはRoland独自のユニークなシステムで、DAWでのプラグインのようにPCの中で使うのではなく、ハードウェア上に移して自由に持ち歩きできるようにする、という発想のもの。

PLUG-OUTボタンを押すことで、SYSTEM-8にPLUG-OUTすることができる

だいぶ以前に「SH-101を再現するAIRA SYSTEM-1のPLUG-OUTを使ってみた!」、「RolandがAIRAのPLUG-OUTで復刻させた名シンセ、PROMARSとは」、「往年の名機、Roland SYSTEM-100がPLUG-OUTソフトシンセとして復活」といった記事を書いたこともありましたが、その当時のSYSTEM-1やSYSTEM-1Mはすでにディスコンになっていますが、その上位機種であるSYSTEM-8は今も現役。そのSYSTEM-8とUSB接続して、PLUG-OUTボタンを押すことで、JUPITER-4をSYSTEM-8上で使うことができるのです。そして、一度SYSTEM-8に持ってきてしまえば、USBを切り離し、PCなしのSYSTEM-8単独でJUPITER-4のサウンドを鳴らすことができるようになるんです。

JUPITER-4が動作しているPCにSYSTEM-8を接続

もっとも、SYSTEM-8の各パラメーターとJUPITER-4のパラメータではその配置や数に違いがあるので、JUPITER-4で使うパラメーターのみが緑に点灯するようになっています。また、SYSTEM-8でのパラメータの位置をわかりやすくするために、プラグイン版でのパラメータの配置をSYSTEM-8レイアウトにするためのモードも用意されています。

SYSTEM-8のLCD画面にもJUPITER-4の表示が

JUPITER-4が動作しているPCとSYSTEM-8が接続されている状態だと、SYSTEM-8の各パラメータでJUPITER-4をフィジカルコントロールすることも可能になっています。

SYSTEM-8の各ノブの配置にマッチしたデザイン

ちなみにSYSTEMー8で利用可能なPLUG-OUTシンセサイザは、先ほどの記事のSH-101、PROMARS、SYSTEM-100のほかJUNO-106、JX-3Pなど含め、今回のJUPITER-4が11種類目。これらを利用することで、ハードウェアシンセサイザの拡張性を存分に味わえると思います。

なお、このソフトウェア版JUPITER-4を入手するにはRoland CloudのPro(月額9.99ドルまたは年額99ドル))またはUltimateのプラン(月額19.99ドルまたは年額199ドル)に加入するか、買い切り型のLifetime Key=199ドルでの購入が必要になります。

ただし、以前「Rubixシリーズを登録すれば、Roland Cloud Proを半年間無料で使えるキャンペーンがスタート!」という記事で紹介したキャンペーンは今も続いているので、もしRubixシリーズを持っている方であれば、登録するだけで6か月間利用できるので、試してみてはいかがでしょうか?

【関連情報】
JUPITER-4製品情報
Roland Cloud情報
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